やはり俺の魔物の王を決める戦いは間違っている。   作:ホッシー@VTuber

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LEVEL.100 戦いは終わり、彼らは拳を握る

「悪いわね。私たちはあなたたちのように数じゃないの……1+1が4にも10にもなる。本当の仲間なのよ。ね、ガッシュ、清麿、サイ」

 雷龍がパティたちを襲い砂煙が舞う中、ティオが私たちに問いかけた。それに対し、キヨマロはすぐには答えず目元を袖で拭う。もしかしたら泣いているのかもしれない。

「……ああ。ありがとう、皆。八幡さんにも聞かなきゃならないけど……一緒に戦いたい。全てを操ってる悪を……ロードを倒したい」

「でも、その前にあれをどうにかした方がいいんじゃない?」

 私はそう言いながら砂煙の向こうにいるパティたちを指さした。煙の向こうに感じる魔力の数は2つ。パティのパートナーはここにはいないので消えることはない。つまり、千年前の魔物のどちらかが消えたということになる。この魔力の感じはおそらく――。

「ッ! サイ、魔物は!?」

「2人。パティとエルジョが残ってる」

「ガッシュ、ティオ、追いかけろ! サイは回り込め!」

 キヨマロが指示を出すとガッシュとティオが砂煙に向かって突っ込んで行った。私の右側の塀の上に飛び乗って駆け出す。ガッシュとティオが突っ込んで来ていることに気付いたパティは慌ててエルジョに撤退の指示を飛ばし後退し始めた。

「捕まえろ! 黒幕を……ロードの居場所を吐かせるんだ!」

「そうは、いかないわよ! バディオォオオオス!」

「キヨマロ、上空に魔力反応!」

 パティが上に向かって叫ぶと上空から鳥型の魔物が彼女たちに向かって急降下する。それを見たガッシュとティオは速度を上げて飛び付くが寸前でバディオスがパティたちを拾い、ガッシュたちが顔面から地面に突っ込むことになってしまった。『サフェイル』があれば追いかけられるが今はハチマンがいないので仕方なく足を止める。

「お、覚えてらっしゃい! この仕返しは必ず――」

「ロードは何者なのだあああああ!」

「うええええええん! 早く、早くもっと上にいいいいい!!」

「ピイイイイイイイイイ!」

 ガッシュがジャンプしてバディオスを捕まえようとするがさすがに届かなかったようで手足をバタバタさせながら墜落した。

「いい気になるのも今のうちよ! 私たちにはもっともっと強い魔物が山ほどいるんだからああああ!」

 バディオスに乗ったパティが強がりを言いながら飛び去って行く。ガッシュがジャンプして迫ったのが怖かったのか声は震えていた。

「く……逃げられたか」

「う……ぐ……」

「ッ!? 清麿君、あれ! 本の持ち主にされてた人たち!」

 飛び去って行くパティたちを悔しそうに眺めていたキヨマロにメグちゃんが叫んだ。この中で一番パートナーにされていた人たちに近かった私はすぐに彼らの元へ急ぎ、容態を確認する。多少傷はあるものの大怪我は負っていないし、意識も取り戻しそうだ。

「サイ、どうだ?」

 安堵のため息を吐いていると清磨とメグちゃんが駆け寄って来た。ガッシュたちもこちらに向かっている。

「すぐに意識を取り戻すと思うよ。傷も浅いから救急車は呼ばなくていいかな」

「そうか……よかった」

「うっ……ここ、は?」

 キヨマロたちに報告しているとドグモスのパートナーだったヒゲの男性が意識を取り戻し、体を起こした。

「日本……です」

「日本!? なんで日本に!? オレは一体何を……」

 男性は不思議そうに自分の手の平を眺めている。ヒゲの男性やその隣に座っているスーツの男性から先ほどまで悪意に染まっていた気配が消え失せていた。魔本を燃やされたおかげで洗脳が解けたのかもしれない。

「お、お前たち……」

 そんなことを思っていると不意にヒゲの男性がキヨマロを見ながら声を震わせた。キヨマロも見つめられて戸惑っている。

「ボロボロじゃないか……誰がこんな酷いことを……」

「「……」」

 彼の言葉を聞いてキヨマロとメグちゃんは言葉を失った。ヒゲの男性だって無傷ではない。痛みだってあるだろう。それなのに自分のことよりもキヨマロの体を心配した。なんて優しい男性なのだろうか。そして、そんな優しい男性を――。

