違約・女神転生 A-DDS(Another Digital Devil Story)   作:mimimimi

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<消えたモノ>

<消えたモノ>

 

 「だから!? 祐子先生。高尾祐子って女の人が入院してるはずなんです!!」

 

 「貴方もしつこいですねぇ……。

  何度確認しても、名簿には乗ってないと言っているでしょう?」

 

 普段は静かな……戒厳令発令後は、特に静かな病院のロビーに、言い争う声が響く。

 

 困り顔の看護婦に食って掛かってるのは、ジャケットを着込んだ一人のたくましい少年。

 

 線は細いが、鍛えぬかれた肉体が、素肌に纏ったジャケットの隙間から見え隠れしている。

 

 これで鎖のチョーカーを巻いていたら、どこぞの不良のようだが……少年は、普通の少年だった。

 

 何もしてなければ無害でおとなしそうな顔立ちの少年だが、眼差しは鋭く、言葉こそ丁寧だが、口調は荒々しい。

 

 「なら、新田勇は? ソレと、橘千晶って子も見舞いに来てるはずなんですが? どうですか!」

 

 「ええ……と、はい。新田くんは来てますね。

  ―――橘千晶さんのお見舞いに、来院されています」

  

 「はい?」

 

 「橘さんは先日、事故に合われ救急車で搬送されてきた後、そのまま入院しています

  ―――新田くんも、今、面会中で、一緒にいるはずですよ」

  

 「……どうなってるんだ??」

 

 裸ジャケットの少年は考える。

 

 ―――世界は巻き戻った。

 

 悲劇は、無かったことに成った。

 

 ―――オレ(・・)がそうした。

 

 イサムも死なない。

 チアキも死なない。

 

 センセイは消えない。

 ヒジリも狂ったりしない。

 

 ―――世界は元通り。

 

 かつて世界が終わった、今日のこの日。

 

 今度こそ、祐子先生を止めることができれば……世界は救われる。

 

 みんなといっしょに、退屈だけど平和な日常に戻ることが出来る……はずだった。

 

 ―――なのに、居るはずの先生が居ない。

 

 入院してるはずのない千晶が入院している。

 

 世界に“差異”が有る?

 

 理を持たぬ悪魔。

 

 理を持たなかった少年。

 

 持とうとしなかった(・・・・・・・・・)、元少年。

 

 絶望を糧に、一人の修羅と成った。

 

 混沌世界を蹂躙し、混沌王と呼ばれるはずだった少年……。

 

 全てを投げ捨て、ただひたすらに帰還を願った結果がコレなのか?

 

 ―――いや、違う。

 

 まだだ、まだ世界は終わってないッ!

 

 絶望するには早い……少年は切に願い苦悩する。

 

 「ねぇ、とりあえずさぁ~トモダチにあってみたら?」

 

 悩む少年の背を押すは、ポケットの中の小さな仲間。

 

 絶望的な世界から付いてきた、大切な……“仲魔”

 

 ジャケットの内ポケットから、ひょっこり覗く、愛らしい容姿の小妖精(ピクシー)は疾く応える。

 

 その、囁くような助言を受け入れた少年は気を取り直す。

 

 落ち着いた少年は、とりあえず、友との再開を喜ぼう……そう思い。困り顔の看護婦に、病室の場所を訪ねる。

 

 しかし、看護婦の応えは返ってこず。

 

 応える声はかき消され、返って来たのは、ケモノの遠吠えだけだった。

  

 「ウォォオオオオオンッ!!」

 

 「ひっ!?」

 

 「うっわ……やばそ~な声~」

 

 「ちょっとまてよ!? なんでこの世界で、平和な世界で、こんな咆哮が聞こえるんだ!!?」

 

 「……ワタシみたいに~アッチから付いてきたのがいるんじゃないの?」

 

 「……()のせいか」

 

 「さあ~? でもなんか、ほっとくとヤバそうだよね~」

 

 “禍魂(マガタマ)

 

 それは力の象徴であり、少年の身が人外と成った証。

 

 平和な世界には不要と……彼、自ら封じた禍々しくも、頼れる力。

 

 「エネミーソナーが急に反応したと思ったら……うまく人に化けたモノだ。それと、ソコにもう一体いるな?」

 

 己が犯したかもしれない(・・・・・・)過ちに困惑する、裸ジャケットの少年に声をかけたのは、治療を受けていた。異質な風体の少年だった。

 

 「何よアンタ? デビルバスター? いいよ~相手に成っちゃうよ~! しゅしゅ!」

 

 姿消しを看破されるも、動じること無く。無駄に勇ましく、ボクササイズ的な素振りをするピクシーを遮り、裸ジャケットの少年は答える。

 

 「待って“メイア”。僕は“人”と争うつもりはないよ。

  ―――あんな思いは、二度としたくない」

 

 「仲魔を連れた悪魔か……奇妙な組み合わせだな……。

  で、さっきのケモノっぽい咆哮と、この騒ぎはお前のせいか?」

  

 「……分からない。

  心当たりはなくもないけど、こんな騒ぎを僕は望まない!」

  

 「いまいち要領を得ないが……いいさ、敵意がないなら見逃しておく。

  ―――この騒ぎを収めるのが先だ」

 

 記憶と世界の違いに、疑心暗鬼に囚われ戸惑う裸ジャケットの少年。

 

 かつて人修羅と呼ばれし“悪魔”に背を向け、異様な風体の少年……救世主候補(エル・メシア)と呼ばれている少年は、騒がしい方に歩き出す。

 

 「待って、僕も行く!」

 

 「……邪魔をしないなら、好きにすればいい」

 

 「むー無愛そ~。ねーねー、名前ぐらい名乗ってよ~。

  ―――あ、そうだ、アタシはメイア~! よろしくぅ~!」

 

 「……フツノだ」

 「僕はオキウラ・リョウゴ。オキウラでも、リョウゴでも好きな方で呼んでいいよ」

 

 かくして、出会うはずのない二人の邂逅は成った。

 

 しかし、出会うはずのないモノ同士の邂逅は、まだまだ続く……。

 

 ―――綻びは広がる。

 

 エントロピーが縮小されることなど有り得ない。

 

 ましてや……生まれたばかりの世界に、安定など望めない。

 

 “再誕した世界(リスポーン)

 

 この世界の物語は、始まったばかりなのだから……。

 

 ――――

 ―――

 ――

 

 ************

 

 PC04「よっしゃ出番キタ……と思ったらあっさり終わった!?」

 PC01「無事合流出来たから良いんじゃね?」

 PC02「むしろ、ピクシー(NPC/PC05演)とPC01が目立ってたような……」

 GM「次は帰還者とライドウの番かな?」

 PC05「私は氷川に呼ばれたんだっけ?」

 GM「そうそう」

 PC03「オレは、その氷川を仕留めに来たんだったよな?」

 GM「そうそう。あっ、それと、その後すぐにPC06の出番だから……聞いてる?」

 PC06「……ほえ?(マンガ読んでた) あ……あ……おkおk、大丈夫。時をかける少女の予習はバッチリさ!」

 GM「間違っちゃないが、違うから」

 

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