仮面ライダーディケイド ~The Darkness History~   作:萃夢想天

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どうも皆様、最近下腹部あたりの装甲が厚くなった萃夢想天です。
冬って奴は参っちゃうよね、天然の負のサイクルでさぁ。

二週間も間を開けてしまってすみませんでした。
本当なら先週に投稿できていたはずなんですが、またしても例の如く
低スペックPCのフリーズと再起動のせいで12000文字以上がパァです。

冬って奴は参っちゃうよね、流した涙が凍るもの。

今回こそという気合を入れて、TAKE2でございます!
またフリ&再起の悪夢に苛まれないために、早く書いちゃいます。


それでは、どうぞ!





Ep,27『Uを探せ / 一年半前の悪夢』

 

 

 

 

風の吹く街、風都。

その街の波止場近くに建つ、古びたビリヤード場のその二階にある探偵事務所で、

誰もが予想だにしなかった依頼が、不穏な気配をまとわりつかせながら舞い込んだ。

 

鳴海探偵事務所の面々、左 翔太郎とフィリップ、所長の鳴海亜樹子の三人と、

ある目的のためにこの探偵事務所を訪れていた、門矢 士、ユウスケ、夏海の三人。

そして彼ら六人の目の前で依頼を口にした、羽田睦 永久というスーツ姿の男。

 

まさにその場の誰もが、ソレを口にした羽田睦自身でさえ、驚愕に震えていた。

 

「待ちな、羽田睦さん。その、究極のメモリってのは何なんだ?」

 

 

しかしそこは場数の違いからか、室内でも帽子を着飾る男、翔太郎がいち早く回復し、

いきなり現れて話を持ち込んだ羽田睦に対して、依頼の内容を再度尋ねる。

問い返された本人は、至って真面目そうな顔つきを保ったまま、同じ句を告ぐ。

 

 

「私が探しているのは、『ULTIMATE』、<究極(アルティメット)>の記憶を宿すガイアメモリだ」

 

「なんだと?」

 

「アルティメット………興味深い」

 

 

冷静に告げられる話を聞いて、翔太郎とフィリップの顔つきが文字通りに変わる。

それは彼らが、この風都という街を心から愛し、街を穢す悪を心から憎んでいる証でもあった。

探偵コンビの横では、亜樹子も先程までのおちゃらけた雰囲気を潜め、街に潜んでいる悪意の

象徴とも呼べるガイアメモリ関連の依頼が来たことに対して、硬い表情を浮かべていた。

しかし、こと異世界から来たばかりの士たちには何のことだか分からない。

 

この風都と呼ばれる街がどうやら、彼らの中にある東京都と酷似した都市であるということ

以外は、まるで何も分かっていない。ガイアメモリも、この世界の仮面ライダーについても。

ただ、意識を失っていた士が何故か、この世界のライダーは探偵をしているという情報を

知っていたため、こうして風都で一番と名高い探偵事務所に足を運んだだけなのだ。

自分たちとの話し合いに水を差された士は、先の除け者扱いによって募り続けていた苛立ちを

最高潮にまで到達させてしまい、感情の昂りの赴くままに羽田睦へと抗議を投げかけた。

 

 

「おいサラリーマン、今は俺たちが先客だ。順番を守るくらい、マナーとして当然だろ」

 

「ちょ、ちょっと士!」

 

「士君!」

 

「黙ってろ。いいか、俺たちが先に話していて、アンタが後から来た。OK?」

 

愛用のカメラを左手にしっかりと持ちながら、士はやたらオーバーに話を強調してこじらせる。

どうしてこうも大人げないんだと喚きたくなる気持ちを抑え、夏海とユウスケは溜息を漏らす。

士から暗に「俺らが先だ、お前は黙っとけ」と釘を刺された羽田睦は、ゆっくりと口を開いた。

 

 

「そう、だな。私が間違っていた。いくら急を要するといっても、順番は守るべきだった」

 

そう言ってから羽田睦は、鳴海探偵事務所の扉を開けて出ていこうとする。

しかし、あそこまで話を持ち出されて今更帰られては困ると、探偵の二人は引き留める。

加えてそこから罪悪感を感じた夏海とユウスケの二人も加わり、どうにか男を思い留まらせた。

だが、面白くないのは士だ。全員が羽田睦を引き留めたのもそうだが、まさかあんなにあっさり

自分の言い放った無茶ぶりに等しい話を受け入れ、認められるとは思ってもみなかった。

器の大きさが違うことを自覚させられて、士はまたしても不機嫌レベルを増大させる。

 

士がまたカメラいじりを始めようとしたところで、翔太郎から追及の声がかけられた。

 

 

「どういうつもりだ? ガイアメモリが関係してんだから、順番なんて言ってられないんだぞ」

 

「俺たちはそのガイアメモリとやらの事を知らない」

 

「何だと?」

 

「ガイアメモリなんてものが無かった世界から来たんでな」

 

「………ガイアメモリの、無い世界?」

 

 

