やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。 作:ホッシー@VTuber
LEVEL.56、57の裏――恵視点です。
なお、来週――というか明日からテスト期間なので来週の更新はないかもしれません。ご了承ください。
修学旅行以来――と言っても、1~2日しか経っていないけれど、サイちゃんからメールが届かない、とティオが不安そうな表情を浮かべながら教えてくれた。ティオがメールを送っても返信がないらしい。今までメールの返信を欠かしたことのないサイちゃんだ。何かあったのだとすぐにわかった。
(だからと言っていきなり押しかけるのは……迷惑かな)
しかし、ハイルと戦った時に起きたサイちゃんの変化。あれを見た時、私は思わず、恐怖してしまった。別に変化したサイちゃんが怖かったわけではない。私が怖かったのは……あの変化によってサイちゃん自身が傷つくことだった。その証拠に正気に戻った彼女は自殺しようとした。何とか新しい呪文を発現させて事なきを得たけれど今後、あんな都合よく新呪文が発現するとは限らない。
私は自分の目でサイちゃんと八幡君の元気な姿を見たかった。安心したかった。だから、夕焼けに染まる住宅街を歩いている。ティオも連れて来たかったが、私たちの家と八幡君の家は離れているため、ティオを迎えに行ってから彼の家に向かえば夜になってしまう。なので、ティオには悪いけれど清磨君の家で待って貰っている。まぁ、清磨君たちに迷惑をかけてしまっているけれど、事情を説明したら清磨君にも様子を見に行くようにお願いされてしまった。やはり、清磨君から見てもサイちゃんと八幡君はどこか不安定に見えるらしい。
「……」
やっとと言うべきか、とうとうと言うべきか。私は八幡君の家に着いた。少しだけ緊張する。2回ほど深呼吸してインターホンを押すために手を伸ばした時、ふと思った。
(あれ、何で私、緊張してるの?)
ただ様子を見に来ただけなのに過剰に緊張していることに気付いた。いや、過剰というよりも緊張することがおかしい。私たちは仲間だ。修学旅行でも一緒に戦ったし、2日目(八幡君からしたら3日目)には少しの間だけ京都を歩いた。その時、ちょっとしたアクシデントで手を――。
「ッ……」
ブンブンと頭を振って思い出した光景を消す。今は関係ない。そう、関係ないのだ。とにかく早くインターホンを押さないと。しかし、伸ばしかけた手は空中で止まり、先に進まない。意識すればするほど体は硬直し、鼓動が早くなる。今日は出直した方がいいかもしれない。この状態で八幡君と会ったら変なことを言いそうだ。
(って、変なことって何よ……)
駄目だ、混乱している。1つだけため息を吐き、インターホンを押さずに踵を返して帰ろうとした。
「あれ、メグちゃん?」
その声で顔を上げると私を見上げているサイちゃんがいた。どうやら、サイちゃんも今まで出かけていたようだ。
「さ、サイちゃん、こんにちは」
「こんにちは……って言ってもそろそろこんばんはの時間だけどね。今日はどうしたの?」
首を傾げて聞いて来るサイちゃん。見た感じではいつものサイちゃんだ。だが、彼女は隠し事が上手い。見た目で判断してもあまり意味はないだろう。
「ティオが心配してたの。メールが返って来ないって。だから様子を見に来たの」
「あー……ゴメンね。ちょっと色々あって返信できなかった」
やはり、何かあったらしい。サイちゃんは少しだけ顔を歪めている。
「……よかったら、聞かせてくれる?」
「……ううん。これは私の問題だから。せっかく来て貰ったのに、ゴメンね」
そう言って私の横を通り過ぎ、玄関の扉を開けようとドアノブを握り――動きを止めた。
「あ、あれ……」
「どうしたの?」
明らかに動揺しているサイちゃんに質問する。鍵がかかっていることが変なのだろうか。
