やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。   作:ホッシー@VTuber

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ここでお詫びを。


クリスマス編が始まりましたが、私の中で何故か修学旅行編が10月中旬のことになっており、生徒会演説が11月初めになっておりました。申し訳ありません。
なので、生徒会演説を11月終わり。そして、今回のお話しを12月初めと修正しました。修学旅行編の方で時期がずれているかもしれませんので、そちらも確認しだい、随時修正いたします。



お詫びと言っては変ですが、もし、これからの日程が気になる方は個人的にメッセージを送っていただければ2月の千年前の魔物編までの大まかな日程を教えます。なぞなぞ博士が来る時期とかですね。本当に大まかなので期待はしないでください。


LEVEL.62 群青少女は彼らの声を聴く

「ヌゥウ!」

 コンコンと空き缶を木の棒が叩く音が響く。

「よし!」

「あっ!」

 それをぼーっとしながら見ているとバルンルンが空き缶を奪取する。

「えい!」

「ウヌウ!!」

 何とか空き缶を取り返そうするバルカン300だったが、その前に後ろに設置された空き缶に向かって空き缶を蹴るバルンルン。コロコロと転がる空き缶は立っている空き缶にぶつかった。

「「……」」

「ウヌウ、30点! ティオの勝ちなのだ! やったのだ、ティオ!」

 呆然と空き缶を見つめる私たちに対して負けたのに嬉しそうに叫ぶガッシュ。

「……ねぇ、これのどこが面白いの?」

 そんな2人に向かってベッドの上で観戦していた私はずっと思っていたことを吐露する。

「ヌ!? 何を言うか! 面白いではないか! 私がどれだけ一人ぼっちの時間をこれで過ごしたと!」

 何と言うか、ガッシュもハチマンに負けないレベルのぼっちだった。ティオも同情しているのか面白いと頷いているし。

「はぁ……」

 まだ騒いでいるガッシュを見つつ、そっとため息を吐いた。

 今日は日曜日。休日だ。前までの私ならダラダラしているハチマンと一緒に過ごしていただろう。しかし、色々あって今はちょっとだけ顔を合わせ辛いのだ。別にハチマンが悪いわけじゃない。悪いのは全部私だ。

 そのことをメグちゃんに相談したらティオと一緒にガッシュの家に遊びに行ってみてはどうかと提案され、いつもの訓練を休んで遊びに来たのだが。

「サイもやってみればわかるのだ! バルカン300を貸すからやってみるのだ!」

「いや、やらないけど」

「ヌおおおおおおおおおお!!」

 これなら独りで訓練をしていた方が有意義な時間を過ごせたと思う。

「ねぇ、ガッシュ」

「ヌ?」

「ガッシュはどれくらいの魔物の本を燃やして来たの?」

 不意にティオがガッシュにそう質問した。そう言えばそう言った話は今までして来なかった。まぁ、ティオに比べて私はあまりガッシュと遊んでいないからしょうがないと言えばしょうがないのだが。

「ウヌウ……よくはわからぬが、10人……くらいは倒したかのう」

「「10人!?」」

 予想以上に多くて私とティオは声を揃えて叫んでしまった。私だって5人ぐらいなのに。

「どうやら私が落ちこぼれだったからみんな、最初に弱い私と戦いたかったようなのだ」

「あー……」

「な、納得だわね……」

 しかし、弱いはずのガッシュにやられていった魔物たちはさぞ驚いただろう。下剋上という奴だ。そう考えると何となく嬉しくなる。“弱い人もいずれ強くなれる”と証明してくれたようなものだから。私も、いつかは強くなれるのだろうか。今のハチマンの隣を歩けるぐらいに。

「どんな魔物と戦って来たの?」

「ウヌ、みんな強かったのだ」

 それからガッシュは今まで戦って来た魔物について教えてくれた。氷の力を使う魔物、植物を操る魔物、本の力で無理矢理戦わされていた子などなど。ガッシュの口から出て来る魔物たちは本当に色々な力を使っていた。大きなロボットを操る力を使って来た魔物の話を聞いた時はさすがに呆れてしまったが。

