黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

内容に苦しみながらの投稿です…(^-^;)

それではどうぞ!



第72Q~地力~

 

 

 

第1Q、終了…。

 

 

花月 24

秀徳 30

 

 

ベンチへと下がっていく両校の選手達。

 

『三杉と堀田がいないからどうなることかと思ったけど…』

 

『秀徳といい勝負してるよな』

 

『これは、もしかしたらあり得るかもしれないぜ!』

 

第1Qの試合ぶりを観戦した観客達は花月の奮闘ぶりにざわめいている。

 

秀徳ベンチ…。

 

「ふむ、悪くない展開だ」

 

ベンチに腰掛け、水分補給とタオルで汗を拭いながら呼吸を整えるスタメンの選手達。監督の中谷が選手達の前に立ち、顎に手を当てながら呟く。

 

「典型的なラン&ガンのチームだ。失点度外視の超攻撃型バスケ。神城と綾瀬を筆頭に、スピードを生かしてこっちのディフェンスが出来上がる前に速攻を仕掛けて得点を狙ってきやがる。面倒な事この上ないな」

 

主将の宮地が首に掛けたタオルで汗を拭いながら花月の戦術を分析する。

 

「ラン&ガンは誠凛である程度慣れているつもりだったが、こっちも厄介だ。外の日向と火神を警戒していれば良かった誠凛と違い、花月は全ポジションから積極的に得点を狙ってくる。的が絞りづらい」

 

センターである支倉が、苦い表情をした。

 

「けど、そこまで悲観する事はないと思いますよ。向こうのペースは異常過ぎる。明らかなオーバーペース。例えるなら特攻っすよ」

 

「…確かにな」

 

高尾の言葉に、選手達は納得する。

 

「向こうがこのままこのペースで攻め続けるなら多少の失点は覚悟して、向こうがガス欠になったところをトドメを刺せばいいし、仮にペースを変えてきたなら真っ向から叩き潰しゃいい」

 

「…うん、楽観視は出来ないが、高尾の言う事も最もだ。とりあえず、第2Qは今のまま様子を見ようか」

 

司令塔である高尾の意見を採用し、中谷は現状維持を指示したのだった。

 

「調子いいみたいじゃん? 真ちゃん」

 

「当然なのだよ。俺は人事を尽くしている。ラッキーアイテムのサイコロもある。この結果は必然だ」

 

軽口で尋ねる高尾に、緑間は真剣な表情で答えた。

 

「今日のは小さくていいじゃん」

 

ケラケラと笑いながら高尾は緑間の横に置いてあった3つのサイコロを振った。それから第2Q開始のブザーが鳴るまで緑間と話をしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

花月ベンチ…。

 

『ハァ…ハァ…』

 

ベンチに腰掛ける選手達。だが、呼吸は荒く、誰1人、口を開く者はいない。

 

「(…まだ第1Qが終わったばかりなのにすごい汗。明らかにオーバーペースだわ)」

 

選手達を見て姫川は焦りの色を見せていた。

 

「ハァ…ハァ…」

 

「(特に生嶋君。消耗が大き過ぎるわ)…茜ちゃん、氷持ってきて。生嶋君の首の後ろに当ててあげて」

 

「うん、分かった!」

 

頼まれた相川はベンチの横のクーラーボックスから氷の入った袋を取り出し、タオルを巻いて生嶋の首の後ろに当てた。

 

「ありがとう。……コー!」

 

相川に礼を言うと、生嶋は酸素スプレーを口に当て、吸い込んだ。

 

「生嶋、お前が抜けたらそれこそ試合は終わっちまう。今日は、何があっても最後までコートにいてもらうからな」

 

呼吸を整えている生嶋に空がタオルで汗を拭いながら声をかけた。

 

「分かっているよ。高校に進学してから走り込みは欠かしてないんだ。まだまだ大丈夫だよ」

 

酸素スプレーを口から外した生嶋が必死に笑顔を作って答えた。

 

元々、生嶋はスタミナに難がある選手だった。花月に来てある程度克服されたが、それでもスタメンの中では1番スタミナが少ない。生嶋がいなくなれば外がなくなり、それは勝敗にも直結される。それ故、空は発破をかけたのだった。

 

「(まずいわ。このままでは…何か手を打たないと…!)」

 

