仮面ライダーディケイド ~The Darkness History~   作:萃夢想天

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ハイ、今日は私の大事な面接日でした。
緊張のあまり胃の辺りに穴が開いてる気がします。

そんな事はどーでもいいんだよw(本音)

それよりも、今回でブレイドの世界も堂々完結!
次なる世界とは一体どのライダーの居る世界なのか⁉


それでは、どうぞ!


Ep,11『LIGHTNING ~奇跡~』

 

 

自分達の目の前で一振りの剣を構えたまま頭だけ振り返ったライダーに、

満身創痍の風体で荒い呼吸を繰り返しているカリスが皮肉気に名を告げた。

そう、この世界において最も重大な存在。

 

この状況下において助っ人とも言えないような人物であるにも関わらず、

ディケイド達の眼前でアルビノジョーカーの攻撃を斬り裂いた彼が何よりも頼もしく思える。

そんなブレイドの姿を見て、ディケイドが一歩前に出て彼の肩に手を置いて語った。

 

 

「何にせよ、助かったぜブレイド」

 

「…………お前、確かアンデッド達に総支配人(オーナー)と呼ばれていた」

 

「あー、その話ならもう終わってる。だから気にするな、俺達の敵は………奴だ」

 

「…………橘さん」

 

「大丈夫だ。ソイツは我々の協力者だ」

 

 

いちいち(コイツ)に聞かなきゃ敵味方の判別すら出来ないのか、とディケイドが

悪態をつきそうになるがそれをグッとこらえ、代わりに横にいたクウガを引っ張り出す。

肩を掴まれて前に出されたクウガは、頭の中に嫌な予感を立ち込めさせる。

 

「な、なぁ士? 何する気だ? …………まさかアレをする気か⁉」

 

「違う。して欲しけりゃ、やってやるぞ?」

 

「じょ、冗談じゃない! 頼まれたってやるもんか!」

 

 

ディケイドの態度に腹を立てたクウガは慌てて彼から視線を逸らした。

そんなクウガを見てディケイドは逃げたな、と小さく呟いたがクウガはそれを無視した。

だが彼らの眼前にはまだ脅威は鎮座している、こんな事をしている場合ではなかった。

それを証明するかのようにアルビノジョーカーは再度雄叫びを上げながら両手を天にかざす。

彼の両手から先程と同じように漆黒のオーラで出来た球体が幾つか空中に現れた。

球体はビリビリと激しく空気に悲鳴を上げさせているが、アルビノジョーカーには関係無い。

その球体の内の二つを再びディケイド達に向けて投擲してきた。

 

 

「何度もやらせるか‼」

 

「ナメてもらっちゃ困るぜ」

 

 

【_________TACKLE】

 

【_________METAL】

 

【_________TIME】

 

【________________LANDING CRIMINAL】

 

 

【ATTACK RIDE _________BARRIER】

 

 

二つの球体が迫る中、複数の電子音声が混ざり合って駐車場内に響く。

ブレイドがスペードの4、7、10、『タックル』『メタル』『タイム』を使用して

スリーカードのコンボを発動させ、ディケイドもまた【アタックライド・バリア】を

瞬時に発動させ、アルビノジョーカーの攻撃を防いだのだった。

だがブレイドのコンボは防御ではなく、攻撃が主体である。

つまり、まだ彼のコンボは(・・・・・・・・)終わってなどいないのだ(・・・・・・・・・・・)

 

 

「_________ヴェェイ‼」

 

『グアァァァッ⁉』

 

 

いつの間にかアルビノジョーカーの背後に移動していたブレイドが後ろからぶつかる。

突然の奇襲に驚く暇も無くアルビノジョーカーは前方へ身をよじりながら倒れこんだ。

剣の切先を突き付けながら、ブレイドが低い声で怒鳴った。

 

 

「お前らのせいで、どれだけの人が死んだと思ってる‼」

 

「…………剣崎」

 

「アンデッドが………アンデッドが」

 

手にした剣を震わせながら、アルビノジョーカーを睨むブレイド。

対してアルビノジョーカーは何故自分が背後を取られたのか理解出来ず唸っていた。

それもそのはずだろう。今ブレイドは『時間を越えて移動した』のだから。

 

