黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

前回と引き続き、再びこれだけの間隔が…(^-^;)

それではどうぞ!




第82Q~虐殺~

 

 

 

第3Q、残り9分51秒。

 

 

花月 43

桐皇 44

 

 

前半戦をリードで終え、試合も折り返しに差し掛かった早々、青峰の5人抜きによる一撃で桐皇は点差を逆転させる。

 

『…』

 

第3Q開始直後の一撃に、花月の選手達は茫然とする。

 

「…っ! 松永ボールをくれ、取り返すぞ!」

 

「っ! す、すまん」

 

いち早く正気に戻った空がボールを要求。同時に正気に戻った松永がボールを拾い、スローワーとなって空にボールを渡した。

 

「ハーフタイム直後に不意を突かれただけだ。取り返すぞ!」

 

ボールを受け取った空は声を出し、ボールをフロントコートまで進めた。

 

「…」

 

同時に、今吉が空のディフェンスに現れた。

 

「…」

 

ここで止まり、空はドリブルをしながら攻め手を考える。現状、大地、生嶋、松永はマークがきつい。天野は比較的マークが緩いが…。

 

「(天さんはポジションが悪い。いくらディフェンスに難がある福山相手でもきついだろう。だったらここは俺が…!)」

 

自分で点を取りに行くと決めた空はその場でレッグスルーで何度かボールを行き来させ…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

一気に加速、クロスオーバーで今吉を抜きにかかる。

 

「うはっ! 疲労も出てくる時間帯やのにこのスピードは敵わんで…!」

 

空のスピードに面を食らいながらも動きを先読みし、空の進路を塞ぎにかかる。

 

「この程度…!」

 

 

――スッ…。

 

 

進路を塞がれるも、空はすぐさまバックチェンジで切り返し、今吉をかわした。

 

『抜いたぁっ!』

 

ペイントエリアまで侵入すると、若松がヘルプに飛び出す。空は若松がブロックに現れる前にシュート態勢に入った。

 

「あかんわ。やっぱ儂じゃあんさんに勝たらへん。…けどまあ、勝つ事はでけへんけど、止める事は出来そうやわ」

 

「っ!?」

 

ここで空は気付いた。自身の真横から高速で駆け寄る1つの影を。

 

「生憎やけど、そこはエースの射程圏内や」

 

「しまっ――」

 

 

――バチィィィ!!!

 

 

ボールが空の指から放たれた直後、青峰よってブロックされた。

 

「ナイスブロォォォック!」

 

ルーズボールを福山が拾い、そのままワンマン速攻をかける。

 

「いただきぃっ!」

 

リング付近までドリブルで侵入した福山はそのままレイアップの態勢に入った。

 

「あかん! 福山はん、ボール下に落としぃ!」

 

「っ!?」

 

突然耳に入った今吉の声に反応し、福山はボールを下に落とした。

 

「ちっ!」

 

その時、福山のすぐ後ろから空の舌打ちが聞こえる。

 

「マジかよ…」

 

先程青峰のブロックされたばかりの空が目の前にいた事に軽く驚く福山。もし、今吉が声をかけなければ確実にブロックされていただろう。

 

「いい反応でっせ」

 

落としたボールを受け取った今吉がシュート態勢に入る。

 

「させません!」

 

そこへ、大地が後方からブロックに現れた。

 

「知っとるわ」

 

だが、今吉は予見していたのか、動じることなくボールを左アウトサイドへとパスを出す。そこへ、桜井が走り込み、ボールを受け取る。

 

「すいません!」

 

ボールを受け取るのと同時に桜井はスリーを放つ。生嶋がブロックに向かうも僅かに間に合わず…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングを潜り抜けた。

 

「くっ!」

 

スリーを決められ、点差が4点に開き、表情が曇る空。ボールを受け取り、ゲームメイクを始める。

 

「…」

 

再びボールをフロントコートまで運ぶ。目の前には今吉。

 

「……ちっ」

 