翔太郎からの追及を不愛想に突き放して語る士の言葉に、探偵コンビが反応を示す。

特に冷静沈着な青年に思えたフィリップが、好き放題に伸びた髪の隙間から鋭い視線を浴びせる。

対して二人分に増えた視線を一身に受ける士は、応える義理はないとばかりに無言を貫く。

場が先程とは別の意味での静寂に包まれようとした瞬間、立っていた羽田睦が問いを投げかけた。

 

 

「さっきもそうだったが、君は一体何者なんだ?」

 

 

浮かび上がった疑問を言葉にしただけのつもりだった男だが、この相手にだけは違う意味を持つ。

もはや定型句と化したその言葉を鼓膜に焼き付けた士は、これまた決められた台詞を辿り告げる。

 

 

「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

士たち三人が鳴海探偵事務所を訪れてから、もうすぐ一時間が経過しようとしていた。

 

本来なら、仮面ライダーについての話を聞くだけで済んだはずなのだが、予想外の事態が

重ねて起こったために、これほどの時間を費やすことになってしまったのだ。

そこから彼らは、探偵や羽田睦たちを信じさせるために、自分たちのことを語り尽くした。

 

自分たちが異世界の住人であったこと、異世界を守る仮面ライダーであること、

異世界を巡り力を集める旅をしていること、そして旅先の世界で起こる滅びの現象のこと。

 

当然最初は彼らも信じようとしなかったが、そこはユウスケが体内からアークルという

クウガに変身するための超古代のベルトを呼び起こすのを見せて、強引に信じさせた。

 

「っは~。しかしまぁ、異世界なんてものが本当にあるとはな……」

 

「異世界にもいるんや、仮面ライダー」

 

「ガイアメモリ以外にも、様々な脅威が世界を蝕んでいるんだね」

 

事の成り行き上、その場にいた羽田睦にも異世界の事を話してしまったのだが、

彼は思いの外良心的かつ柔軟な人柄のようで、士たちの話も肯定的に受け止めてくれた。

三者三様の反応を見せている最中、士たち異世界側の視線は全て、もう一人の探偵へ向けられる。

 

 

「異なる世界と書いて異世界。古くからあの世とこの世と言ったように別次元の存在や世界を

肯定している文献や資料はいくつもあった。しかしそれらを確定的なものへと至らせるものは

何一つ得られた形跡は全くない。それでも異世界や異次元といった、隔絶された異なる場所の

存在に関しては否定できるものではなく、現にこうして未知の力や現象を発現させた特異例が

目の前に存在している。異なる常識、異なる理論、異なる概念、異なる文化、ゾクゾクするね‼」

 

 

たった一人、事務所の狭い室内を行ったり来たりしながら声を荒げるのは、フィリップだった。

それまではすぐに熱くなる翔太郎を抑える、ブレーキのような役割を果たしていたのに、

今は完全に立場が逆転している。いや、翔太郎をもってしても止められない分、より質が悪い。

身内の恥とも言うべき姿をあまり見せたくないようで、「放っておいた方がいい」と呟いた

翔太郎の言葉に、士たちは人は見かけによらないものだとしみじみと実感しつつ従った。

 

しばらくしてからフィリップが大人しくなり、改めてこの場にいる七人での会談が始まる。

しかし会話を始める前に、翔太郎がどうしても聞きたいことがあると前置きを語った。

 

 

「羽田睦さん、もう一度俺の質問に答えてくれ。アンタは一体何者だ?」

 

「………質問の意図がよく分からないんだが」

 

「とぼけるなよ。一般市民が、究極のガイアメモリの捜索依頼なんかするはずねぇ。

それに言ってたよな、『ガイアメモリの関係者』だって。アレどういう意味だ?」

 

「………羽田睦 永久。君は、『ミュージアム』の人間だったんじゃないのかな?」

 

 

復活したフィリップもそこへ加わり、翔太郎と共に羽田睦の追及に拍車をかける。

彼らの語った、『ミュージアム』という言葉の意味が分からない士たちが疑問符を浮かべると、

傍らで静観していた亜樹子がやたらと大きな声を出来る限り小さくして、教えてくれた。

 

 

「ミュージアムってのは、この風都にガイアメモリをばらまいてた組織のことよ」

 

「悪の組織、ってヤツですか?」

 

「うん、大体そんな感じ。それで、そいつらには『財団X』ってスポンサーがいて、

裏で取引をしてガイアメモリの実験や量産を、この街で行っていたの」

 

「街丸ごと実験場に………なんて奴らだ!」

 

 

見知らぬ世界にも悪の組織の影があることを知り、その非道な行いを聞いたユウスケは怒り、

夏海も直情的なユウスケほどではないにしろ、少なくとも良い印象は抱けなかった。

そして、この羽田睦という男がそんな組織の一員なのかもしれないと思うと、どうしても

懐疑的な視線を向けざるを得なくなる。だがその視線に、スーツの男は気付いていた。

探偵コンビの投げかけた質問に対して、羽田睦は数秒黙った後、ゆっくりと語り出した。

 

