仮面ライダーディケイド ~The Darkness History~   作:萃夢想天

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どうも皆様、【シン・ゴジラ】を見て絶望しきった萃夢想天です。
何があったかは詳しく語りません。出来れば劇場でご覧ください。

そんなことよりも、大変長らくお待たせしてしまいましたことを
心よりお詫び申し上げます。本当にすみませんでした‼

忙しかったことも理由の一つなんですが、何より文が書けないこと。
元から文才なんてものは皆無だったんですが、よりクオリティが
下がりきってしまって本当に情けなく思います。


報告と謝罪はここまでにしましょう。
今回ばかりは張り切らせていただきます。
長期休暇に突入したので、私もバンバン書き進めますよ‼(希望)


それでは、どうぞ!





Ep,22『PERFECT HARMONY ~繋がる想い~』

 

 

 

「おりゃああ‼」

 

「はっ‼」

 

 

腰に装着しているベルト以外は全く見分けがつかないほど酷似した姿の二人のクウガは、

眼前で驚きのあまり意識をわずかに逸らして棒立ちしているマディカに同時に殴り掛かる。

 

 

「くっ‼」

 

 

つい先程まで戦っていたマゼンタカラーの仮面の戦士が突如、横槍を入れてきた真紅の

戦士と全く同じ姿に変化したことに意識を乱されたマディカは対応しきれず、防御に専念した。

しかし相手はオールランドタイプとはいえ徒手空拳に優れた肉弾戦特化型のマイティフォーム、

そのクウガが二人同時に攻撃をしたとなれば当然耐えきることなど出来ず、大きく吹き飛ぶ。

腕を交差させて防御をしたが耐え切れずに押し切られたマディカの姿を見て、二人のクウガは

追撃のチャンスと踏んで互いが互いの呼吸に合わせるかのように息の合った動きで攻撃する。

先にディケイドがライドしたクウガ(以後はディケイドと呼称)がマディカの懐に潜り込んで

左拳のフックを脇腹にくらわせ、ユウスケの変身したクウガ(以後もクウガと呼称)がそこへ

追い打ちをかけるように二つの拳の乱打を浴びせた。

 

 

「おおおぉ、りゃあ‼」

 

「ぐぅあ‼」

 

 

二人の同時攻撃を受けてわずかによろけるマディカ。そしてその隙を、二人のクウガは逃さない。

いつでも攻撃できるように臨戦態勢を整えているクウガの横で、ディケイドはライドブッカーを

取り出して開き、そこから一枚のカードを取り出して指でつまみ、ひらひらとクウガに見せる。

ディケイドの取り出したカードの意味を理解したクウガは無言で頷き、マディカを見据ながら

ベルトの左腰部に備わっているボタンを、左手を拳上にした外側で押し込んで叫んだ。

 

 

「超変身‼」

 

「さて、クワガタvsカマキリの第2ラウンドだぜ。立てよ」

 

【FOAM RIDE KUUGA TITAN!】

 

クウガがボタンを押し込むのとほぼ同タイミングでディケイドもカードをバックルに装填し、

機構を動かして情報を読み取り自身へと反映させていた。

 

よろめいたマディカが受けたダメージを確認しつつ顔を上げて前を見ると、その先にいたのは

真紅の鎧をまとった二人の戦士ではなく、青と銀の鎧をまとった別々の戦士が立っていた。

 

 

「…………また、変わったのか」

 

「当たりだ。行くぞユウスケ!」

 

「おうっ!」

 

 

マディカの呟きにディケイドが答え、クウガと共にマディカへ向けて前進し始める。

駆け出す二人の戦士を前にしてもマディカは臆することなく拳を構え、迎撃の態勢をとった。

対するは流水の如き青の龍戦士に超変身したドラゴンフォームのクウガと、フォームライドの

カードを使ってフォームチェンジした地割れの如き紫の重戦士こと、タイタンフォームのクウガ。

異なる特性と戦法を得た二人が同時にマディカへと向かっていき、共に攻撃を繰り出す。

 

