違約・女神転生 A-DDS(Another Digital Devil Story) 作:mimimimi
真っ白な壁に叩きつけられた肉片。
清潔だった廊下にぶち撒けられた紅い華。
死を恐れ、苦しみから逃れたいと願う生者の寄辺。
“主”の定めし理に逆らい、蛇に授けられた“恥”を“知”に昇華し、“治”と為した賢者の末裔の集いし館。
新宿衛生病院は、現し世に顕界した地獄と成った。
死と生の境界は破れ、死者が蠢き、生者に害を為す魔窟と成り果てた。
狂った摂理を前に人々は、神に祈り、救いを願い、許しを乞うことくらいしか出来やしない。
―――“人”とは無力である。
塵も積もれば山となるが……それで出来上がるのは、ゴミ山でしかない。
されど、ゴミの山に埋もれたモノ全てが無価値であるとは限らない。
磨けば光る原石や、価値のわからぬ愚者に捨てられたモノ。
そして、時代に合わなかったが故に、排斥されたモノも含まれる。
“理”が変容したのなら……モノの価値もまた変容する。
時代の変わり目、現在が過去と成り、未来が現在と成ろうとする特異点。
必然的に彼らは出会い、流れる時に歴史が刻まれる。
仕組まれた出会い?
―――否。
予定は未定であり、決定ではない。
未来は常に想定であり、当たるか外れるかは、その瞬間に成らねば分からない。
それは、
―――故に
想定は推定であり、机上の空論と変わらない。
現に、少女の立てた
想定した未来は、落としたリンゴが、地面に落ちるくらい確実性の高い
投げたボールが、分子の間を抜いて壁をすり抜けるような希少過ぎる悲運の結果であろうと……少女は挫けない。
計画が破綻したなら、次善の策を進めれば良い。
再起の芽があるなら、計画を修正して続ければ良い。
この世に“絶対”など無い……と、少女は信じている。
唯一無二の存在など、珍しいものでは無い……と、少女は知っている。
―――故に少女の
感情の読み取れない冷めた目で、少女は彼らを観る。
荘厳な金色の髪の毛が揺れる。
少女の病的な、それでいて可憐な白い肌と、質素な服がそれを引き立てる。
見目麗しい少女は、立ち上がることもなく。車椅子に座ったまま、偶然とも必然とも言えぬ邂逅を果たした彼らを視ていた。
見られている彼らは、それに気づくことは出来無い。
―――否。たとえ気がついたとしても無意味だ。
なぜならば、
「ウィリー! 焼き払え!」
「おっまかせー! アギっ!」
悪魔使いの少年の指示に従い、電子と因子で結ばれた悪魔。妖精“ウィリー”が火球を放つ。
悲恋から化けて出るほど、仄暗い情念を燃やして生まれ。
生前の恨みを込め、放たれた火の固まりは、生者に群がる死に損ないの一体を囚え、指示通りに焼き払う。
「イケイケー! ヤッちゃえ~!」
「……なんでこんなことに……うぉおお!」
患者は患者でも、すでに手遅れとなったゾンビたちで溢れた病院に、若者たちの声が響く。
それは嘆きでもなく、絶望の怨嗟でもなく、抗う意思を示す鬨の声であった。
安全地帯から無責任に煽るピクシーの声援を受けて、裸ジャケットの少年がゾンビに、無謀な体当たりを仕掛ける。
大人と子供。ぶつかり合えばモノを言うのは体重差。大人と幼児ほどの差はなくとも……体格差は大きい。
故にそれが体当たりであれば、無謀としかいえない。
されど、それが“突進”と称される“特技”であるなら話は変わる。
体表に刻まれた人修羅の証とも言える線に燐光が灯る。
裂帛の気勢とともに繰り出された体当たりは、ゾンビの一体を囚え、爆砕する。
瞬く間に2体のゾンビ……屍鬼が倒されるが、事態は変わらない。
抜けた歯を埋めるように、ゾンビは後から後から湧いて出てくるからだ。
「私を助けて……ペルソナー!
―――マハコウハっ!