思わず空の口から舌打ちが飛び出す。自身をマークする今吉に関して言えば、動きを読まれているとは言え、抜けない相手ではない。だが、先ほどの青峰のブロックが頭にチラつき、ドリブル突破をする事に迷いが生じる。

 

「(…ふっ、思ったとおりや。さっきのブロックが相当効いとる)」

 

焦る空を見て今吉は内心でほくそ笑む。

 

「(調子に乗った時の神城は手が付けられんが、1度思考の沼にハメてまえばこの様や)」

 

調子の変動によってパフォーマンス能力に影響が出やすい空。第3Q最初の5人抜きによるダンクと先ほどのブロックは空の調子を崩すには充分な効果があった。

 

「くそっ!」

 

イラつきながら空はパスを出す。ボールの先は右アウトサイドに展開していた生嶋。

 

「…っ!?」

 

ボールが生嶋に渡ると、桜井が厳しくチェックをしてきた。

 

「…っ! …くっ!」

 

桜井の厳しいチェックに、ボールを受け取った生嶋は碌にシュート態勢に入る事も出来なかった。

 

「生嶋奏君の恐ろしさはその正確無比なスリー。ならば、スリーを打たせなければいい」

 

桐皇ベンチで桃井がノートを片手に呟く。

 

「…このくらいで…!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

厳しく当たられながらも生嶋は隙を突いて桜井の脇からドライブで抜けた。

 

「生嶋はスリーだけじゃねえんだよ」

 

桜井を抜きさった生嶋を見て空がほくそ笑む。

 

「こうなっても構いません。生嶋君はとにかくスリーを打たせない事が第一。例え中に切り込まれても、彼にはそこで勝負できる武器がありません」

 

桜井を抜いた直後にシュート態勢に入る生嶋。

 

 

――バチィィィ!!!

 

 

「っ!?」

 

「百年はえーよボケ!」

 

だが、そのシュートはヘルプに出た若松によってブロックされた。

 

「速攻や!」

 

ルーズボールを今吉が拾い。速攻をかける。

 

「くそっ、させっかよ!」

 

速攻をかける今吉を追いかける空。スリーポイントライン手前で今吉を捉え、目の前に立ち塞がる。

 

「相変わらず信じられんスピードやのう。やが…」

 

追いつかれるのと同時にノールックビハインドパスでボールを右に流した。そこへ、福山が走り込み、ボールを受け取る。

 

「スリーを打てんのは桜井だけじゃねえぞ」

 

「くそっ!」

 

スリーを放つ福山。慌ててブロックに飛ぶ空だったが、紙一重で届かなかった。

 

 

――ガン!!!

 

 

「あがっ!」

 

だが、ボールはリングに嫌われ、外れる。

 

「助かった。リバウン――」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「きっちり決めろバカ」

 

外れたボールを、そのまま青峰がダンクで押し込んだ。

 

『スゲー! リバウンドダンクで押し込みやがったぁっ!』

 

豪快な青峰のダンクに観客がさらに沸き上がった。

 

『…っ』

 

再び点を決められ、表情が曇る花月の選手。

 

「顔を上げろ! 取り返すぞ!」

 

『おう!!!』

 

自身に脳裏によぎる不安を振り払うかのように空が声を張り上げると、他の選手達も同様に声を張り上げる。

 

「…」

 

前とその前と同じく空がフロントコートまでボールを運び、目の前には今吉。やはり強引に仕掛けられない空はパスを出す。今度はローポストに立つ松永に。

 

「こいやぁぁぁぁっ!!!」

 

「くっ!」

 

リングに背を向ける形でボールを受け取った松永は背中に付く若松を背中で押しながらゴール下まで押し込もうとするが、若松はピクリとも動かない。

 

「ちぃっ!」

 

松永はオフェンスを諦め、1度空にボールを戻す。同時にローポストから離れる。

 

「そういうことか。頼むぜ!」

 

