黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

久しぶりの投稿です…(^-^;)

それではどうぞ!



第85Q~扉~

 

 

 

第4Q、残り4分28秒。

 

 

花月 91

桐皇 94

 

 

桐皇のオフェンス、青峰のフォームレスシュートを連携で空がブロックし、カウンターで大地がレイアップを決め、その直後、今吉のパスミスからのターンオーバーからスリーを決め、点差を1点差にまで縮めた。

 

だが、その直後、ゾーンの扉を開いた青峰が大地をあっさり抜き、得点を決めた。

 

「正真正銘、こっから本気だ。死ぬ気でかかってこいよ」

 

不敵な笑みを浮かべ、青峰は花月の選手達の言い放った。

 

『っ!?』

 

青峰から発せられる強烈なプレッシャーを受け、花月の選手達も気付く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――青峰大輝が、ゾーンに入ったと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

スローワーとなった松永からボールを受け取った空がフロントコートまでボールを進める。

 

「(…ちっ、何てプレッシャーだよ。マッチアップしてるわけじゃねえ俺にまで伝わってきやがる)」

 

横目で青峰に視線を向ける空。青峰から発せられるプレッシャーを受け、思わず冷や汗が流れる。

 

「…っ!」

 

目の前の大地はそれ以上のプレッシャーを受け、表情が曇っている。

 

「(焦るな…、ゾーンに入った青峰を相手にするのはこれが初めてってわけじゃないんだ。落ち着いて攻めるんだ…)」

 

深呼吸して動揺を鎮め、冷静にゲームメイクを始める空。

 

「(…チラッ)」

 

「(…コクッ)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

大地にアイコンタクトを送り、頷いたのを確認するとクロスオーバーで今吉に仕掛ける。

 

「読んどるわ!」

 

先読みした今吉が進行ルートに先回りし、空の進路を塞ぐ。読まれる事を予測した空はクロスオーバー直後、バックロールターンで反転、逆を付く。

 

「相変わらずワンパターンやのう!」

 

これも今吉は読み切り、対応する。

 

 

――ピッ!!!

 

 

「っ!」

 

だが、空はバックロールターンで逆を付いた直後、遠心力を利用してボールをリング付近に放った。すると、事前にアイコンタクトを交わした大地がリングへと走り込み、飛んでいた。

 

『よし! いけー!!!』

 

ベンチから声が飛ぶ。ボールが大地の伸ばした手に収まる。

 

 

――バチィィィ!!!

 

 

「なっ!?」

 

が、その直前、後ろから手を伸ばした青峰のボールは叩き落とされてしまう。

 

「(嘘だろ…! これに反応するのかよ…)」

 

完全に不意を突いたはずだった。だが、ゾーンに入った青峰は空と大地の高速連携にいとも簡単に対応した。

 

「よっしゃー! カウンター!」

 

ルーズボールを拾った福山がボールをフロントコートに向けて大きく投げる。するとそこには、ブロック直後に走っていた青峰の姿があった。

 

「何やて!? 速すぎる!」

 

その速さに天野が思わず目を見開いた。センターラインを越えた所でボールを掴んだ青峰はそのままリングに向かってドリブルを始める。

 

「くそっ…!」

 

「っ!」

 

スリーポイントライン目前で空と大地が青峰に追いつき、回り込んで進路を塞いだ。

 

 

「マジかよ…! ゾーンに入った青峰に追いつきやがった!」

 

2人のスピードに火神も驚く。

 

「けど、今の青峰っちは止められないッス」

 

黄瀬は冷静にポツリと呟いた。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

2人が目の前に現れたの同時に一瞬スピードを緩め、左右に揺さぶりをかけ、2人の間に僅かに隙間が空いた瞬間一気に加速し、2人の間を高速で抜けていった。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

そのまま青峰はボールをリングに叩きつけた。

 

「「…」」

 

なす術もなく抜かれた2人は茫然とする。青峰はそんな2人に一瞥もくれず、ディフェンスに戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「勝負あったな」

 

「そうッスね。ゾーンに入った青峰っちはもう止められない。こっから先、点差が開く事はあっても、縮まる事はありえないッス」

 

コートを見つめる火神と黄瀬が状況を見て言う。

 

