違約・女神転生 A-DDS(Another Digital Devil Story)   作:mimimimi

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<踊る少女と躍る少女>

<踊る少女と躍る少女>

 

 「……」

 

 少女は息を呑み込み、目を伏せ短く黙祷を捧げる。

 

 脳裏に横切るのは、数分前の自分と彼女の姿。

 

 足元に横たわる無残な姿と成り果てた看護婦と、過去の自分が重なる。

 

 ……否。

 

 “ワタシ”は生きている。

 

 死んだような目をしていたけど……それでも生きていた。

 

 生きていたからこそ……こうして、倒れる彼女の姿が……いくら過去の自分と重なろうと、今も“わたし”は生きている。

 

 「“私”は“園村麻希”……私は! エルミン学園のアイドル王に成る女よっ!」

 

 「「「………んが?」」」

 

 短い黙祷を経て……少女が紡いだ言葉は懺悔や失意ではなく、宣告。

 

 何処かで誰かが、ガタンとバランスを崩した幻聴が響いても、少女は意に介さない。

 

 なぜならコレは、過去の鬱屈や未来への葛藤を断ち切り、バラ色の未来を目指す為の決意表明。

 

 過去は過去

 現在は現在

 

 目指す“未来”は“今”作られる……。

 

 ならば、正しい意味で“覚醒”した少女が選ぶべきは過去ではなく……未来。

 

 故に、少女の“言葉”は、悪意を持って撒かれた“種”を刈り取る……“言の刃”と成る。

 

 少女は不敵に笑い、弓を構え……流れるような動作で矢を放つ。

 

 放たれた矢は、少女の奇行を我関せずと、虚ろな目で見ていた元患者(ゾンビ)の眉間を撃ち抜いた。

 

 「早く、あの咆哮(ハウル)を上げた魔獣? 妖獣? を倒さないと……邪魔っ!」

 

 倒れるゾンビに押され開いた、悍ましい肉壁の隙間をスルリと抜けて病み上がりの少女は走る。

 

 数分前の儚げな姿など、夢幻の如く……駆け抜けた魔獣の痕跡を追って、院内を疾駆する姿は元気そのもの。

 

 

 

 そして、現場に駆けつけた少女が観たのは……五芒星の光りに飲まれ、消えた魔獣の姿だった。

 

 「……あれ? 私の出番は? ……あれれ?」

 

 「……壊前の……東京?」

 

 未曾有の危機に、“力”に覚醒した少女と、倒すべき敵役。

 英雄譚の出だしに相応しいと、テンションが上がっていた少女は弓を構えたまま……困惑する。

 

 本音とも道化を演じてるとも取れる少女の言は宙に消え。

 正真正銘、困惑する女の戸惑う声だけが響く。

 

 「次元断。時空の穴。空間の揺らぎ。パラドックスに多次元世界論……理論は知っている……でも……。

  それに、オルトロスは呼ばれたと言っていたけど……誰に? 神霊? 魔王?

  

  いいえ、“悪魔”だろうと、強固な概念である“時”に干渉するなんて無理なはず……。

  

  不可思議な“力”は感じた……ソレが関与してる?

  

  でも、だからと言って、こんな簡単に……空間転移ならいざしらず。時間跳躍なんて……非現実的だわ!?」

 

 「お仲間ですか? お仲間ですね!!

  ―――私は、園村麻希! 気軽にマッキーとでも呼んでね!」

  

 「……ディラックの海と事象の地平線。いえ、その理論は破綻して……え?」

 

 「時空の旅人さんですか? すごいです!

  お名前はなんですか?

  ペルソナはなんですか?

  趣味は?

  特技は?

  私の方は、つい最近まで……それどころじゃなかったので無趣味です!

  でも、特技は弓です。不思議ですね~。

  それと、ペルソナは……海原の女神、媽祖《マソ》で~す! 結構、便利なんですよ?」

  

 「………誰?」

 

 「みんなのアイドル(予定)の麻希ちゃんです!」

 

 「偶像(アイドル)? ……ゴーレムか何かなの? あなた……」

 

 「私の頭に、真理なんてありませんよ?」

 

 「……空っぽってことね、了解したわ」

 

 「頭が空っぽの方が、夢を詰め込めるから素敵ですよ~」

 

 「……その夢が、悪夢じゃないと良いわね」

 

 「……えへへ」

 

 「なんで照れるの? 褒めてないわよ!?」

 

 妄言とも戯言とも取れる言葉を軽快に紡ぐ、病み上がり少女。

 それを迷惑そうな顔で聞きながらも、軽口とは言え律儀に返す魔女。

 

 二人の女性の何処かズレた会話が、俄に静まり返った廊下に響いた……。

 

 

 ――――

 ―――

 ――

 

 ************

 

 PC03「王は王でも、エルミン学園限定かよ!?」

 PC04「世界征服の前に、まずは市街制服。エロイ人はそう言いました」

 PC01「色々言いたいが……とりあえず一言。マッキーの愛称は、麻希ちゃんじゃなく、摩耶の方だろ!」

 GM「……だから、異2の時に、まともになってたんじゃないか?」

 PC06「反面教師的な意味ですね? わかります」

 PC02「ボクは、どん底からどん底に墜ちた人が、本気で這い上がるなら、これくらいはっちゃけないとダメだと思う」

 PC01「……もういい」

 PC05「だから、理想のマキちゃんはEDで消えたってことさ」

 GM「一応正史に繋がるように想定してるけど、パラレルはパラレルなんで、気にしたら負け……と言うことで、さあ、話を続けようか!」

 PC03「ようやく合流……ってとこか?」

 PC05「2、2、2のコンビ状態から、合流?」

 GM「そうそう、で、とりあえず、病院のロビーからスタート予定」

 PC04「病院内を宛てなく捜索中、たまたまロビーでバッタリのパターン?」

 GM「ご都合主義と予定調和は、物語の基本。お約束は、守っても破っても美味しいのが利点。使わない理由はないよ」

 PC01「リサーチは?」

 GM「やるよ。ただ舞台裏なんで、描写は無し。得られた情報をどうやって知ったかは、そっちで適当に決めていいよ」

 PC02「情報収集に使えそうなコネもスキルも無い……」

 PC06「私もないよ」

 GM「パーティの内、2~3人が持ってれば問題ないよ」

 PC03「その分、こっちが多めに持ってる」

 PC05「……なんか妙に“特典”多くない?」

 GM「“組織”に所属してるかどうかの差だね、それは」

 PC01「エルメシアなのに、特典ないの?」

 GM「コネと所属は別物。君は所属まではしてないよ」

 PC04「ならば今からでも、日本竹馬連合会に入れば良い」

 GM「会費取られて、所持魔貨:-9枚、ってとこかな? ……入る?」

 PC01「断るっ!」

 

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