黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

前話投稿後、予想以上に感想を頂いた事により、テンションと執筆意欲が沸いたので久しぶりのスピード投稿です…(^-^)

それではどうぞ!



第86Q~賭け~

 

 

 

第4Q、残り2分39秒。

 

 

花月 97

桐皇 102

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

「…」

 

「…」

 

ボールを持った青峰がゆっくりボールを突く。目の前には空が腰を落とし、両腕をだらりと下げ、仕掛けに備える。

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

「(……へぇ、良い感じにプレッシャーかけてくるじゃねえか。そういや、こいつも持ってるんだったな…)」

 

ゾーンに入った事で集中力が最大になった事に加え、持ち前の野生が前面に出た事により、そのプレッシャーが青峰の肌を通して伝わっていた。

 

「(…試してやるよ)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

目の前に空が立ってから、数度ボールを突いた所で青峰が加速。仕掛ける。

 

「ハッ!」

 

同時に空も動き、瞬時に青峰を追いかけ、進路を塞ぐ。

 

 

――ダムッ…ダムッ…!!!

 

 

そこから高速かつストリートの独特の技とリズムを組み込みながら左右に揺さぶりをかける。だが、空はその揺さぶりに遅れる事も惑わされる事なくピタリと付いていく。

 

「やるなぁ、お前!」

 

「そっちこそ、さっきより一段と速くなってんじゃん!」

 

高速の揺さぶりを仕掛けても抜かせない空を見て青峰は興奮を隠せず不敵に笑う。空も、先程よりも上がった青峰のパフォーマンス能力にテンションが上がり、笑みを浮かべている。

 

「おもしれぇ、だがな、笑っていられる余裕なんざねえだろうが!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

高速の切り返しをする中、空の重心が僅かに左脚に乗ったのと同時に青峰がドライブ。空の右手側から抜けていく。

 

『抜いた!』

 

『この勝負は青峰の勝ちだ!』

 

1ON1の軍配が青峰に上がり、観客が沸き上がる。だが、その時…。

 

 

――ポン…。

 

 

「っ!?」

 

青峰がキープするボールを1本の手が触れ、ボールが手元から離れる。

 

「つれないじゃないかよ。もっと見せてくれよ、あんたの本気をさぁ…!」

 

手の正体は空。空が青峰の持つボールを弾いていた。

 

 

「なっ!?」

 

「なんスか、あれ!?」

 

観客席の火神と黄瀬が驚愕する。

 

青峰が抜いたの同時に空は背中から後方に倒れ、そこから右手を伸ばしてボールを弾いていたからだ。

 

 

「ちっ」

 

まさかのカットに一瞬驚くも、すぐさまボールを拾いに行く。幸い、僅かに指に触れただけなので、ボールは青峰の僅か前に弾かれただけだった。すぐさま青峰はボールを拾い、リングへと向かう。

 

「行かせねえよ」

 

だが、同時に空が青峰の横を並走する。

 

『はぁっ!? あいつさっき背中から倒れながらボールカットしてたのに何でもう青峰の横走ってんだよ!?』

 

あまりの出来事に観客からは疑問の声が上がる。

 

空はボールをカットした後、身体をねじって背中の向きを天井に変え、倒れる事はおろかコートに手を付ける事なく駆け出し、青峰の横に並んだ。

 

スピードで勝る空は青峰の横に並び、追い抜いて前を塞ごうとする。

 

 

――キュッ!!!

 

 

空が前へ出る直前に青峰は急停止。そのままジャンプシュートの態勢に入る。だが…。

 

「なっ!?」

 

「嘘…だろ…」

 

その後に飛び込んできた光景に桜井、若松は言葉を失う。

 

ジャンプシュートの態勢に入った青峰。だが、コンマ僅か後にブロックに飛んだ空が青峰のシュートコースを塞いでしまった。

 

「ちぃっ!」

 

シュートコースを塞がれると、青峰は上半身を後方に寝かせ、ボールを放つ。

 

 

――バス!!!