「…だが、花月はよくやったのだよ。あの青峰にゾーンの扉を開かせたのだから」

 

緑間は花月を称えた。

 

「ああ。大健闘だ。後は…」

 

「この試合の後、心が折れないかどうか、ッスね」

 

火神と黄瀬は、花月の選手達の行く先を案じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

再び花月のオフェンス。空がフロントコートまでボールを運ぶ。

 

「ほな、1本止めよか」

 

ディフェンスをする今吉。青峰がゾーンに入った事により、その表情には余裕が感じられる。

 

「(…チラッ)」

 

「(っ!? 打つんか!?)」

 

空はボールを突きながら視線をリングに向ける。空には外もあるというデータを持っている為、今吉は慌てて距離を詰めようとする。

 

 

――ボムッ!!!

 

 

距離を詰めようと1歩踏み出した瞬間、空は今吉の足元でボールをバウンドさせながらパスを出す。ボールはハイポストに立っていた天野に渡る。

 

パスと同時に空は天野の傍まで走り、手渡しでボールを受け取りそのままリングへと飛んだ。

 

「させるか!」

 

そこへ、新村がブロックに現れる。同時に空はボールを下げ、ビハインドバックパスで左に立つ松永にパスを出す。

 

 

――バチン!!!

 

 

が、背中からパスを出すのと同時に肘を背中に突き出し、ボールを逆へと飛んでいった。

 

「エルボーパス!?」

 

逆へボールが飛んでいったからくりに気付いた桜井が思わず声を出す。

 

「へえ」

 

すると横から感心する声が聞こえる。そこには空と松永のパスコースを塞ぐ青峰の姿があった。

 

「ナイスパス!」

 

空の右方向に走り込んでいた大地に渡った。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

大地はボールを受け取るのと同時に高速バックステップで下がりそこからフェイダウェイでシュートを放つ。

 

「っ!?」

 

シュートを放つの同時に青峰がブロックに現れる。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

紙一重でボールは触れられず、リングを潜った。

 

「いいね。その調子でどんどん来いよ」

 

点は決められたものの、満足気な表情で青峰は大地に言った。

 

「(念を入れてバックステップとフェイダウェイを入れて余裕を持ったつもりでしたが、それでもギリギリとは…)」

 

何とか得点したものの、ギリギリタイミングであった。その事実が大地の背中に冷たいものが滴った。

 

オフェンスが桐皇に切り替わる。今吉がボールを受け取ると、迷わず青峰にボールを渡す。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ボールを受け取ると、一気に加速し、フロントコートにドリブルを始める。

 

「うっ!」

 

青峰の進路に割り込む生嶋であったが、クロスオーバーであっさりかわされる。

 

「くっ…止めな…!」

 

生嶋を抜いた直後、今度は天野が立ち塞がる。

 

「お前も結構良い線行ってたぜ。…だが、もう無駄だ」

 

 

――スッ…。

 

 

「っ!?」

 

青峰はボールを天野の肩の上から通し、同時に横を駆け抜けて天野を一気にかわす。

 

「まだです! ここで…!」

 

天野が抜かれると、今度は大地がディフェンスに現れる。

 

「お前も、センスは認めてやる。…が、『そこ』で留まっているお前じゃ、俺には永遠に敵わねえよ」

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

「ぐっ…!」

 

左右の揺さぶりからの崩された所でドライブで突破される。もう青峰を遮るものはない。誰もがそう思った。

 

「まだだぁっ!!!」

 

そこへ、空が青峰に立ち塞がった。

 

「へっ! いいぜ、相手してやるよ」

 

変則のドリブルで揺さぶりをかける。

 

「…っ! …っ!」

 

歯を食いしばって空は青峰の動きに付いていく。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

空の重心が右脚に傾いた瞬間、青峰が高速で切り返し、逆を付いて空の左を抜ける。

 

「…がぁっ!」

 

右脚に力を込め、強引に横を抜ける青峰の進路を塞ぐ。

 

 

――スッ…。

 

 

空に進路を塞がれるのと同時に反転、バックロールターンで更に逆を付いて空を抜きさる。

 

 

――バス!!!

