仮面ライダーディケイド ~The Darkness History~   作:萃夢想天

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先週この回を投稿をしようと思ってたんですが
もう一つのバカテス×龍騎の方に行ってしまって……


インスピレーションの問題と言いますかw


それと、本日から放映開始した平成期待の星こと
『仮面ライダーゴースト』を早速見てみましたよ!

バイクに乗るのがライダーですよね、やっぱり。

画像を見た限りでは
「オレンジ色のパンツ被った変態仮面か?」
と思ってたんですが、主人公とヒロイン?以外には
かなり現状でも満足しています。 『カイガン! σ(゚∀゚ )オレ!』


この作品にも登場させようかな………それでは、どうぞ!


Ep,08『LASTCALL ~駆け引き~』

 

日も高く昇り、雲も流れている陽気な昼下がりの中で交わる異形達。

空の青さも雲の白さも木々の緑も、観賞する暇なく続いている衝突音。

人口建築物と自然の織りなす風景すら、今この時に置いては何の価値も無い。

火花を散らしてぶつかり合う異形達の中に、真夏の太陽の如く燃えている男がいた。

頭部にはクワガタのような形状の角、胴部にはダイヤを模した構造の鎧を纏い

その明緑色の双眸に似つかわしくないほどの憎しみを滾らせ、今もなお吠え続けている。

 

男の名は、その戦士の名は、『仮面ライダーギャレン』。

 

右手に彼の専用武器であるギャレンラウザーを握りしめ、戦闘に身を投じている。

そんな彼は、目の前にいる異形に対して苛烈としか言えないような猛攻を繰り出す。

だが相手の異形もギャレンの猛攻を防ぎ、あるいは躱してダメージを軽減している。

ギャレンの左フックが異形________ピーコックアンデッドの右肩に直撃するも、

ピーコックの繰り出した羽根の手裏剣がギャレンの腹部に突き刺さり猛攻を中断させた。

かなりの勢いで腹部に刺さった羽根を払いながらギャレンは体勢を立て直して敵を睨む。

憎悪という言葉の枠には収まりきらないほどの、強く、鋭く、尖りきった視線で。

 

 

「どうした橘。お前の私への『報復心』はその程度か?」

 

「黙れ…………俺は貴様を必ず倒す‼ 貴様だけは生かしておけん‼」

 

 

再び走り出してその勢いのままに左拳を振るうギャレンを、ピーコックは嘲笑った。

両腕の羽根の手裏剣を大量に放出させ、ギャレンに浴びせかける。

ギャレンは攻撃のモーションの途中だった為に回避が出来ずに、全弾直撃してしまう。

だが体勢を大きく崩しながらも、今度は右手のギャレンラウザーを乱射してピーコックに

決して小さくは無いダメージを与えることに成功した。

 

 

「どうしたピーコック。貴様の俺への『余裕』は、もうお終いか?」

 

「…………図に乗るなよ橘。誰が貴様に死の恐怖を乗り越える力を与えたと思っている!」

 

「ふざけるな! 何が力だ‼ 貴様のせいで__________『小夜子(さよこ)』は死んだんだ‼‼」

 

 

全身を、肩を、握りしめた拳を、怒りを超えた激情で震わせるギャレン。

彼の仮面の下にある素顔は、他人には理解出来ないほど複雑な感情が入り混じっていた。

ピーコックがフンと鼻を鳴らして肩をすくめつつ、ギャレンを挑発するように語る。

 

 

「それは責任転嫁というものだぞ橘。あの人間を殺したのは…………最終的にはお前なのだ」

 

「いい加減にしろ‼ もう貴様と話すことは、何も無い‼」

 

「それはこちらも同じだ。我らの理想とする世界のために、消えろ橘‼」

 

 