ローポストから離れた松永に再びボールを渡す。松永を追いかけた若松が再びマークに付く。今度は互いに向かい合っての1ON1である。

 

「よし! ゴール下が主戦場の若松は向かい合わせでの1ON1は不慣れなはず。そこなら松永に分がある!」

 

勝利を確信するベンチの馬場。馬場の言う通り、センターはゴール下に立つ事が主な為、試合中リングから離れての1ON1を行う機会が少ない。ゴール下での1ON1とリングから離れての1ON1とでは勝手が違う為、切り替えは容易ではない。

 

「いくぞ」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

腰を落とした松永が一気に加速。若松に仕掛ける。

 

「舐めんな!」

 

若松はすぐさま反応し、松永を追いかける。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

松永は若松が並走したきたのと同時にバックロールターンで反転し、若松をかわす。

 

「よっしゃぁっ! いけー!」

 

若松をかわしたのと同時にボールを掴んだ松永はリングに向かって飛ぶ。

 

「確かに、センターはゴール下から離れて勝負する機会は少ない。現に、秀徳の支倉はんも普段の距離の違いに苦しんどったしな。やが…」

 

「っ!?」

 

ボールを持った右手がリングを越えた所で、目の前に1本の腕が現れた。

 

「うちのキャプテンは、練習で毎日青峰はんと1ON1しとる。やから、その距離の1ON1は別段苦でもなんでもあらへんで」

 

 

――バチィィィ!!!

 

 

「どっせぇぇぇぇぇい!!!」

 

「ぐっ!」

 

松永の持つボールを力一杯叩き落とした。

 

「その程度のスピードとテクニックじゃ、支倉はんには通じても、キャプテンには通じへんで」

 

ほくそ笑みながら今吉が解説する。

 

「毎日青峰の相手してる俺からすればそんな温いオフェンスじゃ話にならねえぜ!」

 

「1度も勝ててねえけどな」

 

「うるせえよ!」

 

転がったボールを今吉が抑える。

 

「今吉! こい!」

 

「次は頼んまっせ」

 

既に速攻に走っていた福山に大きくボールを投げつける。

 

「あかん! ターンオーバーや!」

 

慌ててディフェンスに戻ろうとするも、距離が空き過ぎて空や大地でも追いつく事が不可能であった。

 

 

――バス!!!

 

 

リングに下までボールを進めた福山はそのままレイアップを決めた。

 

「おっ、今度は決まりよった」

 

「良く決めた!」

 

「いや、さすがにあれは決められるでしょ!?」

 

声をかける今吉と若松に不満げに突っ込みを入れる福山。

 

『…』

 

度重なるターンオーバーで言葉を失う花月の選手達。

 

「…まずいな」

 

事態を重く見た上杉はベンチから立ち上がり、オフィシャルテーブルにタイムアウトの申請に向かった。

 

その後も、桐皇の猛攻は続く。花月は攻めてがなく、そのオフェンスに陰りが見え、桐皇は次々と得点を重ねていく。

 

「(早く…時計止まって!)」

 

ベンチ内で姫川が祈るように胸の前で手を組む。そして…。

 

『アウトオブバウンズ、黒(桐皇)』

 

ボールがサイドラインを割る。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

『チャージドタイムアウト、花月!』

 

ここで、ようやくタイムアウトがコールされる。

 

『ハァ…ハァ…!』

 

時計が止まった事に安堵するのと同時に息を荒げながらベンチへと戻っていく花月の選手達。

 

 

第3Q、残り時間7分46秒。

 

 

花月 45

桐皇 57

 

 

後半戦開始から怒涛の猛攻に、点差は瞬く間に二桁にまで開いてしまった。

 

「お前ら、頭で考えすぎているぞ、足もボールも止まってしまっている。いいか――」

 

上杉はこの状況を打開する為に選手達を落ち着かせ、指示を出していく。

 

『…』

 

だが、状況の重さに押し潰されそうな心を必死に堪える選手達には、その指示が耳には入っても頭に入っていかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「点差、一気に開いたッスね」