彼の持つラウズカードの内、時間を操る力を持っているのが『タイム』だ。

彼はその力を利用して一瞬前の時間まで遡り、背後を取っていたのだった。

そのまま『メタル』で硬質化した肉体を『タックル』の速度で叩きこんだという事だ。

アルビノジョーカーは苦しみの声をかすれさせながらも立ち上がる。

ブレイドは更なる追い打ちをかけようとしたが、その行動は即座に封じられた。

瞬時にしゃがみ込んだアルビノジョーカーが左足を伸ばしたままコマのように

グルンとその場で一回転し、背後にいるブレイドの足を引っかけて転ばせた。

その回転の力を利用して起き上がったアルビノジョーカーは、その勢いを右拳に

乗せてアッパー気味に倒れ掛かっているブレイドの腹部に叩きこんで打ち上げた。

 

 

「剣崎!」

 

【_________FLOAT】

 

 

その様子を少し離れた場で見ていたカリスは懐から一枚のカードを取り出して

腰のバックルの溝に上から差し込んで内容を読み取り、能力を解放した。

彼が今使ったカードはハートの4、『フロート』のカードだ。

文字通りに空中を飛行できるようになるカードを使って、吹き飛ばされた

ブレイドを空中で抱き留め、自分が先程までいた位置に再び着地する。

 

 

「済まない、始」

 

「気にするな」

 

 

ゆっくりとブレイドを降ろしながら彼の感謝の言葉を流したカリス。

まるで互いの心が通じ合っているかのような会話に、クウガは少し感心した。

だがそれもつかの間、アルビノジョーカーは攻撃の姿勢を取り始める。

それを見た三人は身構えるが、ただ一人だけ悠々と歩き出す男がいた。

 

他でもない、ディケイドである。

 

 

「________この世界に一人だけ、いるとしたら?」

 

『…………何?』

 

 

アルビノジョーカーからの攻撃に対して身構えた三人より前に出たディケイドは

そのまま敵を見据えたままゆっくりと右手を顔の前まで持ってきて指を立てた。

ディケイドの行動の意図が読めないその場の全員を余所にディケイドが続ける。

 

 

「もしもこの世界に、たった一人だけ信用できる者がいたとしたら誰だ?」

 

『………何ヲ言ッテイル?』

 

「親か? 兄弟か? 友人か? 恋人か? それとも見知らぬ他人か?

どれもこれも違う、この世で一番信じられる存在ってのは…………仲間だ」

 

『仲間、ダト?』

 

「同じ苦楽を共にし、同じ喜怒を感受し合う。それこそが本当の仲間だ。

たった一日で出来上がるモンでもなけりゃ、人工的になんて作れない。

そして本当の仲間というヤツは、簡単には砕けない繋がりで結ばれている。

例えそれが、『人間とアンデッド』という異種族同士であってもな!」

 

 

ここまでディケイドが語って、ようやく自分達の事だと気づいたブレイド達。

カリスが息をのむ音が聞こえ、アルビノジョーカーからは苛立ちの(うめ)きが漏れる。

それすらも聞こえていないようにディケイドは語る事を止めずに続ける。

 

 

「相手が人類の希望である仮面ライダーであろうとも、

自分以外の全てを滅ぼすジョーカーという化け物であっても!

話し合う事すら許されない、戦いの宿命の中にいたとしても!

戦うことでしか互いの事を解り合えないような存在だとしても‼

信じ合える仲間であれば、世界を敵に回すことだって(いと)わない…………」

 

『何ガ言イタイ‼‼』

 

「分からないか? なら分からせてやるよ。

お前が今相手にしようとしている二人は、誰にも理解されないような

関係を保ったまま世界を全て敵に回して守りたい者を守ろうとしている!」

 

「………お前」

 

「つまり________________仮面ライダーなんだよ!」

『煩イ! 何ナンダ、オ前ハ‼』

 

 

ディケイドの話で遂に怒りが頂点に達したアルビノジョーカー。

そんなアンデッドの質問を、ディケイドは待ってましたとばかりにポーズを

決めながらゆっくりと向きを変えて、真剣な声色で言葉を紡いだ。

 

 

「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ‼」

 

 