 

 

ボールは空のブロックをかわしながらリングに向かい、バックボードに1度当たってリングを潜った。

 

『さすが青峰! 難なく決めたぁ!』

 

スーパープレーに観客は盛り上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「いや今の、青峰には全く余裕はなかった」

 

「ホントッスね。とっさのリカバリーで何とか決めたって感じッスね」

 

ギリギリ攻防の末の得点と断じた火神と黄瀬は盛り上がる観客とは裏腹に冷静になっていた。

 

「今までにあった圧倒的な力の差は今の攻防を見る限りほぼ縮まっている。試合は再び分からなくなったのだよ」

 

同じく緑間も冷静になっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

オフェンスは花月の切り替わり、ボールは空がキープする。

 

「来いよ」

 

目の前には青峰が立つ。今吉は大地にマークを変える。もはや今吉では空の相手は務まらない為、特に話し合いをした訳でもなく、自然とマークをチェンジしていた。

 

「ハハッ! さっきのは止められたと思ったけど、やっぱキセキの世代はスゲーな!」

 

不敵な笑みを浮かべながら空が目の前の青峰に言う。

 

「何だか知らねえけど今スゲー調子が良いんだよな。今なら、誰が相手でも負けねえと思えるくらいにね」

 

「ハッ! そらお前の勘違いだぜ。お前じゃ俺には敵わねえんだからな」

 

そんな空に対して青峰も不敵な笑みで返す。

 

「こっちもエンジン全開、最大ギアで行くぜぇっ!!」

 

そう宣言し、ハンドリングのスピードを上げる。

 

 

――ダムッ…ダムッ…!!!

 

 

先程同様、クロスオーバー、レッグスルー、バックチェンジを繰り返しながら左右に揺さぶりをかけていく。

 

『うおー! 何だあれ!? 速すぎだろ!?』

 

どんどんスピードが増す空のハンドリングのスピードに観客が驚愕する。

 

「こんなもんじゃねえぜ、俺のスピードはなぁ!」

 

そこからさらにハンドリングのスピードが上がる。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!」

 

次の瞬間、空が青峰の身体に触れるスレスレの距離まで詰める。

 

 

――スッ…。

 

 

同時に青峰の視界から空の姿が消える。

 

「そんなんでかわせるとでも思ってんかよ!」

 

接近と同時に左にクロスオーバーを仕掛けたのが見えていた青峰は自身の右へと切り込んだ空を追いかける。

 

「っ!?」

 

その時、青峰が目を見開く。身体を右に向けると、確かに空はそこにいた。だが、空の手元にボールがなかった。

 

「っ!」

 

舌打ちをした青峰が視線を左に向けるとボールはそこにあった。空は青峰との距離を詰め、クロスオーバーをしたのと同時にバックチェンジでボールを逆へと切り返していた。

 

「ちっ」

 

ボールの場所を掴んだ青峰がボールに手を伸ばす。だが…。

 

「ダメダメ、それは俺んだぜ」

 

それよりも速く空の左手がボールを捉える。空は両足を滑らせ、背中から倒れながら左手を伸ばし、ボールを左手に収める。同時に身体をねじって態勢を戻し、反転しながら青峰の左手側から抜ける。

 

「くっ!」

 

思わず声を漏らしながら青峰も空を追いかけるべく1歩踏み込む。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

そこを狙いすまし、空は踏み込んだ青峰の足元からボールを通し、再び反転、青峰を抜きさる。

 

『マジかよ!? あいつ青峰を抜きやがった!』

 

空が青峰を抜いた事により。観客からは驚愕の声が上がる。

 

「くそっ、行かせるか!」

 

そこへ、福山が現れ、空の目の前に立ち塞がる。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

目の前に福山が現れると、空は僅かにスピードを落とし、そこからクロスオーバーからのダックインで一気に加速。ハイスピードな上に自身の腰より低くダックインされてしまった為、なす術もなく抜きさられてしまう。

 

フリースローラインの内側まで切り込んだ空はそのままリングに向かって飛んだ。

 

「調子に乗ってんじゃねえぞ!」

 

その時、先回りした青峰がブロックに現れた。福山を抜いた際にスピードが緩んだ隙に先回りしていたのだ。

 

「さっすが! けど、来るのが少し遅かったね♪」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

先に最高到達点まで飛んだ空が青峰の上からダンクを叩き込んだ。

 

『うおぉぉぉぉぉぉっ!!!』

 

同時に会場が歓声で埋め尽くされる。

 

「やり返したぜ」

 

指を指しながら青峰に言い放つ空。

 

「上等だ。そうでなくちゃ、潰しがいがねえ」

 

そんな空に笑みを浮かべながら返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

変わって桐皇のオフェンス。ボールは早々に青峰に渡される。

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

「…」

 

「…」

 

ゆっくりドリブルをしている青峰。目の前には空。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

突如、青峰がペースアップ。急加速して仕掛ける。空は遅れる事なく青峰にピッタリと付いていく。

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

高速で切り返しながら青峰は隙を窺う。それに翻弄される事なく空もディフェンスに徹する。

 

「っ!」

 

青峰はクロスオーバーで左に切り込んだと同時にボールを掴み、右へと大きく横っ飛びし、ボールを右手に持って投げる構えを取る。

 

「っだらぁっ!!!」

 

これに反応した空が同じく横っ飛びしてブロックするべく左手を伸ばす。

 

「…っ」

 

「っ!?」

 

空が目の前に現れると、頭上に構えていたボールを下げ、下からボールを放り投げた。

 

 

――バス!!!