「だって……奉仕部はなくなったのに、ハチマンが帰って来てないっておかしいなって」
「奉仕部が、なくなった?」
聞き捨てならない単語が出て来た。
「あ」
自分の失言に気付いたのか彼女は小さく声を漏らし、急いで合鍵で玄関の鍵を開けて家に中に逃げようとする。それを扉の隙間に足を挟んで阻止した。
「サイちゃん! 今のはさすがに無視できないわ!」
「こ、言葉の綾だよ! 今日は奉仕部の活動がないって意味だよ!」
叫びながら何とか閉めようとぐいぐいと扉を引くサイちゃん。ちょっと痛い。でも、今はそんなこと気にしていられない。
「なくなったって過去形だったのは? 普通なら『奉仕部はない』って言うんじゃない?」
「うぐっ……」
私の指摘に言葉を詰まらせた。もう少し。
「お願い、サイちゃん……話を聞かせて? 話すだけでも楽になると思うわ」
「……」
「奉仕部がなくなったって話が本当なら……あのハイルとの戦いも関係あるんでしょ? なら、私たちも無関係じゃないと思うの。もし、私たちにも原因があるなら一緒に解決したい。だから!」
自分でもわかるほど手が震えていた。ハイル戦で私たちはサイちゃんを守り切ることができなかった。それどころか足を引っ張っていたと思う。『マ・セシルド』ですら防げなかったあの鎖の呪文に対して数秒間、耐えられたのは八幡君の指示があったからだ。もし、彼がいなければ私たちは今頃――。
守ると誓っておきながらサイちゃんは両手を失くし、八幡君が所属する奉仕部はなくなった。何も、守れていない。だから、私たちは少しでも彼女たちの力になりたい。私たちにできることは少ないけれど、その少ないことで彼女たちの役に立てるのなら本望だ。
「……もう。メグちゃんはしつこいなー」
ジッと私の目を見ていたサイちゃんは苦笑いを浮かべながら扉を開けてくれた。よかった。話してくれるみたい。
「でも」
安堵のため息を吐いた後、八幡君の家に入ろうとしたら真っ直ぐ私の目を見ながら彼女は告げる。
「聞いて気分のいい話じゃないよ。特に……私がしたことに関しては」
それから八幡君の家の居間で修学旅行中に起きたことを話してくれた。ハイル戦のせいで雪ノ下さんが八幡君たちを怖がるようになってしまったこと。依頼を達成するために告白を邪魔したこと。八幡君を守るために雪ノ下さんと由比ヶ浜さんに酷いことを言ったこと。そして――。
「……サイちゃんが、八幡君に負けた?」
――私たちが出会った魔物の中で一番の戦闘力を持つサイちゃんが八幡君に負けたこと。それを聞いた時は思わず、コーヒー(サイちゃんが淹れてくれた)の入ったカップを落としそうになってしまった。魔物は人間よりはるかに強い。それはどんな魔物にも言えるだろう。八幡君がサイちゃんに手ほどきを受けているのは聞いていたから八幡君も人間としてはかなり強い部類に入る。それこそ私がマリル王女と間違われて殺し屋に襲われた時に見せてくれたあの戦いなどとてもかっこよ――いえ、すごかった。しかし、八幡君の強さはあくまでも『人間の中では』と前に付く。それなのに、八幡君はサイちゃんに勝ってしまった。
「あ、勘違いしないでね? 負けたって言っても本気で戦って負けたわけじゃないから」
「そ、そうよね……さすがに手を抜いてたよね」
「手は抜いてないよ。ただルールがあっただけ。一発当てた方の勝ちって言うね」
いや、そのルールがあっても八幡君が勝つ要素などどこにもないのだが。そう思っていたが、すぐに思い当たる。もしかしたら、八幡君が強くなったのではなく、“サイちゃんが弱くなった”のではないのだろうか。
「あはは……多分、そうだと思う」
それを言うと彼女も気付いていたのか乾いた笑いを漏らしてカップを傾けた。
「うん、そうだよ。私が弱くなったの。自分でもわかるほど戦いに集中出来てなかったし、踏みこみも甘かった。何より、ハチマンの顔を見るのが辛かった」
「八幡君の、顔?」