ディケイドが声を張り上げて語って直後、彼の腰に装着されていた

ライドブッカーが金色に輝きだし、バイクのエンジン音が響いたと同時に

三枚のカードがディケイドの右手に向けて射出された。

慣れた手つきでカードを三枚ともしっかりと掴んで表に向け直す。

するとそのカードには、眼前のブレイドが全く同じ姿で写されていた。

残りの二枚のカードは金色で縁取られていて、絵柄もそれぞれ異なっている。

 

「コイツはちょうどいい。早速使ってみるか」

 

ディケイドは三枚の内の一枚を右手に残したまま、残りを左手に持ち替える。

そして右手の一枚を腰のバックルに装填し、バックルの向きを変えて発動する。

装填したカードの内容をバックルが読み取り、音声がそれを高らかに伝えた。

 

 

【FINAL・FOAM・RIDE _______B、B、B、BLADE】

 

 

普段よりも一段高音程な電子音声がディケイドの腰から発せられる。

それに驚いたブレイドとカリスは振り向くが、手を振って視線を戻させた。

そのままディケイドはゆっくりとブレイドの背後まで歩いていき手を伸ばす。

何が何だか分からないブレイドは困惑するが、ディケイドがたしなめる。

 

 

「向こう向いてろ、ちょっとくすぐったいぞ」

 

「え? な、何だよ?」

 

「………剣崎さん、頑張って!」

 

「うぇ⁉ だから何がだよ‼」

 

「ほらよ」

 

「うぇい⁉」

 

 

一喝してアルビノジョーカーへと視線を向けさせたディケイドは伸ばした

両手をブレイドの背中の真ん中辺りに狙いを定めてズブズブと潜航させてく。

初めての感触に驚いて奇抜な声を上げたブレイドを気にする素振りを見せずに

もはや慣れてしまった一連の行動を続行させるディケイド。

何をしていると激昂したカリスをクウガが説得するように前に立ちはだかる。

そんな中、ブレイドの体が宙に浮き、その姿を変貌させていった。

 

 

「け、剣崎………何をした⁉」

 

「別に。ただブレイドをブレードにしただけだ、あんまり(わめ)くな」

 

 

唖然とするカリスと言葉も出ない橘を余所に、ブレイドの姿が変わっていく。

上半身が完全に真逆を向き、手にしていたブレイドラウザーを両足で掴む。

裏返った上半身の背中の真ん中から、ブレイドラウザーと同じカードホルダーが

綺麗に円を描くように展開され、ブレイドの全身の変形が完了した。

_________まるで巨大な覚醒剣(ブレイドラウザー)

 

 

そう表現する他ない、と橘はまともに働かない頭で考える。

もはやカリスに至っては(うわ)言のように剣崎の名を呟いているだけだ。

そんな状態の彼らをまたも無視して、ディケイドは次の行動に移った。

左手に持ち替えたカードの内の一枚を腰のバックルに同じように装填する。

だが今度はブレイドの姿に変化は無かった。そう、ブレイドの姿には。

 

 

【KAMEN RIDE ___________BLADE】

 

 

電子音声が再び響き、今度はディケイドの姿が揺らぎ始めた。

アルビノジョーカーは何が起こっているのか理解出来ず、行動を起こせなかった。

その隙を突くかのように、ディケイドの新たな変身が終わりを告げた。

そこに立っていたのは、マゼンタカラーの破壊者などではなかった。

立っていたのは、青いスーツに白金の装甲を纏った戦士、ブレイドだった。

腰のディケイドライバー以外は完全にブレイドの姿と同じになった彼は周囲の

どよめきを全身に受けながら、最後の仕上げをするべくバックルを横にした。

左手に残った最後の一枚をバックルに装填し、バックルを元の位置に押し戻す。

 

 

【FINAL・ATTACK・RIDE ____________B、B、B、BLADE】

 

 

金色の円型のバーコードのような紋印がディケイドのバックルから浮き出る。

その中心には彼がライドしているブレイドの紋章(クレスト)であるスペードが刻まれていた。

バックルから浮き出た金色の光が消えると共に、ディケイドの手にしていた超巨大な

ブライドラウザー、もといブレイドブレードから放電するような音が辺りに迸った。

荒れ狂う青い雷を纏ったブレイドブレードを上段に構えて、ディケイドは息を吐く。

あまりに圧倒的な力を感じたのか、アルビノジョーカーがたじろぐ。

そのまま方向転換し、一気に走り出して逃走を図ろうとした。

 

