というか短すぎたので、最後のほうに短編を走り書きしました。
お楽しみいただければ幸いです。
47:A's編プロローグ&おまけSS『朝のお散歩』
Project:A's
Prologue
◇◇◇
この国には“四季”と呼ばれるモノがある。
“春夏秋冬”って奴だ。
対して僕の故郷は“四季”では無く“三季”。
強いて言うなら“春秋冬”となる。
まぁ何が言いたいのかというと――――
「……あちゅい」
――――高い気温と湿度というこの国の“夏”という環境にちょっと嫌気が出始めた、いわゆる“初夏”と言うらしい7月半ば。梅雨とか言うじめっとした時期が終わったかと思えば……見珍しい入道雲を見上げて感嘆していたのも今は昔、夏が嫌いになりそうだ。
今日も頑張るぞと言わんばかりに暑くなりだした太陽の下、僕は“敵”としてその女の子に出会ったのであっ た。
◇◇◇
「……ふぅ」
時刻は午前10時頃、仕事をし始めた太陽の光が僕を刺す。
僕は頬を垂れる汗を拭い、手に持つ槌型のスティックを握り直した。
足下に転がる白地に赤で「10」と描かれたボールと、6メートル先に立つゴールポールを見比べる。
現状は23対19、相手の攻撃は全て終了。僕がゴールにボールをぶつければ23対25で勝利が確定、逆に外せば23対22でゲームセット、敗北が確定してしまう。
更に残り1分足らずでタイムオーバーにより、負けが確定してしまう。
浅いゲーム経験を、剣技にも通じる“力加減”と“集中力”で補完する。
軽く素振りをし、構える。
敵味方の視線全てが僕に集ま
るのを肌で感じるも、気負いはない。
イメージ通りにスティックを振り抜くと、弾かれたボールはまっすぐ転がり――――
「ふぉふぉふぉふぉ! ワシらの勝ちじゃ!」
「ぐぬぅ……!」
両陣営からそれぞれ対照的な声があがる。
鮫島の代理として出場した『老人会対抗 ゲートボール親善試合』、とりあえず鮫島の顔に泥を塗らずに済んだかな。
そんな中、相手チームの中でも一際目を引く、綺麗な紅髪を三つ編みにした少女が、天を仰ぎながら悔しげな声を上げているのを目に留めた。
「あ゛ー、もう! 勝てると思ったのに!」
出場者の中で最年少は僕だと思っていたけど、みた感じだと多分あの子は僕より年下 。
いいとこ同い年だろう。
本格的に暑くなりだした日差しを避けるため、両チームが纏めて荷物を置いている木陰へと集まってくる。
敵味方関係なくお互いの健闘をねぎらい始めたところで、僕も唯一の同年代の彼女の元へ行ってみた。
なんて話を切り出すべきか悩み、無難に声をかけてみる。
「……ん、お疲れさまでした」
「あ、相手チームの……あー、そっちもお疲れさま、です。……最後のショット、よく決まったな」
「どういたしまして。そっちもスゴかった、まるでスティックを体の一部みたいに使いこなしてた」
事実として、彼女の試合運びは堅実、ミスショット無し。
「へへ、そりゃまぁ長い間使ってきたからな」
彼女が当然と言わんばかりに笑みを浮かべて見せた。
……僕と同じくらいの年で、いったいゲートボール歴何年なんだろう?
僕は彼女に向けて、手を差し出した。
「僕の名前はジーク、ジーク・アントワーク。……そっちは?」
彼女は差し出した僕の手を握り返す。
「ヴィータ、八神ヴィータだ。……今度は負けねーぞ、“ジーク”?」
――――これが長い付き合いとなる、僕とヴィータとの馴れ初めであった。
◇◇◇
ゲートボールの試合から幾週か後の夜、僕は自室でヴィータと電話中だった。
あの後も何度か試合で顔を合わせている内に連絡先を交換することになった僕たちは、毎晩……とまでは いかないまでも、3日の内2日は電話をする仲になっていた。
「ジーク~、入っていいー?」
僕の部屋のドアをノックする音と共に、廊下からアリサの声が響く
「ん、ちょっと待って。……ヴィータごめん、電話切るよ?」
『ああ。いま聞こえた声がジークの仕えてる“ご主人様”か?』
「ん、そう」
『そっか。……じゃ、明日はよろしくな。おやすみ、ジーク』
「ん。ヴィータ、おやすみ。…………アリサ、入っていいよー」
通話を切り、携帯電話をしまうとアリサを部屋に招き入れる。
「おじゃましまーす。話声が聞こえてたけど、誰かと電話中だった?」
「ん、大丈夫、もう終わった」
「そう? ならいいけど。ちょっと ジークに魔法見てもらいたくて……いま大丈夫?」
「構わない」
頷いたアリサが僕のベッドへ腰掛けて、持ち込んだ本と巻かれた鋼線を脇に置く。
「ふふふ、見てなさい」
自信ありげに笑ったアリサが鋼線を軽く握り目をつむる。
「……おぉ」
ひとりでにするすると伸び出した鋼線が、何かを形作っていく。ものの30秒ほどで鋼線は精緻な子犬を模したモノとなり、次の瞬間には本物の犬のように動き出した。