 

 

青峰はそのままレイアップを決めた。

 

『…』

 

圧倒的な青峰の実力に、花月の選手達の表情が曇る。

 

「空……っ!」

 

大地が空に歩み寄り、声をかけるが…。

 

「もう少し…、もっと速く、もっと鋭く…」

 

鬼気迫る表情で独り言を呟く空の姿に、大地は息を飲んだのだった。

 

「…」

 

花月のオフェンス、空がボールを運ぶ。

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

バックチェンジからのクロスオーバーで今吉を抜きさる。

 

「(ぐっ…! 先を読んどったのに抜かれてもうた。スピードとキレがここに来て増しよったとちゃうか!?)」

 

空をマークする今吉だが、事前に空の行動を読み切って対応したにも関わらず抜かれてしまう。

 

今吉をかわし、そのままリングへと突き進み、ボールを掴んで跳躍。

 

「っ!?」

 

その時、目の前に青峰がブロックに現れる。

 

 

――スッ…。

 

 

ダンクに向かった空だが、青峰が現れるのと同時に中断、真後ろに走り込んだ大地にバックパスに切り替えた。

 

 

――バチィィィ!!!

 

 

だが、パスを出す瞬間、青峰が手を伸ばし、空の手にあるボールを叩いた。

 

「くっ!」

 

まさかのパスカットに空が思わず苦悶の声を上げる。ルーズボールを慌てて大地が拾うが。

 

「っ!?」

 

ボールを掴んだ瞬間、目の前に青峰が現れた。

 

「ぐっ…!」

 

圧倒的なプレッシャーと隙のないディフェンスをする青峰に、大地はボールをキープするだけで精一杯になる。

 

 

――ポン…。

 

 

「あっ…!」

 

青峰の伸ばした手が大地の持つボールを捉える。弾かれたボールを青峰が抑え、そのままドリブルを始めた。

 

「くそっ…戻れ!」

 

必死に声を出し、ディフェンスへ戻る天野。だが、速すぎる青峰に追いつけず、逆にどんどん引き離されてしまう。

 

「…ハッ、懲りねえ奴だな」

 

青峰はスリーポイントライン目前で停止する。

 

「止めてやる!」

 

追いついた空が青峰の目の前に立ち塞がる。

 

「…」

 

「…」

 

睨み合う両者。その時…。

 

「っ!」

 

突如、空が青峰がキープするボールに手を伸ばす。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

青峰は動じることなくボールを切り返して空の手をかわし、そのまま空の横を抜ける。

 

「行かせるか!」

 

空はすぐに反転、青峰を追いかけ、横に並ぶ。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

並ばれるのと同時にボールを弾ませ、反転しながら逆へ切り返す。

 

「っ! この程度でぇっ!!!」

 

だが、空はこれにも食らい付く。その時…。

 

「っ!?」

 

空の視界からボールが消える。同時に青峰が空の横を駆け抜ける。

 

「くっ!」

 

ここで空は気付いた。青峰が切り返したの同時にボールを背中から空の後方に放っていた事に。

 

「まだまだぁっ!!!」

 

空は倒れ込みながらボールに手を伸ばす。

 

「なっ!? まだ反応するのか!?」

 

その反応の速さと執念に福山は驚愕する。

 

「大した奴だ。だが、俺には届かねえ」

 

だが、その手を青峰は嘲笑うかのように切り返してかわす。

 

「ダメだ…、青峰は止められない…!」

 

空の執念を容易くあしらう青峰にベンチの馬場は絶望する。

 

ボールを掴んだ青峰はそのままリングへと跳躍する。

 

「まだだ…。俺は勝つと誓ったんだ…! キセキの世代に…勝つんだ!!!」

 

空は伸ばした手をコートに付き、立ち上がると、ブロックに飛んだ。

 

「っ!?」

 

ボールを持った青峰。突如目の前に空がブロックに現れ、目を見開く。

 

「…っ」

 

青峰はボールを持った腕を伸ばし、バックボードの裏側からボールを放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

『うおぉぉぉっ! 何だ今の!?』

 

『裏側から放ったぞ!?』

 

スーパープレーに観客が沸き上がる。

 

『…』

 

奮闘をする空。だが、そのさらに上を青峰に花月の選手は言葉を失う。

 