 

 

ボールを下に下げたのを見て空も左手を下げるが間一髪間に合わず、ボールは空の脇の下を抜けてバックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

「また決めてやったぜ」

 

「ハハハッ! スッゲー!」

 

不敵な笑みを浮かべ、指を指しながら言い放つ青峰。空は嬉しそうに笑った。

 

再び空がボールを運び…。

 

 

――ダムッ…ダムッ…!!!

 

 

青峰の懐に飛び込んでそこから左右に高速のハンドリングを始める。

 

「ちょこまか動きやが――っ!?」

 

目で空を追う青峰だったが、突如として空の姿を見失う。

 

「くっ!?」

 

振り返ると、空は既に背後に抜けており、反転して追いかけようとした時にはレイアップを決めていた。

 

「勝ち」

 

「…やるじゃねえかよ」

 

お返しと言わんばかりに言い放つ空に対し、素直に称える青峰。

 

「大した奴だ。スピードだけなら、今までやり合った中でお前より上はいねえ」

 

自身を相手に2度も得点を決めた空を青峰はさらに称えた。

 

「スピードは俺の専売特許だ。誰にも譲らねえよ。だが、それだけじゃ満足出来ねえな。スピードともう1つ、この試合の勝利も頂かねえとな」

 

「ハッ! それは無理だな。俺に勝てるのは、俺だけだからだ」

 

「ハハッ! そんな事言われちゃうと意地でも勝ちたくなっちゃうよ」

 

2人は不敵に笑いながら言い合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「青峰と……ゾーンに入った青峰と互角にやりあってやがる…!」

 

一連の2人の戦いを見て、火神は冷や汗を流す。

 

「去年の火神っちと青峰っちの時とは逆ッスね。あの時は2人の矛と盾がかみ合って点が入らなかったッスけど、こっちは互いの矛が互いの盾を貫いてるって感じッスね」

 

解説する黄瀬。だが、互角にやり合う両者を見て驚きを隠せない表情だった。

 

「…っ、でたらめな奴なのだよ」

 

一連のプレーを見ていた緑間が眉を顰めながら呟く。

 

「あの動きはもうバスケの常識を大きくかけ離れている。青峰が予測不能なら、神城空はもはや分類不能なのだよ」

 

空の規格外の動きを緑間は分類不能と評した。

 

「にしても今の青峰、まるで神城の姿を見失ったように見えたが…」

 

「事実、見失っていたのだろう。そうでなければ、あんな抜かれ方をする事はありえないのだよ」

 

ふと疑問に思った事を火神が言うと、緑間がそう答える。

 

「目の前にいる人間を見失うとはありえるんスか!? 相手はゾーンに入った青峰っちっスよ!?」

 

信じれないとばかりに黄瀬が緑間に詰め寄る。

 

「…チームメイトの高尾も昨日の試合の最後、神城に同じように抜かれていた。聞けば『いきなり目の前から消えて、気が付いたら抜かれていた』と、言っていたのだよ」

 

「まるで黒子のバニシングドライブみたいだな…」

 

「少なくとも、あれとは違うからくりがあるはずなのだよ。恐らくもっと単純で、恐ろしいからくりが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

青峰がボールをキープし、ドライブ。ゴール下まで切り込み、そのままリングに向かって跳躍。

 

「止める!」

 

リングと青峰の間に空が割り込むようにブロックに現れた。

 

『タイミングはばっちりだ。止めたか!?』

 

「…ハッ!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「ぐっ!」

 

ブロックなどお構いなしとばかりにボールをリングに叩きつけ、空を弾き飛ばす。

 

「そんなチンケなブロックで俺が止められるかよ」

 

「…ちっ」

 

フィジカルの差からくるパワーの差を見せつけられ、空は舌打ちを打った。

 

ボールを貰った空がフロントコートまで進み、目の前の青峰を得意の高速かつ変則のハンドリングで左右に揺さぶりをかけてかわし、フリースローラインを越えた所でリングに向かって飛んだ。

 

「それでかわしたつもりなら、舐めすぎだぜ」

 

そこへ、空の目の前に先回りした青峰がブロックに現れた。

 

『ダメだ。これじゃ止められる…!』

 

「…へっ!」

 

 

――スッ…。

 

 

空はボールを青峰のブロックの上にふわりと浮かせるように放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールは青峰のブロックを越えてリングの中心を潜り抜けた。

 

「壊せないブロックなら越えてしまえばいい」

 

「…ちっ」

 

違った形とはいえ、意趣返しをされた事により、青峰から思わず舌打ちが飛び出ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

 

――ダムッ!!!