僕がよく使っている使い魔を作る術式だ
「ふふ、どんなモンよ?」
「むぅ、いつの間に詠唱破棄を……」
「ジークに借りた魔法書読んで、トライ&エラーの繰り返しよ!」
……努力家だなぁ。
「で、次は どんな魔法を教えてくれるの?」
「いや、新しい魔法はいったんお預け」
僕の答えに意気込んでいたアリサが頬を膨らませる。
「えー!? 理由は?」
「ん。近距離から遠距離まで一応はこなせるようになったことだし、いったんアリサの戦闘スタイルを確立させようと思って」
「戦闘スタイル?」
「そ、戦闘スタイル。フェイトなら近距離戦重視の万能・高速戦闘型。アルフなら同じ近接と戦闘支援の特化型。高町は典型的な遠距離特化型と言った感じ。とりあえず最初のウチはしっくりくるのを探していく」
「つまり――」
ここまで説明をしたところで、察しのいいアリサは理解したらしい。
「――しばらく僕やフェイトなんかと 模擬戦、覚悟して挑むよーに」
「ふ、ふふふ、やったろーじゃない! 10戦でも50戦でもやってやるわよ!」
桁が一つ足りないなぁ、たかが10戦や50戦でしっくりくるモノが見つかってたまるか。
と、内心では思ったけども口には出さない。
「ちなみにジークの戦闘スタイルってなんなの? いつもは近距離でも遠距離でも何でも来いって感じだけど……」
『そういえば』と言った感じに問いかけてくるアリサに、僕はちょっと視線を外して本心を隠すように答えた。
「……さぁ、なんだろ?」
――――今は、自分自身にも分からない。
自分で言うのも何だけど、僕は近距離から遠距離の戦闘もそつなくこなすし 、最前衛から最後衛まで人並み以上に出来る自覚が有った。
だけど、一番得意と言える距離は『剣と盾』を用いての近接戦闘“だった”……と言ったらアリサは信じてくれるだろうか?
……そしていつの日か、僕が剣を
プロローグEnd...
おまけSS『朝のお散歩』
「――――ぅん」
僕は微睡みから目を覚ますと、ベッドサイドに置かれていた時計を見る。
時間は早朝5時、朝の仕事は特になく6時半に起きれば良かったのだけど……習慣でこの時間には起きてしまった。
二度寝するには目も冴えすぎていたのでそのまま起床し、顔でも洗うかと洗面所に行こうとしたところで――――
「んぁーおはよージーク」
「ん、おはよ」
同じく寝ぼけ眼で歩いていたアルフに出会ったのであった。
◇◇◇
「今日もいい天気になりそう」
「だねぇ」
二人で屋敷を出て、朝の川沿いを散歩する。
いつもと違うのは、アルフが人型でも大型犬フォームでもなく、新バージョンの子犬フォームという事だ。
アルフの首に巻いたリードを持ち、朝の澄んだ空気の道を歩いていく。
朝早く人通りもないため、アルフも僕も念話じゃなく普通に会話できる。
「燃費が良いんだっけ、その状態?」
「うん。というか、いつもの大型犬フォームだと、屋敷の犬達に警戒されてねぇ……」
「あぁ……」
確かに屋敷で飼育されている犬達に比べると、アルフは二回りくらい大きいから無理もない
「そういえば最近のフェイトだけど――」
「うん――」
アルフと二人きり、それぞれアリサとフェイトというご主人が居るもの同士、色々と
「あっ、アルフずるい、ジークとお散歩なんて……!」
「あー、ゴメンねフェイト。よく寝てるみたいだったから起こさなかったんだよ」
「……うぅ、起こしてくれて良かったのに」
僕の部屋の前まで来たところで起床してきたフェイトに遭遇したのだけど、なんかとてもご機嫌斜めなご様子。
「ん。じゃあ明日の朝、二人で散歩……する?」
「する!」
若干食い気味な返答に、ウェットティッシュでアルフの前後の足を拭いてやり首輪を外しながら頷きを返す。
薄く頬を染めて嬉しそうに微笑むフェイト。
「じゃ、明日の朝に」
「うん」
◇◇◇
そして翌朝、部屋を出た僕を出迎えたのは――――
「えへへ、お待たせ」
片手に僕が プレゼントしたチョーカー、もう片手にはそれに繋ぐと思われるリードが1本。
そして期待半分、恥ずかしさ半分の表情で僕を見るフェイトの姿。
「( ゜Д゜)!?」
フェイトの事がちょっと心配になる今日この頃の僕なのであった。
End...
よかった、1ヶ月以内に更新できた…
と安堵してる作者です。
A's編のヒロインはゲボ子こと、鉄槌の騎士ヴィータとなります。
二人が仲を深めていく様子を楽しみしていただければと思う次第。
A's編のテーマは
『過去と向き合い、未来へ進みだす』
です。
なおテーマソング(?)はウルトラマンネクサスのOPで
『英雄(doa)』
です。
ご意見ご感想、誤字脱字報告等有りましたら連絡頂けると幸いです。
次回更新もよろしくお願いいたします。
なお、本作のフェイトは天然で変態プレイを行ってくる方針になりそうです。(小声
2017.10.11:誤字訂正