仮面ライダーディケイド ~The Darkness History~   作:萃夢想天

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随分と間が空いてしまいましたが、これからは投稿できるかと。
本当に忙しい山場は乗り越えたと思われるので…………どうだろ。

一抹の不安に苛まれながら、カブトの世界の真相を描いていきます。


それでは、どうぞ!


Ep,16『ENDING REVERSE ~最期の約束~』

 

 

 

陽も既に南の空から下降し始めた頃、洋食店『Bistro La Salle』で二人の男が淹れたての

コーヒーを一人は優雅かつ爽やかに、もう一人は素人丸出しの飲み方で味を楽しんでいた。

士達が岬に半ば拉致のように強制連行されていくのを眺めていた、天道と加賀美の二人だ。

二人は客足の途絶えたこの店に残って、三十分ほど前に消えた彼らについて語らっていた。

 

「しっかし、異世界のライダーか。なんかちょっと面白そうだよな」

 

「さあな。だが、どんな世界だとしても、俺がいればその世界の中心は必ず俺になる」

 

「出た、天道の俺様節! コレ聞くのも懐かしいもんだなぁ‼」

 

「……………全人類が望んでやまない俺の言葉を、名物か何かだと思ってるのか?」

 

「あー、ソレソレ! それでこそ天道だよ‼」

 

「……………お前が俺を語るなど、それこそ光の速度で年を重ねても永劫かなわない領域だぞ?」

 

「そうだな。俺なんかが聞けるなんてありがたいなーっと、弓子さん、おかわり!」

 

「はいよー!」

 

「……………もういい。お前の相手はやはり疲れる」

 

大きなため息と共に対面している加賀美から視線を体ごと背けて、天道は疲れた表情を浮かべる。

それを厨房で見ていた弓子とひよりは、本人には悪いと思いながらも笑いをかみ殺せずにいた。

すると天道達から少し離れた席でゴンとアゲハと一緒にいた優美恵が母親の腕の中から抜け出て

小柄な体躯を一生懸命に動かして、父親である天道の元へと駆け寄って下から見上げて尋ねる。

 

「おとーさんだいじょーぶ?」

 

「……………優美恵」

 

「だいじょーぶ?」

 

「………………ああ、俺は何ともないぞ優美恵!」

 

 

愛する娘からの心配を受けて、天道は優しく力強いハグで応えた。

抱き上げられて父親の腕の中に納まった優美恵は、幸せそうに顔を緩ませて胸に顔をうずめる。

一組の親子の心温まる光景だったが、天道 総司という人間をよく知っている加賀美にとっては

初めて見る彼の屈託の無い満面の笑みに、飲んでいたおかわりのコーヒーを喉に詰まらせた。

淹れたてで熱々のコーヒーに加賀美が四苦八苦していると、アゲハが天道のそばに寄って来た。

 

 

「良かったわね優美恵、お父さんにギュってしてもらえて」

 

「うん!」

 

「アゲハ、優美恵をしっかりと面倒見ていないと危ないだろう」

 

「いや、完全に抱きしめて頭撫でながら言うセリフじゃないよな天道」

 

「ごめんなさい、総司さん…………」

 

「いいんだ。お前は俺が選んだ女、その自覚さえあればいい」

 

「ハイ、私は貴方に選んでいただけた。幸せな女です」

 

「……………天道、お前嫁さんを何だと思ってるんだよ?」

 

「お前には理解できんだろう、一生独身のお前にはな」

 

「はぁ⁉ そ、そんなわけあるか! 俺にだって結婚ぐらい‼」

 

「無理だ。お前はひよりと結婚はできない、というより兄の俺が認めない」

 

「お、お前! いくら何でもそれは酷いだろ‼」

 

 

午後の気だるさを誘う暖かな日差しの中、真夏日も根を上げるほど暑苦しい怒号が店内に響く。

もちろんそれほど広くは無いこの店だ、厨房に入る話の中心人物にもちゃんと聞こえていた。

 

 

「だってさ~。どうするの、ひよりちゃん?」

 

「…………どうもこうも、僕には関係ないよ」

 

「大ありよ! ひよりちゃんの将来がかかってるじゃない‼」

 

「…………将来って言われても、僕イマイチ実感湧かないよ」

 

「あ、でも待って。加賀美君って現職、警察官よね。だったら止めときなさい」

 

「…………どうして?」

 

「警察関係者との結婚は絶対失敗するわよ、私の友達もそうだったもの」

 