 

「…………いい気になるな」

 

 

しかしマディカは互いの移動速度の違いから迎撃の優先順位を定め、先にドラゴンフォームの

クウガを相手取ることを決めた。強化された脚力を活かしての飛び蹴りを繰り出すクウガの

蹴りを躱して身を(ひるがえ)し、マディカは相手の着地の隙を狙って両拳で二度打撃を与える。

怯んだ青のクウガを確認し、今度は向かってくる銀の鎧をまとったタイタンフォームを見据える。

一撃の攻撃力が高いことを読んだマディカは迫り来るディケイドに向けて逆に接近戦を挑んだ。

 

 

「ほぉ、面白い」

 

 

マディカが自身に接近した来たことの意味を即座に理解したディケイドは首を上向きに逸らし、

挑発的にも取れる上からの目線と態度と共に軽口を叩きつつ応戦の意思を見せる。

言外に「かかってこい」と言っているに等しいディケイドの態度にわずかながらの苛立ちを

覚えたマディカは、バックルのゼクターを右腕部のクロッチに装着し、クローを展開した。

ディケイドがソードモードにしたライドブッカーを、マディカがマンティスクローを互いに

向け合いながら駆け出すその最中、不意にディケイドが声を張った。

 

 

「今だ、ユウスケ!」

 

「おう! とりゃぁああ‼」

 

ディケイドへと猛進するマディカの背後から雄叫びが聞こえたと同時に、彼の背後に衝撃が奔る。

火花を散らしながら衝撃を受けて前方へと転がっていくマディカは、自身の背後にいる者を見た。

 

マディカがいた場所には、いつの間にか専用武器のドラゴンロッドを手にしたクウガがいた。

ドラゴンロッドを振りかざしたクウガは油断無く地面に転がっているマディカを捉え続けている。

突然の背後からの奇襲に完全に出し抜かれたマディカは怒りのボルテージを底上げさせられたが、

その怒りの感情に呑まれたわずかな時間の間に、前方にいたディケイドは攻撃に移行していた。

 

 

「やあぁ‼」

 

「ぐおッ⁉ ぐ、くっ!」

 

 

ディケイドの振り抜いたソードブッカーの剣先は、確実にマディカの装甲を切り裂いていた。

元々ホッパー型の装甲を改良して作られたマディカの軽装甲は、大した強度ではなかった上に

攻撃力にも特化しているタイタンフォームのクウガの一撃を受け無事であるはずがない。

先程以上に激しく火花を散らして大きく吹き飛ばされて、さらに深いダメージを負った。

喰らいたくなかった一撃を受けてしまい、立ち上がるのも苦労するほどの傷を蓄積させられた

マディカは、これ以上の攻撃を受ければ確実に負けると結論付け、次の戦法を模索し始める。

 

しかし、二人のクウガの攻撃はまだ終わってなどいない。

 

 

「超変身‼」

 

【FOAM RIDE KUUGA PEGASUS!】

 

「第3ラウンド、いくぜ?」

 

 

再びクウガは左腰部のボタンを押して超変身し、ディケイドもカードを装填して姿を変えた。

ドラゴンフォームだったクウガはその生体鎧を変化させて銀色の鎧を、タイタンフォームへと

変化を遂げて、ディケイドは次なるフォームライドで緑のペガサスフォームへと変わった。

二人はクウガの固有能力である『モーフィングパワー』、いわゆる物質変換の力を発動させて

互いが手にしている武器をそれぞれの専用武器へと変化させて、マディカに向けて構える。

フラフラとよろけながら立ち上がってみせたマディカは、彼らに対抗するようにクローを

どこからでもかかってこいと言わんばかりに揺らして挑発した。

 

 

「余裕そうだな。いや、慢心か?」

 

「…………強者の余裕、と言うヤツだ」

 

「強者、ね。だったら今すぐ敗者にランクダウンさせてやるぜ」

 

