違約・女神転生 A-DDS(Another Digital Devil Story)   作:mimimimi

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<闇に生きるモノ~闇に向かうモノ>

<闇に生きるモノ>

 

 「女、誘いを断って正解だったな。

  巫女を引き受けていたら、アンタを先に撃っていたぜ」

  

 「……!?」

 

 「創世の企みを潰すには、要の巫女を排除する方が確実なんでね……。

  まあ、順番が前後しただけだがな」

  

 「も、目撃者は消す……って訳ですか?」

 

 青年の軽い口調に反し、感情を乗せない冷徹な目線が少女を射抜く。

 

 しかし、少女は恐怖に臆しながらも、胡乱げな目線を返してみせた。

 

 「ふうん、裏に足を突っ込んだ以上、覚悟有りって感じか?」

 

 そう言って、青年は何気ない仕草で、まっすぐに目線と、銃を……銃口の無い。コードが繋がれた銃型の何かを少女に向け。

 

 ―――無造作に引き金を引いた。

 

 カシャン

 

 軽い音が響き、銃型の何か……GUNPと呼ばれる携帯端末のモニターが開かれる。

 

 「女、目を逸らさない度胸は認めてやるよ」

 

 「……銃口の無い、モデルガンに怯える趣味はありません」

 

 「観察眼は有り……だが、思慮は足りんな」

 

 リボルバーを持ったまま、器用に指を走らせGUNPのソフトウェアを起動する。

 

 悪魔召喚プログラムの技術が応用され、汎用の“機構”として組み込まれた機能が動き始める。

 

 鈍い光を放ち、まるで柔らかい粘土のようにGUNPの表面が波打、銃把の真上。銃身を束に見立てるように硬質の刃が伸びる。

 

 クズノハ謹製、COMP試作型“GUNP'Sword”

 

 COMP適性……悪魔召喚プログラムが組み込まれた、次世代の退魔師用兵器。

 

 生憎と青年にCOMP適性はなく、悪魔召喚プログラムは使えない。

 だが、ソレ以外の機能は使えるし……何よりも、生来より備わった才覚が青年にはあった。

 

 ライドウの名に相応しい、召喚士としての才である。

 

 「剣……いえ、刀ですか?」

 

 「赤口葛葉。嘘か真か、伝説の十七代目が使ってたってシロモノだ」

 

 魔を封じる器。封魔ノ管が、COMPに代わろうと、才は生きている。

 

 「なんの伝説か知りませんが……武器を抜いて、コレからどうするんですか?」

 

 「GPの変化がオカシイ。数値が異常だ……。

  何かが、起ころうとしてる……むっ? 30を超えただとッ!?」

  

 「ウォォオオオオオンッ!!」

  

 「チッ……計器の故障だと良いんだが……」

 

 「今の化け物じみた咆哮と、関係あるのですか?」

 

 「それを確かめに行くんだよ……って、おい、着いてくる気か?」

 

 「か弱い女の子を、こんな場所に放置するのですか?」

 

 「か弱い女の子は、服の裏に銃を隠し持ったりしてねえよ……急急如律令! 来いウコバク!!」

 

 青年の口から呪が紡がれ、稀有な才は遺憾なく発揮される。

 

 真名の呼びかけに応えたのは、痩躯な子供……と言うより、子鬼と称するべき姿の悪魔であった。

 

 「男は度胸ぉぉ!! 悪魔は酔狂ぉぉっ!!!」

 

 ―――堕天使“ウコバク”

 

 地獄炉の管理の一端を任された蝿の王(ベルゼブブ)の配下で、肩に担いだ大きいなスプーンが特徴。

 

 余談だが、ウコバクが持つスプーンは、首狩りスプーンであり、使いこなせば破格の威力がある。

 ただし、等の本人であるウコバクは、悪魔であるゆえに「道具」の扱いが下手で、使いこなせてはいない。

 斯様に悪魔は、得手して、使えもしない品を、後生大事に抱え込んでいる事が多いのであった。

 

 ちなみに首狩りスプーンが呪われてるのは、下手の横好きでも、愛用の品を奪われたウコバクの怨念が詰まっているからだと言われている。

 