選手達のケアをしながら姫川は胸中で不安を抱いていた。。

 

点差だけ見れば6点。スリー2本分。だが、花月は第1Q全てのオフェンスで全速のラン&ガンを行っている。

 

花月のやっている事は例えるならマラソンでスタート同時にスパートをかけているようなものである。当然、そんなことをしてゴールまで走り切れるはずはない。言わば無謀。そんな無謀な事をしても尚、背中に追いすがることしか出来ないのが今の現状である。

 

「…ま、良い状況とはとても言えないが、想定の範囲内だ」

 

ベンチの前に立った上杉が腕を胸の前で組みながら言った。

 

「第2Qもこれまでどおりガンガン走って点を取りに行け」

 

「(…えっ!?)」

 

上杉の指示に、姫川は言葉を失った。

 

『はい!!!』

 

その指示に、選手達は反論する事なく大声で答えた。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで、インターバル終了のブザーが鳴った。

 

「っしゃっ、ガンガン走るぞ!」

 

「リバウンドは任せとき、全部拾ったるわ」

 

「外は任せて、マーク外して待ってるから」

 

「必ず緑間さんから点を奪ってみせます」

 

「中も忘れるな。絶対決める」

 

各々が気合を入れ、戦意を醸し出しながらコートへと向かっていった。

 

「監督、本当にこのまま行くつもりですか? いくらなんでも無茶ですよ。少しペースダウンをさせないとこのままでは…」

 

懸念を抱いた姫川が上杉に苦言を呈した。

 

「無茶は百も承知だ」

 

両腕を胸の前に組みながら上杉は言った。

 

「試合前にも言ったが、ウチと秀徳では元々の地力に差がある。ペースダウンをしたところでスタミナの温存は図れても点差は広がる」

 

「…」

 

「ウチがそれでもキセキの世代を擁するチームと戦い、勝ち残るには愚直に走るしかない。俺はそれが出来るだけの練習をあいつらにさせてきた。だから、俺はあえてあいつらに無茶をさせる」

 

「……分かりました」

 

納得出来た訳ではない。だが、現状を理解している為、姫川は頷いた。

 

「みんなーっ! 頑張ってぇっ!!!」

 

『花月、ファイトーーッ!!!』

 

ベンチから相川と選手達が声を張り上げて声援を送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

「っ!」

 

第2Qが開始され、緑間がハーフラインからスリーを決めた。

 

『うおー! 緑間止まらねえよ!』

 

今日9本目スリーを決め、観客は沸き上がる。

 

 

――ダッ…!!!

 

 

スリーが決まるのと同時に花月の選手達はフロントコートに駆け上がる。

 

「っ!? こいつら正気かよ!?」

 

第1Qと変わらず全速のラン&ガンを仕掛けてきた事に宮地は驚愕する。

 

ボールを持った空がガンガンドリブルで突き進んでいく。

 

「行かせねえぞ!」

 

高尾がそこへ立ち塞がる。だが、空はそれでも構わず突っ込み、直後立ち止まり、もう1度加速。ロッカーモーションで高尾をかわした。

 

「これ以上は行かせん!」

 

ゴール下まで切り込んでいくと、支倉が立ち塞がった。

 

 

――ピッ!!!

 

 

ここで空は右アウトサイドの生嶋にパス。パスを受けた生嶋がシュートモーションに入った。

 

「させるか!」

 

宮地がシュート阻止の為、ブロックに飛んだ。だが、生嶋は飛ばず、シュートを中断すると、再び中へとパスを出した。

 

「ナイスです!」

 

中へ走り込んでいた大地がボールを受け取った。

 

 

――バス!!!