 

「私はこの街が好きだ。この街で生まれ育ったものは皆、そう思っていることだろう。

そして、そんな美しく優しい街を裏から汚していくガイアメモリを、許してはおけない」

 

「それは、罪の意識からか? ミュージアムがあった頃に自分がした、罪の懺悔か?」

 

「………ミュージアムはもうない。君たち仮面ライダーの活躍によって、悪は倒された。

しかしそのミュージアムの遺した悪の芽は、未だにこの街を根深く蝕んでいるんだ。

断ち切らなければならない。今はまだ小さな芽が、大きな破壊の花を咲かせない内に」

 

「後悔しているのかい?」

 

「そうとも、言えるかな」

 

 

羽田睦の語った話に、探偵コンビは顔を見合わせてうなずき合う。

そしてフィリップは手にした本を音を立てて閉じ、翔太郎は帽子を深く被り直した。

 

 

「なら、請け負わせてもらうぜ、その依頼。街の涙を拭うのは、俺たちの仕事だ」

 

「街にまだガイアメモリが流通しているのは、ミュージアムの残滓があるからだ。

その禍根ごと、全てを叩いて潰すしかない。そして、それが出来るのは僕らだけさ」

 

「ああ。行くぜ、相棒」

 

「ああ。行こう、相棒」

 

依頼を承諾する旨を伝えた二人に、羽田睦は表情を明るくして感謝の言葉を述べる。

そこからは依頼をするにあたっての手続きの話し合いに入ったが、ふと気付いたように

顔を上げた彼が、士たち三人を見つめて不思議そうに尋ねた。

 

 

「そういえば君たちは、私より先に依頼をしに来ていたんじゃなかったかな?

その、いいのかい? ガイアメモリ捜索が長引いたら、君たちの方の依頼が」

 

「あ、それなら大丈夫です! 私たちは依頼をしに来たというより、その」

 

「仮面ライダーを探したくて、それで色々あったんで」

 

「………ああ、なるほど。私が彼らの正体をしゃべってしまったから」

 

 

納得したように首を何度か縦に振る羽田睦に、夏海とユウスケは苦笑を向ける。

そして今更正体がバレたことに気付いた翔太郎は、男にしては甲高い悲鳴を上げた。

フィリップはそれを楽しそうに見つめ、隠すべき秘密を露見させた相棒をたしなめる。

 

 

「迂闊だったね、翔太郎」

 

「ああ………まさかハードボイルドなこの俺が、こんな初歩的なミスをやらかすとは」

 

「何がハードボイルドだ。そこの女子中学生が言ってたみたいな半熟野郎だろ」

 

「誰がハーフボイルドだ‼」

 

「誰が女子中学生や‼」

 

「まぁまぁ二人とも」

 

 

途中で士が暴言を放り込んだものの、相棒の仲介によって何とか事なきを得た。

 

そこから士たちは、改めて探偵事務所の面々と羽田睦を加えて話し合いをしたいと

考え、まずはこの世界について知らなければならない情報のことを話題に挙げた。

 

最初に欲したのは、この世界の仮面ライダーについて。

 

これは目の前にいる探偵コンビがそうであると割れたため、話題は次に移った。

続いて彼らが望んだことは、先程から羽田睦や翔太郎たちが口にした、あるものについて。

 

「ガイアメモリってのは、そもそも何なんだ?」

 

 

ハッキリとものを言えない夏海やユウスケの代わりに、士がバッサリと切り伏せる。

この世界特有の力であろうガイアメモリについて、士たちが持つ情報は無いに等しい。

知らないことを知ろうとするのは当然だし、それがこの世界で与えられていない"役割"に

関係することがあるかもしれない。だからこそ、その情報を得るのは急務でもあった。

 

異世界から来たということは信じたものの、だからと言ってわざわざこの世界の力を

教えてしまってもよいのだろうかと思案する探偵コンビだったが、その二人の懸念を

差し置いて、手持無沙汰となった羽田睦が士たちにガイアメモリについて語り出した。

 

 

「ガイアメモリというのは、ミュージアムが財団Xの資金援助を受けて大量生産した、

地球の記憶とも言うべき固定化されたエネルギーを内包させた、悪魔の兵器だよ」

 

「へ、兵器、ですか?」

 

「ああ。大きめのUSBメモリのような形で、その上値段も非常にリーズナブルでね。

最安値でも一本5~7万円で購入できるし、存在を知らなければ怪しまれもしない。

日常生活の中で確認されても気付かれない、文字通りに悪魔の作った兵器なのさ」

 

「最安値って、まさか、お金で買うんですか⁉」

 

「そうだ。ミュージアムの売人たちは、この街の一般市民相手にメモリを売りさばく。

メモリごとに能力が違うから、強い物は高値で、弱かったり特殊だったりする物は

安価で売られている。もちろんそれは、ミュージアムの人体実験も兼ねているんだ」

 

 