「私が負けた時、ハチマンね。すごく……無表情だったの。喜びもしなければ悲しみもしない。私に勝ったのは当たり前だって言うように。その証拠に夜の訓練を少しの間、なしにしようって提案して来た。今の私と戦っても意味がないって。この先も俺が勝つって」
『まぁ、一発当てのルールがなかったら自爆覚悟で突っ込んで気絶させられるんだけどね』と締めくくったサイちゃん。その顔には自虐的な笑みが浮かんでいた。
「……そう、だったの」
私が予想していたよりも深刻な状況に少し前の自分を殴ってやりたくなった。話を聞けば何か役に立てると思っていた自分が恥ずかしい。
「サイちゃんはどうしたいの?」
何か私にできることはないか考えるため、彼女に質問する。
「んー……とりあえず、ハチマンが失望しないように前の状態まで戻したいかなー。だから、今までいつもの場所で自主練してたの。結果は散々だったけどね」
「いや、そうじゃなくて……奉仕部のこと」
「もう私には関係ないよ。あ、コーヒーのおかわり、淹れて来るね」
そう言って逃げるようにカップを持ってキッチンに向かうサイちゃん。
「……」
それを見た私はすぐに察した。今の問題で最も深刻なのは――サイちゃんが“自分の気持ち”に気付いていないことだ。しかし、それを私が教えても彼女はすぐに否定するだろう。余計ややこしいことになるのは明白。なら、自分で気付くまで見守るしかない。きっと、その点に関しては八幡君が考えているのだろう。
(八幡君……)
大丈夫。きっと、彼なら解決できる。サイちゃんが自殺しようとした時、常に冷静――と言うよりは冷めている彼が感情を露わにして叫んだのだから。
「はい、どうぞ」
「うん、ありがと」
サイちゃんからカップを受け取って少しだけ口に含んだ。
「メグちゃん?」
「ん? 何?」
「いや……もう少し暗い顔するって思ってたから少し意外で」
「そ、そう? これでも結構、落ち込んでるつもりなんだけど……」
事実、雪ノ下さんが八幡君たちを怖がるようになったと聞いた時は落ち込んだ。魔物について説明したのは私だ。あの時、もう少し言葉を選んでいれば彼女が彼らを怖がることはなかったかもしれないのだから。
「んー? ま、いっか。それにしてもハチマン、遅いね。せっかくメグちゃんが来てくれたのに」
「そう言えばそうだね。もうとっくに帰って来てもいい時間なのに」
サイちゃんが雪ノ下さんと由比ヶ浜さんの心を粉々に砕いたので奉仕部の活動があるとは思えない。なら、八幡君は真っ直ぐ家に帰って来るはずだ。それなのにこんなに遅いとなると――。
「もしかしたら、八幡君だけで奉仕部の活動してる、とか?」
「ッ!? それだあああああああ!」
思い付いた仮説を述べるとサイちゃんは立ち上がって叫んだ。しかし、言った本人である私はあまり信じられなかった。
「でも、八幡君よ? 彼に限ってそんなことは……」
「メグちゃんがハチマンを知り尽くしてることに関してはすごく嬉しいけどそれしか考えられない! ああ、こんな時、携帯があれば!」
確かに携帯があればすぐに連絡できるし、ティオにも持たせてあげれば一々、私たちの携帯を貸さずに済む。一度、八幡君と話し合ってみようかな。
「メグちゃん!」
「は、はい!」
思いに耽っているといきなりサイちゃんに名前を呼ばれて声が裏返ってしまった。
「行くよ!」
「い、行くって……どこに?」
「ハチマンの学校!」
「え、ええ?」
混乱している私の手を引っ張って立ち上がらせた後、私たち(私はサイちゃんに引っ張られながら)は玄関を飛び出した。
「さ、サイちゃん……ちょっと、待って」
八幡君が通う総武高校に着いた頃、私は肩で息をしていた。これでも一端のアイドルなので体力はある方だが、さすがに八幡君の家からここまで全速力ではなくても走りっぱなしは辛い。
「メグちゃん、急いで!」
「そう言われても……さすがに私が勝手に入るのはまずいんじゃ?」