 

 

そのまま大地がレイアップを決めた。

 

『…っ』

 

速い展開からの中→外→中からの得点を決められ、若干表情を顰める秀徳の選手達。

 

「向こうが何をしてこようと、こっちのやる事は変わらないのだよ」

 

ボールを拾った緑間がスローワーとなって高尾にボールを渡した。

 

「言われなくても分かってるよ。1本、行きましょう!」

 

司令塔である高尾が声を上げ、フロントコートまでボールを運び、ゲームメイクを始めた。

 

「…」

 

ボールをキープする高尾の前に、空が立ち塞がる。

 

「……にしても、お宅の監督は何を考えてるのやら」

 

「?」

 

突如、高尾が喋り始める。

 

「この状況でどんな指示を出してくるかと思えば、変わらず無謀に走らせるだけ。いやいや、理解出来ないね」

 

「…あっ?」

 

バカにするかのような口調で言われた事に、空は軽く憤る。

 

「ホントお前らには同情するよ。うちの監督なら、もっとまともな指示を出してくれるだろうからな。それ以前にもっとまともに戦えるような指導をしてくれただろうならな」

 

「……監督自慢がしたいなら、1度でも優勝してから言ったらどうだ?」

 

「ハハッ、なるほどね。……勘違いしているようだから言っといてやるよ。今年の夏優勝したのは三杉と堀田であって、お前らじゃない。あの2人がいりゃ、どんな高校、どんな無能な監督が率いててもなら優勝出来るからな」

 

「っ! てめえ、うちの監督が無能だとでも言いてえのか?」

 

「そうは言わねえよ。…ただ一言言わせてもらえば、厳しいだけの練習なんて今どき流行らねえぜ?」

 

「…ぶっ潰す」

 

この一言で激昂した空が高尾との距離を詰めた。

 

「おー怖い怖い♪」

 

おどけた声で言うと、持っていたボールを股下から通し、後方へパスを出した。そこには、ハーフラインギリギリの所に走り込んでいた緑間がいた。

 

「…ちっ」

 

緑間をマークをしていた大地は木村のスクリーンに捕まっており、舌打ちをしながら空がヘルプに向かう。シュートモーションに入った緑間に対し、空がすかさずブロックに飛んだ。

 

「…くそっ!」

 

だが、ジャンプ力がある空ではあるが、身長差がある空では高弾道の緑間のボールに触れる事は出来なかった。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放たれたスリーは危なげなくリングの中央を射抜いた。

 

「…」

 

スリーを決めた緑間はメガネのブリッジを押し上げると、ディフェンスへと戻っていった。

 

「あれが見えるか?」

 

ディフェンスに戻る途中の高尾が空の前で立ち止まると、おもむろにある方向を指差した。そこには不撓不屈の垂れ幕とその後方の応援席に秀徳のジャージを着た大勢の部員達の姿があった。

 

「このコートに立つ俺達はあそこで応援してくれてる部員達の代表だ。きつい練習を耐え抜いてもユニフォーム着れない部員があれだけいる」

 

「…」

 

「俺達はコートに立てなかった部員達の想いを背負ってコートに立ってる。きついだけの、頑張ればユニフォームを貰えるお前達とは違うぜ」

 

それだけ告げ、高尾は自陣へと戻っていった。

 

「……上等だよ」

 

言われた空は、高尾を睨みつけながら呟いたのだった。

 

 

攻守が切り替わり、花月のオフェンス。ボールを持つ空にマークするのは高尾。先ほど挑発をされた手前、仕掛けて見返したいと考える空。

 

「…」

 

だが、空はここはグッと堪え、大地にパスを出した。

 

「おいおい、パスで逃げんのかよ」

 

「ドリブルだけが選択肢じゃねえだろ」

 

「確かにな。…けど、俺なら仕掛けて切り込んでいっただろうけどな」

 

「(……いちいち人をイラつかせる事言いやがって…!)」

 

高尾の発する言葉を聞いて空はボルテージをどんどん上げていった。

 

「…」

 

右45℃付近にアウトサイドでボールを受け取った大地。マークするのは緑間。

 

「…」

 

緑間は若干距離を取ってディフェンスに臨んでいる。

 

「(…やはり上手い。ドリブルに対応出来、撃ちにいってもギリギリでブロック出来る絶妙な距離です)」

 

抜群の距離感でディフェンスをしている緑間に、大地は心中で称賛する。

 

「(ですが、私がこの人から点を取れなければこの試合勝てません。…行きます!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

意を決して大地はクロスオーバーで緑間に仕掛ける。緑間は距離を保ちながら大地のドリブルに対応する。ここで1度バックチェンジで切り返し、高速のバックステップで距離を空ける…が…。

 

「…っ!?」

 

緑間は大地の動きに合わせて前進。変わらず一定の距離を保っていた。

 