ピーコックとギャレンが共に咆哮を上げながら互いに距離を詰めていく。

ギャレンは右手の銃で射撃しつつ、ピーコックは羽根の手裏剣でそれを堅実にガードしている。

互いの距離が手を伸ばせば届くほどの距離になった瞬間に、ピーコックが両足で跳躍した。

ギャレンはその行動に驚いたが、背後は取らせんとばかりに自分も後ろを向きつつ片足で跳ねる。

振り向きざまにギャレンラウザーの照準を敵に定め、トリガーを引いて弾丸を発射する。

思惑通りに放たれた銃弾がピーコックの右脇腹に当たり、アンデッドの緑色の体液を撒き散らす。

思わぬ攻撃に体勢を崩してそのままコンクリートの地面に落下したピーコックをギャレンは睨む。

 

「……はぁ、はぁ……………俺は彼女を巻き込みたくなかったんだ」

 

息を整えつつ立ちあがりながら、ギャレンは独り言のように呟きだした。

その言葉を聞いていたピーコックもまた、硝煙を噴き上げる身体をゆっくりと起こして言った。

 

 

「その結果があのザマか。お前は弱いままだったな、所詮貴様に誰かを守ることなど出来んのだ」

 

「…………………そうかもな。だがそれでも、彼女だけは弱いままの俺でもいいと言ってくれた」

 

ピーコックが腕を振るって羽根の手裏剣を弾き飛ばすと、ギャレンは一枚のカードをホルダーから

取り出して、ギャレンラウザーのカード読み込み口に挿入してラウズさせる。

 

 

『______BULLET』

 

 

ダイヤの2のカード、『バレット』を読み込んで威力を底上げした銃弾を発射する。

その弾丸は先程とは比べ物にならない威力で羽根を弾き、そのままピーコックに向かっていった。

予想外の結果に驚愕したピーコックの全身に銃弾が直撃し、煙と緑の血を噴き上げた。

 

「グゥゥ! ……………バカな、アレはカテゴリー2のはずだ。ここまでの力が何故⁉」

 

「俺は、俺は彼女の言葉に癒された。彼女の笑顔に、俺は安らぎを感じていた………」

 

 

ギャレンの銃弾で再び体勢を崩して膝をついたピーコックの方を向き、銃を構えなおす。

先程のような怒りによっての銃口のブレはもう無くなっていた。

ただ冷静に、確実に、敵を屠るために向けた殺意は研ぎ澄まされ、その時を待っている。

 

 

「この優しい光を、温もりを、決して消させたりしない。…………俺はそう誓ったんだ‼」

 

 

仮面の明緑色の双眸が、彼の決意を表すように光を灯し始めた。

「ふっ………だがその決意も水泡に帰したな橘」

 

「いや、そんな事は無いさ。ここで貴様を倒せば…………あの世で小夜子に顔向け出来る‼」

 

そう言い放ったギャレンはホルダーから、三枚のカードを素早く取り出した。

それを見たピーコックは焦りを見せた。_____三枚のカードの意味を理解していたからだ。

組み合わせによってはライダーシステム装着者の命を削ってしまうほどの力をもって

上級アンデッドを一撃で打ち倒してしまうとも言われている、スリーカードのコンボ技。

今まさにそれを発動させようとしているギャレンを即座に排除しようと行動を始める。

威力が高過ぎる為に自分に被害が及ぶ範囲内で使うことが躊躇われていた火炎球を両手に

生み出して、片方ずつギャレンに向けて投擲する。

 

 

「橘! 俺と相打ちにでもなるつもりか⁉」

 

「貴様を確実に封印出来れば、俺にもう未練は無い。…………地獄への道連れだ‼」

 

「バカな、俺は死ぬことの無い存在だ。地獄になど俺が向かう事は無い‼」

 

「………確かにそうだな。なら、貴様は封印の牢獄でその永遠の生涯を過ごせ‼」

 

 

ピーコックの放った火炎球が迫り来る中で、ギャレンはカードを素早く読み込む。

三枚のカードを順番に読み込んでその力を自身に反映し、溢れる力を一気に開放する。

 

『________DROP』

 

『________FIRE』

 

『________GEMINI』

 

 

『___________BURNING DIVIDE』

 

 

