黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

待たせたな!

…すいません、めっちゃ間隔空いてしまいました…(^-^;)

言い訳は後書きにて…。

それではどうぞ!




第81Q~奮闘~

 

 

 

第2Q、残り5分18秒。

 

 

花月 30

桐皇 28

 

 

タイムアウトが終了し、現在、ボールは桐皇…今吉が所持している。

 

「…」

 

目の前の空に気を配りながら今吉は周囲を観察する。

 

「(青峰はんをダブルチームで止めにきよったか。そら、そこ止めんと話にならんからな。代わりに福山はんが空いた訳やが…)」

 

チラリと視線を向けると、やや苛立ち気にノーマークで立っている福山の姿が。

 

「(そこを空けるとか正気の沙汰としか思えんが…)」

 

「(…チラッ)」

 

目の前の空が今吉に気を配りながらしきりに福山に注意を向けていた。

 

「(…なるほど、そこのケアは神城にさせるっちゅう訳やな。確かに、あれだけのスピードと運動量があったなら可能かもしれんな。…さて、この1本、どないして攻めたろか…)」

 

視線を空に戻し、攻め手を考える。

 

「(安全に点取り行くなら福山はんやけど、ここは…)やっぱここやろ」

 

攻め手が定まった今吉がパスを出す。

 

『おっ?』

 

ボールの先を見て観客がざわめく。

 

「…そう来たか」

 

今吉の選択に上杉の表情が引き締まる。

 

「何が何でも止めるで」

 

「はい!」

 

ボールの先、青峰がボールを受け取ると、目の前の大地と天野が集中力を高める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「この1本は注目なのだよ」

 

「そうッスね」

 

青峰にボールが渡ると、緑間と黄瀬が目の色を変える。

 

「ああ。タイムアウト直後、あのダブルチームは確実に青峰を抑える為のもの。ここで青峰に突破を許せば花月の士気は下がる。最悪、勝敗が決まる」

 

2人の意を理解した火神が解説をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「なかなか良い感じのプレッシャーじゃねえかよ」

 

「「…」」

 

集中し、青峰の一挙手一投足に注視する大地と天野を見てニヤリと笑みを浮かべる青峰。ここでボールを小刻みに動かしながら牽制からドリブルを始める。

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

ゆっくりとドリブルをする青峰。2度、3度ボールを突いた所で動き出す。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

チェンジオブペースからのクロスオーバーで一気に加速し、仕掛ける。即座に大地が反応し、青峰の動きに対応。

 

「っ!?」

 

横に並ばれると青峰はすぐさまバックチェンジで切り返し、大地をかわそうと試みる。だが…。

 

「…ほう」

 

そこへ、天野が現れ、進路を塞いだ。青峰は2人を過小評価をしておらず、まとめて抜きさるつもりで今も仕掛けていた。

 

「…っ! …っ!」

 

「…根性や!」

 

その後も青峰は技を変え、リズムを変えて仕掛け続けるが、大地と天野はそれをことごとく阻んだ。

 

「青峰さんが、攻めあぐんでる!?」

 

なかなか突破する事が出来ない青峰を見て桜井が驚く。過去にも青峰に対してダブルチームトリプルチームを布いて来たチームは多々あったが、青峰はそれを難なく突破してきた。キセキの世代と火神以外、何人でディフェンスしようが青峰の前では無意味だった。だが、大地と天野が青峰の突破を阻んでいる。

 

「ちっ」

 

抜く事が出来ず、青峰は舌打ちをしながらパスを出した。

 

「おーおー、ナイスパスじゃねえかよ!」

 

「…くっ!」

 

ローポストでボールを受けた若松が背中でジリジリと松永を押し込みながらゴール下へと突き進む。

 

「どっせぇぇぇぇぇい!!!」

 

 

――バス!!!