「(動きを読まれた!? …この距離では撃つこともままなりません。ならばもう1度…!)」

 

ここで大地は視線のフェイクを1つ入れる。それと同時に仕掛けた。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

1度切り返し、そこからクロスオーバー。一気に加速して緑間の左手側から仕掛けた。だが、緑間はスピードに翻弄される事なく、遅れずに大地の進路を塞いだ。

 

「(この程度でかわせない事は分かっています。本命は…!)」

 

緑間に進路を塞がれたのと同時にビハインドパスでボールを左へと流した。そこには、パスを受ける為に走り込んでいた空の姿があった。

 

「(私が点を取れずとも、ディフェンスを引きつけられればそれで構いません。得点に繋げる事が私の仕事!)」

 

「(ナイスだぜ、大地!)」

 

走り込んでいた空の手に収まる。

 

 

――バチィィッ!!!

 

 

「「っ!?」」

 

ボールが空の手に収まる直前、1本の手がそのボールを捉えた。

 

「その程度で俺を出し抜けるとでも思ったか?」

 

大地のドライブ。その後のパスを読み切った緑間は右手を伸ばして大地のパスをスティールした。

 

「くっ!」

 

「ちぃっ!」

 

パスが読まれ、カットされた事に悔しさを露わにする空と大地。

 

「高尾!」

 

「さっすが、ナイス真ちゃん!」

 

緑間からボールを受けた高尾がそのまま速攻を仕掛けた。

 

「戻れ! ディフェンス!」

 

空が声を上げ、花月は自陣へと全力で戻っていく。

 

「行かせねえぞ!」

 

急ぎ転身し、持ち前のスピードで走った空は高尾がセンターラインを越える前に横に並んだ。

 

「速っ!? まさかこんなところで追いつかれるとは、な!」

 

空に並ばれるのと同時に高尾はボールを後ろへと戻した。

 

「あっ!?」

 

「しまっ――」

 

ボールの行き先、自陣のペイントエリア内に立つ緑間の手元に吸い込まれるように向かっていった。

 

「手は抜かん。最後まで全力で叩き潰す」

 

ボールを受け取った緑間がシュート態勢に入る。

 

「くっ…!」

 

大地が慌ててブロックに向かったが、シュートモーションに入った緑間に届かず…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

大きな弧を描いたボールはリングの中央を的確に射抜いた。

 

『おぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

緑間の代名詞、超長距離3Pシュートが決まった。

 

『…っ!』

 

攻撃が失敗してからの失点だけに、花月の選手達の表情が曇った。

 

「落ち込んでる暇はねえぞ! オフェンスだ!」

 

ボールを拾った空が声を張り上げる。空の声を聞いた花月の選手達はハッと顔を上げ、気持ちを入れ直した。スローワーとなった空が松永にボールを渡し、再度空がボールを受け取り…。

 

「1本! 走るぞ!」

 

声を張り上げると、花月のオフェンスが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「ふーん、正直、一方的な展開になるかなぁとも思ったけど、花月も結構やるじゃん」

 

観客席、洛山の葉山がコートに視線を向けたまま呟いた。

 

「勢いもある。波に乗った時はとんでもねえな」

 

根布谷も、花月を高く評価した。

 

「…けど、点差は少しずつだけど確実に開いているわ」

 

実渕がスコアが掲示されている電光掲示板を指差した。

 

 

第2Q、残り4分23秒。

 

 

花月 32

秀徳 45

 

 

「あれ? いつの間にか結構開いてる。良い感じに点の取り合いしてたと思ったのに」

 

「秀徳は緑間のスリーを中心に得点を重ねているからよ。それに対して、花月は7番が徹底マークに付かれてからは2点ずつでしか得点出来ていない上に要所要所で止められてる事が要因でしょうね」

 

開く点差を実渕は淡々と分析していく。

 

「秀徳は花月のオフェンスを正面から受け止め、自分達のバスケをしているだけだ。つまりこの差は、純粋に地力の差だ」

 

両腕を胸の前で組みながら赤司が言う。

 

「きっと、点差はもっと開くわよ。花月のあんな勢い任せの動きがいつまでも出来る訳がない。第3Q…早ければこの第2Q中にでもこの勢いは止まるわ」

 

予言するかのように実渕は呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「……ちっ」

 