 

 

青峰が切り込む。

 

「…ぐっ!」

 

それに反応し、食らい付く空だが、体格の差を生かした青峰のドリブルにより強引に前へ行かれてしまう。

 

そのままボールを掴んで青峰がリングに向かって飛んだ。

 

「俺もいる事忘れんなや!」

 

そこへ、天野がブロックに現れる。

 

「っ! 天さん、ダメだ!」

 

「っ!?」

 

 

――ドン!!!

 

 

制止をした空だが、僅かに遅く、青峰と天野が空中で接触してしまう。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

審判が笛を吹く。

 

 

――ピッ!

 

 

接触と同時に青峰がボールをリングに向かって放り投げる。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングの中心を潜り抜けた。

 

『ディフェンス、プッシング、緑9番! バスケットカウントワンスロー!』

 

「っ!? しもた…!」

 

ディフェンスファール、しかも、バスカンまで献上してしまい、言葉を失う天野。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

フリースローを青峰は危なげなく決める。

 

「開いたぜ」

 

「…」

 

そう言って不敵な笑う青峰。空は無言でそれを見送る。

 

「…すまん、余計な事してもうた」

 

「気にしないでいいですよ。取られたら取り返せばいいんですから」

 

落ち込む天野を空は笑顔で励ました。

 

「さて…」

 

ボールを貰い、フロントコート…スリーポイントラインの手前までボールを進める。目の前に青峰が現れる。

 

「っ!」

 

空が腰を落とし、青峰との距離を詰める。

 

「何度も同じ手を――っ!?」

 

距離を詰める空に対し、距離を取る青峰。だが、空は距離を詰めてはおらず、逆に距離を取っていた。

 

「ちっ!」

 

慌てて距離を詰める青峰。空はそのままスリーを放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

青峰のブロックは紙一重で間に合わず、ボールはリングの中心を潜り抜けた。

 

「戻したぜ」

 

「…ハハッ! やるじゃねえかよ」

 

そう言って不敵に笑う空。青峰も同様に笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

バスカンで8点に開いた点差だったが、空のスリーで再び5点差に戻した。そこから再び互いに得点を奪い合い、膠着状態となった。

 

 

第4Q、残り44秒。

 

 

花月 110

桐皇 115

 

 

空が再び青峰をかわして得点を決め、点差は5点に戻った。

 

 

――キュッキュッ!!!

 

 

「(残り時間を考えるとこれ以上点はやれねえ。何としてでも止める!)」

 

ボールを持った青峰に対し、今までとは違い、距離を詰め、身体が同士がぶつかりそうな程密着し、積極的にボールを狙いながらプレッシャーをかけた。

 

『スゲーディフェンスだ!』

 

『勝負を賭けてきたか!?』

 

 

「当然の選択なのだよ。ここで決められれば花月の敗北はほぼ確定する。仮に止める事が出来ても、時間を目一杯使われても同様だ。ならば、リスクを覚悟してでもボールを奪いに行くしかないのだよ」

 

緑間が2人の対決に注目しながら解説する。

 

 

「…っ、…っ!」

 

空からの激しいディフェンスを受けて、青峰の表情にも余裕はない。

 

両者の激しい攻防が繰り広げられる。

 

「青峰はん!」

 

そこへ、今吉が空の後ろから近づくと、胸の前で腕を組み、スクリーンをかける。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

同時に青峰がドライブを仕掛けた。

 

「ちっ!」

 

空の口から舌打ちが飛び出る。

 

ゾーンに入り、視野が広がっている空には当然、今吉のスクリーンをかけている事には気付いている。だが、青峰を追う為にはスクリーンをかわす必要があり、かわすと僅かに距離が膨らむ為、僅かの間青峰がフリーになってしまうのだ。

 

ドライブで切り込んだ青峰はそのままリングに向かって最短距離で突き進む。空も今吉のスクリーンをロールしながらかわし、追いかける。ペイントエリアに足を踏み入れたの同時にボールを掴んでリングに向かって飛んだ。マックススピードで勝る空は飛ぶ直前で青峰に追いつき、ブロックに飛んだ。

 

 

「神城が追い付いた!」

 

「…けど、これはさっきと同じ展開ッス。フィジカルで勝る青峰っちの勝ちッス」

 

目を見開き、一瞬でも見逃すまいと2人の対決に注目する火神。結果の予測が出来た黄瀬は淡々と結末を口にした。

 

 

同じゾーンに入った者同士。だが、単純に10㎝以上も身長が高い青峰の方がパワーで勝っており、ぶつかり合えば空が負けるのが自明の理。

 

