魔法少女リリカルなのは ~若草色の妖精~   作:八九寺

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某喫茶店チェーンの最終面接受けてきました、1週間以内に返答が来るらしいです……。

ない……てい……(バイオハザードの日記っぽく)

誰か、読んだ人をクスリとさせるような、センスのある前書きの書き方を教えてください(切実)


26:新たな暴走

26:新たな暴走

 

 

 5月頭、海鳴郊外の温泉へ湯治に行った連休。

 まぁ、湯治のはずがジュエルシードの封印も行うというオマケがついた。……あとフェイトたちとの混浴と、アリサからの折檻。

 

 さて、その連休明けて数日、学校へと行くアリサを見送った僕は、鮫島に声をかけてから屋敷を後にし、街へと繰り出した。

 

 そういえば連休明け、学校に行って以来アリサの機嫌が思わしくない。

 僕と鮫島が黙って湯治(とうじ)に言った件は許してもらったから、怒ってるのは別のことでなんだろうけど、詳細がわからない身としてはちょっと不安になる。

 

 この街に止まり、アリサの護衛をすることが決まった頃から定期的に――前もどこかで言ったけど――街……というか海鳴市全域に出向いて、各所の地理を把握したり、魔法的な刻印を刻んだりして、僕は有事に備えている。

 

 アリサの屋敷を中心に巨大な五芒星を、更にそれを囲むように六芒星を描く。

そして更にその星々を円で囲むように基点を選んで刻印を作り、それらの基点を結んでいく。

 

 そんな作業は連休前に大方が完成、今はその保全と細部の修正なんかを行っている。

 

 これでジュエルシード事件に対する初動を、幾らかは早くできると思う。

 効果としては範囲内の魔力発生の察知から、その最寄り基点までの転移まで。

 

 大地に魔法陣、空には鋼の使い魔。

 今やこの街は僕の庭と言っても過言じゃないくらいに掌握した。

 

 実験的に各所へ転移を行った僕は、1時過ぎに最後と決めていた基点に降りたって少し歩く。

 

 向かう先はそろそろ“常連”と言われるくらいには通っているお店、士郎さんのお店『喫茶 翠屋』だった。

 

 

◇◇◇

 

 

 ――――からりん♪

 

 扉についている鈴の音と共に僕は店内に入り、最近指定席になり始めているカウンターの端の席に座る。

 

「おや、ジーク君いらっしゃい。いつも通り『今日のランチ』でいいかい?」

「ん、それでお願いします」

 

 暫くして運ばれてきた料理を『あむあむ』と食べ進めていく。

 いつもと同じく美味しい料理に舌鼓(したづつみ)を打ちながら、ランチ目当てのお客さんが()けていくのをゆっくり待つ。

 

 大方のお客さんが出ていった頃、士郎さんが食後のコーヒーとデザートを持って僕の所にやってきた。

 

「……お疲れさまでした」

「うん、ジーク君もいつもご贔屓にどうも。来週から出す予定のデザートなんだけど、良ければどうぞ。木苺とブルーベリーのムースだ」

 

 にこにことこちらを見る士郎さんの視線を受けながら、僕は削るように少しづつそれを食べる。

 合間を縫ってちびちびとコーヒーも飲んでいく。冷めてしまっては風味も落ちてしまう。

 

「……美味(おい)し」

 

 甘さとほのかな酸味が絶妙な加減で混ざりあい、口の中でゆったりと解れていく。

 “ぱてぃしえ”とやらの桃子さん、相変わらずいい仕事だ。

 

 黙々とムースを食べているところに、奧から最近聞きなれた声と共に一人の姿が現れる。

 

「父さん、とりあえず洗い物は終わった。俺と忍は――――む、ジーク君か」

「あら、あのときの可愛い侵入者さん、久しぶりね~」

「恭也さんに忍さん、お久しぶりです」

 