「…………じゃあ止めとこうかな」

 

「だって、加賀美君!」

 

「嘘だぁぁぁあぁぁぁ‼」

 

 

厨房で始まったやり取りもまた狭い店内において、座席に座る加賀美達に筒抜けである。

両手で頭を押さえながら慟哭する加賀美に見向きもしないまま、アゲハは優美恵を抱いて

ゴンのいるテーブルへと戻って再び彼女に優美恵を可愛くもてあそばせた。

 

こうして今日もまた、平和な一日が過ぎるのだろうと誰もが過信していた。

 

 

だが次の瞬間、安寧はガラスの破砕音と共に破られた。

 

 

店の窓ガラスを拳大の何かが砕き、そのままソレが炸裂して噴煙を撒き散らす。

突然起こった出来事に店内の誰もが碌な対応も出来ないまま、噴煙が充満していく。

しかも噴煙を撒き散らす何かは、今もなお絶え間なく店内に放り込まれ続けている。

途端に肺での呼吸に支障をきたし、店内にいた弓子やゴンは激しく咳き込んでしゃがむ。

天道と加賀美の二人が店内に投げ込まれたのは特殊なガス・グレネードだと気づいた時には

既に店の扉を蹴破って数人のゼクトルーパーが突入してきた後だった。

またしても唐突な敵の来訪に驚く面々だったが、ただ一人冷静を貫いていた男がいた。

 

紛うことなき、天道 総司その人だ。

 

 

「……………やはり俺を、俺達を狙ってきたか」

 

「コイツら、何てことするんだ‼」

 

「加賀美、お前は皆を守れ」

 

「お前はどうするんだよ⁉」

 

「…………俺は俺の成すべき事をする!」

 

 

立ち昇る噴煙の中で天道がそう加賀美に伝えて右手を高く上げ、人差し指を立てる。

混乱の渦中で彼の行動をまともに見る者はいないのに、それでも彼はそうしていた。

煙の中でも周囲を把握出来るマスクを装着しているゼクトルーパーは天道の行動を

どう捉えていいか分からずに固まるが、その一瞬が彼らの勝機を失わせた。

 

ガラスが割られた窓から特異な羽音のような音を響かせて赤いカブトムシが飛来し、

天道が突き立てていた人差し指に惹かれるように停まり、天道はソレを掴む。

掴んだカブトムシ状の機械を腰のベルトのバックルとして装着し、彼は告げる。

 

 

「____________変身‼」

 

【HENSIN!】

 

「天道……………分かった、俺もやるぞ! 来い、ガタックゼクター‼」

 

【Hensin!】

 

 

天道の力強い声に呼応するように、加賀美もまた青いクワガタを呼び出して装着する。

低めの電子音声の直後に、先程よりも高めの声色の電子音声が店内に響き渡った。

並び立つ二人の男のベルトから六角形状のパネルが全身を覆うように展開されていき、

ものの数秒でガッシリとした構造の鎧とパワードスーツをまとった仮面の戦士が現れた。

不純物の一切無い聖水の如く蒼いコンパウンドアイにV型のカブトレシーバー。

まるで(さなぎ)のような丸く太い肩部アーマーに『ZECT』ロゴの入った円形のパーツ。

ワゴン車のように前方へ台形に突き出た強化チェストボディに腹部アーマー。

両肩部にバルカン砲を携えたガタックと共に噴煙の中に現れた、赤と銀の装甲。

 

彼こそが【仮面ライダーカブト マスクドフォーム】

重厚な鎧に包まれた彼らは眼前でマシンガンを内蔵した武器を構えたゼクトルーパーを

殴り、蹴り、何とか後ろに回り込ませないように狭い店内で大立ち回りを演じ始める。

カブトが先陣を切って数人のゼクトルーパーを投げ飛ばして店外へ戦闘を拡大させ、

ガタックがカブトが一通りダメージを与えた残党をひより達に近付けぬように構える。

 

 

「来るなら来い! ここから先には絶対に行かせない‼」

 

『クソ、これがあのガタックか‼』

 

『落ち着け、俺達の任務はコイツらとの戦闘じゃない‼』

 

『だがコイツは遂行の邪魔になる! どのみち片付けるしかないだろ‼』

 

「任務? 遂行? 何だ、何を言ってるんだお前ら⁉」

 

 

ゼクトルーパー達の言葉を耳にして疑問が生じたガタックはほんの一瞬だけ気が緩み、

彼らの武器の変更を許してしまい、接近戦用にブレードを出した彼らの攻撃を

受けざるを得なくなった。

 