 

 

強引にゴール下まで押し込むと、そのままゴール下から得点を決めた。

 

「…ちっ」

 

得点を防ぐ事が出来ず、松永から舌打ちが飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「失点こそ防げなかったが、タイムアウト直後、対策を布いた青峰からの失点は阻止した。上出来と言っていいのだよ」

 

エース、青峰からの失点を防いだ花月を緑間が称えた。

 

「それにしても、あの2人もやるッスね。去年、火神っちと黒子っちと木吉さんの3人がかりでも失点は防げても止める事は出来なかったのに」

 

「天野幸次のディフェンスはお前や火神でも抜くのは骨が折れる相手だ。綾瀬大地にしても同様だ。見た所、コンビネーションも充分だ。あのダブルチームは並みの実力者ならボールをキープするだけでも至難の業なのだよ」

 

直接手を合わせた緑間が2人の実力を説明する。

 

「花月のオフェンスだ。俺はディフェンスよりもオフェンスの方が重要だと思うぜ。いくら青峰を止めても点を取れきゃ勝てないんだからな」

 

攻守が切り替わるのを見て、火神は再びコートに集中したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…っ」

 

歯をきつく噛みしめ、拳をギュッと握り込む大地。

 

「ドンマイ」

 

そこへ、空が大地の肩に手を置きながら声を掛けた。

 

「とりあえず青峰からの失点は防げたんだ。それでよしとしようぜ」

 

「…ですが、結局失点は防げませんでした」

 

空が声を掛けても尚、大地の表情は曇ったままだった。

 

「天野先輩と2人がかりでも抜かせないだけで精一杯でした。青峰さんのプレーはこれから更にキレを増していくでしょう。そう考えると…」

 

青峰が尻上がりに調子を上げていく事を理解している大地は、これからの先の展望に不安を感じていた。

 

「(大地と天さんの2人を相手にしたら俺ならボールをキープするのだって至難の業だ)」

 

2人のディフェンス力は空も良く理解しているだけに、大地にここまで言わせる青峰に改めて脅威を感じていた。

 

「…だったら、点を取ろうぜ」

 

「えっ?」

 

「俺らの持ち味は堅守じゃねえだろ? 止められねえそれ以上に点を取る。違うか?」

 

大地の眼を見据えながら空が問いかける。

 

「……そうですね。今は嘆いている場合ではありませんね。ディフェンスの借りはオフェンスで返しましょう」

 

「っしゃ、どんどんパス出していくから、頼むぜ」

 

「えぇ!」

 

そう答えると、大地は前へと走っていった。

 

「さて…」

 

ゆっくりとボールをフロントコートに進めながら空はどう攻めるか考える。桐皇が調子を上げてきている今、1つのミスが命取りになることは明白。空がボールをスリーポイントライン2メートル手前までボールを運ぶと、今吉がディフェンスにやってきた。

 

「…」

 

「…」

 

今吉は僅かではあるが距離を取り、それでいてプレッシャーをかけながらディフェンスをしている。

 

「あの1年坊、絶妙な距離を取るやないか。ドライブに備えて僅かに距離取ったようにみせて、それでいて外撃たれんようにプレッシャーをかけとる。空坊相手にするなら最良のディフェンスや」

 

空に対する今吉のディフェンスを見て天野は思わず称賛の言葉が出た。スピードがあり、確率が低くないスリーがある空を相手にするならこの今吉の距離の取り方とディフェンスは的確。

 

「けどま、それで止めれるかどうかは別問題やけどな」

 

そう付け足すと…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

一気に空が加速し、今吉との距離を一瞬で詰めた。

 

「(ウソやろ!? この距離簡単に潰しよった!)」

 

間合いを一瞬で詰められた事に驚きを隠せなかった。

 

「(けど、この先の動きは読めとる。ここからバックロールターン……ドンピシャや!)」

 

予想通り、空は今吉との距離を詰めるとそこからバックロールターンで反転し、かわそうとした。それを読み切った今吉は横を抜けようとする空の持つボールを後ろから狙った。

 

 

――ガシィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

バックチップを狙おうとしたその時、それを阻む壁が現れた。

 

「そう来るやろうとヤマ張って正解やったな」

 

空がバックロールターンで反転するのと同時に天野が走り込み、スクリーンをかけていた。

 

「うお! ここでかいな!」

 

「そら、これまでやってきた事は読まれとるんやから、やった事あらへんことするのは当然やろ」

 