 奥の厨房から『ひょひょいっ』と姿を見せた二人に、僕は小さく会釈を送る。

 忍さんとは結界に隔離されたいきなりの別れだったから、そのお詫びもかねておいた。

 

「二人ともご苦労様、しばらく休憩に入っていいぞ」

 

 その言葉に二人はいったん厨房に引っ込むと、手に飲み物を持って戻ってくる。

色からして、何か柑橘系の飲み物。

 

 忍さんはそのまま近づいてくると、僕の隣に座る。

 

「ジーク君、ジーク君って10歳くらいだよね?」

「そう、いま9歳」

 

 視線だけを向けて、小さく頷いてみせた。

 本腰を入れて目の前のデザートに取り組もうとするんだけど、横からは忍さんの視線が『じー』と突き刺さってきて、気が散って仕方ない。

 

「……なに?」

 

 根負けした僕はそう彼女に問いかける。

 

「ん~? 前に会ったときは一瞬で消えちゃったでしょ? 怪しい者じゃないのは後の調べではっきりしたんだけど、何者かなー? と思ってね」

「…僕は僕、それ以上でもそれ以下でもない」

「あらら、つれない反応ね……。……人見知りだったりする?」

「よく知らない相手だから、警戒心を解いてないだけ」

 

 ジト目で、軽く睨むように忍さんを見つめる。

 それを見かねてか、恭也が助け船を出してくれた。

 

「忍、ジーク君が慣れてくれるのを待つしかないさ。忍の家の猫だって、最初は人に慣れないだろう。俺の知る限りジーク君が一番警戒心を抱かないで話してるのは父さんんだけだ」

「そっか……。……時間は掛かってもいいから、いつか私や恭也にも慣れてくれると嬉しいな」

「僕を犬猫と同列に見てるのは心外だけど……善処はする」

「(…………恭也と真っ向から戦って引き分けてたから、もしかしたら『私たちの同族』かと思ってたけど、アテがが外れちゃったか)」

 

 残り少ないムースに集中を戻していた僕は、忍さんのつぶやきを聞きそびれた。

 少し気になったので、忍さんに『くいっ』と首を傾げてみせる。

 

「…………(くいっ)?」

「……恭也、この子のデザート食べてる姿とかたまに見せる動作がなんだか小動物みたいで可愛いんだけど。……テイクアウトしていいかしら?」

「……俺はその質問にどう返せばいいんだ?」

 

 恭也の困った表情が僕に向けられた。

 と言うか、そんな表情を僕に向けられても困る。

 僕は恭也から目をそらし、最後の一口となったムースを食べ、カップの底に少し残っていたコーヒーを飲むと立ち上がった。

 そのまま視線から逃げるようにレジへと向かう。

 

「ごちそうさまでした」

 

 僕は代金の硬貨を士郎さんに渡す。

 

「ひぃふぅみぃ……はい、確かに。あ、あとこれ当店の割引券」

「ありがとうございます。あ、そうだ士郎さん――――」

 

 僕は今朝方、鮫島に言われたことを思い出す。

 

「――――“りょーしゅーしょ”ください」

 

 鮫島曰く、お昼ご飯代はバニングス家が持ってくれる事になったらしい。

 ……お金が掛からないのは、良いことだ。

 

「……下の娘と同じ年の子に、領収書を切る機会がくるとは思わなかったよ」

 

 何とも微妙な表情を浮かべながら、士郎さんは僕に“りょーしゅーしょ”とやらを渡してくれたのだった。

 

 

◇◇◇

 

 

 翠屋でランチを食べた僕は転移魔法陣の試験も兼ねてお屋敷へ帰る。

 

 本来なら鮫島と一緒にアリサの迎えに行くんだけど、今日は学校からまっすぐお稽古らしいのでそれは免除された。

 護衛が僕の仕事だけど、正直今のアリサの実力なら並の相手は返り討ちにできると思う。

 