 

「なっ、クソ!」

 

『二人で抑える! お前は対象を確保しろ‼』

 

『了解!』

 

「どけ‼ 邪魔するな、オイ待て‼」

 

 

二人がかりで懐に潜りこんだ相手に身動きを封じられて、残った一人がガタックの

背後へと回り込むのを許してしまう。

それを止めようと必死に手を伸ばすガタックを、同じく必死に妨害するゼクトルーパー。

まず手前の二人をどうにかしないとマズいと判断したガタックは自分を押さえている

ゼクトルーパーを膝蹴りで吹き飛ばし、もう一人の相手を三回殴打して殴り飛ばした。

倒された二人のゼクトルーパーは少しうめいた後、緑色の炎を噴き上げて消滅した。

敵がワームであったことを確認したガタックはひより達の方へと向かった残りの一人を

打ち倒そうと振り返るが、その瞬間に一発の銃声が響き渡り、ゼクトルーパーは爆散した。

 

「何だ、何が……………?」

 

 

唐突な攻撃に焦るガタックだったが、銃声のした方向を見て安堵し、叫ぶ。

 

 

「風間! ナイスアシスト‼」

 

「…………別に君なんかの為じゃない。ゴンと、そこの美人さんの為だ」

 

「大介‼ 大介‼」

 

「ゴン…………ゴン、離れてろ!」

 

「うん‼」

 

「手を貸してくれ、風間!」

 

「言われなくとも。でも、足だけは引っ張らないで下さいよ‼」

 

「上等‼」

 

 

割れた窓の外から敵を狙撃したのは、マスクドフォームのドレイクだった。

不意に窮地を救ってくれたかつての相棒(パートナー)との再会にゴンは涙を浮かべて喜び、

ガタックは共闘を持ちかけて二人立ち並んでまた扉から侵入してくるゼクトルーパーを

相手取り、乱戦を再開した。

 

 

「うおっしゃあ‼」

 

『ぐああぁぁあぁぁ‼』

 

「せいっ‼」

 

『ぎゃあぁぁああぁ‼』

 

 

噴煙もだいぶ晴れて視界が良好になり始めた頃、全てのゼクトルーパーを打ち倒し、

ワームが絶命する時に噴き上げる緑色の炎を確認したガタックとドレイクは一息つく。

そして二人同時に振り返ってガタックはひよりに、ドレイクはゴンに駆け寄って

安否を確かめる。

 

 

「ひより! 無事か⁉」

 

「ゴン! ケガは無いか‼」

 

ガタックとドレイクの問いかけにひよりもゴンも無言でうなずく。

守りたいものを守れたという達成感と安心感から、二人はわずかに気が緩んだ。

その一瞬の油断が、再び彼らを窮地に陥れた。

 

 

【Clock Over!】

 

「何ッ⁉」

 

「お前は‼」

 

弛緩した彼らの聴覚に突如響いた低めの電子音、それは警告と同義だった。

今まで誰もいなかった背後に一瞬で現れた仮面の戦士に二人は驚愕する。

だが、彼ら二人よりもさらに驚愕に顔を歪ませた人物がこの場にいた。

 

 

「あ……………あぁ…………」

 

「…………捕獲対象を確認、任務を遂行する」

 

「クソ、またお前か‼」

 

「さっきは油断したが、今度はそうはいかない‼」

 

 

ガタックとドレイクは即座に構えを取り、両手をダラリと脱力させている

カマキリを思い起こさせる印象を強める装甲を有した緑色の仮面の戦士と

相対した。

 

 

「…………無駄だ」

 

 

緑色のライダーがそうつぶやくと同時に、手に持っていた丸い手榴弾のような

物体を二人に向かって投げ放ったが、ドレイクがそれを専用武器の銃で撃ち抜く。

すると撃ち抜かれたそれは先程のガスのように噴煙を撒き散らして破裂した。

 

「また煙幕か⁉」

 

「…………違う。コレは、対ネイティブ用(・・・・・・)特殊ガス・グレネードだ」

 

「対………ネイティブ用だと?」

 

二人は謎のライダーの言葉に耳を疑うが、すぐにその真意を理解させられた。

 