「そ、そうだ! 今日は何日だ!? 娘の誕生日だったんだ!」

 スーツの男性が慌てた様子でジャケットの内ポケットに手を突っ込みながら質問して来る。そして、ポケットの中にあった物を取り出した。

「やっと仕事の休みがとれたんだ。それでプレゼントを……プレ、ゼント……を」

 だが、ポケットから出て来たプレゼントである蝶々のアクセサリーはボロボロになっていた。あれだけ激しい戦闘を繰り広げたのだ。壊れてしまうのも当たり前である。

「……メグちゃん、2人をどこかで休ませてあげて。きっと疲れてるはずだから」

「ええ……」

 ロードに対する怒りで震えているキヨマロの代わりにメグちゃんに言うと彼女は男性2人を連れて歩き出した。彼らの背中を眺めていると唐突にキヨマロが地面を殴る。

「くそぉ! ロードめ、よくもこんな惨いことを!! 心を操るだと? 平気で関係ない人たちを戦いに巻き込むだと!? 正体を現しやがれ……千年前の魔物に戦わせないで姿を現しやがれ! 必ず倒してやる……その顔を思いっきりぶん殴ってやる!!」

「キヨマロ、落ち着いて」

「サイ、お前はあいつらを――ッ!」

 宥めようとした私を見たキヨマロは目を見開く。ガッシュもティオも私を見て唖然としていた。

「許せないのもわかる。殴ってやりたいのもわかる。でも、今はそいつの情報を集める方が先決。怒るのはそいつと対面した時でしょ」

 そう言いながらキヨマロの肩に手を置こうとしてすぐに止めた。そんな私を見ていた彼は頭を振った後、頬を軽く叩く。

「……ああ、すまん。取り乱した」

「ううん、気にしないで。それじゃ私、ハチマンに電話掛けて来るね」

 そう言って私はメグちゃんたちが向かった方とは逆の方向へ歩き出す。とりあえずどこかで手を洗わないと。せっかく買った携帯が私の血で汚れてしまうから。

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 去っていくサイを俺は黙って眺めていた。いや、黙って眺めているしかなかった。

「清麿……大丈夫?」

 その時、ティオが心配そうに俺に問いかけて来る。正直言って大丈夫ではなかった。ロードに対する怒りに我を忘れていたが俺を宥めようとしたサイを見た瞬間、すぐに正気に戻るほど背筋が凍りついたのである。

「あ、ああ……大丈夫だ」

「しかし、震えているのだ……」

「……」

 ガッシュの指摘に思わず、言葉を噤んでしまう。今まで何体もの魔物と戦って来たし、その度に殺気を向けられて来た。だからこそ千年前の魔物たちの殺気にも怯えずに戦うことはできた。だが、サイの殺気は今まで出会って来た魔物たちとは別次元だった。俺に対する殺気ではなかったのにもかかわらず。もし、あの殺気を向けられたら俺は怯えずに戦うことはできるのだろうか。

「とにかく俺たちもそろそろ移動しよう。騒ぎを聞いて様子を見に来る人がいるかもしれない」

「それに手当もしなきゃ……清麿とガッシュと、サイの」

 ティオの言葉を聞いてサイが歩いて行った方を見る。その地面にはところどころ血が付いていた。彼女は強く手を握ったせいで自分の掌を傷つけてしまったのだ。

「携帯は恵とサイしか持ってないからどっちかと合流しないと」

「そうだな……あの人たちのこともある。まずは恵さんと合流しよう。それにサイならガッシュとティオの魔力を感知できるから大丈夫だろう」

 きっとハチマンさんに報告しているはずだから長くなるだろう。その間にサイに言われたように少しでも情報を集めなければ。

 立ち上がった俺はガッシュとティオを連れて恵さんたちのいる方向へ歩き出す。その途中で俺は後ろを振り返った。すでにサイの姿はない。それが俺を不安にさせる。理由はわからなかった。









今週の一言二言


・私の投稿している朗読動画が一応完結したので一挙放送してみました。
午前10時から初めて途中で2回、1~2時間ほど休憩入れました。
朝の4時まで見ましたが見終わりませんでした……おかしいなぁ、13時間ほどだったから午前10時から始めれば十分見終わるはずだったのに。


・福袋はライダー引きました。ケツァルコアトルさん来てくれました。
そんなことより早くエルシュキガルさん実装しませんかね?あの子めっちゃ欲しいんですけど……はよ、はよ!!

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