黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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第9Q~準決勝~

 

 

全中大会3日目にして、大会最後の日がやってきた。

 

準決勝が行われた後、全中大会の頂点を決める戦いが始まる。

 

 

――全中大会準決勝…。

 

 

城ケ崎中学 × 星南中学

 

帝光中学  × 照栄中学

 

 

地域予選、予選リーグ、そして、トーナメントを勝ち残った4校。

 

帝光中は言わずもがな、部員数が100名を超え、10年に1人の逸材と呼ばれるキセキの世代を輩出した、全国でも指折りの強豪校。

 

照栄中はここ数年、全中大会に顔を出し、頭角を現した中学校。主将のC(センター)、松永透を中心に勝ち上がった強豪校。

 

 

試合前のアップ。星南の面々は粛々と身体を暖めている。

 

「よっ…よっ…」

 

空は柔軟運動を繰り返しながら身体を解していく。

 

「…」

 

空の見つめる先には、『百戦百勝』の文字が書かれた横断幕が。これは、帝光中が掲げる横断幕だ。

 

「…まずは、この試合に勝てなければならないことを忘れないでくださいよ」

 

そんな空を見て、大地がやんわり釘を刺す。

 

「分かってるよ。あまりにこれ見よがしに掲げるもんだから、ちょっと視線に入っただけだ。それに――」

 

柔軟運動を終え、スッと立ち上がる。

 

「次の相手は……、かなり手強いからな。本気で集中しないと、な」

 

空は首をコキコキと鳴らし、気分を落ち着ける。

 

城ケ崎中学。全中常連の強豪の1つであり、過去に、全中を制した実績もある。

 

「月バスの総合評価は、帝光中と同じSランク。『今年の帝光中を破るところがあるとするなら城ケ崎中』って書かれてるよ」

 

駒込が以前に持ち寄った月バスを読み上げる。

 

「全てのポジションに高いレベル選手が揃ってる。中でもあの5番。SG(シューティングガード)の生嶋奏は全国でもトップレベルの選手だよ。地域予選では1試合平均42点をあげて得点ランキングは1位。この全中でも、今のところだけど、得点王だよ」

 

星南中の後輩達が集めたデータを駒込が読み上げていく。

 

「大地を押しのけての1位かよ…」

 

これには空も驚く。星南の総得点の7割近くが大地によるものだからだ。

 

「ポジションからして、シューターか?」

 

「うん。得点の8割以上が3Pでの得点みたいだよ」

 

シューターの端くれである森崎がこれを聞いて目の色を変える。

 

「気を付けろよ。俺の目から見て、あいつは帝光中の奴等より遥かにやる感じがする」

 

空が見つめる先には、耳にイヤホンを付け、音楽を聞きながら指でトントンとリズムを取りながらベンチに腰掛ける背番号5番がいる。

 

「ガキ共、アップは済んどるな? スターターはいつもと同じじゃ。始めはハーフコートマンツーでいく。マッチアップはそれぞれ同じポジションの奴に付けや」

 

そこに監督の龍川がやってきて、前日に決めていた通りの作戦を伝える。

 

「ここにマグレで勝ち上がった学校などおらん。正真正銘、力でここまで勝ち残った猛者ばかりじゃ。ここから先は、つまらんミスが命取りになると思え!」

 

『はい!!!』

 

「心配いらん。てめえらも同じく勝ち残っとるんじゃ。条件は一緒や。ガキ共ッ! いってこいやぁっ!!!」

 

『はい!!!』

 

星南のスタメン達がコート中央に向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

相手ベンチにて…。

 

「生嶋。試合始まるぞ」

 

背番号4番を付けた選手。牧原が生嶋に声を掛ける。呼ばれた生嶋は耳からイヤホンを外す。

 

「試合前にクラシックを聴くと心が落ち着くな~」

 

生嶋はすっきりとした表情をしながらジャージを脱ぎ、立ち上がる。

 

「…相変わらず変わった奴だな。相手は無名校だが、油断は出来ない相手だぞ。くれぐれも――」

 

「心配無用だよマッキー」

 

用心を促す牧原を遮るように声を割り込ませる。

 

「今日の相手…特に、あの5番と6番。彼らからは何というか、とてつもないオーラを感じる。本気でかからないと勝てないだろうから序盤から僕も飛ばしていくよ」

 

