「ずっと好きだった」   作:エコー

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多くの方々に読んでいただけて感謝です。
さて初連載第2話。
引き続き批評、感想お待ちしております。



2 比企谷八幡は天使に弱い

2 比企谷八幡は天使に弱い

 

 文化祭までの1ヶ月は部活動の時間と場所を女子のバンド練習に充てるらしい。しかも俺がガールズバンドなんて言ってしまったものだから半ば強制的に部室から俺の居場所は消える。

 この決定は部長である雪ノ下雪乃が出したものだ。あいつ意外と乗り気だったんだな。ま、大好きな由比ヶ浜にせがまれたら仕方ないか。あいつらある意味相思相愛だし。

 故に俺は、しばらくの間お気楽極楽な帰宅部になる予定だ。どうせ依頼なんて材木座の相談メールくらいしか来ないし、ね。

 などと文庫本を開きながら愚考していると由比ヶ浜からメールが来た。バンドのメンバーが決まったらしい。

 ボーカルに由比ヶ浜結衣、ギターとコーラスに雪ノ下雪乃。ベースは去年と同じく平塚先生に頼むらしい。

 メールを読んでいると、その画面を覗き込むように由比ヶ浜本人が顔を寄せて来た。

 そう、ここは奉仕部の部室だ。つーか、隣にいるんだから直接言えばいいだろ。

「あとは鍵盤とドラムの担当だけなんだけれど」

 雪ノ下が首を捻る。鍵盤とか、なんとかスイッチかよ。いやこの場合はスキマなんとか、のほうが良いか。

「んー、あと条件に当てはまりそうなのは…誰だろ」

 由比ヶ浜もたわわな二つの物体を持ち上げるように腕組みをして唸る。

「何だよ、その条件って」

 条件か。まずある程度の音楽の素養が無いと短期間でのバンド練習は無理だろうな。

「あ、あ~、なんでもないっ」

 何故か由比ヶ浜の顔が少し赤くなっている。それを見て雪ノ下が微笑むって、本当に仲睦ましいな、おい。思わず和んじゃったよ。

「ま、メンバー決まって練習始める段になったら言ってくれ。部室空けるから」

 

   ☆      ☆      ☆   

 

 風呂から上がると、スマホに着信があった。リダイアルで由比ヶ浜に掛け直す。

「メンバー、全員決まったよ」

「なぜ俺に逐一報告するんだ」

 俺の疑問なんかお構い無しに由比ヶ浜は話を続ける。ドラムは川崎沙希になったらしい。そして。

「キーボードは…一色だと?」

 一色いろは。現生徒会長だぞ。文化祭の実行委員も兼任するんだぞ。その一色が奉仕部のバンドに参加出来るものなのか。

「あ、あは、なんか大丈夫らしいよ。権力で何とかするってさ」

 あいつらしいな。権力とかフル活用しそうだ。

 さて、今日の分の勉強を済ませて寝るか。

 

   ☆      ☆      ☆   

 

 眠い目をこすりながら教室のドアを開ける。

「おはよう、はちまん」

 ドアを開けるとすぐ天使、いや戸塚の席だ。俺はまさしくこの瞬間の為に登校している。

「はちまん、由比ヶ浜さんたち文化祭でバンドやるんだって?」

 俺が席に着くなり、戸塚が駆け寄ってくる。テトテトと可愛い足音が聞こえてきそうだ。

「あ、ああ。ガールズバンドだから俺は仲間外れだけどな」

「ぼくも…やってみたいな。はちまんと…」

 やるって。

 思わずナニを俺とやりたいんだ? と突っ込みたい気持ちをぐっと抑え込む。

「い、意外だな、戸塚がバンドに興味があるなんて」

「うん、実はさ。中学のときに少しだけベースを、ね」

 これまた意外。戸塚に似合うのはピアノだ。深窓の令嬢っぽい。男だが。いやいや、この華奢な身体で叩くドラムっていうのも何かが萌え上がりそうだ。とにかくベースは意外だということ。

「やるにしても、メンバーはどうする。俺は楽器なんか弾けないぞ。」

 こういうときに思わず嘘を言ってしまうのは、ぼっちの癖だ。防御本能がなせる業だ。

「葉山くんはギター弾けるでしょ?」

「葉山か。あいつ今年も三浦たちとやるんじゃないのかよ。それに受験もあるし」

 とりあえず印籠をちらつかせてみる。

「うーん、聞いてみようかなぁ」

 意外にも葉山の返事はOKだった。何でも、今年は三浦は受験勉強でそれどころでは無いらしい。ていうか思い立ったら即行動って。戸塚の行動力の凄さったら。

「じゃあ、あとはドラムさんだね」

 そこに、タイミングを見計らったように、いや実際見計らっていたのだろう、廊下に立っていた黒い太い影がゆらっと動き、俺とは違う系統のぼっちが襲来した。

「ゴラムゴラム、久しいな我が同胞八幡よ。何の軍議をしておるのだ」

 材木座。おまえまだ剣豪将軍とかキャラ作ってるのかよ。その作った笑い声止めろ。早く本物の日本刀持って銃刀法違反で逮捕されればいいのに。

「…ほほう、そのドラムを我に担当しろと。そういうことなのだな」

 やっぱり聞いていやがった。嫌な予感ほど当たるものだ。なんなら嫌な予感しか当たらない。

「誰も言ってねーし。大体おまえ、ドラムなんかやったことあんのか」

「たまにやっておるぞ、ゲーセンで」

 そうだろうな、ぼっちの俺たちにはバンド経験なんて縁がある訳ないよな。せいぜいゲームが関の山だよな。悲しいけど。

 とりあえずは放課後、葉山を加えた四人で集まって話すことにした。戸塚には申し訳ないがバンドは諦めさせる方向で。

 

 

 




いかがでしたでしょうか。
アニメの最終回を見て思わず続きを期待しちゃっておりますが、原作もそろそろ…なんですよね。
あ。11巻を買いに行かなければ。


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