ダイヤの5、6、9、『ドロップ』、『ファイア』、『ジェミニ』を発動したギャレンは

ギャレンラウザーを右腰に戻し、そのまま右手をラウザーに添えながら左手を前に突き出す。

そして左手をゆっくりと曲げながら力を込めて、仮面の双眸と角が光を放つ。

眼前にピーコックの放った火炎球が迫っているにも関わらず、彼の頭の中は全く別の事で

埋め尽くされていた。___________かつての幸せで、かつての誓いで、かつて愛した人で。

 

 

「消えろ橘ァ‼ 出来損ないの分際で、人間の分際でェッ‼」

 

 

ギャレンの攻撃の体勢を崩せないと悟ったピーコックは、さらに火炎球を投擲する。

最初に放った方の火炎球がギャレンに直撃するまさにその瞬間、ギャレンの身体が輝いた。

広げて構えていた両足をその場で揃えて大きく跳躍したギャレンに再び火炎球を放つ。

だがその火炎球がぶつかる直前、ギャレンの体から光が消えると共にその体が二つに裂けた。

 

「待っていてくれ、俺もすぐにそっちへ行くから……………だがその前にコイツだけは‼」

 

「よせ、止めろ橘‼ 早まるな‼ 止めろぉぉおぉぉぉッ‼‼」

 

 

否、一人だったギャレンが二人に分裂しながら空中で半回転して身をよじる。

彼らの両足からは『ファイア』の効果で紅蓮の炎が周りを焼き尽くさんと放出され続けている。

そのままもう一度身をよじりながら回転して位置を調整した二人のギャレンは降下し始めた。

そして片方のギャレンが、ほんの僅かな差でもう一人より先にピーコックに辿り着いた。

だがピーコックはギャレンの『バーニングディバイド』を両腕をクロスさせて受け止めた。

それでも威力を殺し切れずに、コンクリートの地面に亀裂を奔らせながら体勢を崩す。

 

 

「小夜子ぉぉーーーーーーッッ‼‼‼」

 

 

力を振り絞ってギャレンの攻撃を凌ぎ切ろうとしているピーコックに対し、

さらに追い打ちをかけるようにもう一人のギャレンが回転しつつオーバーヘッドの要領で

上段から蹴りを放ち、2乗の力でピーコックをねじ伏せる。

遂に耐え切れなくなったピーコックの不死の肉体に、炎で×(バツ)を描くように蹴りを

互いに浴びせたギャレンは着地の瞬間に一人に戻り、少し粗めにコンクリートへ着地した。

そしてゆっくりと立ち上がりつつ振り返り、地に伏したピーコックを見つめる。

 

 

「…………終わったよ、小夜子。これで俺も、そっち………に…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ATTACK RIDE__________SLASH』

 

バックルにカードを装填し、その力を右手のライドブッカーのソードモードに反映させ

剣にマゼンタカラーの光を帯びさせ、多重に分身した刀剣部分で眼前の『未知』を

迷いなく攻撃しようと考えた士は、脚に力を込めて一目散に駆け出した。

 

 

(何なんだコイツは? まるで色の反転したカリスみてぇな………試してみるか)

 

 

そのまま士は右手の剣を白いライダーに向けて振り下ろした。

だがその白いライダーは士の攻撃を防ぐでも躱すでもなく、ただ直撃した。

違和感を感じた士だったが、好機だと手応えを感じたのかさらに追い打ちをかける。

身体を捻って左足で裏拳のようにして蹴りを放ち、流れるように右手を振るって斬る。

白いライダーは一連の動き全てに対して、全く動きを見せなかった。

 

 

「反撃しないってのは、余裕って事か?」

 

「いいや違うなぁ支配人。彼はまだ『生まれて間もない』んだよ」

 

「その声……………パラドキサか」

 

「いやはや、ご名答」

 

 

士が疑問を口にした直後、白いライダーの背後から聞き慣れた声が響いて来た。

その声の主を士が特定すると、その相手______パラドキサアンデッドが士に応える。

パラドキサの言葉にさらに疑問を抱いた士は、ソードモードのライドブッカーの

切先を下に向けて一旦戦闘行為を中断した。

 

 

「生まれて間もない、だと? どういう事だパラドキサ」

 

「それは支配人が知らずともよい事だ。さぁ『アルビノカリス』、奴を倒すのだ」

 