説明の冒頭を聞いただけで絶句した夏海とユウスケの問いに、羽田睦は淡々と答えた。

そしてまだ序の口だとばかりに、この街の知られざる裏側の事情を続けて話す。

 

 

「ガイアメモリには、二つの種類がある。原性のメモリと純性のメモリの二つだ」

 

「原性と純性、ですか?」

 

「そうだ。一般的にミュージアムが取り扱い、風都に流通しているのは原性の方で、

これらは非常に強い中毒性と依存性を有している。簡単に言えば、麻薬と同じだ」

 

「麻薬⁉」

 

「一度使えばその力に心酔し、のめり込んで、ついにはメモリに精神を支配される。

使えば使うほどにメモリとの結合が深まり、自分の意志では止められなくなって

暴走状態に陥ることもよくあった。そして使い続ければ、最後には使用者が、死ぬ」

 

「まさに、悪魔に魂を売り渡して得られる力、ってわけか」

 

絞られるようにしてでた士の声が、鳴海探偵事務所の中に小さく響き渡る。

探偵コンビと亜樹子はガイアメモリを熟知しているため、言いえて妙なその例えを

否定することも肯定することもできず、ただ黙って羽田睦の次の言葉を待ちわびた。

計六人の期待に応えるように、スーツの男が一呼吸の後に原性の特性を語る。

 

 

「原性メモリを使うためには、疑似挿入口と呼ばれる生体コネクタをメモリ使用者の

身体に、特殊なレーザーメスによる処置による処置で付着させなくちゃいけない。

コレはメモリを購入したその場で行われるから、ほとんどの場合がそうなる」

 

「生体コネクタ?」

 

「このコネクタを使用しない限り、ガイアメモリは人体と適合することはない。

あ、いや、絶対ではないんだ。ただ、その方が使用者との適合率が上がるという理由で

そういう処置を施しているだけでね。ただ、やはりメモリ内部の毒素はそのまま残る」

 

「ソレを使うと、どうなっちゃうんですか?」

 

「…………『ドーパント』と呼ばれる、怪物になる。地球の記憶の一部をその身に宿した、

醜悪で邪悪で最悪な、異形の怪人へと姿を変えてしまう。どこの誰でも、自由にね」

 

この世界におけるライダーの敵、怪人の名がドーパントと呼ばれていることを、

士たち三人は瞬時に頭に叩き込み、次いで語られる羽田睦の解説に耳を傾ける。

 

 

「地球の記憶というのは、地球が経験してきた現象や歴史の事だと思ってくれればいい。

例えば、<炎の記憶>のメモリなら炎の力を持つ怪人に、<水の記憶>のメモリなら

水の力を持つ怪人へとその姿を変えることが出来る。夢の超人になれると銘打って、

何も知らない訳ありな市民を騙し、より高品質なメモリを作るための生体データを

取るための実験材料(サンプル)にする。かつて、ミュージアムが行っていたことだ」

 

「なんて酷い‼」

 

「人を、そんなことのために………」

 

 

例によって義憤に駆られる夏海とユウスケの二人だったが、彼女らの言葉に反応を

示した羽田睦が、着ていたスーツの襟を右手で正しつつ、表情を暗くして話を続けた。

 

 

「実は、さっきも軽く触れたけど、原性メモリは生体コネクタ無しでの直接挿入、

いわゆる直挿しをすることもできる。ただ、これはメモリを扱う上ではなるべく

してはならない危険な方法なんだ。毒素の事もそうだけど、地球の記憶によって

人体を丸ごと変質させるエネルギーの余剰分を、直挿しでは処理できなくなる。

コネクタを通せば問題ないが、直挿しで使うと、後遺症が残る可能性が高いんだ」

 

「後遺症、ですか」

 

「………そこにいる探偵のお二人なら、きっと分かるはずだ」

 

 

それまで無言のままに、羽田睦のガイアメモリ講座を聞いていた自分たちへと話題を

振られた探偵コンビは一瞬戸惑ったものの、思い当たることがあったのか、顔を伏せた。

 

士たちは知らないことだが、かつてこの風都では、まだ成人になっていないような

子どもを対象にしたガイアメモリの実験が行われたことがあり、そういった中で、

ガイアメモリをコネクタ無しで直挿しした結果引き起こされた、悲しい事件があった。

翔太郎の行きつけの床屋の娘が、同級生の友達グループでガイアメモリを遊び感覚で

使い回していたことを探偵として突き止め、彼女らの若さからの葛藤と向き合った。

事件は仮面ライダーである二人と、そしてもう一人の風都を愛する男の尽力によって

解決することができたのだが、その代償は大きかった。街の風を愛した男は消され、

ガイアメモリを直挿しして使っていた中学生たちは、その後遺症に苦しめられた。

彼らが使ったのは<鳥の記憶>のメモリで、コネクタを有していた床屋の娘以外の

男子中学生二人と女子中学生一人は、体の一部が怪物化したままになってしまったのだ。

幸い回復には向かっているものの、まだ幼い彼らの心と体には、一生消えない傷が

深々と刻まれることとなり、当時の探偵二人は事件解決後も怒りと切なさに揺れた。

 