 

 「噂に聞いた悪魔使い……ですか、スゴイですね」

 

 「それほどでもない……って、少し違う。使い(テイマー)じゃなく、召喚士(サモナー)だ」

 

 「???」

 

 「まあ、素人にゃ難しいか……丙のおっさんが味方してるなら、クズノハ(オレ)の敵って事はないな?」

 

 「貴方が何処の誰で、何様かなど存じませんが、安全地帯まで、エスコートしてくださるなら歓迎します」

 

 「……食えねえ女だ」

 

 「下ネタは嫌いです」

 

 「そういう意味じゃねえよ!?」

 

 「……」

 「……」

 

 「いくか」

 「はい」

 

 二人は立ち去り、舞台は変わる、場面も変わる。

 

 ―――倒れた男の生死も替わる。

 

 かくして、所変わり、同時刻。

 

 二人のいる場所からさほど離れて居ないロビー側の廊下を、一匹のケモノと、一人の女が疾走していた。

 

 追われるはケモノ。追うは女。

 

 魔獣と魔女。

 

 立場が確定した追いかけっこは、今、時と世界を超えて、終盤を迎えようとしていた……。

 

 ――――

 ―――

 ――

 

 ************

 

 PC05「で、私が誘いを受けてたら、本当に撃ったの?」

 PC03「むろん」

 PC01「ひでぇww」

 GM「まあそうなっても、イベントシーンだから、判定なしで無効化されるけどね」

 PC03「やっぱ外れるのか?」

 GM「いや、氷川の影に隠れてたバフォメットが防ぐ」

 PC04「え? じゃ、氷川も生きてるのか?」

 GM「んにゃ、バフォメット的には、氷川の命<巫女の命なんで、それは無い」

 PC02「……M字禿可哀想」

 GM「それ、別の意味に聞こえないか?」

 PC03「で、それじゃ氷川は死んだの?」

 GM「セッション中に描写するの忘れてたけど、見た目は完全に死んでたよ、脳漿ぶちまけてたしw」

 PC01「……バフォメット居るし、終わったとは思えない」

 GM「ふふん」

 PC06「おっすおっす、いま、どんな感じよ?」

 GM「やっと戻ってきたか、そいじゃ予定通りサクサクっと終わらせるぞ……導入をw」

 PC02「色んな意味で遅い……」

 

 ************

 

 ――

 ―――

 ――――

 

<闇に向かうモノ>

 

 「スクカジャスクカジャマカカジャ……っと、逃さないわ!」

 

 「グルルルル・・・オレサマ、ヨバレタ。ツヨク、ツヨクヨバレタ。ジャマスルナ!」

 

 「いきなり逃げた言い訳……じゃなさそうね。

  でもまあ、ソッチの都合なんてアタシには関係ないわ……。

  

  ―――テトラグラマトン

  

 「グルル……オレサマタリナイ。チカラ、タリナイ……アバレ、タリナイ……」

  

 「く……抵抗しても無駄よ!

  

  ―――地を這うケモノよ! 恐怖公“***”の名代に服し、私に従え! 魔獣オルトロスっ!!」

 

 近代的な設備の整った新宿衛生病院。

  

 乱入したケモノの凶行に、恐慌をきたし怯え戸惑う人々を後目に、女は“術”を行使する。

  

 ―――ただ殺すだけでは“利”は少ない。

 

 魔女にとって“利”も“理”も等価であり、そもそも、転んでただ立ち上がるだけの女なら、魔女など呼ばれはしない。

 

 手間取らされたのなら……相応の対価は戴かないと割に合わない……そう、魔女は考え、退魔ではなく、封魔の“術”を選び行使した。

 

 魔女の口から紡がれる呪は、言霊に宣って宙を舞い。哀れな魔獣をの真を囚え、囲い込む。

 

 魔獣の四肢を足元から貫くように、五芒星系の光が光条を放つ。

 

 放たれた光は魔法陣を形成し、中に包んだ獲物を飲み込み……唐突に消失する。

 