「…………やってみろ」

 

 

マディカからの挑発にディケイドはさらに挑発を上乗せして返答する。

互いが互いの挑発に乗ってほぼ同時に駆け出し、両者の攻防の幕が切って落とされた。

 

颯爽と駆け出したマディカはクローで頭部を庇い、ディケイドはそこに集中砲火を浴びせる。

手にしたブッカーソードをブッカーガンに変形させ、さらにそこからペガサスボウガンへと能力

によって姿を変えさせた彼は、トリガーを引きながらひたすら銃口をマディカへ向け続けた。

絶え間無く射出され続けるペガサスボウガンからの銃撃をマディカはどうにかしのぎ接近し、

射撃特化型のペガサスフォームであれば接近戦に持ち込もうとひたすら前進を止めなかった。

しかしマディカが己の拳が届く範囲にディケイドを捉えたものの、自身の繰り出す拳も蹴りも

全て難なく受け止めるか回避されるかでダメージらしいダメージを与えられなかった。

回し蹴りを織り交ぜた連撃をつなぎ、最後にクローを装着した右拳の正拳突きで止めと

考えていたマディカの想定を裏切るが如く、ディケイドは全てをいなし、無効化した。

 

 

「…………バカな」

 

「悪いな、この程度でやられるほど俺は柔じゃない」

 

「…………異世界の、ライダー」

 

「ああそうだ。俺も、そして___________ソイツもな」

 

「何ッ⁉ しまっ‼」

 

「どりゃぁあああ‼」

 

 

ディケイドとの攻防で意識がそちらに向いていたわずかな時間の隙を狙って、クウガが

マディカの背後を完全に捉え、タイタンの膂力を活かして全力のパンチを叩き込んだ。

攻撃力そのものが向上している紫の力での一撃の重さは既に身を以て経験したはずが、

ほんの一瞬の油断で再び軽装甲のマディカへその圧倒的なダメージが打ち込まれる。

前方にいたディケイドすらも飛び越えていくほどのパワーで殴り飛ばされたマディカは

飛ばされた先にあった建物の一角にぶち当たって、コンクリートの破片などを辺りに

まき散らしながらそのまま建物の中へと消えていった。

 

 

「あっ、ヤバ。ちょっと強く殴り過ぎたかな」

 

「………オイ、くるぞユウスケ。さっさとフォームチェンジしろ」

 

「え? あ、お、おう!」

 

「…………くるぜ、クロックアップが」

 

「アレを使われたら厄介だな、よし! 超変身‼」

 

「次で一気に畳みかけるぞ、ユウスケ!」

 

【FOAM RIDE KUUGA DRAGON!】

 

 

姿が見えなくなったマディカに対する警戒を怠らず、ディケイドはクウガに注意するよう

呼びかけながら再び同じタイミングで異なる姿のクウガへとフォームチェンジを果たす。

ディケイドは青いドラゴンフォームへ、クウガは逆に緑のペガサスフォームへ変化した。

そして二人は互いの持っていた専用武器を投げ渡して交換し、モーフィングパワーを

発動させて自分のフォームに特化した専用武器へと変換させて臨戦態勢を整えた。

ドラゴンロッドを一回転させて肩にコツンと乗せたディケイドは、クウガに告げる。

 

 

「俺が先に仕掛ける。お前はペガサスの超感覚で奴を撃ち抜け、いいな?」

 

「へっ、分かってるって! さっきクロックアップしたワームもこれで倒したんだぜ?」

 

「相手をワームと同列に考えるな。奴はライダーだ、甘く見るなよ」

 

「大丈夫だって! それに、急がなきゃいけないだろ」

 

「………それも、そうだったな」

 

 

改めてクロックアップ発動を警戒するように言ったディケイドをクウガは見つめる。

クウガが放った言葉の意味を理解したディケイドは、既に自分たちよりも先にここで

戦闘を行っているであろうこの世界のライダーの事を思い出し、戦意を再び高めた。

 