その時のことを思い出した翔太郎とフィリップは、互いに怒りの感情を再燃させ、

今もなお街に蔓延っているガイアメモリに対する正義感を、その心に募らせる。

そんな様子を見せられた夏海とユウスケは、改めて彼ら二人が仮面ライダーである事を

認識し、街の平和を守るために身を犠牲にして戦ってきたのだと、尊敬の念を抱いた。

そこまでの話を聞いていた士は、まだ話は終わってないだろと不愛想に告げ、続けさせる。

 

「それで、純性のメモリってのは?」

 

「純性のメモリは、原性メモリにあった毒素を限りなく取り除いたガイアメモリだ」

 

「じゃあ、身体にいいガイアメモリってことですか?」

 

「身体にいいメモリがあるかどうかは置いておくが、まぁ人体にさほど影響はない。

この純性のメモリはコネクタの代わりに、専用のスロットを介さなければ使用できない

弱点があるものの、使用者の安全を確保する作りになっている。原性の改良版だね」

 

「だったらどうして、そっちを使わないんですか?」

 

「もっともな疑問だが、この純性メモリはミュージアムでは試験的に作られていた

数本しか存在しないんだ。他にも何本か開発はされたらしいが、それらのメモリの開発に

携わっていた人物が途中で音信不通になってしまって、以降の生産はされていない」

 

「じゃあ、もしかしてそのメモリを持ってるのって」

 

「……………俺たちだ」

 

 

ユウスケの予想を肯定するように、翔太郎が壁に背を預けたままの姿勢で呟く。

そのまま彼は黒いジャケットの内ポケットをまさぐり、手のひら大の何かを取り出す。

彼の動きに合わせるように、座っていたフィリップも懐から同じ大きさの物を手にした。

 

 

「コイツが俺たちの使う純性のメモリ…………ドライバーを使って変身できる」

 

「しかし原性メモリと比べると威力はこちらが劣る。毒素の有無が関係しているようだ」

 

翔太郎が黒塗りの『J』のメモリを、フィリップが若葉色の『C』のメモリを見せつけ、

あまり時間を置かずに再び懐へと戻す。士はそれらに、とてつもない力が宿っていると

直感で理解し、その力に関することがこの世界ですべきことなのだと独自に決めつける。

 

粗方の解説は済んだと最後に締めくくり、羽田睦の即席ガイアメモリ講座の幕が下りる。

とりあえず知りたいことも知れた士たちは、最後に席を立とうとしたスーツの男へと

とある提案を口にした。

 

 

「なあ、そのガイアメモリ探しだが、俺たちも手伝ってやるよ」

 

「え?」

 

「はぁ⁉」

 

「士⁉」

 

「士君⁉」

 

提案を持ち出された羽田睦はおろか、連れの二人や翔太郎までもが驚きに声を荒げた。

もちろん当の士はまるで動じることはなかったが、それでも声が予想以上に響いたようで、

持ち前のクールな顔つきをわずかに歪めて、横の二人に小さく「うるさいぞ」と囁く。

 

しかし、ここで黙っていられないのが翔太郎だ。

 

彼は自分たちを頼って来る依頼人を放っておけないし、ましてや自分たちが誇りを持つ

仕事の邪魔をされるなど腹立たしいことこの上ないと思っている。つまり今回の士の

提案は、翔太郎にとってはまさにその邪魔立てにあたる行為になるわけなのだ。

 

 

「おいアンタ、さっきからずっと、なーんか癪に障る奴だと思ってたら、

いきなり何言いだすんだ。人の商売の邪魔しやがって、あぁ? おぉ?」

 

「ヤクザの下っ端みたいだね、翔太郎」

 

「ハッ! 俺がヤクザならコイツはチンピラだぜ。ホラ、素人はとっとと帰んな!」

 

「三流が生意気言いやがって。どうせ探偵っつっても、犬猫探しが関の山だろ」

 

「んなッ⁉ お前、どうしてそれを‼」

 

「後ろの執務机の上に、犬やら猫やらの張り紙が散らばってんぞ」

 

フィリップの的確な突込みも意味を成さず、翔太郎と士が激しくぶつかり合う。

かっこよく決めたと確信した翔太郎だったが、その相手の方が一枚上手だったようで、

普段からやる気が出ずに整理を怠った迷子の捜索依頼の山を包み隠さず見られてしまった。

あれだけ啖呵を切ったのにこの有様では格好はつかない。恥ずかしさに顔を真っ赤にした

翔太郎は、こんなことになってしまったそもそもの元凶に怒鳴るようにあたりちらす。

 

 

「オイ亜樹子ォ! お前がこんなモン請け負うからこんなことになるんだろうが‼」

 

「はぁ⁉ あたしが悪いって言うの⁉ 信じられへんわ‼」

 

「ハードボイルド探偵が、街中駆けずり回って迷子の犬猫捜すわけないだろ‼」

 