 光もケモノも居なくなり、にわかに静寂に包まれた病棟の廊下に魔女の足音が響く。

 

 光と消えた場所に歩み寄り、魔女は、唯一残された何かを拾い上げる。

 

 それは、一枚の羊皮紙。

 

 悪魔との契約を交わした誓約書。

 

 甲は魔女

 乙は魔獣

 

 同意を経ずに、強引に結んだ契約の代償は大きい。

 魔女の魔女としてのチカラは大きく損なわれてしまった。

 

 しかして魔女は動じない。

 

 弱体化は痛い。

 だが、こうして強大な魔獣を手に入れた代償なら悪くない。

 

 それに、失ったチカラを取り戻すのに、さほど時間はかからないだろう……そう、魔女は前向きに考える。

 

 楽観的ではあるが……うだうだと悩み、無駄に足を止めれば食われるだけ。

 

 弱肉強食が是となった、荒れた世界を生き抜いた魔女の決断は速い。

 

 しかして、魔女は思う。

 

 ココは何処だろう? ……っと、こんなに清潔で、綺麗な建物なんて、東京に残っていただろうか?

 

 周囲に戸惑う人々も変だ。

 

 どうみても争い事に向きそうになく、武装してるようにも、何かしら術を使えるようにも思えない。

 

 疑問に思った魔女は辺りを見渡し、窓と、その向こうに、見慣れた尖塔がそびえ立つっているのに気づいた。

 

 「タワーの位置からして、結構離れてるけど……まさかココが、噂に聞いたカテドラル?」

 

 メシア教団が計画し、入信のお題目に掲げる楽園の噂。

 

 「いいえ、それにしては聖域っぽくないわ。

  ―――それにタワーもちょっと変な気がするわ…………って、ええっ!?」

  

 窓に近づき、外を観た魔女は気づく。

 

 錆びることもなく、くの字に曲がることもなく、天にまっすぐそびえ立つ、見慣れているはずの、そして、初めて見る東京タワーの凛々しい姿に。

 

 なにより、どんよりとした病院内とは対極的に、澄み渡る……と言えば、都民は苦笑するだろう。

 

 だが、排ガスで霞んだ状況より、さらに酷い。

 死の灰と瘴気に汚染された空しか知らない魔女にとって、目の前に広がる空は、澄み渡る青空と言っても過言ではなかった。

 

 「……まさか、ココは……大破壊前の……東京?」

 

 道路を行き交う見慣れぬ物体……乗用車。

 崩れること無くそびえ立ち、人々を吐いては飲み込む、天に挑むが如き、高層ビルの群。

 

 かくして、魔女は舞い降りた。

 

 廃都となる前。

 しかし、魔都と呼ばれるようになってしまった東京に……。

 

 ――――

 ―――

 ――

 

 ************

 

 PC06「コレ(オルトロスの悪魔カード)、もらって良いの?」

 GM「いいよ。ほぼイベント用の使い捨てだけどね」

 PC01「使う場所は固定?」

 GM「いいや、PCの好きなタイミングで使っていいよ。保険的な意味もあるし」

 PC04「うっかり勝てない敵とバトった時とか?」

 GM「そんな感じ」

 PC03「よし、バフォメット、ボコろう!」

 GM「現時点で倒したければ、そうするしかないけど……いいのか?」

 PC06「だが断る! エリクサーとE缶は、最後までとっておくのがお約束なのですよ」

 PC05「私は、惜しみなく使って、肝心なときに困るタイプだけどね」

 PC03「そんときゃレベルを上げて、物理で殴れば問題ない」

 GM「元ネタとコレじゃシステム違うけど、大きく間違ってはないなw」

 PC01「……で、これで導入終わり?」

 GM「そうそう、時間押してるし、さっさと舞台裏(リサーチフェイズ)終わらせ、速やかに合流しようか」

 PC02「ん……? それじゃマイPCの合流も、オルトロス封印現場を目撃したとこから?」

 GM「そんな感じだけど……ちょうどいい。リサーチ結果を踏まえ、PC02視点から始めようか」

 PC02「了解~仲の良い看護婦さんの安否も気になるし……ちょうどいいね」

 

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