 僕ばっかりと戦わせて変な癖がついても困るし、そろそろアリサの“でびゅー”戦を考えるべきかもしれない。

 再戦を餌にフェイトを誘って戦わせてみようかとも思いつつ、僕は机の上で手を動かす。

 

 覚えているだろうか、あの市街で大樹が発生する少し前に拳銃以上の火力を求めて、アメリカまで行って入手したアレだ。

 ちょっとずつちょっとずつ、刻印や文字を刻んだり強化の魔法を重ねがけしたり……。

けっこう長い時間が掛かったけど、ようやくの完成だった。

 

「……我ながら良い出来」

 

 『P-90TR』、それが僕の新戦力。

 この銃を選んだ理由はいくつかある。

 第一に大きさと攻撃の貫通性。第二に平面の多さ。

 これはその二つを兼ね備えていた。

 

 大きいようだと僕の手に余るし、元々の貫通性が高くないと相手の障壁を抜けない可能性もある。

 平面の多さは、単純にそのほうが刻印を刻みやすいからだ。

 

 最後に一通り確認してから、それを異空内に仕舞い込む。さすがに室内で試射をしたら怒られる。

 いつ使うことになるかは分からないけど、準備しておいて損はない。

 

 

 ――――コンコン

 

 

 部屋のドアが叩かれ、鮫島が顔を覗かせた。

 

「ジーク坊ちゃん、そろそろアリサお嬢様のお出迎えに参りますよ」

「ん」

 

 机の上を簡単に掃除し、僕は鮫島に付いていった。

 

 

◇◇◇

 

 

 鮫島の運転するリムジンの車内、その道すがらの事だった――――

 

「……鮫島、停めて」

 

 僕は虚空……市街地の方を睨みつける。

 晴れていたはずの夜空はいつの間にか厚い雲が広がり、雷鳴が鳴り響いていた。

 

 この魔力の感じは……フェイトかアルフ?

 

「ジュエルシードとやら……でございますか?」

「違うけど……本質的にはそう」

 

 多分、ジュエルシードのありそうな場所に、魔力を打ち込んで見つけ出そうとしてるんだろうけど……結界すら張らないのはどういう了見なんだろう。

 鮫島の言葉に頷きを返すと、僕は車外に出る。

 

「……たぶんアリサの所まで被害は及ばない。だけど、アリサの方で何か起こったらケータイで連絡して」

「承知いたしました。……くれぐれもお気をつけて」

「これだけ盛大にやってると、多分アリサも何が起きてるかは感づいてるかも。……来ようとしても、引き留めて」

「分かりました、万一の際は鮫島流体術で意識を刈り取りますゆえ。では、私は急ぎアリサ様の元へ向かいます……坊ちゃん、御武運を」

 

 その言葉に手を振ることだけで応え、僕は地を蹴って市街へ向かう。

 とゆーか、そこそこ戦えるだろうアリサを圧倒できると自負する鮫島は、さすが一流の執事だ。

 

 魔力の発生元を細かに確認しつつ、現場へと急ぐ。

 ――――その現場で僕がこのセカイに落ちた理由が明らかになろうとは、この時の僕はまったく想像もしていなかったのだった。




というわけで26話でございました。
次元震発生までの繋ぎのお話なので、若干短いですがご容赦を。

なお、前回の更新で日間ランキング23位、累計UA36000突破、お気に入り登録530件突破です。

アレですね、フェイトが脱いだから(あと、タイトル効果)ですね!(おい
だってね、25話のアクセス数だけ異様なんだよ…… (´・ω・`)
やはり肌色成分が足りないと、ダメだというのか……


>『私たちの同族』
『リリカルなのは』の原作(?)、とらハ3の『夜の一族』参照

>『鮫島流体術』
必殺・執事殺法。
奥義は『神槍无二打(にのうちいらず)




     *      *
  *     +  うそです
     n ∧_∧ n
 + (ヨ(* ´∀`)E)
      Y     Y    *

鮫島さんがアサシン……有りか?

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