「何がハードボイルドよ‼ あたしがいなきゃこの事務所潰れてたのよ⁉」

 

「昔の話を掘り返すんじゃねぇよ‼ 今は関係ないだろうが‼」

 

「おおありよ‼」

 

 

およそダンディズムを掲げる探偵がするとは思えない仕事ばかりを、勝手に請け負う

所長の立場にいる亜樹子に愚痴を吐露するも、かえって言い争いの熱は増していく。

とうとう頬のつねり合いにまで発展した二人を、フィリップ以下四名は無言で見つめる。

依頼人の前で私情をこじらせるなよ、と脱力しつつ呟く士の代わりに、ユウスケが

喧噪の中でも我関せずといった態度で本を読みふける青年に助け舟を求める。

 

 

「ね、ねぇ。あの二人、どうにかした方が良くない?」

 

「………いつもの事さ。あと一分もしない内に、アキちゃんのスリッパで決着(カタ)が着くよ」

 

 

そう言って本から視線を外さないフィリップに、今度はユウスケが脱力する番となった。

 

 

そして彼の予告通り、27秒後に、亜樹子の突っ込みスリッパが高らかに名乗りを上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

士たちが鳴海探偵事務所を訪れてから、三時間ほど経過した現在。

落ち着きを取り戻した彼らは相談し、その結果から二手に分かれて捜索を開始した。

風都の東側を翔太郎と士、そして羽田睦の男三人組が担当し、

反対の西側をフィリップをはじめ、夏海、ユウスケ、亜樹子の四人が担当となった。

もちろん最初は全員で固まって捜索しようと平和的に検討していたのだが、またしても

両陣営の問題児である士と翔太郎がいがみ合いを始め、どちらが探偵として優れているかを

ハッキリさせようという結論に至り、二人は互いを睨み付けながら事務所を出て行った。

その後、羽田睦がフォローに行くと言い出し、彼らの後を追いかけて行った形になり、

残された四名は仕方なく、残ったメンバー同士で仲良くやろうということに収まった。

 

しかし場を混乱させる厄介な男がいないだけで、案外会話というのははかどるものらしく、

先程の場では話す機会がなかった四人はそれぞれ、互いに互いの話で盛り上がり始めた。

その結果、気軽に名前で呼び合う仲になり、こうして行動を共にすることとなった。

 

 

「はぁ~、風が気持ちいいですねぇ」

 

「ホントだよ。俺、この街の風気に入っちゃったかも」

 

そんな四人は現在、風都の中でも広大なスペースを誇る自然公園を訪れていた。

依頼であるガイアメモリ捜索もしていたのだが、そもそもの情報量が少なすぎたために

捜索が難航し、捜索初心者の二人を気遣って、どこかで休もうと亜樹子が提案したのだ。

風都でもこの公園は有名で、噴水や小さなレジャー施設まで完備されていて、休日は

親子連れやカップルなど、人の姿が絶えない観光スポットと化すこともあるほどだ。

 

屋根のある休憩所で息をつく夏海とユウスケは、ふと晴れやかな空を見上げてみる。

常に風が街中を吹き抜けていることもあってか、雲が青空の中を全力疾走しているように

見えるほどに風が駆け巡り、ベンチに腰を下ろす四人の髪や肌に触れて去っていった。

しばらく無心で空を見上げていると、視界の端に何やら、鈍色の塊がぼやけて見える。

アレは何だろうと気になった二人は目線を動かして、謎の物体へとその視線を向けた。

 

 

「アレ、なんですか?」

 

「んー? ああ、アレは風都タワーだよ。今は修復途中だけど」

「風都タワー? 東京タワーみたいなものかな」

 

 

遅れて亜樹子とフィリップが向けた視線の先には、巨大な建造物がそびえ立っていた。

銀色の巨大なタワーだったであろうその建物は、今は半ばで無くなってしまっている。

亜樹子の言った「修復途中」という言葉に引っかかりを覚えた夏海は、その理由を尋ねた。

 

 

「修復って、あんなに大規模なものなんですか?」

 

「ううん、違うよ。アレは、前にあそこで起きた事件の影響で壊れたの」

 

「事件?」

 

「_________風都タワー占拠事件。今から一年半前の事さ」

 

 

尋ねられた亜樹子の代わりに、フィリップが重苦し気に答え、かつての事件を語った。

 

 

現在から一年と半年ほど前の話、風都のシンボルでもあり、街中を流れる風の終着点と

しても機能していた風都タワーを、武装したテロリスト集団が侵入して占拠した。

その日は運悪く、風都タワー完成30周年を記念した花火大会のセレモニーがタワー内部で

催されており、多くの市民や企画スタッフ、警備員らが悪い意味で忘れられない夏を経験した。

 