弓子やゴンは煙で咳き込んでいるが、横のひよりは嗚咽を漏らし始める。

やがて耐え切れなくなったのか、ひよりの体は不自然に歪んで変異してしまった。

四枚の翅を背中から展開した、悲しげな表情のネイティブへと。

その光景を目の当たりにした弓子やゴンは声帯をすくめて小さく悲鳴を発するが

ガタックもドレイクも彼女のことを見て驚いたわけでは無かった。

ひより達から少し離れた場所にいた、アゲハと優美恵の二人の姿に驚愕していた。

 

 

『うぅ……………あぅ』

 

『優美恵……………しっかりして、優美恵!』

 

「…………化けの皮が剥がれたか、ネイティブ」

 

「何で、何であの二人が……………何がどうなってるんだ⁉」

 

 

ガタックは自分の理解の範疇を超えた出来事に激しく慟哭する。

未だ外で戦っているのであろうカブト__________天道が連れてきた彼の妻と娘が

自分たちの目の前で人ならざるモノ(ネイティブ)へと変貌していく衝撃の光景に。

 

信じられない。信じたくない。

嘘だ、夢だ、幻だ。こんな事が現実なはずがない。

 

頭の中が混乱で支配されゆく中、ガタックはその場で立ち尽くしてしまう。

無論、その間にも世界に時は流れ続けている。

彼の後ろではドレイクと謎のライダーが戦闘を続行していた。

しかし、その戦いは決して対等なものでは無く、一方的な蹂躙だった。

 

 

「ぐっ! 何してるんです、君も早く戦って_________がっ‼」

 

「…………やはりドレイク、お前はまださっきのダメージが抜けていないな?」

 

「ぐっ……………それが、なんだ!」

 

「…………お前に勝機は無い。消え失せろ」

 

 

マスクドフォームのドレイクは防御には優れているが、俊敏性には劣る。

その為、ライダーフォームの緑色のライダー相手には分が悪過ぎた。

いくら防御が優れていても、手数で負けてしまえばいずれは押し負ける。

そしてついに、度重なる攻撃に耐えきれなくなったドレイクの装甲が砕けた。

 

 

「う、ぐああぁぁあぁぁ‼」

 

 

装着者へのダメージが蓄積され、負荷が容量を超えたために変身が強制解除された

風間の元からドレイクゼクターが飛び立ち、どこかへと早々に去っていった。

逃げたゼクターを見送りながら、謎のライダーは目標をガタックへと変更する。

未だ茫然自失の彼の背後に近付き、腰のカマキリ型ゼクターを右腕の篭手部分の

クロッチに装着し、内部で生成されるタキオン粒子を圧縮し、一気に放出した。

 

「…………お前も消えろ」

 

【Rider Hunt!】

 

『加賀美、危ない‼』

 

バリバリと空間を裂くように放たれるタキオン粒子をまとった拳を振りかぶる

緑色のライダーの存在に、ただ立ち尽くしているガタックはまだ気付かない。

だがガタックの前方に入るひよりはそれに気付き、彼に叫ぶように警告した。

しかし、既にモーションに入っている相手の攻撃を、この距離では防げない。

 

 

「はっ⁉ がぁあぁぁあぁぁぁ‼‼」

 

「…………任務遂行の障害を排除、これより捕獲を再開する」

 

そうかぼそく呟いた緑色のライダーの振り抜かれた右手が、眼前のネイティブへと迫る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぎゃあぁぁああぁ‼』

 

『うわぁああぁぁぁあぁ‼』

 

「…………この程度か」

 

 

狭い店内から屋外に戦場を移したカブトは、ガタックやドレイクなどとは

比べ物にならない速度で数人いたゼクトルーパーを残らず撃破していた。

道路のあちこちにワームの残骸_________もとい緑色の炎が噴き上がる。

それらを確認したカブトはガタックの加勢をしようと店内に戻ろうとするが、

前方から新たに二人の人影がやって来るのを目視して踏み止まった。

 

 

「お前……………何故お前が生きている、三島⁉」

 

「久しぶりだなカブト。いや、初めましてと言うべきか」

 

「何……………?」

「私は一年前にやって来たワームであり、三島に擬態しただけに過ぎん。

だがお前が言いたいのは、何故死んだはずの男に擬態できるのか、だろ?」

 

「分かっているなら回りくどい言い方はよせ」

 

「フ…………だがまずは、『彼』との再会を喜ぶべきだろう」

 

「…………久しぶりだな、天道」

 

「またお前か。いい加減諦めたらどうだ、つまらない復讐などな」

 

「…………今の俺には生きる理由が二つある。お前への復讐と、もう一つ」

 