意表を突かれた今吉に、天野はニヤリと笑みを浮かべながら言う。

 

「天さん、サンキュー」

 

今吉を振り切った空はリングに向かって直進。そのままレイアップの態勢に入った。

 

「調子に乗んなよ1年坊!」

 

いち早く若松がヘルプに飛び出し、ブロックに向かった。目の前に若松が現れると、空はレイアップを中断、視線を右に向ける。そこには、生嶋がスリーポイントラインの手前で立っていた。

 

「パスだろ。させるわけねえだろ!」

 

パスに切り替えると読んだ若松が左手を伸ばし、空と生嶋のパスコースを塞ぎにかかる。空はそのまま生嶋にパス……と見せかけ、途中で中断し、逆側にボールを落とした。

 

「んだと!」

 

読みが外れた若松。ボールはゴール下に立つ松永の手に渡る。

 

「おぉっ!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

そのままボースハンドダンクを叩き込んだ。

 

「「よぉぉぉし!」」

 

空と松永がハイタッチを交わす。

 

「あのやろ…!」

 

「ドンマイキャプテン。オフェンス期待してまっせ」

 

怒れる若松をなだめるように今吉が声を掛け、ゲームメイクを始めた。

 

桐皇のオフェンス。ディフェンスは先程変わらず今吉には空。若松には松永。桜井には生嶋。青峰には大地と天野のダブルチーム。福山はフリーとなっている。

 

「…」

 

今吉が目の前の空に気を配りながら周囲を見渡す。

 

「……ほな、次はここで行ってみようかの」

 

そう呟くのと同時に左サイドに立っていた桜井が生嶋のマークを振り切り、ボールを貰いに行く。今吉も視線を桜井に向けた。

 

「(あいつ(桜井)か、させるか!)」

 

空が今吉と桜井のパスコースを塞ぎにかかる。

 

「っ!?」

 

今吉はパスを出す。が、ボールは桜井ではなく、逆。右から走り込んできた福山に頭上からノールックでオーバーヘッドパスを出した。

 

「よーし!」

 

フリーの福山がボールを受け取ると、そのままリング目掛けて突っ込んでいく。

 

「くそっ、そっちかよ!」

 

慌てて空が福山を追いかける。

 

 

――ドッ!!!

 

 

「って!」

 

だが、反転して追いかけようとした瞬間、真後ろに移動していた今吉とぶつかってしまう。

 

「ったた、堪忍やで」

 

痛そうな素振りを見せつつも、口元の口角を上げながら今吉が呟く。福山はリング付近までドリブルで進み、シュート態勢に入る。

 

「させるか!」

 

松永がヘルプに飛び出し、ブロックに飛ぶ。

 

 

――ガン!!!

 

 

ブロックに飛んだ松永の指先にボールが僅かに触れ、放たれたシュートはリングに弾かれる。

 

「まだまだーーーっ!!!」

 

外れたボールを福山自らが強引にリバウンドをもぎ取り、再びシュート態勢に入る。

 

「くそっ!」

 

慌てて松永再びブロックを試みる。だが…。

 

「あっ!?」

 

福山はポンプフェイクを1つ入れる。松永はそれに釣られ、思わず両手を上げ、膝を伸ばしてしまう。

 

 

――バス!!!

 

 

フェイクにかかった松永はブロックに飛ぶ事が出来ず、福山は悠々とゴール下から得点を決めた。

 

『うおぉぉっ! あの9番(福山)、ディフェンスはザルだけどオフェンスはすげーぞ!』

 

強引に押し込み、得点を決めた福山に歓声が沸く。

 

「ちょっと待った! その前のあいつ(今吉)のスクリーン。あれファールじゃないのか?」

 

得点が決まる前の空のヘルプを阻んだ今吉のプレーに審判に抗議をした。通常、スクリーンを掛ける際、そのプレーヤーは止まっていなければならない。だが、今吉は明らかに走りながら空の進路を阻んでいた。

 

「いや、ファールじゃないよ」

 

だが、審判は首を横に振り、抗議を退けた。

 