タワーを占拠したのは、世界各地で活動が報告されていた不死の傭兵部隊『NEVER』で、

彼らは財団Xがミュージアムから受け取っていた、次世代型ガイアメモリの輸送ヘリを襲撃。

街中に散らばったガイアメモリを使い、市民を文字通りの地獄の底へと駆り立てていった。

さらには風都タワー内に巨大なビーム兵器を搭載させ、その中に仕組まれた特殊な酵素を人体に

作用させることで自分たちと同じ、不死身の人間へと作り替えようと画策していたのだ。

 

これに気付いた二人の探偵と一人の警察官が、仮面の英雄である仮面ライダーに変身し、

街に振り撒かれんとしていた脅威を、数々の奇跡をその身に受けて排撃することに成功した。

彼らが見上げている風都タワーは、その時の戦いで受けた市民の心の傷を表している。

一連の事件が終結した際、翔太郎は市民と同じく心に傷を負ったフィリップにそう諭した。

あの事件以来、それまでより一層ガイアメモリ犯罪に対して怒りと悲しみを沸き立たせるように

なり、そこから数か月後に彼ら仮面の英雄はミュージアムの壊滅をその手で実行したのだ。

 

 

「………あの時は、翔太郎に助けられたよ」

 

 

当時を懐かしむように語るフィリップ。その横顔を、ユウスケは羨ましそうに眺める。

離れていても互いを信頼し合い、時に背中を預け、時に互いの背負っているものを共に背負う。

そんな二人の探偵の姿を幻視し、自分も士とそういう関係なのかなと少々疑問を浮かべた。

 

フィリップの話を聞き終えた三人は、絶え間なく吹き続ける優しい風に身を委ねる。

このまま意識を手放して惰眠を貪れたら。そう考えたら、本当にそうなってしまいそうだと

亜樹子や夏海は注意するも、やはり一度脳裏に浮かんだ悪魔の囁きには抗えそうになかった。

ズルズルと意識を引きずられ、このままでは気持ちのいい昼寝に時間を費やしてしまうと

分かっていても、二人の女性の中に生まれた欲望には敵わず、徐々に瞼が下がっていく。

 

 

「__________ん?」

 

 

その時だった。

同じく昼下がりの惰眠に意識を強奪されかけていたユウスケの、クウガとしての超常的な

第六感とも言うべき何かが、彼に身に危険が差し迫っていることを伝えてきた。

慌てて周囲を警戒すると、風に乗って何かが聞こえてくる。微かだが、それは悲鳴だった。

何か危険なことが起こっていると察知したユウスケは、その場の三人に大声で警告する。

 

 

「みんな、何か様子が変だ!」

切迫した彼の声に驚き、眠りかかっていた二人と読書中だったフィリップの視線がぶつかる。

そうしている間にも風は遠くからの危険を運び込み、それがやがて鮮明になりつつあった。

 

聞こえてくる悲鳴。

何かが激しくぶつかり合う音。

日常ではありえない爆発音。

やがてそれらは喧噪と言って差し支えないほど大きくなり、彼らの視界に飛び込んできた。

 

 

「アレは、まさか‼」

 

 

最初にソレに対して反応を示したのは、フィリップだった。

 

広い自然公園の片隅にある、駐車場。そこから公園へと延びる道沿いにある芸術的アーチ。

それらの中を人々が悲鳴を上げながら逃げまどい、その向こうから異変の元凶が現れる。

 

 

『ヒャッハハハー‼』

 

『ウガアァァァァ‼』

 

 

爆発音や破砕音をBGMにして、およそ人とは思えない異形が、嘲笑と共にやって来た。

 

全身を寒冷地に降り積もる雪のような白に覆われた、黒い外皮との対照性(コントラスト)が不気味に映える異形。

セメントで構築されたような筋骨隆々の肉体に、左手首から先を鉄球に変えた巨体を持つ異形。

耳障りな狂声を張り上げる白と、左手の鉄球で視界内の物を粉砕しながら吠える巨体。

あまりにも特徴的な特性を持つ二体の異形が、何故かフィリップ達の前で暴れている。

夏海とユウスケは初めて見るドーパントに驚いているが、その青年は彼女らとはまた

別の意味での驚愕に身を震わせていた。

 

 

「アレは、<氷河の記憶(アイスエイジ)>に<暴虐の記憶(バイオレンス)>!」

 

人々を安寧から恐怖の渦へと突き落とした二体の名を、使われているメモリの名を叫ぶ。

あまりの驚きに迂闊な行動をとったことを今更ながら後悔するフィリップだったが、

彼の声に気付いた二体が立ち止まり、くるりと声のした方向へと身体を向けて再度進行する。

二体のドーパントが向かっているのは、フィリップ達四人を標的と定めたからだろう。

 

当然そのことに恐怖する夏海と亜樹子だが、フィリップはあくまでも冷静だった。

けれどそれは表面上だけであって、彼の内心はとある出来事を思い起こさせていた。

 

 

(どうしてあの二体が⁉ しかもこの組み合わせは、まるで一年半前のあの日と同じ‼)

 

 