二人のクウガが臨戦態勢を取る中、マディカは自身がぶつかって崩した建物の一部を

どこか虚ろな双眸で見つめ、人の頭ほどの大きさのコンクリート片を足で踏み砕いた。

先程からいいようにやられている自分に対する怒りも当然あるのだが、それよりも

完璧に息の合ったコンビネーションを見せつけてくる彼らを見て、『ある事』を

思い出しかけた自分自身に最も苛立ったことによる行動だった。

 

 

(…………相棒)

 

 

言葉には出さないが、二人の連携を見てマディカは失ったかつての義弟を思い出し、

ガラにもなく、まして戦闘の最中だと言うのに物思いにふけってしまっていた。

そのことに気付き慌てて思考を切り替えて冷静になり、目の前の現実と向き合う。

 

完璧なコンビネーションはかなり厄介だ。敵の腕の高さを認めざるを得ない。

しかしそれでも自分が負ける理由にはならないし、負ける事こそ有り得ない。

 

何故なら自分にはまだ、状況を一手でひっくり返すことのできる力があるからだ。

 

 

「…………先に地獄へ、送ってやろう」

 

 

誰に言うでもなく細々と呟いたマディカは、自身のベルトの右腰部のレバーを押す。

それと同時にベルトから電子音声が流れ、今行った行動の結果を機械的に伝えた。

 

 

【Clock Up!】

 

 

マディカがクロックアップ発動装置を起動した瞬間、世界に流れる時間が変わった。

風に乗って巻き上げられた土埃はその場で動きを止め、崩れ落ちていく壁の破片は

空中で固定されているようにピタリと動かなくなった。クロックアップの世界だ。

時間の流れを局地的に変動させて相手と自分との間に絶対的なアドバンテージを

生み出すこの能力を使えば、相手が未知の強敵だろうと二人がかりだろうと問題無い。

右腕のゼクターから伸びるクローを構えて崩落しつつあった建物から飛び出し、

十数メートル先で応戦する用意をしているであろう相手の懐に潜るべく駆け出す。

静止して動かない土埃を突き抜けていったマディカは、そこで初めて違和感に気付いた。

 

「…………一人いない? どこだ⁉」

 

 

クロックアップを発動している以上、自分よりも早く動ける存在など皆無のはず

なのに、なぜ今自分の目の前には銃のような武器を構えた緑色の戦士しかいないのか。

状況が呑み込めずに周囲を見回したマディカだったが、そこに小さな影が差していた。

一体何の影かと気にも留めようとしなかった彼は、違和感の正体に気付き上を見る。

するとマディカよりもはるか上空に、ロッドを構えた青い戦士が浮いているではないか。

 

 

(何故あんなところに⁉ いや、そうか。あの青色は脚力を強化しているのか!)

 

 

忌々しげに上空で無防備な姿を晒している青い戦士を下から見上げてそう思考する。

いくら誰よりも早く動ける世界に身を置いても、自身の身体能力が上がる訳ではない。

つまり、発動した者のステータス自体に変化は無く、跳躍力も何ら変化はないのだ。

このクロックアップが単純な加速の能力だったのならば話は違っていたのだろうが、

違うものは違う。マディカの脚力では青いクウガのいる場所までは到達できない。

 

自分の力では、遥か高みには到達できない。自分では、あの場所には届かない。

 

まるで今の自分自身を暗喩しているかの如き状況にますます苛立ちが募る。

日陰者とならざるを得なかった自分はそうなるのが宿命だったとでも言うのか、と

マディカは空中でロッドを構えたまま動けない青のクウガに憎悪の視線を向けた。

するとちょうど空に輝く太陽とクウガが重なり合い、マディカの視界を覆った。

 

 

「ぐっ‼ くっ…………太陽ぉ、またお前は俺の邪魔をォォ‼」

 

 