「ならいい。ガンガンパス回していくからよ。期待してるぜ、エース」

 

「任せてよ」

 

城ケ崎のスタメン達がコート中央へと歩み寄っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

コート中央に集まる星南と城ケ崎のスタメン達。

 

『よろしくお願いします!!!』

 

それと同時に中央から散らばっていく。

 

 

星南中学スターティングメンバー

 

4番C :田仲潤  187㎝

 

5番PG:神城空  177㎝

 

6番SF:綾瀬大地 179㎝

 

7番PF:駒込康平 181㎝

 

9番SG:森崎秀隆 171㎝

 

 

城ケ崎中学スターティングメンバー

 

4番PG:小牧拓馬 173㎝

 

5番SG:生嶋奏  180㎝

 

6番SF:前田一誠 178㎝

 

8番PF:花田誠司 188㎝

 

9番C :末広一也 191㎝

 

 

センターサークルに両チームのジャンパー、田仲と末広が立つ。

 

「始めます!」

 

ティップ・オフ。審判がボールをトスする。

 

田仲と末広が同時に跳ぶ。

 

「っ!」

 

「ふっ!」

 

 

 

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

 

 

 

両者は同時にボールを叩き、ボールがこぼれる。

 

「っし!」

 

跳ねたボールに1番近い位置にいた小牧がボールを拾い、城ケ崎ボールから試合が始まる。

 

「さあ、1本行こう!」

 

小牧は左手人差し指を立て、ゆっくりドリブルでボールを進めながらゲームメイクを開始する。

 

それをマークするのは空。

 

「(城ケ崎中キャプテンの小牧。クイックネスに長けたPGか…けど、俺がマークしてる限り抜かせねぇけどな)」

 

腰を落とし、相手のドリブル突破に備える。

 

「(さすが、生嶋が警戒するだけあって、いいディフェンスをするな)」

 

隙のないディフェンスをする空に再警戒する小牧。そこから左手右手とゆっくりボールを付き…。

 

 

 

――ダム!!!

 

 

 

一気に加速して空の左側からドライブで切り込む。空は、全く遅れることなくついていく。

 

「(想定済みだ!)」

 

そこからクロス・オーバーで切り替えし、今度は逆側から抜けようとする。

 

「っ!」

 

だが、空は右手を進路を塞ぐように出し、ドリブルを止める。小牧は一度バックステップし、仕切りなおす。

 

「こっち!」

 

森崎のマークを外し、パスを要求する生嶋。即座にそこにパスを出す。

 

 

 

――スッ…。

 

 

 

生嶋は3Pラインギリギリでボールを受け取るや否やすぐにシュート体勢に入る。

 

「くっ!」

 

森崎がすかさずブロックに向かうも間に合わず…。

 

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

 

ボールはリングに掠ることもなく、綺麗にリング中央を潜った。

 

「くそっ!」

 

「ドンマイ、次で返そう」

 

悔しがる森崎に田仲が声を掛ける。

 

「ナイッシュ! 次も頼むぜ!」

 

「うん。任せて」

 

3Pを決めた生嶋に小牧が肩を叩きながら労う。

 

「(マッキーのドライブをいとも簡単に止めた。…これはいよいよ1本も外せなくなるな)」

 

生嶋は空の方を見ながら思った。

 

城ケ崎のバスケは小牧から始まり、彼がドリブル突破で相手ディフェンス陣を斬り裂き、そこからパス、あるいは自ら決めるのが城ケ崎の型であり、PQの小牧が機能しなければ、城ケ崎の型が出せない。

 

星南はリスタートをし、空にボールを渡す。

 

「1本! 行くぞ!」

 

空がボールをゆっくり進めながら相手コートに侵入していく。1度大地にパスし、3Pライン付近まで移動し、再びボールを貰う。そこに、小牧がチェックに来る。

 

城ケ崎もハーフコートマンツーでそれぞれがマークに付く。

 

「…」

 

「…」

 

空はトリプルスレッドの体勢で小牧と睨み合う。

 

「…(チラッ)」

 

「っ!」

 