「はっ、さっきから手も足も出ないコイツが俺を倒せると思ってるのか?」

 

「勿論だとも。その為にわざわざあの2体を喰わせてやったのだからねぇ」

 

「何だと?」

 

士がパラドキサの言葉に対してさらに口を紡ごうとした直後に、アルビノカリスと

呼ばれた白いライダーは二枚のカードを体内から素手で(・・・・・・・)取り出し、腰のバックルの

溝に読み込ませてカードの効果を自身に反映させる。

 

 

『REVOLUTION KING』

 

『REVOLUTION KING』

 

 

アルビノカリスが使用したのは二枚のカテゴリーキングのカードだった。

スペードのK、青みがかった黄金の剣の絵柄の『レボリューションヘラクレス』。

ダイヤのK、緑がかった黄金色の双剣の絵柄の『レボリューションギラファ』。

その二枚を読み込んだアルビノカリスの左腕には黄金の篭手と大剣が出現し、

右腕には黄金色の刺々しい篭手と薙刀状になった一対の双剣が出現し装備されていた。

 

「最上級アンデッド2体を喰わせた彼に、敵などいない。後は貴方だけだ支配人!」

 

「どうして俺を狙う? ………………いや待て、そうか。そういうことか」

 

「ようやく理解したかね? 我々の真の狙いは君の持っているその__________」

 

 

 

「「ディケイドの世界を渡る力‼‼」」

 

 

 

士とパラドキサが同時に口にした言葉の意味を、士は改めて理解した。

何故自分がこの世界に来たのか。

この世界で自分がアンデッドの寄生した会社の支配人になったのか。

そして何故自分だけがこうも狙われ続けるのか。

全ては自分の、ディケイドが持つ世界を渡る特異な能力を求めてのことだったのだ。

 

 

「その力があれば私達はこの世界だけでなく、全ての世界を支配出来るのだよ‼」

「俺にはどうでもいい力だが、お前らにはもったいなさ過ぎる力だ。誰がやるかよ」

 

「そう言うと思っていたさ。だからこうして二人で来たんだ………さあやれ‼」

 

 

パラドキサの号令と共に両手の武器を構えながら駆け出したアルビノカリス。

それに対して士は切先を下ろしていたライドブッカーを再び振り上げ対抗する。

士の前までやってきたアルビノカリスは、左手の大剣を大きく構えて振り下ろした。

だが士は先程の彼のように黙って攻撃を受けるような愚は犯さず、ライドブッカーで

受けきれない事を瞬時に見切って回避し、左手で薙ぎ払うように振るわれた相手の

双剣をライドブッカーを斜めに構え、いなすように攻撃を防御した。

 

 

「どーした? やっぱりこんなモンかよ」

 

「おいおい、私が黙って見ているだけかと思ったかね?」

 

 

声のする方を見ると既にパラドキサが攻撃を仕掛けてきていた。

腕を振るってそこから三日月状の衝撃波を発生させてディケイドに向けて放っていた。

それを目視したディケイドは剣を無理矢理振るって、眼前のアルビノカリスを自分と

パラドキサの衝撃波との直線上に立たせて、自分は真横へと前転して回避した。

回避行動を終えた士が起き上がって見た光景は、まさに予想通りのものだった。

 

 

「全く、酷い事をするねぇ支配人。君もそう思うだろうアルビノカリス?」

 

『……………………』

 

「ん? おいどうした? 君の敵はあっちだアルビノカリス!」

 

するとアルビノカリスはゆっくりと振り返り、衝撃波の発生源であったパラドキサを

その白濁色のハート形をしたモノアイマスクで睨むようにしながら剣を構えた。

パラドキサはその行動に危険を感じたのか、ディケイドを指さして攻撃を促す。

しかしアルビノカリスは彼の言葉に耳を貸さずに、右手の双剣を投擲した。

 

 

「や、止めろアルビノカリス! 敵は奴だ、私ではない‼」

『…………………イタダキマス』

「よせぇぇぇッ‼‼」

 

 