「んー……」

「どうしたのだ、ティオ?」

 ガッシュの話を聞き終えたティオは何故か腕を組んで唸っていた。

「えっと……さっきガッシュが話してくれた魔物たちって自分の得意な力を使って戦ってたじゃない?」

「ウヌ、そうなのだ」

「それで、私たちの力はどうなのかなって。ほら、私で言えば守りの力」

「なら、ガッシュは雷かな?」

 ガッシュが使える術を全て見たわけではないが、雷を放ったり雷の盾を使っていたのは覚えている。

「ええ……じゃあ、サイは?」

「……え?」

「だって、サイの力って肉体強化かと思えば盾もあるし、回復呪文もある。それに……この前の戦いで翼を生やす呪文だって増えたじゃない」

「ヌ!? サイは空を飛べるのか!? それはすごいのう!」

 目をキラキラさせて私を見るガッシュだったが私はそれどころではなかった。ティオの言う通り、私の力にはティオの守りやガッシュの雷のような象徴的な物がない。今まで気にして来なかったが、私も全く分からなかった。

「だから、サイはどんな力なのかなって思ったんだけど……その様子じゃサイも知らないみたいね」

「……うん」

 それに気付けたら私もガッシュのように強くなれるのだろうか。

「この話はこれぐらいにしましょ。それにしても聞けば聞くほど驚きだわ。ガッシュ、よくここまで生き残って来れたわね」

 私の表情を見たからかティオが話を変えた。

「清磨の力と、他にも協力してくれた者がたくさんおったのだ」

「へぇ……でも、ガッシュだけでもそんなに倒してるならそろそろ魔物の数も減って来てるはずよね?」

「多分。具体的な人数はわからないけどね」

「ウヌウ、あとどのくらい残っておるのかのう」

「おーい、ガッシュ! 手を貸してくれー!」

 3人で唸っていると不意に下からキヨマロの声が聞こえた。どこかに出かけていたらしく、今帰って来たのだろう。嬉しそうに部屋を出ていくガッシュとティオの後を追いかけるとキヨマロは玄関で汗を大量に流しながら何かを持っていた。四角い置物?

「ヌ、清磨、どうしたのだ、これは」

「説明は後だ。とにかく重い……2階へ運ぶのを手伝ってくれ」

 それからキヨマロとガッシュがその置物を2階へ運び、ベッドに立てかけるように置いた。

「……え?」

 やっと置物の全貌が明らかになった時、ティオは声を漏らす。ガッシュも不思議そうにそれを見ていた。

「石版、みたいだね」

 置物――石版には魔物らしき絵と魔本の文字が掘られている。残念ながら文字は読めない。

「そう言えばガッシュ達は初めて見るんだったな。オレはこれを見るのは2度目になる」

「2度目? じゃあ、この石版は他にもあるの?」

「ああ、1枚目はイギリスの大学で見たんだ。ほら、夏休みにオレとガッシュ、イギリスに行っただろ? その時に親父に見せて貰ったんだ。しかも、その時に見た石版とこの石版に掘られた魔物の絵は違う物だった」

「ヌウ……一体、これをどこで見つけたのだ?」

 ペタペタと石版を触りながらガッシュが清磨に質問する。確かにイギリスの大学にあった物と似たような石版が日本の何の変哲もない街で見つけられるとは思えなかった。

「街の骨董店だよ。オレも見つけた時は驚いたさ。なんでこんなところにあるのかって。それで店の爺さんにどこで手に入れたのか聞いてみたんだがどうやら先代が店を開いた時にはもう置いてあったらしくて……売れ残ってるから500円でいいから買ってくれって言われてそのまま買ったんだよ。それで、ガッシュ、ティオ、サイ……この石版に見覚えはないか?」

 キヨマロの言葉に私たちは顔を見合わせる。もし、この石版が魔界から来た物だとすれば魔物である私たちも見たことがあるかもしれない。ただ、私の場合、見て来た物が少ないのであまり力になれないと思う。