 

タイムアウトになり、後頭部で両手を組み、背もたれに体重を預けながら黄瀬が呟く。

 

「後半戦になっていきなり点差が付きやがった。いったい何が――」

 

「桐皇は何もしていないのだよ」

 

火神の言葉を遮るように緑間が言う。

 

「桐皇は何もしていない。この結果はただ単に実力の差が出ただけだ」

 

「「…」」

 

「前半戦、桐皇は実力未知数の花月が相手とあって何処か慎重に試合を進めていた。桃井のデータも不十分な事もあり、オフェンスもディフェンスも、いつもの勢いは出せなかった。だが…」

 

「桃っちのデータが揃って、花月の動きにも対応出来るようになった桐皇が攻勢に出た。…こんな感じッスか?」

 

「概ね、そのとおりなのだよ」

 

黄瀬の捕捉に緑間が頷いた。

 

「花月はタイムアウトを取ったが、何か策があんのか?」

 

「あるとは思えないのだよ。各ポジションで手詰まりとなっているこの状況。キャリアの少ない1年生主体な上、控えの層も薄い花月ではどうにもならないのだよ」

 

花月にとって状況は絶望的であると緑間は断言する。

 

「だが、これでも花月はここまでよくやったのだよ。あるゆる状況が味方したとは言え、桐皇を相手に前半戦をリードで折り返したのだからな」

 

自身に勝った花月が圧倒されるという決して気分の良い光景ではないが、それでも緑間は花月を称賛した。

 

「真価が問われるのはここからなのだよ。ここから花月がどういう結末を迎えるか…」

 

そう言って、3人は視線をコートに戻したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

桐皇ボールで試合は再会。だが、緑間の予測通り、花月にとっての悪い流れはタイムアウトを取っても変わる事はなかった。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

青峰のフォームレスシュートが決まる。

 

「「…っ」」

 

大地と天野のダブルチームを突破しての失点に、2人は歯をきつく食い縛る。司令塔の空がボールを受け取り、ボールをフロントコートまで進める。

 

「…」

 

空は熱くなる頭を必死に冷ましながらゲームメイクをする。

 

「怖い顔しとるのう。そんなに睨んでも結果は変わらんで」

 

そんな空に目の前の今吉が微笑を浮かべながら話しかける。

 

「あんさんももう気付いとるんやろ? もうこの試合、どうにもならへんって」

 

「んなわけねえだろ。試合はまだこれからだ」

 

問いかける今吉を睨みつけながら返す空。

 

「健気やなあ。仮にもインハイ王者なんて言う肩書き持ってしもとるから簡単に諦められんのかもしれへんけど、あんなん三杉はんと堀田はんのおかげなんは誰の目から見ても明らかなんやからそう不相応な肩書きに縛られんでもええんとちゃう? 既に秀徳に勝っとるんや。ここで諦めても皆手ぇ叩いて称賛してくれんで?」

 

「うるせえよ」

 

今吉の言葉に軽く荒げながら返す空。

 

「頑固やのう。ほなら、分かりやすく今の状況をきっちり説明したるわ。まず、アウトサイド。桜井はんあれだけがっちり付かれてもうたら碌にスリーも打てへん。何より…」

 

「ハァ…ハァ…!」

 

「徹底マークが祟ってもうガス欠寸前や。あれじゃスリー以前にまともにボールすら受け取れへん。あとは何も出来ずに終いや」

 

「…」

 

「次にインサイド。フィジカルの差が絶望過ぎてゴール下では話にならん。かと言って、ゴール下からキャプテンを引っ張り出しても結果はさっきと同じ。ここもあかん」

 

「…」

 

「次におたくのエースである綾瀬やが、ここは1番話にならん。申し訳ないが、うちのエースとおたくのエースでは根本的に実力差がありすぎる。ここもあかん」

 

「…」

 