「そんな事は分かってる。俺じゃあ青峰は止められない。俺1人では…」

 

「っ!?」

 

ここで青峰が気付く。空の後ろから大地が現れた事に。

 

「俺は花月を勝たせると言った。だが、俺1人で戦えるとも勝てるとも思ってねえ。1人で止められねえなら…」

 

「2人で止めればいい!」

 

青峰は右手で掴んだボールをリングに叩きつける。

 

「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!」」

 

 

――バチィィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

空と大地。2人の伸ばした手が青峰の持つボールを捉え、ボールを弾き飛ばした。

 

『止めたぁぁぁぁぁっ!!!』

 

『神城と綾瀬のダブルブロックだぁぁぁぁぁっ!!!』

 

青峰をダンクをブロックし、観客が割れんばかりに沸き上がった。

 

「ナイスだ、神城、綾瀬!」

 

ルーズボールを松永が拾った。

 

「来い!」

 

ブロックと同時に前へと走っていた空がボールを要求。

 

「くそっ! させるか!」

 

パスを阻止する為、新村が目の前に立って両腕を振る。

 

「くっ!」

 

目の前に立たれ、パスが出来ない。さらにコートの隅に立っている為、抜きさる事も難しい。

 

「松永さん!」

 

その時、松永の横から大地がボールを要求。松永はすかさず大地にパスを出す。

 

「空!」

 

パスを受け取った大地はすかさずフロントコートに足を踏み入れていた空に大きくパスを出した。

 

「っ!」

 

空がボールを受け取って前へ向くと、目の前には青峰が立っていた。僅かに遅れて空を追いかけていた青峰だったが、ボールが大地を中継している間に追いつき、回り込んでいた。

 

「…」

 

焦って仕掛ければ青峰にボールを奪われてしまう。その為、空はボールを止め、隙を窺った。その間に他の桐皇の選手達もディフェンスに戻る。

 

『あぁ、せっかくの速攻のチャンスが…』

 

ワンマン速攻が失敗に終わり、観客からは溜息が漏れる。

 

「…」

 

「…」

 

スリーポイントラインの僅か外側で睨み合う両者。青峰は、空のドライブとスリーの両方に対応出来るよう、集中力を最大にしている。

 

「………ふぅ」

 

腰の下に下げたボールを揺らすように左右に揺らし、一息吐くと…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

足の指先に力を集約し、一気に加速。クロスオーバーで仕掛ける。

 

「…っ!」

 

野生の勘で仕掛けるタイミングを読んだ青峰が同時に動き、空に並走する。フリースローラインを越えた所で空はボールを右手で掴んでリングに向かって飛んだ。

 

「抜けてねえぞ!」

 

そこへ、目の前に青峰がブロックに現れる。

 

「…っ」

 

このままダンクを仕掛ければまず間違いなくブロックされる。

 

「やった、青峰さんの勝ちだ!」

 

勝利を確信した桜井が拳を握る。

 

「…っ!」

 

 

――ピッ!!!

 

 

掲げたボールを左手で抑え、そこから身体を捩じり、その反動でボールを後ろへと投げた。

 

『っ!?』

 

まさかのパスにコート上の桐皇の選手及び観客全てが意表を突かれた。

 

「(パスを警戒しておらんかったわけやない。青峰はんに不用意に手助けに行っても邪魔にしかならんからむしろパスに注意を払ってたくらいや。パスを出すならエースの綾瀬か松永しかあらへん。そう思っとった。…やのに、何でそこやねん!?)」

 

投げられたボールは進行方向に立っていた人物が掴んだ。

 

「ぜぇ…ぜぇ…!」

 

スリーポイントラインの外側に立っていた生嶋。既に限界を遥かに超えており、息は絶え絶えである。

 

「あぁっ!」

 

思わず声を上げる桜井。空と青峰の対決に集中し過ぎていたことと、生嶋はもうまともに走る事も出来ない程に疲弊していた為、何も出来ないと高を括り、マークを怠ってしまっていた。

 

生嶋が膝を曲げ、シュート態勢に入る。

 

「(止めないと! 例えファールしてでも…!)」

 

空のブロックに向かってしまった青峰ではスリーポイントラインの外側に立つ生嶋のブロックには間に合わない。桜井はファール覚悟でブロックに飛んだ。

 

 

――ピクッ…。

 

 

生嶋は膝を曲げた態勢で1度ポンプフェイクを入れる。

 

「(っ!? フェイク!?)」

 

 

――ピッ!

 

 

ここで、生嶋はボールを放った。

 

 

――ドガッ!!!