「止めとき空坊」

 

納得出来ない空を天野が窘める。

 

「今吉が福山にパスを出した後、今吉はリターンパスを貰いに風を装って空坊の進路を塞ぎよった。あれ見て審判はリターンパス貰い行く際の事故と取ったんやろ。そもそも、並みのスピードと反射神経じゃぶつからへんタイミングや。残念やけど、向こうが1枚上手やったっちゅう事や」

 

「……くそっ」

 

天野の説明に納得はしたが、悔しさを露わにする。

 

「それより、オフェンスやで。こっちの方が重要や。頼むで」

 

そう告げながら天野は空の肩を叩き、前へ走っていった。

 

「いつまでも気にしてても仕方がねえ。やられたらやり返す」

 

顔を叩いて気合を入れ直し、スローワーの松永からボールを受け取り、ゲームメイクを開始した。

 

「…」

 

「…」

 

先程同じ、ボールをフロントコートまで運んだ空。目の前には今吉。

 

「……よし」

 

意を決すると、空は突然シュート態勢に入った。だが、今吉は一切動じず…。

 

「ええよ。好きに打ったらええ。決める気のないシュートにいちいちブロック飛んどっとら疲れるだけやわ」

 

「(くそっ、読まれてる…!)」

 

ブロックに行かず、その場で留まる今吉。今吉の言葉通り、空はこの距離から打つつもりはなく、今吉を誘い出すのが目的だった。決める気でいたなら僅かなれど決まる確率はあったが、リングに意識が向いていない状態で打てばまず間違いなく外れる。

 

「空!」

 

その時、空の横から大地が駆け寄ってくる。

 

「すまねえ!」

 

その声に反応し、空は大地へボールを渡す。

 

「っ!」

 

「よう。まさか、逃げられるとか思ってねえだろうな?」

 

大地にボールが渡ると、目の前には青峰が立っていた。

 

「逃げませんよ。今回は…!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

一気に加速し、青峰の左手側にドライブを仕掛ける。青峰は遅れる事なく大地に付いてくる。

 

 

――キュッ!!!

 

 

ドライブと同時に急停止、高速でバックステップし、青峰と距離を空ける。

 

「っと、夏より速くなってるじゃねえかよ」

 

下がったの同時に青峰が大地との距離を瞬時に詰める。

 

「っ! この程度ではかわせませんか…!」

 

同時に大地はバックロールターンで前進し、距離を詰める青峰をすれ違い様に反転しながらかわす。

 

『うおぉぉっ! あいつ、抜きやがった!』

 

「いや、まだッスよ」

 

抜いたと見た観客は沸き上がるが、黄瀬は冷静に呟く。

 

「っ!」

 

抜かれた直後、青峰は急停止し、腕を伸ばして横を抜ける大地の持つボールを狙い撃つ。

 

 

――バチィィッ!!!

 

 

伸ばした手が大地の持つボールを捉えた。

 

「ナイス青峰!」

 

零れたボールを若松が拾い行く。

 

「っ! まだです!」

 

青峰のバックチップでボールを弾かれたのと同時に大地がボールに飛び込む。

 

 

――バチィン!!!

 

 

ボールが若松の手に収まる前に大地がボールを弾いた。

 

「さすがだぜ、大地!」

 

弾いたボールを空が拾い、そのままリングに突き進む。

 

「っしゃぁっ! 景気良いの1発!」

 

フリースローラインを越えると、そのままボールを右手に持ち、リング目掛けて跳躍し、ボールをリングに叩きつけた。

 

 

――バチィィッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

ボールがリングに叩きつけられる直前、1本の手が現れ、ダンクを阻んだ。

 

「調子に乗んじゃねえよ」

 

その手の正体は青峰。バックチップ直後にリングまで戻り、空のダンクをブロックした。

 

「キセキの世代の壁はここまで大きいのか…!」

 

青峰の恐ろしさを見て、ベンチの馬場が絶望する。

 

 

――バチィン!!!

