仮面ライダーディケイド ~The Darkness History~ 作:萃夢想天
この作品では、各平成ライダーシリーズの
世界を旅することになりますが、その全てに
「オリジナルライダー」または
「オリジナルフォーム」が登場します。
そういった部分が苦手な方は、ブラウザバック推奨です。
それでは、どうぞ!
______________夢を、見ていた。
鳴り止まない爆発音。
幾度も飛び交う怒号。
戦士達の痛烈な悲鳴。
その中心には、いつも一人の『悪魔』が立っていた。
全身を染め上げる、色褪せた返り血の如きマゼンタカラー。
淡く、だが決して弱くは無い光を帯びたグリーンの両眼。
胸部から左肩を、斜めに貫いた十字架のような黒白のライン。
両腕と両足の内側に映える、ボディと対照的な白いカバー。
「…………こ、の……『悪魔』め………」
爆音と共に吹き飛ばされた仮面の戦士の一人が、
心の底から憎しみをぶつけるように吐き捨てて倒れた。
それっきり動かなくなってしまったその戦士を、
『悪魔』はしばらく見つめていたが、
誰に言うでもなく、こう言った。
「………か弱い者は、自らが及ばぬ存在をいつも、想像上にしか
存在しないものに例えたがる…。もう聞き飽きたな………」
そう言って、目的も無くただ歩き出そうとした、その時_____
「待ちやがれ、そこのピンクの‼」
「……アレはピンクではなく、マゼンタだよ翔太郎」
「どっちでもいい‼ おいアンタ、よくも俺の
「………アンタには一度救われたが、人の希望すら『破壊』するんなら、見過ごせないな」
「貴方の『破壊』は、『欲望』でもなんでもない…。ただのエゴなんだ……」
「どんな相手とだって分かり合えるのにただ壊すだけなんて、絶対間違ってる‼」
切り立った断崖の上に、五人の戦士が並び立っている。
一番手前が、頭から緑と黒の二色で分けられた戦士。
その左には、白がベースの尖った頭の若そうな戦士。
少し奥には、頭部から全身に宝石をちりばめた戦士。
更に右側に、上から赤、黄、緑の三色で揃えた戦士。
一番最後に、オレンジ色の武者鎧を被っている戦士。
「フン……さっさと降りてこい。粉々に『破壊』してやる……お前らの『世界』ごとな‼」
そして五人の戦士の蹴りが、一人の『悪魔』に向かって放たれた。
「_____________ぅあァ‼‼ …………ああ?」
と同時に、目が覚めた。
全身を汗でグッショリと湿らせたシャツに不快感を覚えたからか。
それとも__________今見た夢のせいなのか。
「しかし、誰だったんだ?最後のあの五人……。ライダー、だよな?」
目覚めたばかりの脳をフル回転させ記憶を引き出すも、
やはり彼らと一致する『仮面ライダー』はいなかった。
「あ、
「…………ついさっき、な」
「うわ、汗びっしょびしょじゃんか‼ ………寝ながら腕立てでもしてたのか?」
有り得ない方向に見当違いなことを言いだした彼は、
『仮面ライダークウガ』こと、『小野寺 ユウスケ』。
突然始まったディケイドの旅で、一番最初にであった仮面ライダーであり、
今やこの『光 写真館』の居候第2号となっている。
では、記念すべき1号は一体誰なのか?