 

 

スリーを放った生嶋とブロックに飛んだ桜井が激しく接触、コートに倒れ込む。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

審判が笛を吹き、指を3本立て、頭上に掲げた。

 

「はっ!?」

 

声を上げながら上半身を起こし、ボールの行方に視線を向ける桜井。ボールは弧を描き…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

リングに中心を潜り抜けた。

 

『ディフェンス、プッシング、黒7番! バスケットカウント、ワンスロー!』

 

笛を口から放した審判がコールする。

 

 

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

 

コールがされるのと同時に会場が歓声で埋め尽くされた。

 

「よく走った、生嶋ぁっ!」

 

「やるやんか、イク!」

 

歓喜に沸いた松永と天野が生嶋に駆け寄り、抱き着いた。

 

「ぜぇ…ぜぇっ…!」

 

生嶋は息を切らしながらゆっくり親指を立てる。

 

「…っ」

 

その先で、空が拳を握った。

 

 

「僕は…、何てことを…!」

 

スリーに加え、バスカンまで与えてしまった桜井は両手で頭を抱える。

 

『…』

 

そんな桜井にかける言葉が見つからない桐皇の選手達はただ俯いていた。

 

「いつまでも過ぎた事でグダグダ悩んでんじゃねえ」

 

気落ちする桜井に青峰が声を掛ける。

 

「まだ逆転されたわけじゃねえだろうが。くだらねえ事で後悔してる暇があったら死ぬ気で勝つ事だけ考えろ」

 

「は、はい! すいません!」

 

発破をかける青峰。桜井は謝りながら返事をし、気持ちを切り替えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

フリースローラインに立つ生嶋。2度ボールを両手で突いてからボールを掴み、縫い目を確かめ、視線をリングに向ける。ボールを構え、ゆっくり膝を曲げ、ボールを放つ。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

フリースローを決め、4点プレーを成功させた。

 

『決めたぁっ! これで1点差だ!』

 

『昨日に続いて2度目の番狂わせもあり得るぜ!』

 

無事、フリースローを成功させ、点差が1点にまで縮まり、観客の歓声がピークにまで高まる。

 

「ここが正念場だ! 絶対守り切れ!」

 

ベンチから上杉が声を張り上げる。

 

新村がスローワーとなり、ボールを拾ってエンドラインに立つ。

 

「っ!?」

 

空がすかさず青峰の目の前に立ちパスコースを塞ぐ。青峰にボールを渡そうと考えていた新村は目を見開く。

 

「…ちっ」

 

マークを外そうと動き回る青峰だが、空がそれを許さず、ピッタリ張り付く。

 

「新村! もうすぐ5秒だ! 1度俺に寄越せ!」

 

やむを得ず、新村は福山にボールを渡す。

 

「みんな、絶対死守よ!!!」

 

「みんなー! がんばってー!!!」

 

ベンチから姫川と相川が声を出す。

 

『絶対止めろぉぉぉっ!!!』

 

他のベンチの選手達も声を張り上げる。

 

桐皇の選手達はボールを回す。依然として青峰は空がピッタリマークしており、パスを出せない。他の選手でチャンスを作ろうにも花月の選手達がそれを許さない。

 

 

――17…16…。

 

 

残り時間は刻一刻となくなっていく。

 

「(早く…ボールを奪わないと…)」

 

「(後1本なんや! ボール奪わへんと…!)」

 

ボールを奪おうとディフェンスに臨む大地、天野の脳裏に焦りが生まれてくる。

 

 

――ピッ!

 

 

福山が天野を抜く事が出来ず、ボールを今吉に戻す。

 

「おぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

 

――バチィン!!!

 

 

『っ!?』

 

咆哮を上げながら大地がパスコースに手を伸ばしながら飛び込み、ボールを弾く。だが…。

 

『アウトオブバウンズ、黒ボール!』

 

ボールはラインを割ってしまった。

 

「くっ!」

 

ボールを奪う事が出来ず、大地は悔しさを露わにする。

 

今吉がスローインで福山にパスを出し、試合が再開される。

 

空は青峰、大地は今吉、天野は福山、生嶋が桜井、松永が新村をマークする。

 

 

――13秒…12秒…。

 

 

桐皇は無理な攻めは行わず、ボールを回す。

 

 

――11秒…10秒…。

 

 

必死にボールを奪い行く花月。桐皇は、攻める事をやめ、とにかく引いて残り時間を消費させる事に専念した。

 

 

――9秒…。

 

 

「…っ」

 

ここで、空が目に滴る汗を右腕で拭った。

 

 

――ダッ!!!