 

 

空の手に収まるボールを青峰が掻き出す。ボールはリング付近にふわりと舞う。

 

「よっしゃぁっ! リバウンド――」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

福山がルーズボールを抑えようとしたその時、浮いたボールをそのままリングに叩きこんだ。

 

『綾瀬だぁぁぁっ!!!』

 

リバウンドダンクを叩き込んだのは大地。ボールを弾いた後、すぐさま立ち上がり、空のフォローに向かい、青峰のブロックで弾かれたボールをすぐさま叩き込んだ。

 

「さすが大地!」

 

「空も、良いフォローでしたよ」

 

空と大地がハイタッチを交わした。

 

「…へぇ」

 

今のプレーを見て青峰が嬉しそうに唸る。

 

「ボール寄越せ」

 

スローワーとなった若松が今吉にボールを渡すと、青峰がボールを要求する。

 

「どうぞ」

 

今吉は躊躇わず青峰のボールを渡した。

 

「来るで…」

 

「はい…」

 

ボールを持った青峰に大地と天野が付く。ゆっくりとドリブルをする青峰。大地と天野の射程に入ると、青峰は加速する。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

変則のリズムを織り交ぜながらドリブルを始め、2人を翻弄する。

 

「「…っ!」」

 

ストップ&ゴー、ゴー&ストップを繰り返し、かつストリートの型のないバスケットで隙を窺う青峰。

 

「集中一瞬でも切らすんやないで!」

 

「はい!」

 

一方の大地と天野も必死に青峰に食らい付く。

 

 

――スッ…。

 

 

青峰が背中から手首のスナップを利かせてボールを大地の背後に落とす。

 

「くっ!」

 

大地の背後にボールを放ったの同時に大地の横を高速で抜け、ボールを拾う。

 

「まだやぁっ!」

 

ボールを青峰が拾った直後、天野がその目の前に立ち塞がり、進路を塞ぐ。

 

「っとぉ、やるなぁっ!」

 

天野が現れると、青峰は目を輝かせながら足を止める。直後、左右に切り返し、揺さぶりをかける。

 

「(あ…かん! スピードとキレが更に増してきよった! まだ上がるんかい!)」

 

調子をドンドン上げる青峰。天野は付いていくだけで手一杯となっていた。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

急加速した青峰がクロスオーバーで天野の横を駆け抜ける。天野はなす術なく抜きさられる。

 

「まだです!」

 

同時に青峰を追いかけた大地が進路を塞ぎ、青峰の前に立ち塞がる。

 

「すまん、おおきに!」

 

大地が立ち塞がった事で青峰は急停止した。その間に天野が回り込み、再び2人は青峰の前に立ち塞がった。

 

『すげー、2人がかりとは言え、あの青峰を抑えてるぞ』

 

『キセキの世代と火神以外に抑えられる奴がいるんだな…』

 

大地と天野の奮闘に観客席から称賛の声がチラホラ出る。

 

「(何とか抑えていますが、気を抜いたらたちまち抜かれてしまいます…!)」

 

「(紛いなりにもこの花月で体力付けたつもりやったけど、こないに疲れる相手は初めてや!)」

 

当の2人は目の前の相手、キセキの世代のエース、青峰大輝を相手に奮闘しているものの、その圧力に今にも屈指そうになるのを歯を食い縛って耐えている状態だった。

 

「……ふぅ」

 

青峰は僅かに後ろに下がり、一呼吸吐いた。

 

「……ふぅ」

 

そんな青峰を見て大地もその間に呼吸を整えた。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

その時、青峰が加速し、大地の横を抜けていった。

 

「しまっ――」

 

青峰は大地が僅かに集中を切らす瞬間を見逃さなかった。むしろ、距離を取って一息吐いたのはその一瞬の油断を引き出す為だった。

 

 

「経験の浅さが露呈したな」

 

「いや、ここはその隙を作りだした青峰が1枚上だっただけの事なのだよ」

 

火神は大地の経験不足を指摘したが、緑間は百戦錬磨の青峰を称賛した。

 

 

完全に不意を突いた青峰が大地と天野ダブルチームを突破。そのままリングに向かって進撃……すると誰もが思った。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「なに!?」

 

青峰が2人の背後に進んだ直後、青峰の手に持つボールが何者かに叩かれた。

 

「ハッハッハッ! 簡単に点は取らせねえぞ!」

 

ボールを叩いたのは、空だった。

 

『うおぉぉっ! 神城だぁぁぁっ!!!』

 

頭で考えての行動ではなく、瞬間、直感で動き、大地を抜いた直後の青峰のボールをスティールした。

 

「速攻ぉっ!!!」

 

ボールを拾った空がそのままワンマン速攻。先頭を駆ける。

 

 

――バス!!!