「いくら俺が器用に何でもこなす男でも、そんな残念な器用さは要らんな」
茶髪がかったヘアカラーに、汗で張り付いたストレートヘアー。
キリッと凛々しく上がった眉に、張りのある血色のよい肌。
彼こそが、『仮面ライダーディケイド』である『門矢 士』その人だ。
何処からともなくフラッと現れて、何故か写真館に居着いてしまった男。
本人には、居候になる前の記憶が無く、唯一の手掛かりは愛用のカメラだった。
二人が朝の挨拶代わりに色々言い合っていると、
二階から階段を下りてくる足音が聞こえてきた。
「あ、士君。起きてたんですね」
「おはよう夏ミカン。悪いがシャワー貸してくれ、今日はやけに代謝が良くてな」
汗ばんで着心地の最悪なシャツを脱ぎ捨てつつ、士は朝一のシャワーを要求した。
「誰がミカンですか!ってちょっと、此処で脱がないでください‼」
顔を覆い隠しながら悶えている『夏ミカン』と呼ばれた彼女は、
『光 夏美』。この二人の居候している『光 写真館』の館長の愛する孫だ。
ディケイドの旅に巻き込まれ、様々な困難を乗り越えてきた彼女は
味方としてはもはや充分心強い存在だろう。
「コラ士君。ダメじゃないか、脱いだらちゃんと畳まなきゃ~」
「信頼出来る主夫がいるから問題は無い。今日もイイ仕事期待してるぜ、爺さん」
「え?そ、そう?よぉ~し、頑張っちゃおっかな~」
「何でちょっと嬉しそうなんですか‼ もう、おじいちゃんってば‼」
その愛する孫に怒鳴られている初老の男性は、『光 栄次郎』。
ディケイドの旅の拠点である『光 写真館』の館長であり、
写真撮影からこだわりのコーヒー、果てはスイーツ作りの名人でもある。
「そう言えば栄次郎さん、アレってどうなりました?」
「アレ?あぁ、
「んん~、気分爽快。確かにさっぱりしたぜ~」
「ううん、違うの士君。そっちじゃなくって、あっちの方だよ」
「ああ、アレまだ直らないのか」
「そうなんだよ~。僕も早く次の世界でお茶菓子作りたいのに~」
いつもディケイドの旅は、この『光 写真館』1階中央の
撮影機材の置いてある部屋の背景フィルムを降ろすことで
ようやくその行き先が決まる仕組みになっていた。
何故そうなのかは誰にも分からないのだが。
つまり、それが降ろせない今、ディケイドの旅は
ほんの僅かな休息の時を意味しているのだ。
「でも、今度はどんな世界にいくんだろ?」
「仮面ライダーの世界はほとんど回りましたし……」
「またライダーのいない世界かもな」
「そんなの嫌です。行くならライダーのいる世界がいいです」
「夏美ちゃんの希望で行き先は変わらないと思うけど……」
「そんなのわかってます。言ってみただけです」
栄次郎の出す朝の一杯を楽しみに待ちながら、
三人は新たな世界への期待と想像を膨らませていた。
_________________ゴ、ゴゴゴゴゴゴゴ‼‼‼‼
突然、足元が大きな音を立てて揺れだした。
「うわ、地震だ‼ 皆伏せろぉ‼」
「伏せてどうすんだバカ‼ 机の下だ、夏ミカン早く入れ‼」
「こんな時までその呼びか____キャァ‼」
「お、お助けぇ~~‼‼」
余りに突然の出来事に、誰もが慌てふためく。
だが数秒経つと、すぐに地震は収まった。
机の下から這い出る士と夏美。台所のテーブルに隠れていた
栄次郎もこちらへやって来た。
しかし、
「酷いじゃないか士‼ 何で俺だけ机の下に入れてくんなかったんだよ⁉」
そう、ユウスケだけは完璧に逃げ遅れていた。
いくら未確認生命体と闘い続けてきた彼でも、
自然災害には太刀打ち出来るはずもなかったのだ。
「悪いなユウスケ、この机は二人用だったんだ。諦めろ」
「だったら士が出て、俺と夏美ちゃんの二人で良かったじゃんか‼」
「終わった事でチマチマうるさい男は、離婚する確率が20%上がるらしいぞ?」
「嘘ぉ⁉ホントに⁉ ……………じゃなくて‼」
「まぁまぁお二人さん落ち着いて……………アレ?」
今にも掴み合いそうな二人の仲裁に入った栄次郎は、
自分の目に移った光景に愕然とした。
「どうしたのおじいちゃん?」
「な、夏美……。アレ、アレを…………」
「栄次郎さん?どうしたんです……か…………」
「……………コレは……」
___________背景フィルムが、降りている。
そして背景フィルムはいつも、次なる世界の
象徴となる絵が描かれて降りてくるのだ。
今回もまた、例外では無かった。
「何で、何でなんだ………」
「嘘、ですよね…?何かの間違いですよね………?」
フィルムいっぱいに描かれた絵。
不規則に散らばった『トランプカード』。
カードの右上と中心に、小さな穴の開いた『ダイヤの
カードの色が反転して、異様な程不気味な『クローバーの
そして、色違いの『
士が、呟く。
「_______________
仮面ライダーディケイド、新たな旅の始まり……。
次なる世界で、彼らを待つ運命とは?
破壊者よ、運命の切り札を掴み取れ!!
次回、Ep,02 『Blade`s World ~バトルファイト~』