「残ったんは天野はんとおたくやが、まあこの二ヶ所なら点は取れんこともないやろが、ウチは攻め手が分かってる場所から何度も得点させる程甘くない。天野はんのポストプレーやスクリーンを使ってもや。ま、10本中、ま、7、8回は止められるやろうな」

 

「…」

 

「さて、今度はウチやが、ウチはワシ以外のポジションなら得点は容易や。ワシにしても、福山はんの片手間に相手してくれよるならチャンスある。ま、10本中8、9本は決められるやろうな」

 

「…」

 

「ここまで分かりやすく説明したならもう理解出来たやろ? オフェンス成功率85%のワシらと25%のおたくがぶつかりあえばどうなるか、結果は明白や。まして、そっちは外がないんや。どや? ぐうの音もでーへんやろ?」

 

「…うるせえよ」

 

ここまで黙って今吉の話を聞いていた空が口を開く。

 

「バスケは確率じゃねえ。そんなつまらねえもんで試合を決めんじゃねえよ」

 

今吉を睨みつけながら空が返す。だが、そんな空の返事に今吉は含み笑いを浮かべる。

 

「それが決まってまうんや。確率は裏切らんよ。よほど数字が拮抗せん限りな。ワシはこれで中学時代弱小校やったチームを全中の一歩手前まで導き、今はここでスタメン張っとるんや。桃井はんデータがあればワシの確率の精度はさらに上がる。ワシの確率は、誰にも崩せんよ」

 

「だったら、俺が崩してやるよ!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ここで空が一気に加速、1歩で今吉の横に進み、2歩目で今吉の背後に進んだ。その直後、空はシュート態勢に入った。

 

「速いのう。ワシがおたくを止められる確率はほぼ0やろう。やが、この方ならどうやろ?」

 

「っ!?」

 

そこへ、青峰がヘルプに飛び出し、ブロックに飛んでいた。

 

「空!」

 

青峰がヘルプに飛び出した事でノーマークとなった大地が空の斜め後ろでボールを要求した。その言葉に反応し、空はシュートを中断し、ボールを後方へと放った。

 

 

――バチィィィ!!!

 

 

「なっ!?」

 

だが、パスを出す瞬間、青峰の手が空の持つボールを叩いた。

 

「うはっ! さすがやのう。(空いた綾瀬はんにボール捌く思てパスコース塞ぎにかかったけど、いらん世話やったな…)」

 

弾いたボールを拾いながら今吉は青峰を見ながら心中でそう思った。ブロックと同時にフロントコートに向かって走る青峰に今吉はボールを渡す。ボールを受け取った青峰はそのままドリブルで突き進んでいく。

 

「絶対止めてやる!」

 

スリーポイントラインを越えた所で空が青峰を捉え、回り込む。

 

「スピードは大したもんだ。スピードだけはな。だが、それだけじゃ話にならねえよ」

 

左右に変則的にボールを散らし始める青峰。

 

 

――ボムッ!!!

 

 

ひとしきりボールを左右に散らし、突如、ボールを空の股下に投げつける。ボールは空の股下でバウンドし、リング付近に舞う。同時に青峰は走り、ボールを掴む。

 

「まだだ!」

 

空もすぐさま反応し、反転してブロックに飛んだ。

 

 

――ドン!!!

 

 

ブロックに飛んだ空と青峰が接触する。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

接触により、審判が笛を吹く。

 

「ちっ」

 

1人アリウープを狙っていた青峰だったが、空と接触した為にリングから遠ざかってしまう。

 

 

――スッ…。

 

 

青峰は掲げたボールを1度下げ、リングに背を向けながらボールを放る。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放られたボールはリングを潜った。

 

「ディフェンス、バスケットカウント、ワンスロー!」

 

審判が笛を口から外し、コールした。

 

『おぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

青峰のビッグプレーに観客が沸き上がった。

 

「…」

 

得点を阻止出来ず、逆にボーナススローを与えてしまい、茫然とする空。

 

「そこがお前の限界だ。お前じゃ俺には勝てねえ」

 