しかして、それも潮目が替わる。
ペルソナ使いの少女が、己が内と外に呼びかける。
応え、いでたる悪魔は、異装を纏いし女神“マソ”
少女に重なり、害意から少女を覆い隠すがごとく現れた女神は、女神と称されるに相応しい光を放つ。
放たれた光輝は、屍鬼ゾンビの集団を飲み込み、蹂躙する。
されど、
少女の不安定な心が、弱点を付いたにも関わらず、ペルソナの真価を阻害したのだ……。
有り体に言えば、経験不足の火力不足。
もう一人のワタシとの、実戦経験の差が現れる。
故に深手は負わせても、殲滅には至らない。
これはある意味致命的だった。
屍鬼は痛みでは止まらない。
手足が千切れ落ちるも厭わずに、少年少女に襲いかかる。
「雷精来々……ジオマっ!」
そう、致命的……
間隙を縫うように、少女の足りない力を補うように、魔女はするりと割り込んで雷光を放つ。
放電された電気は、数体のゾンビを包み込み、その仮初の生命に終止符を打つ。
―――だが、足りない。
巻き込んだのは僅か数体。
巻き飲めたのは、半数以下。
魔女は軽く舌打ちをする。
「はっ! 仕留めるなら、きちんと仕留めろッ!!」
舌打ちに応えたのは、苦情だけではない。
GUNP'Swordを下段に構え、残るゾンビの集団に飛び込んだ青年は、勢いのまま、刀を振るう。
振り回された刃の暴風圏内にいるゾンビが切り伏せられ、敷かれた包囲網は瓦解する。
「あぶなっ!?」
「チッ……安心しな、
「うぉいい!? じゃあ、その舌打ちはなんだよ!」
「気のせいだ、気にするな……気にすると更にハゲるぞ?」
「ハゲてないから! ハゲる予定もないよー!?」
羅刹龍転斬り。
赤口葛葉・三ノ型。クルリとその場で回って周囲をなぎ払う、ただそれだけの技。
されどそれが“技”であり“業”であるならば、ただ刀を振り回すのとは大きく異る。
“特技”とまで昇華された業は、物理法則をねじ伏せ、乱戦混戦であろうと“敵”のみを斬り伏せる。
だから青年は、効果範囲に人修羅がいたにもかかわらず、戸惑うこと無く業を放ったのだ。
その結果は明白、数の暴力は、質の暴力によって駆逐された。
こうして、ゾンビの集団は全滅した。
―――最後に放たれた、少女の銃弾に眉間を貫かれ……て。
言い争う二人の背後に、のっそりと起き上がったゾンビの頭が、銃声とともに爆砕する。
「仕留めるなら、きちんと仕留める。
―――いい言葉ですね」
「……ああ、残心ってのは大事さ」
消炎昇る銃口を下ろし、冷めた目線を向ける少女。
それに対し、助けられたにも関わらず、憮然とした態度で返す青年。
GUNPを持つ手とは、逆の手に握られた葛葉謹製の銃の銃口は、脇腹を介して背後を向けられていた。
少女が撃たずとも、最後に残ったゾンビの運命は変わらなかっただろう。
しかし、一手遅れていたのも事実であり。助けられたとまでは言わずとも、フォローされてしまったことに変わりはない。
だから青年は、バツの悪い苦々しい思いを押し殺し、憮然と言葉を続け、周囲に問いかける。
「……で、あんたらは何なんだ?」
それは、全員が共通した思いであり、お互いが抱えた疑問であった。
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PC01「車椅子の男ではなく、少女……だと?」
GM「再誕世界の影響で、スティーブンが幼女化したんじゃないとだけは言っておくよ」
PC06「つまりスティーブンではない誰かが……メガテン恒例のあの方が、幼女化したんですね? わかります」
GM「さて、戦闘なんで、まずは隊列の決定から始めるよ。前衛3後衛3援護2が基本ね」
PC02「あ、スルーした」
PC01「まいいや、えと……悪魔使いと、人修羅とライドウが前衛か?」
PC04「ああ、それで帰還者とペルソナ使いと魔女が後衛」
PC03「仲魔のウィリーとピクシーが応援枠ってとこ?」
PC05「ウィリーと悪魔使いの配置は入れ替えた方が良くない?」
PC01「それじゃ意味が無い。援護枠からだと、応援されることは出来ても、応援することは出来無いからな」
PC05「つまり、攻撃は仲魔任せで、本人は応援のみ……と?」
GM「それ+壁役かな? 悪魔使いは攻撃より、防御高めだし悪くない選択だよ」
PC01「下手に銃や剣で殴るより、相性的に火炎魔法の方が有効だからしょうがない」
PC06「有効な攻撃手段がないこっちよりマシ……うん、オルトロス呼ぼう!」
PC04「無駄使いすぎるからヤメレ」
PC01「本当ならピクシーより、ウコバクの方が有利なんだけど」
PC03「枠が足りないし、ウコバクのMPは大技用にとっておきたいから、今回はパスでいいよ」
GM「まあ、手始めのチュートリアル的バトルなんで、余程の事がない限り全滅はないから、好きにどうぞ」
PC05「全滅はないけど、脱落者は出る可能性あり?」
GM「それは
注:“援護枠”攻撃や補助魔法などの対象にならないが、自発的な行動も取れない。例外的に“応援”を受けた場合のみ行動可能。
:“応援”1行動使い、未行動状態の他者に、1行動分与える。対象はその行動を即座に行え、それによって行動済になることは無い。
つまり、援護枠は、手数は変わらないけど、手札を増やす意味では有効となる。
(特に、攻撃力は高いけど、防御が弱いタイプは援護枠に置く方が有利)
ちなみに敵側に、援護枠は原則的に無く。代わりに、前衛や後衛の数に制限もない。
ただし、前後合わせて、総数は8体までなので、条件は、pcとある意味対等となる。