「それは後で私が何とかするし、玄関から入らなきゃばれないよ!」
玄関から入らずにどうやって校舎に入るのだろうか。そう思っていると動かない私を見かねたのかサイちゃんは私に背中を向ける。これは私を負んぶするつもりなのだろうか。
「い、いや……さすがに負んぶは」
「どうせ後で負んぶすることになるから大丈夫!」
その台詞を聞いた時点で嫌な予感はしていた。だから少し抵抗したし、止めるように説得もした。まぁ、その全てが無駄に終わってしまったけれど。
「あ、メグちゃん。ハチマンにメール、送っておいて。窓開けてって」
「……」
サイちゃんのお願いに私は何も言わなかった。いや、言えなかった。今、私たちは“校舎の壁”を登っているのだから。正確には私をサイちゃんが負ぶって登っていた。
(は、八幡君、助けてっ……)
ブルブルと震えながら心の中で目の腐った彼に助けを求める。しかし、助けは来ない。
「早く送らないと開けて貰うまで壁にぶら下がってることになるけどいいの?」
それを聞いた瞬間、私は震える手でぶっきらぼうなメールを八幡君に送っていた。すると、すぐに私たちが目指している教室の窓が開く。やはり、八幡君は独りで奉仕部の活動をしていたようだ。
「よっと」
窓枠に手をかけてそのまま、教室の窓から中に入るサイちゃん。自然と彼女に背負われた私も教室に入ることになる。教室の中には目を大きく見開いている女の子二人と顔を引き攣らせている八幡君の姿。まぁ、窓から人1人を背負った女の子が入って来たらそのような反応をしてもおかしくない。むしろ、平然としていた方がおかしい。
「は、八幡君、こんにちは」
「お、おう」
とりあえず、靴を脱ごう。サイちゃんも同じことを思ったのかほぼ同時に靴を脱ぎ、教室の床に足を乗せた。
「全く……帰りが遅いと思ってメグちゃんと一緒に様子を見に来てみれば……ハチマン、何してるのかな?」
「べ、別に? 何もしてないけどー?」
サイちゃんの質問に目を逸らす八幡君。
「ギルティ」
そして、それを聞いたサイちゃんは有罪判決を言い渡した。とりあえず、八幡君の後ろで呆けている2人に色々説明しないといけないと思うのは私だけだろうか。
「さ、サイちゃん?」
すると、女の子の1人がサイちゃんに話しかけた。どうやら、知り合いらしい。そう言えば、私も見覚えがある。総武高校の文化祭が終わった後、帰ろうとした八幡君を呼びとめて感謝と謝罪の言葉を述べた子だ。確か生徒会長だったから先輩のはず。
「メグリ、今は黙ってて。ハチマンに色々聞かなきゃ駄目だから。さぁ、ハチマン? 答えてくれるよね?」
チラリと横目でサイちゃんを見るとニコニコと笑っていた。それに対して八幡君は肩を落としている。まるで、警察官に連れて行かれる逮捕された人のようだった。
「あ、あの!」
その時、めぐり先輩(サイちゃんのおかげで名前がわかった)の隣にいた女の子がおそるおそる手を挙げる。全員の視線が彼女に集まった。
「もしかして、先輩の妹さんですか? 初めまして、私一色いろはって言います」
「……サイ」
一色さんに対して不機嫌そうに自分の名前を教えるサイちゃん。
「さ、サイちゃんって言うんだー。実は、今まで先輩に色々相談しててちょっと長くなっちゃったの!」
「ふーん」
適当なサイちゃんの返答に一色さんは少しだけ顔を引き攣らせた。しかし、彼女は話すのを止めない。
「っ……で、でね? ちょっと遅くなっちゃったから相談の続きは別の場所でやろうって話なって! だから、もう少しだけお兄さんを借りてもいいかなー?」
「嫌だ。あと、その話し方、面倒だから普通にしていいよ」
「ふ、普通? これが私の普通の話し方――」
「――そもそもハチマンがその誘いの乗るはずがない。きっと、強引に連れて行こうとしたんでしょ? それってあまり褒められるようなことじゃないと思うんだけど、どうなのかな? お姉さん?」
あれ、サイちゃん。結構、本気でイライラしている?