投擲された薙刀状の双剣は弧を描いてパラドキサの胴部に突き刺さった。

直後、その剣が鈍く輝くと同時に、パラドキサの肉体が徐々に枯れ始めた。

先程士が2体の上級アンデッドが消えた時に目にした光景と全く同じ現象だった。

おそらくあの剣は、アンデッドの体液を啜って搾り取ろうとしているのだろう。

いくら不死身と言えど、肉体に酸素を送る血液がなければ生命活動を維持するのは

至難の業だろう。アルビノカリスはその生命的な弱点を突いて2体を吸収したのだ。

 

 

「や……………や、め……………」

 

『……………オ、イシイ』

 

「くっそ、趣味の悪いモン作りやがって」

 

どんどん体から潤いを、生命独特のみずみずしさを失っていくパラドキサを見て

さっきの攻撃もマトモに受けていたら同じようになっていたと少し恐怖した士。

気づかれないようにしながらライドブッカーをガンモードへと切り替える。

それが終わった直後、ドサリと力無くパラドキサが地面に倒れた。

パラドキサの胴部の剣を引き抜いたアルビノカリスは、緑色の光を体から放ち

左手の剣を地面に突き刺してから、再び体内に手を突っ込んで何かを取り出した。

その何かをベルトのバックルへと近付ける。

 

 

「させるかよ‼」

 

『__________ッ‼』

 

 

その何かがバックルの中央部の溝へ接する直前に、士の放った光弾がそれを弾く。

だがその何かを目視し、その正体が自分の予想通りのものだったと思った直後、

それは影も形も無くどこかへと消えてしまっていた。

辺りを見回すが、それらしいものがどこにも見当たらなかった。

 

 

「………何だ? カードが消えた?」

 

『…………ドコ? パラド、キサ………ドコォ?』

 

 

消えた何か____________ハートのカテゴリーキングのカードを探して

アルビノカリスがフラフラと彷徨うが、やがてディケイドの方を見て動かなくなる。

そのまま両手の剣を構えて、宣戦布告のように告げた。

 

 

『…………パラ、ドキサ、ダセ……………ヨコセェ‼』

 

「やれやれ、育て親に似てきたなぁおい‼」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディケイドとアルビノカリス、ギャレンとピーコックが戦っている立体駐車場の

近くに放棄されていた何かの工場の跡地に、その男は何の前触れも無く現れた。

軽快な電子音と共に、自身を覆っていた透明な被膜(・・・・・)が三つに

分散して散り散りになって消えて、本来の姿を誰にでもなく露わにした。

 

 

全身を包むディケイドに酷似した構造のゼオンカラーのスーツ(・・・・・・・・・・)

ディケイドと非常に似た形状の腹部の装甲は、彼とは違い混じり気の無いブラック。

彼の腰にあるベルトのバックルも、ディケイドとは異なり簡素なものになっている。

そして何より、彼の仮面は巨大な板状のプレートで上半分が覆われていたのだった。

この工場跡に似つかわしくないほど鮮やかな姿の闖入者(ちんにゅうしゃ)は、右手に収めた

薄い赤色に染まったハートの刻印の刻まれたカードを満足げに眺めながら呟いた。

 

 

「………やっと手に入れたよ、幻のカテゴリーK。君を探すのに随分苦労したよ」

 

 

左手に握っている幾何学的な紋印の施された銃を肩に掲げて呟いた彼は、

戦闘の音であろう轟音に耳を傾けて、再び先程の位置に目線を戻した。

 

 

「この辺りも物騒になりそうだ。さぁ戻ろうか、僕のお宝君?」

 

 

カードを懐にしまってこの場を去ろうとしたゼオンカラーの男はそこで

初めて自分の右手に収まっていたカードが無くなっていることに気付いた。

慌てて地面を見回したが、ふと自分の視界の隅を何かが横切ったのを感じ

左手の大口径の銃をその方向へと向けて、銃弾を発射してから尋ねた。

 

 

「誰だ? 僕のお宝を奪ったのは、そこに隠れてる君かな?」

 

 

銃口を向けながらゆっくりと眼前の大き目なドラム缶に近付く。

しかし突然、自分の背後から甲高く耳障りな声が聞こえてきた。

 

 

『____________うるせぇな、どうせコレもお前のじゃねぇンだろ?