 

 

速攻をかけた空に誰も追いつけず、そのままレイアップを決めた。

 

「っしゃぁっ!」

 

速攻を決めた空はガッツポーズで喜びを露わにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「ったく、神城の奴、ただでさえダブルチームで空いた穴を1人で埋めてるって言うのに無茶しやがって…」

 

博打同然の空の行動に頭を掻きながら溜息を吐いた。

 

「…だが、この博打を成功させた見返りはでかい」

 

「えっ?」

 

上杉の言葉に真崎が声を上げる。

 

「真崎先輩、青峰さんを見て下さい」

 

姫川に促され、真崎は青峰に視線を向ける。

 

「…ちっ」

 

そこには、僅かに苛立ちと戸惑いの色を見せている青峰の姿があった。

 

「さっきの神城君のスティールで青峰さんはいつ来るか分からない神城君に警戒しています。今の青峰さんから見れば実質トリプルチームのようなものです」

 

「いや、ここぞと言う時に現れる分、ただのトリプルチームより厄介だろうな」

 

「なるほど…」

 

姫川の解説に真崎は納得する。

 

「…まさか、神城はその為にヘルプに?」

 

「いえ、恐らく何も考えずにマークを外してカットに向かったのだと思います」

 

馬場の予測に姫川が苦笑しながら否定した。

 

「奴の直感がそうさせたのだろう。そういうプレーヤー少なからずいる。…この効果はしばらく続く。その間にどれだけ試合を優位に進められるかだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

上杉の予想通り、空の影が脳裏にチラついた青峰のプレーは消極的になった。

 

「…」

 

それを感じ取った今吉は、桜井、福山、若松を中心に攻め、得点を重ねていった。そして試合は、第2Q僅かの所まで進んだ。

 

「…」

 

ボールは青峰の手に渡る。青峰は高速の切り返しを繰り返しながら揺さぶりをかける。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「「っ!?」」

 

ゆさぶりをかけた際に出来たダブルチームの間を高速で突破する。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

突破と同時に急停止し、危なげなくジャンプシュートを決めた。

 

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

 

同時に、第2Q終了のブザーが鳴った。

 

 

第2Q、終了。

 

 

花月 43

桐皇 42

 

 

途中の青峰の失速もあり、花月が1点リードで試合を折り返した。ハーフタイムに入り、選手達は控室まで下がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「よっしゃぁっ! リードで試合を折り返したぜ!」

 

控室に入るや否や、空が喜びを露わにした。

 

「喜んでないで黙って座って呼吸を整えなさい」

 

そんな空を窘めながら姫川は空にドリンクを渡した。

 

「天野先輩、大丈夫ですか~?」

 

「大丈夫ちゃうなぁ。すまんが相川はん、ハチミツレモンくれへん?」

 

疲労の色がある天野は相川の持つタッパーに入っているレモンのハチミツ漬け口にした。

 

「…ハァ…ハァ」

 

「…ふぅ」

 

生嶋と松永も疲労の色を隠せないでいる。1点リードで折り返したとはいえ、スタメンの半数以上がかなりの消耗強いられてしまい、決して楽観視出来ない状況であった。

 

「返事はしなくていい。そのまま話を聞け」

 

上杉が皆の注目を集める。

 

「状況は芳しくない。本当に試練はここからだ。リードはしているが、全員、集中を切らすな」

 

『…』

 

「とはいえ、桐王を相手に戦えている事は事実だ。そこは自信を持ってもいい。良いか――」

 

そこから、上杉が後半戦の指示を伝えていく。選手達は黙って上杉の言葉に耳を傾けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「まさか、試合の半分が終わって花月リードで終わるとはな」