 

眼鏡をかけたインテリ風のスーツ姿の男、三島と共にやって来た

白いゼクトルーパーの二人は半分懐かしむようにカブトと会話する。

そして話の主体が白いゼクトルーパーになった時、彼はヘルムを脱ぎ捨てた。

眉にまでかかるツヤを失った前髪に、ストレートパーマの髪型。

前髪にわずかに隠れている両眼には、鋭い殺意と憎しみが込められている。

頬から顎にかけての輪郭はシャープでどこか痩せこけた印象すら抱かせる。

 

天道は白いゼクトルーパーの素顔を見た瞬間、納得したように呟いた。

 

 

「やはりお前だったのか、矢車」

 

「…………ああ、地獄からもう一度光を掴みに戻って来たぜ」

 

「世迷言を並べていても、やはりお前もかつての自分が恋しいのか」

 

「…………黙れ、今の俺はそんなくだらない物にこだわりはしない!」

 

「そのくらいにしておけ、ビャクヤ。君は早く対象を捕獲して来い」

 

「…………分かった、変身」

 

【Hensin!】

【Change Mantis!】

 

【Clock Up!】

 

 

三島と言葉を交わしたビャクヤ_________矢車はカマキリ型のゼクターを

呼び出して自身の腰に巻き付けたベルトのバックル部分にそれをマウントした。

その瞬間、六角形状のパネルが全身を覆っていき、やがて仮面の戦士となった。

緑色のライダーは腰部分のスイッチを素早く押して【クロックアップ】を発動し、

カブトの横を抜き去っていった。

マスクドフォームでは追えないと考えたカブトは自分もキャストオフするために

カブトゼクターの角に見立てた装置を起動しようと右手を動かす。

だが、その動作は突然突貫してきた三島によって中断させられた。

 

「お前の相手をしてる暇は無い、邪魔をするな」

 

「それは私のセリフだ、カブト。貴様にもう用は無い‼」

 

「………仕方ない、キャストオフ」

 

【CAST OFF!】

 

掛けていた眼鏡を外して投げ捨てた三島を見据えながらカブトは装置を起動する。

重低な待機音と共に全身の強固な鎧が所々浮き上がってタキオン粒子を撒き散らす。

やがてカブトゼクターの角を反転させ、全身の装甲が一気に弾け飛んだ。

吹き飛ぶ装甲の一つ一つが散弾のように三島に襲い掛かるが、当の三島はその姿を

大きく歪ませて緑と黒を混ぜ合わせたような不気味な色合いのワームとなって

キャストオフによってパージされた装甲を防ぎ切る。

 

そして、脱皮(キャストオフ)を終えたカブトは、その真の姿を現した。

 

天を貫くように直立するカブトムシを彷彿とさせる形状の赤い角。

その角が蒼いコンパウンドアイを二つに裂き、複眼状の双眸へと変わる。

胸部を覆っていた分厚いアーマーは、カブトムシの体を意識した紅蓮の装甲へと

変わり、両肩もスッキリとした軽装甲へとなりかわっていた。

 

【仮面ライダーカブト ライダーフォーム】

 

 

奥の手であるクロックアップを発動できる姿に変わった天道は

眼前で殺気を撒き散らしている三島を正面から見据え、言葉を紡いだ。

 

 

「もう一度、お前をいるべき場所へと送り還してやる」

 

『やってみろ‼ だが、貴様に私と、"マディカ"は止められない!』

 

「マディカ………【マスクドライダー マディカ】か」

 

『ああ、矢車の持つ新たなゼクターとライダーの事だ。

だが今はそんな事どうでもいい、今は貴様を殺せればそれでいい‼』

 

「やってみろ、と言っても不可能だからな」

 

『ほざけカブト‼』

 

「なにせ、俺は世界の中心だからな」

 

 

互いに会話を終え、戦闘体勢に移行する。

そして数秒後、緑の異形と赤い戦士が激突した。

 

 

 

 








いかがだったでしょうか?

今回でようやく出てきましたね、ビャクヤの正体とライダーの名前!
仮面ライダーマディカ、ちょっとダサいかもしれません。


名前の由来は、カマキリの言語圏の発音の違いからです。
マンティスとプレディカドールをかけあわせただけ、安直でしょう?

後はアゲハと優美恵の正体ですかね。
これについては次回辺りで話せたらいいかなぁ、なんて。


それでは次回、Ep,17『LOAD OF ~先を往く者~』

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