大地が前田のマークを振り切り、パスを貰いにペイントエリアへと移動する。そこへすかさず空は右手でボールを持ち、放り投げるようにパスを出す。

 

「させねぇ!」

 

小牧がスティールしようとパスコースを塞ぎにかかる。

 

「ふっ!」

 

だが、空は右手で投げたボールを左手で止め、そのままドライブで一気に侵入し、ヘルプに花田が来るのと同時に右サイドの3Pラインの外側にいる森崎にノールック・ビハインドパスを出す。

 

ボールを受け取った森崎はそのまま3Pシュートを放つ。森崎をマークしていた生嶋も釣られて空のヘルプに向かってしまったため、ノーマークでの3Pシュート。

 

 

 

――ガン!!!

 

 

 

だが、そのシュートはリングに嫌われる。

 

「リバウンド!」

 

ルーズボールとなったボールを拾うべく、ゴール下でポジション争いが始まる。

 

「よし!」

 

「ぐっ!」

 

リバウンド争いでボールをもぎ取ったのは城ケ崎の末広。

 

「末広、下!」

 

小牧の声を張り上げる。

 

 

 

――ポン…。

 

 

 

「っ!?」

 

リバウンド争いを制した末広だが、着地と同時に大地にボールを弾かれる。

 

「ナイス!」

 

空がボールを拾い、そのままシュートを決める。

 

 

星南  2

城ケ崎 3

 

 

星南もきっちり1本返す。

 

「相手を意識し過ぎて肩に力が入り過ぎだぜ」

 

「わ、悪い…」

 

空は森崎をフォローしながら自陣へと戻っていった。

 

末広からリスタートし、小牧がボールを受け取る。

 

「1本! 行こう!」

 

『おう!!!』

 

小牧が声を出し、城ケ崎の攻撃が始まる。小牧の前に空が立ちふさがる。

 

「…」

 

目線や身体を揺すってフェイクをかけ、再び空を抜きにかかる。だが…。

 

「っ!」

 

空は振り切られることなく牧原についていく。

 

決して空はフェイクにかかっていないわけではない。かかってもなお、その脅威的な反応速度と瞬発力ですぐさま進路を塞いでしまうのだ。

 

「(認めよう。こいつは俺よりも1枚も2枚も上)」

 

僅か数回の攻防で実力差を実感した小牧。

 

「(…けど、試合だけは譲らねぇ!)…生嶋!」

 

小牧は生嶋へとパスを出す。

 

生嶋にボールが渡ると、森崎がすかさず距離を詰め、3Pを封じるため、フェイスガードでディフェンスに付く。

 

べったりとマークされているため、生嶋は3Pを打てないでいる。

 

 

 

――ダムッ!!!

 

 

 

だが、僅かな隙を見つけ、森崎の横をドライブで抜ける。

 

「っ! なろう!」

 

森崎は強引に手を伸ばしてボールを弾こうと試みる。だが、生嶋はそれを読んでおり、ターンアラウンドで反転し、そのまま3Pを放った。

 

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

 

そのシュートは再びリングを潜る。

 

「ナイッシュ、生嶋!」

 

城ケ崎のチームメイトが駆け寄り、ハイタッチしていく。

 

「……(森崎はディフェンスも結構上手い。なのにああもあっさり決めちまうのか…)」

 

森崎のディフェンスは決して温くはない。3Pだけの選手ではないと空は認識する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

その後、城ケ崎の小牧は無理なドリブル突破はせず、生嶋にボールを預ける。パスを受けた生嶋はマークに付いている森崎をかわし、得点を重ねていく。

 

対する星南は、空がぺネトレイトで相手インサイドに切り込み、そこから大地、あるいはインサイドに陣取る田仲にパスを捌くか、そのまま自分が決め、城ケ崎に追いすがっていく。

 

城ケ崎が決めれば星南が返す。互いにきっちりと得点を重ねていった。

 

 

 

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

 

 

 

第1Q終了のブザーが鳴り響く。

 

 

星南  12

城ケ崎 16

 

 

城ケ崎の4点リード。互いに同じ数だけシュートを決めたが、星南は全てが2点ずつに対し、城ケ崎は生嶋の3Pが4本決めたことにより、4点リードという形になった。

 

だが、現時点で戦況は互角。試合は第2Qへと突入する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 


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