すれ違い様に青峰は空に言い、フリースローラインに向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

青峰は危なげなくフリースローを決め、点差はさらに開く。試合はその後も桐皇ペースで進む。

 

「20点。開いたらこの試合は終わりなのだよ」

 

「だな。そこがデッドラインだな」

 

「同感ッス」

 

緑間の意見に火神と黄瀬が頷く。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

花月のオフェンス。空がディフェンスを引きつけ、天野にパス。天野が得点を決めた。

 

「桐皇とて隙がない訳ではない。こういう事もあるだろう。だが、所詮は単発。これで流れが変わる事はないのだよ」

 

緑間の言葉通り、流れは変わる事はなく、桐皇の猛攻は止まらない。

 

 

――バス!!!

 

 

オフェンスが変わり、桐皇が冷静に1本返した。攻め手に欠く花月。天野が何とかスクリーンをかけてマークを外させようとするが、タイミングが読まれており、あっさりかわされてしまう。

 

 

――バチィィィ!!!

 

 

「っ!?」

 

大地の持つボールを青峰が捉えた。ボールを奪った青峰がそのままワンマン速攻をかける。そして…。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

そのままワンハンドダンクを叩き込んだ。

 

「……これで決まったのだよ」

 

 

第3Q、残り3分39秒。

 

 

花月 49

桐皇 69

 

 

点差は緑間が口にした点差である20点まで開いた。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

『チャージドタイムアウト、花月!』

 

時間が止まると、ここで上杉が申請した2つ目のタイムアウトがコールされた。選手達はそれぞれのベンチに下がっていく。

 

「…」

 

『…』

 

すれ違い様、青峰が花月の選手達を一瞥していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『20点差これはもう決まったなー』

 

『やっぱ三杉と堀田がいないとな』

 

『そういう事言うなよ。花月だってよくやってるだろ』

 

観客ももう勝敗は決したと判断し、各々感想を言い合っている。

 

 

「ふむ。20点。理想的ですね」

 

原澤が結果に納得する。

 

「もう青峰下げてもいいんじゃないですか? こんだけ点差が開けば向こうも心が折れてるでしょうし」

 

「ふむ…」

 

福山の提案に原澤が一考する。

 

今の状況なら例え青峰が下がっても逃げ切る事は充分可能である。少なくとも、急激に点差が縮まる事はないだろう。まだ試合はこの先も続く。休ませる意味も含めてもここで1度下げるのも選択の1つである。例え点差が縮まってもその時に再び投入すればいいのだから。

 

「ハッ! ここまで本気にさせられて下がるかよ。2度と立ち上がれねえようにここで叩き潰してやるよ」

 

だが、当の本人がそれを拒否した。

 

「いいでしょう。青峰君はこのまま試合に出てもらいます。皆さんも点差があるからと言って気を抜かないで下さい。最後の最後まで点を取りに行きます」

 

青峰の言葉を聞いて原澤は青峰をこのまま出し続ける選択を取った。

 

「(下がるわけねえだろ。あいつが…あいつらがテツと同じ目をしている内はよ…)」

 

タイムアウトがコールされ、ベンチに戻る際、青峰は花月の選手達とすれ違った時、青峰は、花月の選手達の目が1人も死んでおらず、それどころかかつてチームメイトであり、相棒である黒子テツヤと同じを目をしている事に気付いた。

 

「(あの目をしている内は、何が起こるか分からねえ。最後まで相手してやるよ)」

 

青峰は、絶望的な状況にも関わらず心が折れる事無い花月の選手達に無意識に敬意を称し、ベンチには下がらなかった。

 

 

試合は、桐皇の圧倒的なリードで第3Q終盤に向かっていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





まさか、こんなに空いてしまうとは…(^-^;)

時間はちょくちょくあったんですが、ひとえにモチベーションが上がらず、ここまで空いてしまいました。このサイト見てると、一定の間隔で長い事投稿している方を見受けられますが、どうやってモチベーションを維持しているのだろうか…。

感想、アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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