上空に佇む敵に向けたものよりもさらに強い憎しみの念を込めた視線を、

その背後にある巨大な天体__________燦然と輝く太陽に向けて射貫くように睨む。

まるでその太陽が自分を栄光の道から突き落としたあの男であるかのように見えて、

マディカは一瞬で二人に感じていた苛立ちを遥かに超えた怒りを胸の内に沸き起こした。

両方の拳を握り締め、彼は上空で自らを見下す太陽と戦士(ふたりのおとこ)に怨念を向ける。

 

しかし、彼は知らなかった。

 

クロックアップの最中に立ち止まるとどうなるのかを。

 

そして、彼の背後で銃を構えている緑のクウガの超常的な感覚の存在を。

 

 

「そこだッ‼」

 

「がぁッ⁉」

 

【Clock Over!】

 

 

またしても背後からの不意打ちを許してしまったマディカはそのまま膝を地に付ける。

そしてクロックアップを発動している最中は、自身の装甲の溝を絶え間無く流れて

自分自身の防御力と制動性を高めているタキオン粒子を全て動力にしてしまっている

ために一時的に弱体化してしまい、ダメージの許容値が大幅に下がってしまう。

その影響で限界値を超えた結果、装着者の保護を優先するプログラムが施行されて

タキオン粒子を再度身にまとうために強制的にクロックアップ発動を解除された。

世界に流れる時間が正常に戻り、上空へと跳躍していたディケイドも地上へと落下

して戻ってきた。そしてそのまま立ち上がろうと踏ん張るマディカにロッドを回転

させながら攻撃を加え、流れるような連撃を叩き込んだ末に打突で吹き飛ばした。

 

 

「ぐおッ…………ぐ、あぁ」

 

 

既に装甲の三割ほどがダメージによって壊れてしまったマディカはうめき声をあげる。

そんな相手の姿を見やりながら、ディケイドとクウガは互いの武器を取り換えた。

 

 

「ほらよ、士」

 

「ああ、ほれ」

 

 

ディケイドはクウガから渡されたペガサスボウガンを本来のブッカーガンの状態へと戻し、

クウガはディケイドから渡されたドラゴンロッドを元々の長めの鉄筋へと変化させた。

 

「さて、俺たちも忙しいんでな。コイツが最終ラウンドだ」

 

「はぁぁ…………はっ!」

 

【KAMEN RIDE KUUGA!】

 

肩を並べた二人は互いの変身シークエンスを通して再び同じ赤いクウガとなった。

そしてそのままディケイドはライドブッカーから二枚のカードを取り出してみせる。

豪奢な金色の縁取りのカードを見たクウガはわずかに動揺するも、それよりも早く

ディケイドがバックルに二枚の内の片方を装填し、機構を動かして発動させた。

ベルトのバックルに装填されたカードの情報が読み取られ、電子音声が響き渡る。

 

 

【FINAL FOAM RIDE KU,KU,KU,KUUGA!】

 

「うおぁぁあ‼ やっぱりコレかぁぁぁあ‼」

 

「大人しくしてろ、暴れるな」

 

 

【ファイナルフォームライド クウガ】を発動させた直後、クウガの体が宙に浮き、

そのまま足や胴体がグルグルと回転したり展開したりして、その姿が変わった。

 

超古代の戦士クウガに厚き忠を尽くす叡知の結晶、ゴウラムへと変貌を遂げた。

外観は完全に巨大なクワガタのゴウラムを従え、クウガにライドしたディケイドは

さらにもう一枚の金色のカードをバックルに装填し、その効果を発動させる。

 

 

【FINAL ATTACK RIDE KU,KU,KU,KUUGA!】

 

 

最終攻撃(ファイナルアタック)の名の通り、ディケイドの持つクウガの必殺技を呼び起こすカードを発動させて

ディケイドは腰を落とし両手をその辺りへ下げつつ、右足を前方へと突き出して構えを取る。

途端にクウガが体内に宿す封印の力が右足へと収束していき、バリバリと火花を散らす。

 

【俺に任せろ、士!】

 