 

観客席の諏佐が神妙な表情で言う。

 

「まあ、データ不足に、花月は秀徳を倒して勢いに乗っとるし、何より、緑間に勝った事でプレッシャーからも解放されとるからのう」

 

「? どういう事だ?」

 

今吉(翔)の言葉が理解出来なかった諏佐が思わず聞き返す。

 

「ワシらは青峰がおったから分からんやろうけど、キセキの世代を相手にする言うんはそれだけでえらいプレッシャーがかかるんや。なんせ、チームに1人加わればたちまち全国区の優勝候補。弱小校でも、加われば全国区のチームに早変わりしよるやろう。そないな奴を相手にすればその圧倒的な力とプレッシャーで実力なんぞ出しきれんやろ」

 

「…」

 

「キセキの世代を擁するチームと戦って負けた相手のほとんどが力出し切れずに負けていったやろなあ。まあ、仮に出し切れても結果は変わらんかったやろうけどな」

 

「なるほどな」

 

今吉(翔)の説明で諏佐は納得した。

 

「なら、ここから先はどうなると予想する?」

 

「…そんなもん、説明せんでも分かるやろ? 第3Q、開始早々試合は動くやろ。そんで始まるのは――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『来たぞ!!!』

 

ハーフタイム終了の時間が近づき、花月、桐皇の選手達が戻ってきた。両チーム共、メンバー交代はなし。スタメンのままコートへと向かっていく。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

試合開始のブザーが鳴り、桐皇ボールで開始される。

 

「…来い」

 

気合い充分で空が今吉に付く。今吉は空がディフェンスに来る否やパスを出す。

 

「…」

 

ボールは青峰に渡る。

 

「…」

 

「…」

 

第2Qと同じく大地と天野がダブルチームで青峰をマークする。集中力を最大にして2人は青峰の動きに備える。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ボールを持った青峰が仕掛ける。

 

「えっ?」

 

「なっ?」

 

ダブルチームでマークする大地と天野を一気に突破する。

 

「くっ!」

 

一瞬の出来事で驚愕するも生嶋がヘルプに飛び出す。だが…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

青峰は意に介さず、バックロールターンで悠々とかわす。

 

「くそっ!」

 

生嶋が抜かれたのを見て松永が飛び出す。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「はや…すぎる…!」

 

そんな松永もクロスオーバーで一瞬で抜きさってしまう。松永を抜いた青峰はそのままリングに目掛けて跳躍した。

 

「くそっ、決めさせっかよ!」

 

そこへ、空が先回りし、ブロックに現れる。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「がっ!」

 

だが、青峰はそのブロックを跳ね飛ばし、ダンクを決めた。

 

 

――ボムッ…。

 

 

ボールがコートに落ちる。会場が一瞬静寂に包まれると…。

 

『おぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

会場が歓声に包まれた。

 

『…』

 

試合再開早々の5人抜きに、花月の選手達は言葉を失う。

 

「ふむ。そうですね……第3Q、5分で20点を目標にしましょうか」

 

桐皇ベンチの原澤が前髪をいじりながらそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

前半戦をリード折り返した花月。

 

昨日の秀徳戦に続き、キセキの世代を擁するチームと互角に戦えると自信が付いた。

 

だが、その直後、キセキの世代のエース、青峰に圧倒されてしまう。

 

「第3Q、開始早々試合は動くやろ。そんで始まるのは――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――桐皇による虐殺や…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





花粉症発症とその薬の副作用で創作意欲が沸かず、ずっと筆を止めていましたが、4月中旬くらいから執筆を再開しました。…したのですが、自身のやっているソシャゲが何を思ったのか、ゲームに張り付けイベントを3週間連続で開始した為、これまでずっとそれをやっていた為、ここまで間隔が空いてしまいました。

いや、本当に申し訳ございませんでした…m(_ _)m

ゴールデンウイークが空け、5月は割と時間が取れる(はず)ので、これまでの投稿間隔で投稿出来るよう精進致しまする…m(_ _)m

感想、アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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