 

「クソ、おいユウスケ。コイツを使え」

 

「え? あ、おう!」

 

「………逃がすものか!」

 

 

もちろんそれをディケイド達が許すはずもなく、次の一手を打つ。

ディケイドがクウガに器用に投げ渡したのは、ライドブッカーガン。

それを受け取った時点で、彼は何に使えばよいのかすでに理解していた。

ライドブッカーガンを右手に握って、両手を腰より下へ向けて大きく広げる。

 

 

「________超変身!」

 

 

クウガが力強く叫ぶと、ベルトから出た緑の光が彼の全身を包んだ。

光の渦が段々と消えていき、そこに現れたのは深緑色の鎧を纏ったクウガだった。

__________『仮面ライダークウガ ペガサスフォーム』

 

まるで手榴弾のような形状の鎧を纏った射撃特化のクウガは、その手にしていた

ライドブッカーガンを自分専用の武器、 ペガサスボウガンへと変化させる。

弓なりに曲がった銃口を逃げるアルビノジョーカーに向けて、一気に解き放った。

矢とは思えない速度で標的に向かっていくと、見事に後背部に直撃した。

途端に矢に込められたクウガの紋印が光り輝き、大爆発を引き起こす。

突然背後で起こった爆発に巻き込まれアスファルトを転がるアルビノジョーカー。

だがすぐに起き上がると、今度は膝を曲げて一気に跳躍するかのような構えを見せた。

それを見たディケイドとクウガは焦るが、二人の背後から突然植物の(つた)が伸びて

今にも跳び発とうとしていたアルビノジョーカーの胴体に絡みつき、完全に縛り上げる。

 

【___________BIO】

 

「早くソイツを片付けろ!」

 

「………助かったぜ」

 

 

カリスの使ったハートの7、『バイオ』のカードによる捕縛攻撃。

見事なアシストを受けて、ディケイドの仮面の奥にうっすらと笑みが浮かんだようだった。

その手にしたブレイドブレードを、動けなくなったアルビノジョーカーへと振り下ろす。

 

 

「はあぁぁーーーーッ‼」

 

『ァアアアァァァァアァァッッ‼‼‼』

 

 

雷光を纏った究極の一閃が、存在しない存在を容易く斬り裂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最強のクローン、アルビノジョーカーとの激戦から約40分ほど経った今、

変身を解いた士とユウスケ達は本拠地である『光写真館』で微睡んでいた。

その場には先程まで共に戦っていた剣崎、橘、始達の姿は見当たらない。

三人は戦いが終わるとすぐに気を失った睦月を病院へと搬送していったのだ。

一応士達も見舞いに行ったのだが、そこにはもう橘しかいなかった。

ユウスケがどこに行ったのかと聞くと、橘は止む無しといった表情で語った。

 

 

「アイツらは、もう二度と逢えないだろうな」

 

「えっ⁉ ど、どうしてですか!」

 

「…………検査の結果、やはりというべきか、剣崎はアンデッド化していた。

間違いなくライダーシステムとクローンの因子をその身に受けた事が原因だろう。

剣崎は、奴は新たな54番目………『アナザージョーカー』になろうとしていたんだ」

 

「……………………………」

 

「この地球上にアンデッドは数えるほどしか残っていない。

だが、ほぼ間違いなくアイツらが最後まで勝ち残ることになるはずだ。

つまり、彼らが決着を着けない限り、地球のリセットが起こる事は無い」

 

「だから、剣崎さんたちは行ってしまったんですか」

 

「ああ…………」

 

 

ユウスケと一緒に見舞いに来た夏美が橘に交互に質問し、同じようにうなだれる。

士だけは黙って橘の話を聞き、小さく帰るぞと呟いて病院を後にした。

それに続くようにしてユウスケも夏美も病院から出て行った。

そして今は光写真館、三人はこの世界での役目を終えたと安堵していた。

 

 

「コレで本当に良かったのかな、士?」

 

「…………俺が知るか」

 

「士? なんか変だぞ?」

 

「…………………………」

 

 