 

力を蓄えているディケイドにゴウラムと化したクウガが語り掛け、行動を始める。

ゴウラムは下を向いて自身を回転させながら掘削機のように地面に穴を掘り出し、

そのまま自身が通れる大きさへどんどん穴を拡大させ、その姿を地中へ消した。

しかしその数秒後にダメージを負ってふらついていたマディカの足元に潜り込み、

アスファルトの地面を容易くぶち破ってそのまま上にいた敵を挟み込んで拘束。

その状態のまま地面から飛び出して建物に三回ほど突っ込んでから旋回した。

 

 

【今だ! いくぞ士ぁ‼】

 

「はっ!」

 

 

挟み込まれて壁に三回もぶつけられながらも抵抗を試みるマディカを落とさぬように

しっかりと拘束しながら、ゴウラムは力を蓄えるディケイドへと急接近する。

ゴウラムの、クウガの言葉を聞き入れたディケイドは猛然と駆け出し始めていき、

数メートルほどダッシュした後に大きく跳躍し一回転、右足を素早く突き出した。

 

 

「やあぁぁぁあああ‼」

 

【おりゃあぁぁぁああ‼】

 

跳躍してクウガの必殺技、マイティキックを繰り出したディケイドにゴウラムが

突貫していき、『ディケイドアサルト』ならぬ『クウガアサルト』が直撃する。

逃げる事も防ぐことも出来ずにまともに喰らったマディカは断末魔一つあげる暇すら

与えられずに両者の間で全てのダメージを受け切り、大爆発に飲み込まれた。

 

背後に爆炎をたたえながら、二人の戦士が同時に地面へと着地する。

ゴウラムはその姿を空中で可変させながら元のクウガに戻り、サムズアップをしてみせ、

ディケイドはライドしていたクウガの姿が歪み、本来のマゼンタの装甲に覆われた。

両手をパンパンと音を立てながら打ち払い、ディケイドは悠然と背後を振り返る。

その視線の先には限界値を超えたダメージによって変身を解除されたマディカ、

もとい装着者の矢車がうつ伏せになって身体を痙攣させながら倒れていた。

 

 

「………………」

 

 

無言のままに矢車を見つめる士だったが、その行動はすぐに中断させられる。

 

「よし! 士、早く優未恵ちゃんを助けにいこう‼」

 

「ん? ああ、そうだな」

 

 

ここに来た本来の目的を変身を解除したクウガ、ユウスケに諭される。

その言葉に了解して同じく変身を解除したディケイド、士は二人で周囲を見回す。

すると突然轟音と共に巨大な建物の内の一つから爆発の炎が噴き上がり、そこで戦闘が

行われていることを二人に告げた。ユウスケと士は迷うことなくその建物を目指し駆け出す。

 

「………………………」

 

二人の戦士が駆けていったその後ろ姿を、倒れていた矢車はただじっと見つめていた。

その眼には先程のような強い憎しみも怒りも無く、ただただ空虚な眼差しでしかなかった。

自身の肉体を駆け巡る痛みに顔を歪めながらも、彼はその視線を途絶えさせずにいた。

 

しかし、突然彼の見つめる視線の前に、あるものが訪れた。

 

唐突に現れたソレに気付いた矢車は、ソレが何であるかを思い出して驚愕する。

 

 

「おま、えは…………」

 

倒れ伏した矢車の前で、新緑色のバッタ型ゼクターが飛び跳ねていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウスケと士がマディカを撃破した同時刻、工場内にて。

 

無数に蠢く深緑色を前に、二人の男が果敢に立ち向かっていた。

 

 

「…………ふん」

 

「くっ!」

 

 

鮮やかな深紅の鎧をまとっている蒼眸の戦士と、スーツを着て銃を撃つ男。

この二人がこの工場内で群体を成すローカストワームと対峙してから既に、

二十分以上の時間が経過していたのだが、当の二人は知る由もなかった。

 