 

 

その時、青峰が一気に駆け出し、空のマークを外した。

 

「っ!? しまっ――」

 

汗を拭う際、ほんの僅かに青峰から目を切ってしまい、その隙を見逃さなかった青峰がマークを外してフリーとなった。

 

「もろたで!」

 

好機と見た今吉が青峰にパスを出す。ボールは、青峰の手に収まった。

 

 

「……勝負、あったのだよ」

 

緑間は呟くように言った。

 

 

ボールは、青峰の手に渡った。残り時間、ボールをキープして時間を使うか、それとも点を取ってトドメを刺しに行くか、青峰の選択は……。

 

「ハッ! 時間潰して逃げるなんざ、俺のバスケにはねえ。きっちり決めてトドメ刺すに決まってんだろ!」

 

点を取りに行く選択を取った青峰がドリブルを始める。

 

「くそっ!」

 

「と……止める…!」

 

同時に、空と1番近くに立っていた生嶋が青峰の前に立ち塞がった。

 

 

「なかなかの対応の速さだ。…だが、このダブルチームは失敗なのだよ」

 

緑間が声を出す。

 

 

 

――ダムッ!!!

 

 

青峰がドライブで切り込む。

 

「「っ!?」」

 

青峰は、自身から見て右に立っている生嶋の方からドライブを仕掛け、ダブルチームをかわす。

 

 

「生嶋が邪魔で神城のディフェンスが潰されてやがる!」

 

ドライブに反応出来た空だったが、横の生嶋が壁になってしまい、後を追えずにいた。それを見た火神が立ち上がりながら声を上げる。

 

 

ダブルチームを抜きさった青峰。その時…。

 

「っ!?」

 

ドライブで切り込んだ直後、1本の腕がボール目掛けて襲い掛かる。

 

「綾瀬!?」

 

腕の正体は大地。ダブルチーム突破直後の一瞬の隙を大地は狙いすました。

 

空と生嶋の後ろにいた大地は、青峰が生嶋の側から突破を図る事が予測出来た。後はタイミング。大地は第2Qの中盤から青峰をマークしていた為、タイミングの予測出来ていた。

 

「…っ!」

 

グングンボールに迫る大地の手。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

だが、大地の手がボールを捉える直前、青峰は歯をきつく噛みしめながらボールを左に切り返し、その手をかわした。

 

 

「タイミングは完璧だった。けれど、あれでどうにか出来る程、青峰っちは甘くないッスよ」

 

青峰をよく理解する黄瀬が言う。

 

ダブルチームに続き、大地をかわした青峰。そのまま突破を図ろうとしようとしたその時…。

 

「っ!」

 

青峰の身体に悪寒が走る。咄嗟に後ろを振り返ると…。

 

「まだだぁっ!!!」

 

そこには、後方から腕を伸ばし、バックチップを狙う空の姿があった。

 

 

「まさか、あいつはダブルチームをかわした直後を綾瀬が狙いすましている事も、さらにかわされる事も読んでいたのか!?」

 

あまりにも絶妙過ぎるタイミングでの空のバックチップに、火神はそう推理した。

 

 

絶え間なく襲い掛かる連続攻撃。第3の矢である空のバックチップが襲い掛かる。

 

「ぐっ! …がぁっ!」

 

 

――バチン!!!

 

 

持ち前の野生によって空の追撃に気付いた青峰は、声を上げながら左手に力を込め、ボールを身体の中心で掴み、ギリギリの所で空の手をやり過ごした。

 

『これでも止められないのか…!』

 

次々と襲い掛かる花月のディフェンスをかわす青峰を見て、声を失う観客。

 

ボールを掴んだ青峰はその場でシュート態勢に入る。

 

「まだやぁっ!!!」

 

その時、青峰の左側から、天野のブロックが現れた。

 

「4人目!?」

 

「まだ来るのかよ!」

 

さらに現れた天野のディフェンスに、桜井と福山が目を見開いて驚愕する。

 

「……ちっ!」

 

だが、青峰はボールを下げ、天野のブロックをかわした。

 

『これもかわすのかよ!?』

 

『やっぱり青峰は止められない!』

 

放たれた第4の矢、天野のブロック。だが、青峰はこれすらもかわしてしまう。

 

 

「これで、決着だ」

 

火神が呟く。

 

 

青峰が、リング目掛けてボールを放った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――バチィィィィッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ!?」

 

『何だと!?』

 

放たれたボールが弾かれ、青峰、そして桐皇の選手達が驚愕する。

 

「俺もいる事を忘れるな!!!」

 

『5人目だぁぁぁぁぁっ!!!』

 

現れたのは松永。青峰が放ったフォームレスシュートのブロックに成功し、会場は大歓声が上がる。

 

「何故……、何故こうも都合よく現れる…。このような連携、事前に打ち合わせでもしなければ不可能なはず…」

 

