やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。   作:ホッシー@VTuber

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原作のお話を私なりに書いてみました。
色々改変しているところもありますが、ご了承ください。


LEVEL.89 仮定と検証の先に待っていたのは優しい答えだった

 第六の術、『ラウザルク』。唱えた途端、ガッシュの体が雷を受けて光り始めた。しかも、術を発動しているのにガッシュは気を失っていない。しかし、気を失っていないのはいいが、この術の正体はまだわからない。いや、待て。もしかすると、この術の効果は――。

「っ……ガッシュ、聞こえるか?」

「ウヌ!」

 俺の言葉にガッシュはしっかりと返事をした。よし、意識ははっきりしている。むしろ、“意識がはっきりしていなくちゃならない”。

「いいか、ガッシュ。まずはこの術の効果を確かめる。ぶっつけ本番だが、いけるか?」

「ウヌ、任せるのだ」

「よし、それじゃ行くぞ!」

「ウヌゥ……オォォォオ!?」

 ほぼ同時に俺たちは駆け出そうとするが、いつの間にかキッドが脱いだ帽子を逆さまにしてガッシュに差し出していた。慌てて立ち止まる。まずい、この距離で術を放たれたら回避すら間に合わない。

「早く出して!」

 だが、キッドは攻撃を仕掛けて来る様子もなく、期待を込めた目で俺たちを見ていた。「な、何?」

「博士が言ってたよ! 君の体が光ってるのは鼻から光るオレンジジュースが出るからだって!」

 あー、これはあれか。おそらくそう言うことなのだろう。

「……ウソだ」

 俺の言葉を聞いたキッドはあんぐりと口を開けて驚愕する。この子も苦労しているのだろう。敵ながら可哀そうだ。

「ガッシュ、そいつをつかめ!」

「ヌ!」

 だが、これはチャンスである。俺の指示に従ってガッシュがキッドの体に抱き着き、捕まえた。我に返ったキッドは喚きながら大暴れしてガッシュの拘束から逃れようとするが一向に抜け出せる気配はない。次は――。

「キッド!」

 どうやら向こうは術の検証をさせるつもりはないようだ。ナゾナゾ博士の声を聞いたキッドがガッシュの顔を見る。

「突き放せ!」

「『ゼガル』!」

 ガッシュがキッドを突き飛ばすとキッドの口から砲撃が放たれた。ギリギリのタイミングだったが、“キッドの体が予想以上に後方へ飛ばされていた”おかげで当たらずに済んだ。

「ガッシュ、突っ込め!」

 すかさず叫んだがガッシュが動き出す寸前で光が消えてしまった。くそ、時間制限があるのか。でも、『ラウザルク』の効果もだいたい把握できた。

「新しい術の検証は終わったのかね? まぁ、終わっていなくても攻撃は続けさせて貰うよ! 『コブルク』!」

 ナゾナゾ博士が呪文を唱えるとキッドがその場で四つん這いになり、口を開けると下あごが地面に付く。口の中は階段になっていた。しかし、何も起きない。

「オイッチニ。オイッチニ。オイッチニ。オイッチニ」

「ちっこいのが出てきたああああ!?」

 そう思っているとそんな掛け声と共にキッドの口の中から小さいキッドがたくさん出て来た。

「それ、かかれー!」

 本体のキッドが叫ぶと小さなキッドが雄叫びをあげながら突っ込んで来る。大きなキッドはともかく小さなキッドに術を放っても当たらない。どう対処しようか悩んでいる内に1体の小さなキッドが殴り掛かって来た。まぁ、こんな小さい奴に殴られたからってそんなにダメージは――。

「ごっふ」

 ――甚大だった。見た目とは裏腹にとんでもない怪力だ。このまま放置していたらボコボコにされてしまう。慌てて殴って来た奴を掴み、地面に叩きつけ、踏み潰そうと足を上げた。

「うえええええええん!」

「……」

 足元で大泣きする小さなキッドを見て思わず、硬直してしまう。さすがに踏み潰すのは可哀そうか。

「ウラー!」

「ブルァアアアアア!!」

 そして、別の小さなキッドに殴られた。やばい、油断した。ガッシュも必死に体に引っ付いている小さなキッドを引き剥がそうとしているが、手古摺っている。攻撃呪文を撃とうにもここまで接近されていたら意味がない。なら――。