「そうね……こういう姿の魔物はいたような気がするわ」

 石板をジッと見ながらティオが呟く。その後、全員の視線がガッシュに集中する。しかし、見られている本人は黙ったまま、石版を見ていた。そして、やっと彼は口を開く。

「私は……私はこの石版を見たことがあるのだ」

「何!? 本当か!?」

 キヨマロが目を見開いて叫ぶ。ガッシュは魔界にいた頃の記憶を失くしているのであまり期待していなかったのだろう。

「ウヌ……」

「それはどこで? 人間界でか? それとも……」

「ヌゥウ……わからぬ。人間界ではないと思うのだが、魔界の頃の記憶はないのだし……でも、何となく初めて見た感じではないのだ」

 煮え切らない解答。キヨマロも黙ってガッシュを見つめてそっと息を吐いた。これ以上の情報は得られないとわかったのだろう。

「最後にサイ。何かわかるか?」

 ティオはこのような魔物がいたような気がすると言った。ガッシュはこの石版そのものを見た覚えがあった。じゃあ、私も何か知っているのだろうか。でも、ワタシの時の記憶はほとんどないわけで。私が当時のことを思い出せるとは思えない。

「うーん……」

 もっと観察すれば思い出すかもしれないと思い、唸りながら石版を見つめる。そして、何となく触れてみた。

「ッ――」

 その瞬間、私は頭を何かで殴られたような錯覚に陥る。

「ぁ……あぁ……」

 体の震えが止まらない。石版から慌てて手を離しても次から次へと頭に何かが流れ込んで来る。これは――憎悪。

「さ、サイ!?」

 体から力が抜けて倒れそうになったがその前にティオが支えてくれた。しかし、私は声が出せない。寒い。怖い。憎悪に引っ張られる。このままじゃワタシ――。

「しっかりしろ、サイ……ッ! サイの目が……」

 私の顔を覗きこんだキヨマロは顔を引き攣らせる。チラリと部屋にあるテレビを見た。そこには群青色の光が2つ。私の目が群青色に光っていた。

「だい、じょうぶ……」

 そう、大丈夫だ。これは石版から伝わって来る憎悪に当てられているだけ。まだマシだ。深呼吸を繰り返し、何とか心を落ち着かせる。群青色の目もどんどん光を失っていった。

「ッぁ……はぁ……はぁ……」

 やっと落ち着いたが、ティオに支えて貰わなければ立てないほど体力を削られてしまった。そんな私を見たからかキヨマロが私の体を持ち上げてベッドに寝かせてくれた。

「ありがと……キヨマロ」

「いや、こっちこそすまん……まさかこんなことになるとは」

「ううん、気にしないで。多分、これも……」

 私に対する罰だと思うから。そう言いかけたがこれ以上心配させる気にもなれないので言葉を区切って目を閉じた。

「サイ、大丈夫?」

 その時、横からティオの声が聞こえる。目を開けてそちらを見るとティオとガッシュが心配そうに私を見ていた。

「大丈夫だって。それより……その石版、生きてるよ」

 喋るのも億劫なので手短に話す。しかし、さすがに説明不足だったのか皆はキョトンと首を傾げ、数秒後、やっと私の言葉の意味を理解したのか目を丸くした。

「生きてる……だって? それってどういう」

「そのままの意味。ふぅ……石版から、ものすごい負の感情が流れ込んで来たの」

「負の感情、か」

「憎しみとか悲しみとか苦しみとか。ガッシュもそれに触ってたけど大丈夫なの?」

「ウ、ウヌ……何ともないのだ」

 なら、私だけが石版の感情を感じ取ったのだろう。私は何かと負の感情に敏感で、弱い。さっきだって結構、ギリギリだった。おそらく、正気を保てたのは負の感情の中に1つだけ違う感情があったからだ。

「キヨマロ、これを調べる時は慎重にね……その魔物の絵はただ掘られてるだけじゃない。その絵は“魔物”そのものだから」

「な、何!? じゃあ、この石版に魔物が封印されてるってことか!?」

 声を荒げる彼に対して小さく頷く。少し眠たい。ちょっと寝かせて貰おうかな。

「ねぇ、サイ」

「ん?」

 うとうとし始めているとティオが顔を青ざめさせながら声をかけて来た。

「どうしてわかったの? 魔物が封印されてるって」

「んー……負の感情の中にね。別の感情――ううん、声が聞こえたの」

「声?」

 

 

 

「助けてって……聞こえたの」

 

 

 

 そう言って私は意識を手放した。

 




次回は八幡サイドと今回のお話の続き……にしたいです。


次回であの子が襲来します。さぁ、ギャグの時間だッ!

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