脳裏によぎる嫌な予感を振り払い、とにかく目の前の脅威に対処しようと敵を見据える。

しかしここで重大なミスに気付いた。フィリップは今、ドーパントとは戦えない状態なのだ。

 

 

「しまった、翔太郎‼」

 

そう、彼らは二人で一人に変身する仮面ライダー。そして、ベルトの所有者は翔太郎のみ。

フィリップはその特殊な生まれの影響で、ベルトを共有することでしか効果を発揮できない。

つまり、翔太郎が腰にベルトを付けない限り、フィリップは自分の意志で変身できない。

 

 

「夏海ちゃん、亜樹子さん! 俺の後ろに下がって‼」

 

 

行動を起こせないフィリップの代わりに、ユウスケが女性二人を後ろに隠して構えを取る。

直後に彼の腰にはアークルが装着され、全身を流れる超古代のエネルギーを集束させて、

ユウスケ自身の覚悟をもってその力が、彼の肉体を超常的な力で変異させる。

 

だがフィリップにはそれができない。このままでは、亜樹子や二人を守れない。

彼は自分の事をこれまで、"悪魔"だと比喩してきたが、ここで初めて神に祈った。

 

かくして優しい悪魔の願いは、街を巡る風に聞き届けられる。

 

不意に腰に熱を帯びた感触を受け、フィリップが視線を下へ向けると、ベルトが装着されていた。

ここまでタイミングがいいと笑うしかないとばかりに、フィリップは相棒へと声をかける。

 

 

「まったく、最高の演出だよ」

 

『あン? なんか言ったか?』

「何でもない。それより、緊急事態だ」

 

『コッチもだ、いっちょ頼むぜ相棒!』

 

「…………仕方ない、強硬手段だ」

 

『はぁ? オイちょっと待てフィリップ!』

 

 

装着されたベルトを介して意思の疎通を行える彼らは、次に何をするかを伝え合う。

当然翔太郎がそのことに難色を示すが、実行するフィリップは止む無しとばかりに動き出す。

ベルトを装着した彼は、右手を開いて肩と同じ高さにまで上げてから、前へ突き出す。

すると数秒も経たぬうちに、どこからかやって来た何かが、彼に右の手のひらに収まり、

それを待っていたと言わんばかりに左手で上から押さえ、機構を動かして形状を変化させる。

手にしたソレはまるで、恐竜の白骨化した頭部を模したような、巨大なUSBメモリだった。

 

右手にしっかりと持ったソレを、フィリップは人差し指を動かしてボタンを押す。

 

 

【FANG】

 

 

獣が吠えたようなノイズが混じった電子音声が響き、それを青年は逆さに持ち直し、

自らの腰に装着されたバックルにある二つのスロットの、右側にそれを装填した。

待機中の充填音が鳴り続ける中、左側の空いているスロットに突如として、黒いメモリが

装填され、それをフィリップが左手でしっかりと押し込むようにして準備を完了させる。

雄叫びを上げて突っ込んでくる異形を見据え、『彼ら』はその覚悟を告げた。

 

 

「『変身‼』」

 

【FANG / JOKER】

 

 

右側のスロットに装填されたメモリの上部分をつかみ、フィリップはそれを押し開く。

二つのスロットはさながら、英単語の『W』を表すように両側へと開かれていき、

恐ろしい竜のような咆哮の直後に、強調されたブラックサウンドを響き渡らせた。

 

フィリップの全身を小さな白と黒の破片が覆い、それが晴れると、仮面の戦士が立っていた。

太古の昔に絶滅してもなお褪せない鋭さを保つが如き白磁の右半身に、

あらゆる逆境を乗り越えて自らが望む勝利を約束する漆黒の左半身。

万物を切り裂くであろう恐ろしき竜の爪に守られた、紅蓮の双眸。

 

現れ立つは、<牙の記憶>と<切札の記憶>を複合させた、仮面の英雄。

 

 

その名も、【仮面ライダーW(ダブル) ファング/ジョーカー】

 

突然現れた戦士を前に、二体の異形は足を止めて警戒心を露わにする。

その背に街の人々の希望と涙を背負い、牙と切札の戦士はその言葉を口にする。

 

 

「『さぁ、お前の罪を数えろ‼』」

 

 







いかがだったでしょうか?

ついに出すことができましたよ! ええ、感無量です!
私がWで一番好きな形態、WFJ(ダブルファングジョーカー)‼
あのボディラインや外見が、私の好みにストライクエンドでして、ハイ!
アレですね、白黒ツートンのカラーリングが好きだったりします。
なので、333のデルタや轟鬼、ダークゴーストが個人的お気に入りですね。

それはともかく、ようやく皆様のご期待に添えられたかと思います!
本当にこれだけ書くのは大変で大変で(以下略

加えて今回の話で出てきたW本編のとある回のお話ですが、
私の独断で少々話の後付けをさせていただきました。
気になる方は是非本編をご確認いただければと思っております。

それでは次回、Ep,28『Fの共闘 / 過去の来襲』

ご意見ご感想、並びに批評も常時受け付けております!

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