「ガッシュ、第六の術だ!」

「っ!? しかし、どんな力かまだ」

 まだガッシュは『ラウザルク』の効果を把握していなかった。すぐに効果を教えようと口を開くが、思いとどまる。

「ガッシュ、この術を出す時、俺は言った。お前の中にまだ眠ってる力があると!」

 きっと術の効果を口頭で説明してもガッシュは使いこなすことはできないだろう。言葉で説明されてもすぐに頭が……心がそれを理解しないから。

「その時、お前は何を思った?」

 だからこそ、俺が教えるのではなく、自分で気付かなくてはならない。いや、違う。俺はただ仮定と検証だけで『ラウザルク』の効果を推測しただけに過ぎない。

「今までの術が出た時とは違い、今回に限って何かを想い、術が出た! きっと、その想いが術の正体だ!」

 そう、この術を本当の意味で理解できるのはガッシュだけだ。パートナーと言えどガッシュが今、何を思って、何を感じて、何を考えているのかわからない。だから、教えてくれよ。お前は『ラウザルク』にどんな想いを込めたんだ?

「第六の術、『ラウザルク』!!」

 呪文を唱えると再びガッシュが雷に打たれ、光り始める。ガッシュと一緒に小さなキッドも雷に当たったが影響はないようだ。

「あの時、想ったこと……」

 ガッシュがそう呟いた瞬間、こちらに振り返って両手を振るった。いきなりのことで戸惑ってしまうが、すぐにガッシュの狙いに気付く。凄まじいスピードで俺の体にくっ付いていた小さなキッドを引き剥がしているのだ。あれほど引き剥がすのに苦労していたのに。

「ガッシュ……」

 第六の術、『ラウザルク』。『ルク』の因子を持つ呪文。そう、八幡さんたちとの話し合いで気付いた呪文の法則性の1つだ。だから俺は『ラウザルク』は肉体強化の呪文だと考え、検証した。捕まえられたキッドはガッシュの拘束から抜け出せず、突き飛ばされた時は大きく後ろに跳ばされていた。その段階で自分の考えは正しかったと確信していた。していたのだが、その効果は俺の予想を超えていた。引き剥がした小さなキッドたちを抱え、地面にいた他の奴らを回収し、遠くに投げる。その動きは今までとは全然違った。

「ホホウ? これは厄介だ! 遊びは終わらせてもらうぞ! 『ゼガルガ』!」

 小さなキッドを回収するとすぐに術を放って来る。まずい、肉体強化されているガッシュでも直撃したらタダではすまない。

「く……ガッシュ、向こうを向くんだ! 早く呪文で――」

 そう言いかけたが、ガッシュに突き飛ばされる。その衝撃で魔本を落としてしまった。

「ガッシュ!?」

 慌てて体を起こし、両手を広げて俺の前に立つガッシュを呼んだ。すぐそこまで砲撃が迫っている。このままでは直撃してしまう。急いで魔本を拾い、呪文を唱えようと心の力を込めるがその前に砲撃がガッシュの体を捉え、爆散した。

「ガッシュ! ガァァァァッシュ!!」

「……清麿はいつもボロボロだ」

 砂煙の向こうからガッシュの声が聞こえる。

「私が弱いばっかりにいつもボロボロになる。私はいつも悔しい想いをする。だが、違うのだな……」

 やがて砂煙が風で流され、ガッシュの背中が見えた。強力な砲撃を受けても怪我一つしていなかった。

「私には強い力が眠っておる……清麿がボロボロにならなくとも戦いに勝ち、やさしい王様になれる力を持っておる!」

 こちらを振り返ることなくガッシュは嬉しそうに言う。ああ、そうか。それが――。

「もし、それが本当ならば……これほど嬉しい力はない。そんな力が……私にあったのだな」

 

 

 

 ――お前の想いか。

 

 

 

 第六の術、『ラウザルク』。一時的にガッシュの力、速さ、防御力など全ての強さを強化する術。仲間を傷つけずに勝利するための“ガッシュらしい優しい”術だ。













ちょっとした愚痴

タマモ礼装が落ちません。カップケーキだけが溜まって行くぅ。
ドスケベ礼装もなかなか手強かったので頑張って周回します……。

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