一連の花月の選手達の連携を目の当たりにして驚きを隠せない原澤。

 

勿論、この一連の連携は打ち合わせをしたものではない。完全に引いて時間を使い切る選択を取った桐皇。このままボールを回され続ければ、桐皇がミスをしない限りボールは奪えない。百戦錬磨の桐皇がそんなつまらないミスをする等あり得ない。

 

だが、唯一、ボールを受けたら点を取りに行くであろう人物がいる。そう青峰だ。青峰に限り、確実にトドメを刺しに来ると予測が出来た。時間を消費して逃げ切る等、彼のプライドが許さないからである。

 

そこで、空は汗を拭う素振りを見せてわざと隙を作り、青峰のマークを一瞬外し、ボールを掴ませた。

 

そこからは賭けだった。逃げ切られる可能性が高いとは言え、青峰を止める事もまた至難の業であるからだ。青峰にボールが渡った瞬間、コート上の花月の選手達が動いた。青峰を止める為に…。

 

始めのダブルチームから最後のブロックまで、それぞれがそれぞれのマークを外し、本能的に動いていた。万が一、青峰がパスを出してしまえば花月は負ける。だが、花月の選手達はその選択肢を捨て、各々が青峰を止める為に賭けを打った。

 

結果はその賭けが功を奏し、ブロックに成功した。

 

「ルーズボール、抑えろ!!!」

 

ベンチから上杉が声を張り上げる。

 

『…っ!』

 

ボールに向かって走る花月と桐皇の選手達。ボールを抑えたのは…。

 

「行け! 空ぁっ!!!」

 

空が真っ先にボールを抑え、フロントコート目掛けてドリブルを始めた。この時、残り時間は5秒…。

 

「行かせへん、行かせへんで!」

 

今吉が声を張り上げながら空の前に立ち塞がる。

 

 

――スッ…。

 

 

その瞬間、空は反転して背中から倒れ込む。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

転倒する直前、スピンムーブし、空お得意の変則のスリッピンスライドフロムチェンジで今吉を抜きさった。

 

「ぐっ! 儂じゃ、相手にもならへん!」

 

簡単に抜きさられ、苦悶の表情を浮かべる今吉。

 

リングから1番遠い所にいた為に何とかディフェンスに入れた今吉を抜きさった今、空に障害はない。空はリング目掛けて一直線に突き進む。

 

『いっけぇぇぇぇぇぇっ!!!』

 

コート及びベンチに花月の選手達が空に声を掛ける。その声を受けて空は突き進む。やがてフリースローラインを越えた所でボールを右手で掴み、リングに向かって飛んだ。その時…。

 

「っ!?」

 

空の左側から1つの影が現れる。

 

「負けるかよ! こんなところで俺は負ける訳には行かねえんだよ!!!」

 

「(…青峰!?)」

 

現れたのは青峰。今吉を抜きさる際に僅かにスピードが緩んだ隙に追いついていたのだった。

 

空が右手で構えているボールに手を伸ばす青峰。

 

「…っ!」

 

空はその手から逃れるようボールを持った右手を外に伸ばし、そこから手首のスナップを利かせ、ボールをリングに放った。

 

「っ!?」

 

放られたボールに対して懸命に手を伸ばす青峰。だが、ボールはリングに向かって飛んでいった。

 

『入れ!!!』

 

花月の全ての選手が放られたボールに願いを込めた。

 

ボールは1度リングに当たってからバックボードに当たり、リングの縁を転がり始めた。

 

『決まってくれぇぇぇぇぇぇぇっ!!!』

 

リングの上で転がるボールにさらに願いを込める花月の選手達。

 

やがて、転がるボールが徐々にゆっくりとなっていき、ボールは転がり落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――リングの…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――外側に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで、試合終了のブザーが会場に鳴り響いた。

 

ベスト4を決める花月と桐皇の激闘が今、終結した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





一気に書き上げました…(^-^;)

かなりのボリュームになったので、2話に分ける事も考えたのですが、それだと半端に短くなりそうなので一気に投稿です。

ここ最近は感想が少なく、執筆意欲が沸かなかったのですが、前話のまさかの反響にテンションあがりまくりです…(>_<)

活動報告でも書いた事なのですが、前話投稿でこの二次が日間ランキングに初めて乗り、ここ数年で1番テンションが上がりました。執筆活動がここまで楽しく感じたのはなろうにて自身の処女作を投稿していた時以来です。

さて、これでこの試合も終了です。思えば、この試合を投稿し始めたのって、2月だったんですよね。いやー、かかりました…(^-^;)

エタらずに投稿出来て良かったです…(^-^;)

感想、アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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