だが何故か士一人だけが顔をしかめて、何かを考え込んでいた。

ユウスケは何度か声をかけるが、やがて相手にしてもらえないと分かると諦めた。

夏美はユウスケに代わって声をかけようとしたが、中々出来なかった。

 

(…………やはり、何かおかしい)

 

 

士は一人思い返していた。

この世界に来てからずっと感じていた、違和感のことを。

 

 

(この世界のライダーは俺を、ディケイドを知らないようだった)

 

 

剣崎や橘、睦月や始の言葉を思い返しながら、やはりそうだと頷く。

(だが、パラドキサは確かに言った。俺の名と能力を)

 

 

『_________ディケイドの世界を渡る能力‼』

 

 

アルビノカリスと共に士の前に現れたパラドキサは、確かにそう言っていた。

そこに矛盾を感じる、その部分から強烈な違和感を感じる。

だが士が何度考えても、その疑問への答えが出る事は無かった。

ふぅと軽く息をつき、頭を振り払って現実に向き直る。

目の前ではユウスケと夏美がこの世界の出来事を話し合っていた。

ユウスケの言った「海東」と「見えないライダー」という単語に興味を持ったが

自分の背後から漂ってくる館長自慢のコーヒーの香りに興味が雲散霧消した。

 

 

「はぁ~い皆、お待ちかねのコーヒーだよぉん」

 

「ありがと、おじいちゃん」

 

「ありがとうございます!」

 

「ご苦労」

 

 

前の二人よりも慇懃無礼な態度でコーヒーを受け取るが、誰もそれを咎めない。

咎めたところで屁理屈で言いくるめられて無駄になると分かっているからだった。

受け取ったコーヒーを一口飲んだ後、ユウスケがふと呟いた。

 

 

「ん………なぁ士」

 

「なんだ」

 

「いや、もしこの世界でやるべき事が終わってるんだったらさ。

もう次の世界へ行くための道が開けているんじゃないかな…………なんて」

「……………………そうだな」

 

「だよな! お前が分かってないはずないもんな、ゴメン」

 

「あ、ああ。気にするな」

 

 

気まずそうにユウスケから視線を逸らして士は、そのままこの写真館の館長の

栄次郎を呼び出して、ホールの背景(バック)フィルムを下ろすように命じた。

なんで僕が、とグズついた栄次郎を軽くおだててその気にさせた士は、

ついでにとコーヒーのおかわりを要求してまた思考の海にダイブした。

 

 

(結局、何も分からずじまい…………か)

 

 

そう結論付けた士はコーヒーのおかわりを受け取って香りを楽しみ、

栄次郎にそのまま背景フィルムを下ろすように命じた。

 

「それじゃ、下ろすね~」

 

栄次郎の気の抜けたような声と共に、ガラガラとフィルムを下ろす金具が回る。

その流れに沿って上から巻かれていたフィルムが降りてきて、その背景を見せる。

 

「こ、これは…………」

 

「士君………………………」

 

「………………ああ、分かってる」

 

 

そのフィルムに描かれていたのは、対照的な二人の人間だった。

ちょうどフィルムを真ん中から半分に分断するように引かれた一本の線。

それを隔てた左側には、眩く輝く太陽と、それに照らされて右手を掲げる一人の男。

逆に右側には、淡く揺らめく白い満月と、それに照らされていながら俯く一人の男。

左側は雲一つない綺麗な青空であるのに、右側は黒より少し明るい色合いの一面の星空。

あまりにも幻想的で、非現実的で、理想的な、対照の背景。

だがよく見てみると、左側の男の掲げた右手の指先には紅いカブトムシが描かれていて、

右側の暗く俯いた男の足元には、分かり辛いが緑色の鋭角的なバッタが二匹描かれていた。

士はフィルムの正面に立ち、描かれた絵が暗示する世界の名を口にした。

 

 

「______________カブトの世界、か」

 

 

 





ブレイドの世界、堂々完結!
そして次なる世界は、最速の世界!

いやー案外長くかかったッス、いやマジで。
ですがこのカブトの世界は友人と一時間語り合って作った
脚本を使用しているので、ブレイドより長くなるやも…………。


それでは次回、Ep、12『KABUTO's WORLD ~カブトの世界~』

神すらも凌駕する速度!
破壊者よ、最速の世界を破壊しろ‼

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