しかし疲労と集中力の低下は実感させられているようで、戦士も男も互いの

攻撃が徐々に相手に対して効果が薄れてきていることを悟り始めた。

 

 

「くっ、もう残弾が……………どうするんだ、天道‼」

 

 

オールバックでスーツを着こなす男、田所が銃を撃ちながら戦士に問う。

蒼い双眸を暗い工場内で輝かせながら徒手空拳で戦い続けている戦士、天道は

田所からの問いかけにローカストワームの一体に拳を打ち込んでから答えた。

 

 

「…………そろそろか。アレを使え、田所」

 

「使えったって、そんな急に言われても、なぁ!

それにアレを見つけたはいいが、結局使えるかどうかまでは試してないぞ‼」

 

「俺を信じろ、お前なら必ず使える」

 

「何故そう、言いきれる⁉」

 

「俺が…………選ばれし者だからだ」

 

「…………ふっ、その俺様節を聞くのも何時振りだったか」

 

 

天道からの自信に満ち満ちた返答を聞いた田所は、その数年ぶりに聞く独特な

言い回しを懐かしみながら左手をスーツの内側に忍ばせ、ある物を取り出した。

田所が取り出したものを見て近くにいた数体のローカストワームが声を荒げる。

 

 

『バカな‼ それは…………何故貴様が持っている⁉』

 

『ソレの資格者はもう死んでいる(・・・・・・・)‼ 何故だ、答えろ田所‼』

 

明らかに狼狽している数体のローカストワームに気付き、他の同一個体も同じく

田所の持つものを見て驚愕に息を飲み、同時に田所への警戒度を一気に高めた。

ほんのわずかな間に場の空気を完全に変えた田所は手にしたものがどうか正しく

作動してくれるようにと心の内で願いつつ、それをスーツで上手く見えなくしていた

独特な形状のベルトのバックル部分に装填し、ゆっくりと瞳を閉じつつ声高に叫んだ。

 

「___________変身‼」

 

【Change Punch Hopper!】

 

 

天道のカブトゼクターや加賀美のガタックゼクターよりもわずかに高い電子音声が

薄明りとざわめく深緑色の異形たちの中で響き渡り、その存在をより強調させる。

田所の身体が瞬時に六角形のタイルが覆わていき、五秒も経たぬうちにその姿を

先程のスーツ姿とはかけ離れた、軽微かつ鋭角的な装甲をまとった戦士へと変貌させた。

 

 

バッタを後ろから見たようなフォルムの鋭角的な頭部に、両側頭部の脚型アンテナ。

カブトやガタックらとは明らかに異なる形状のマスクで田所の顔は完全に覆われる。

胴体の鎧には巨大なXを思わせるラインが奔り、両肩部には刺々しい防具が装着され、

彼の右腕にはまさしくバッタの後ろ脚の如き巨大なアンカージャッキが備わっている。

 

かつてはこの世の何者からも否定され、利用され、捨てられた哀れな弱者だったこの姿。

しかし今は違う。拳を構える角度、脚の開き具合、立ち振る舞いと全てが別人となった。

だが彼の、人間の醜い部分を凝縮して濁らせたような、白濁色の双眸は変わらない。

光を奪われて歪み淀んだその瞳は、己以外の全てを汚そうとするかのように怪しく輝く。

 

 

地獄の底を歩み続ける日陰者の弟、『仮面ライダーパンチホッパー』が再び甦った。

 

 

 








いかがだったでしょうか?
久々の投稿だったので張り切らせていただきました!
今回は気合充分、準備万端で挑ませていただいてここまで書けました!

この展開をようやく書くことが出来て私は満足です‼(オイコラ)

本当なら前回でここまで書くつもりだったんですが、すみませんです。
そして友人に修正箇所を何度も指摘されたので、今度は直します。


さぁ、いよいよカブトの世界も大詰め‼
破壊者よ、神速の世界を破壊しろ‼


次回、Ep,23『NEXT LEVEL ~光差す道へ~』

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