「い、いやー……でも、ちょっと急ぎの用事と言うか。早めに決めておいた方がいいことだから」
「……なら、ハチマンの携帯番号を聞けばいいでしょ。SNSを使えばメグリと3人で話し合いもできるからそっちの方が楽だと思うよ? 後、どんな相談だったのかは知らないけど……ハチマンとメグリの顔を見ればとりあえず、危機は脱したってわかるから」
「……せ、せんぱーい! 何なんですか、この子ー!」
「とりあえず、サイに立てついたお前が悪い」
涙目になった八幡君に助けを求める一色さんだったが八幡君にも適当にあしらわれて結局、めぐり先輩に泣きついていた。
「サイちゃん、もうそれぐらいにしてあげて。八幡君の話は家で聞けばいいんじゃない? ここだと話せないこともあるし」
「……わかった。ハチマン、帰ろ?」
不服そうにしながらも頷いてくれたサイちゃんは八幡君の手を握った。私は八幡君の鞄を持って一緒に教室を出ようとする。
「ああ。そういう事なので俺たちはこれで」
「ちょっと待ってください!」
しかし、それを止めたのはまた一色さんだった。
「サイちゃんの正体はともかく、どうしてメグちゃんもいるんですか……というより、家って!? 家ってどういうことですか!? 先輩とメグちゃんってどんな関係なんですか!」
「わ、私たちの、関係?」
仲間。そう、私たちは仲間だ。言い訳は前、八幡君がしてくれたように『アイドル活動について相談に乗って貰っている』と言えばいい。だから、今ははっきりと仲間と言える。それなのに――。
「……」
――何故か、口を閉ざしてしまった。仲間という言葉を使うのを躊躇ってしまった。いや、違う。少しだけ嫌だった。理由はわからないけれど、私と八幡君の関係を仲間という言葉だけで括りたくなかった。
だからだろうか。思わず、私は八幡君の顔を見てしまう。何も言わない私を不思議に思っているのか彼は特徴的な目を私に向けていた。自然と目が合い、何となく逸らしてしまう。
「え……そういうことなんですか? まさか付き合って!?」
「へっ!?」
それを見て勘違いしてしまった一色さんの言葉を聞いて顔が熱くなるのを感じた。私と八幡君がこ、恋人だなんて。私はともかく、彼はそう言うのにあまり興味はなさそうだし、あまり人を信じることのできない彼にとって恋人を作るというのは相当な覚悟が必要なことだ。それなのにそんな勘違いをされてしまっては迷惑に思うだろう。
「ちげーよ。サイの友達の保護者なんだよ」
私の予想通り、八幡君はため息交じりにそう言った。しかし、まだ私たちの仲を疑っているのかジト目でこちらを見つめる一色さん。
「かなりあやしいですが……サイちゃんの目が怖いのでこの辺にしておきます。先輩、今日は本当にありがとうございました」
サイちゃんに睨まれていたのか少しだけ冷や汗を掻いている彼女は八幡君に向かって頭を下げてお礼を言った。
「おう……まぁ、今後のことはまた今度な」
「はい! わかりました!」
頷いた一色さんの笑顔を見て私はまた八幡君が人を助けたのだとすぐにわかった。
「……」
そして、それを見て顔を曇らせるサイちゃんを見て小さくため息を吐く。
何だか、嫌な予感がする。
次回でやっとこの章が終わる予定です。だらだらと書いてスミマセン。