「ボール」

 

「は?」

 

「早くくれ」

 

「お、おう」

 

空に催促され、松永が戸惑いながらボールを渡した。

 

「…」

 

空は前を向き、見据え、ボールを運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

緑間が無言でコートを見つめている。

 

「緑間っち? どうかしたんスか?」

 

そんな緑間に気付き、声を掛ける。

 

「…いや、少しずつではあるが、神城が青峰の動きに対応し始めている気がしてな」

 

「確かに、あいつは何とか青峰に食らい付いてはいるが、止めるのは無理だろう。ゾーンに入った奴を止められるのは、同じゾーンに入った奴か、あるいは、エンペラーアイを持つ赤司か高精度のデータを持てる三杉くらいしか…」

 

緑間の懸念に、火神が苦言を呈した。

 

「火神っち、俺もパーフェクトコピーなら勝てるッスよ」

 

火神の言葉に黄瀬が口を尖らせながら抗議する。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

コート上では、空からのパスを受けた大地がジャンプシュートを決めた。

 

「…」

 

何かを考えるように眉を顰めると、緑間はコートに集中した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

第4Q、残り3分2秒。

 

 

花月 95

桐皇 100

 

 

何とかオフェンス成功させ、点差を5点に戻した花月。桐皇のオフェンスに備える。

 

「…」

 

桐皇は早々に青峰にボールを渡す。ボールを持った青峰の前には大地が立ち塞がる。

 

「…」

 

大地は腰を深く落とし、集中力を全開にしてディフェンスに臨んでいる。

 

「………ハッ」

 

そんな大地を見て青峰は不敵に笑うと、ボールを片手に持ってフォームレスシュートの態勢に入る。

 

「っ!」

 

それを見て大地が慌てて距離を詰めてブロックに向かう。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

だが、青峰はシュートを中断し、ドライブで大地の横を抜ける。

 

「っ! まだです!」

 

ギリギリで飛ぶのを踏みとどまった大地は高速バックステップで青峰を追いかけ、進路を塞ぐ。

 

「お前といい神城といい、おもしれー奴等だ。だがな…」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「俺には届かねえ」

 

大地が目の前に現れると、青峰は急停止し、そこから一気に加速。高速のストップ&ゴーで大地をかわす。そのままフリースローラインを越えた所でボールを掴み、リングに向かって飛んだ。

 

「意地でも止めたるわ!」

 

そこへ、天野がブロックに現れる。

 

「関係ねえな」

 

だが、青峰は回転しながら天野を空中でかわし、改めてリングにボールを叩きつける。

 

 

――バチィィィ!!!

 

 

その瞬間、1本の腕が現れ、ボールを止める。

 

『神城!!!』

 

空がブロックに現れ、コート上の選手、ベンチ、観客の全てが思わず声を上げた。

 

「負けらねえんだよ。何が何でも!」

 

必死にボールを弾き飛ばそうと空は力を込める。

 

「状況が分からねえ馬鹿でもねえだろうに、テツと同レベルのその負けん気は、素直に大したもんだ」

 

「…ぐっ!」

 

青峰が力を込めると、徐々に押されていく。

 

「出直してきな、改めて来年勝負してやるよ」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「がっ!」

 

青峰に押し切られ、ボールがリングに叩きこまれた。

 

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

沸き上がる観客。会場のボルテージはさらに熱身を帯びていく。

 

「空!」

 

「空坊!」

 

そんな中、コートに叩きつけられた空が大の字で倒れ伏していた。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

『レフェリータイム!』

 

審判が笛を吹き、そうコールした。

 

「…」

 

花月の選手達が空の身を案じて駆け寄り、声を掛けるが、空は反応せず、倒れたままであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「(つえーな)」

 

倒れ込んだまま、空は心中で呟く。

 

自身の意識がどんどん沈み、薄暗い何処かに静かに向かっている感覚を空は意識的に感じていた。

 

「(勝てねえのかな…)」

 

圧倒的な実力差を目の前で見せつけられ、思わず考えてしまう。

 

「(…………けど)」

 

彼我の実力差は明白である。それでも…。

 

「(勝ちてぇ)」

 

空はそれでも心の底から勝利を願った。

 