とにかく、俺達から盗んでったアレをさっさと返しやがれこの盗人‼』

 

「(背後を取られた……この僕が⁉)…………何の事か分からない_____なっ‼」

 

『うおぉっ⁉』

 

 

前方へと向けていた銃口を振り向きざま後ろへ向けて乱射する。

すると一瞬だが、自分の目線の少し上辺りに、白い布とオレンジの何かが

うっすらと映り込んで消えたのが見えた。

 

 

『あっぶねぇだろ! お前殺す気かよ⁉ ……んまぁもう死なないけど(・・・・・・・・)

「………興味深いね、君は一体何者なんだい?」

 

『はぁ⁉ お前俺達の大事なアイコン(・・・・)盗んだくせに!

よくもまぁ抜け抜けと言ってくれやがってよぉ‼ 舐めてんのかオイ⁉』

 

「…………アイコン? あぁ、コレの事か」

 

 

そう言って銃を下ろした男は、懐から何やら眼球を模した物体を

取り出し、銃の代わりに声の主のいるであろう方向へと突き出した。

 

 

「これが欲しいのかい? でもコレは僕が拾った奇妙なお宝だ。

タダであげる訳には、当然行かないわけだ…………だからそれを返したまえ」

『返してもアンタが返してくれる保証は無いだろ?』

 

 

するとまたも別の方向から、不思議な格好の青年が現れた。

その青年の腰には、半透明のかぼちゃのような形状のバックルがあった。

青年が言った言葉に対して、ゼオンカラーの男は心外そうに呟く。

 

 

「僕は僕の美学に反することは決してしない。だから信じたまえ」

 

『一度自分の物を盗んだ相手を、今更信じろって?』

「………頑固なヤツだね君は。そんなんだとロクな死に方しないよ?」

 

『_____________ッ‼』

 

ぶっきらぼうに呟いた男の言葉に何か思うことがあったのか、

青年は若干の怒りを込めた視線をゼオンカラーの男に向けながら

右手に男の持っているソレとよく似た物を取り出し、バックルに装填した。

 

 

「おや、君はまだソレを持っていたのか。コイツはいい、それもくれ」

『本性を現したな。残念だが、コレ以上俺のモノは奪わせない‼』

 

『やっちまえぇ‼ 【仮面ライダーゴースト】に変身だ‼』

 

「………仮面ライダー、ゴースト?」

 

 

青年は自分の傍らにいる見えない何かに声援を受けながら、バックルの

右側に付いている大きなレバーを引き、再びバックルへと押し戻した。

 

 

『バッチリミナァ‼ バッチリミナァ‼』

 

『カイガン! オレ‼』

 

 

「…………君は、仮面ライダーなのかい?」

 

ゼオンカラーの男が呟き、眼前の青年が首肯する。

 

『Let'go! 覚悟! ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト‼』

 

青年を何やら黒い霧のようなものがすっぽりと覆い、青年の背後に

唐突に現れたオレンジと黒のパーカーがフワフワと意思を持つように

動き回って、青年の頭部から彼の身体を包み込み装甲と化した。

 

 

『こっちは命燃やしてんだ、返してもらうからな‼』

 

「僕の知らないライダー、知らない力、知らないお宝‼

思いがけない出会いだね、君と僕の出会いはきっと運命ってヤツさ‼

久々に収集家(コレクター)としての情熱が、蘇るようだ‼」

 

 

こうして人知れず、オレンジとゼオンがぶつかり合う。

正義の燃える亡霊と、標的を必ず奪う狩人が、己の為に。

 

 




ハイ、出しちゃいました。(後悔)

だってカッコよかったんですもんゴースト。
ダイカイガン! オレ! オメガドライブ‼

幽霊って設定も敵が常人の及ばない領域に
位置してるあたりも自分好みですしね‼

あ?ドライブ? レーサーか何かですか?


破壊者よ、運命の切札を掴み取れ!


次回、Ep09『REVOLUTION ~覚醒~』

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