「(勝ちてぇ勝ちてぇ勝ちてぇ勝ちてぇ勝ちてぇ勝ちてぇ勝ちてぇ勝ちてぇ勝ちてぇ勝ちてぇ勝ちてぇ勝ちてぇ!!!)」

 

空は狂ったように願い続ける。

 

「(だからこそ勝ちてぇ! こんな化け物染みた奴に勝てたら最高じゃねえかよ! だから勝ちてぇ! 勝って、皆とその喜びを分かち合いたい!!!)」

 

空は目を開け、立ち上がる。その時…。

 

「……?」

 

目の前には大きな扉があった。

 

「(こんなところに用はねえ。さっさと試合再開だ!)」

 

空は扉に両手を付け、力を込めた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「君、大丈夫か!」

 

審判が倒れたまま空の傍に駆け寄り、声を掛ける。反応が見られない空を見て、担架を要求しようと顔をオフィシャルテーブルに向ける。その時。

 

「…っ」

 

倒れていた空が突然両目をパチリと開けた。

 

「目ぇ開いた! 空坊、大丈夫か!?」

 

天野が心配そうに空に声を掛けた。すると…。

 

「…っと」

 

空は両足を上げると、反動を付けて一気に立ち上がった。

 

「君、試合は続けられるか?」

 

勢いよく起き上がった空に一瞬驚くもすぐさま声を掛ける。

 

「問題ないですよ。早く試合を再開しましょう」

 

審判の言葉に空はそう返す。

 

「(………意識ははっきりしている。呂律は回っているし、瞳も定まっている。問題はなさそうだな)」

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

『試合再開!』

 

試合続行に問題ないと判断した審判は笛を吹いて試合を再開する。

 

リングの下に転がっていた松永が拾い、スローワーとなりエンドラインに立った。

 

「…っ!」

 

その時、空が松永に近寄り、無言でボールを要求した。

 

「(何だ? 神城の様子が変だ。大丈夫なのか? …いや、ウチのポイントガードは神城だ。神城に渡す他はないな)」

 

一瞬思考したが、松永は空にボールを渡した。

 

「…」

 

ボールを貰った空はゆっくりボールをフロントコートまで進める。同時に今吉がディフェンスに現れる。

 

「(もうそろそろトドメ刺したいのう。この1本止めて、試合を――なっ!?)」

 

その時、今吉の視界から空が消える。人が消える事などありえない事だが、今吉の目からは、空が消える。

 

「(何処行ったんや!? 何が起こったんや!?)」

 

空の姿を探す今吉。空は、既に今吉の背後に抜けていた。

 

カットインで中に切り込む空。そこへ、青峰が現れる。

 

「っ!」

 

すると、空は停止し、その場でドリブルを始める。

 

 

――ダムッ…ダムッ…ダムッ…!!!

 

 

クロスオーバー、レッグスルー、バックチェンジを高速で繰り返し、時折膝を曲げて姿勢を低くしながら青峰の目の前で高速で切り返しを繰り返した。

 

「…っ、…っ!」

 

目の前で高速で切り返しを続ける空。どんどん上がるスピードに青峰の表情がどんどん余裕がなくなっていく。そして…。

 

「っ!?」

 

青峰が両目を見開く。青峰の視界から空が消えてしまった。

 

 

――バス!!!

 

 

振り返ると、空がレイアップを決めていた。

 

『…』

 

会場が水を打ったように静まり返る。

 

『お…』

 

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

状況を理解した観客が沸き上がった。

 

「まだ終わってねえぞ。絶対勝つ。俺が、花月を勝たせるんだ」

 

静かに空が言った。

 

「クックックッ。これはマジで嬉しい誤算だ。まさか、お前が開くとはな…」

 

そんな空の言葉を聞いて青峰は満足そうに笑い始めた。

 

「最高だぜ、お前は! 楽しませてくれよ。この俺を!!!」

 

青峰の言葉を聞くと、空は振り返り、不敵に笑った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――空が、ゾーンの扉を開いた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





とりあえず、この辺りで筆を止めました。

目標としましては、今年中にウィンターカップを終えたいですね…(^-^;)

ああ、地球の皆、オラに文才を分けてくれ!!!

感想、アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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