ボールをキープする空。確実にじわじわと開く点差に焦りの色を見せていた。

 

「どうしたよ? 最初の勢いがすっかりなくなったじゃねえかよ」

 

「うるせえな、黙って試合出来ねえのかよ」

 

時折、高尾が仕掛けるトラッシュトークに、空の怒りをみるみる倍増させていた。

 

「(中は相変わらず固い。外が欲しいが生嶋は…)」

 

「ハァ…ハァ…」

 

チラリと右サイドの方を見ると、大きく肩で息をしている生嶋の姿があった。

 

「(…あれじゃ、パスが出せねえ。出せても4番はかわせねえ…)」

 

無理が祟り、疲労の色が激しい生嶋は使えない。辺りを見渡しても、大地は緑間のマークが厳しく、松永も、今年正センターに抜擢された5番、支倉を相手に苦しんでおり、天野も秀徳でただ1人の1年生ルーキーの木村を相手に苦しんでいる。

 

「(…周りに期待してても仕方ねえ。こんな時に俺が何とかしないと…!)」

 

意を決した空はこの状況を自分で何とかしようと決心する。

 

2、3度レッグスルーを繰り返し…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ここで一気に加速、高尾に対して仕掛けていく。

 

「(確かに速さはあるが、動きは読める。読めさえすれば俺でも何とか…!)」

 

動きを読んだ高尾は空のドライブに遅れる事なく付いていった。

 

「それで止めたつもりかよ!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

ここで空はバックロールターンで反転。高尾の逆を付いて抜きさった。高尾を抜いた空はそのままリングへと一直線に突き進みそのまま跳躍。

 

「止める!」

 

そこへ、ヘルプに来た支倉がブロックにやってきた。

 

 

――ドン!!!

 

 

シュートに行った空とブロックに飛んだ支倉が空中で激突する。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

それを確認した審判が笛を吹いた。

 

「こんの…!」

 

体格差のある支倉と激突して弾かれる空だったが、何とか態勢を立て直し、リングに向かってボールを放り投げた。

 

 

――バス!!!

 

 

ボールはバックボードに当たってリングを潜った。

 

「あだっ!」

 

着地までは上手くいかず、空はコートに倒れ込んだ。

 

「ディフェンス、チャージング、黄5番! バスケットカウントワンスロー!」

 

審判は笛を口から放すと、ディフェンスチャージを宣言した。

 

「なっ!?」

 

「おいおい、今の向こうからぶつかってないか!?」

 

判定に納得が出来ない秀徳ベンチから抗議の声が上がる。

 

「やめるんだ。どちらとも取れる判定だった。審判がディフェンスファールを取った。それだけのことだ」

 

ヒートアップ仕掛ける秀徳ベンチの面々を中谷が諫める。

 

「ドンマイ、今のは仕方ないッス」

 

「ああ、分かってる」

 

高尾が落ち着かせる為に声を掛けると、気にしていないとばかりに支倉は返事をした。

 

「空坊、ちょいと強引過ぎやで。今のも下手したらオフェンスファールや。フリーの奴もおった。今のはパスすべきとちゃうんか?」

 

「決まったんだからいいじゃないですか。現状、1番分があるマッチアップは俺の所なんですから、悪い判断じゃないと思いますけど」

 

「せやけど――」

 

「第一、パス出してどうすんですか? 俺以外、単独で点が取れる奴がいないんですから、むしろパスを出す方がリスクがデカいでしょう」

 

「……えらい引っ掛かる言い方やな。そないな言い方する必要はないんとちゃうか?」

 

空の物言いが癇に障った天野が空に詰め寄ろうする。

 

「空、フリースローですよ。天野先輩も、試合中ですよ」

 

見かねた大地が間に入って仲裁した。

 

「…」

 

「…」

 

双方…特に天野が納得していない表情をしながら空はフリースローに、天野はペイントエリアに向かった。

 

「(…種を撒いてはいたけど、まさかこんなに早く芽が出るとはな)」

 

一連の2人のやり取りを横目で見ていた高尾が人知れずほくそ笑んでいた。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボーナススローを空がきっちり決め、3点プレーを完成させた。

 

だが、依然として花月の窮地は変わらず、厳しい状況に立たされており、そんな中で生まれた火種。

 

試合は、中盤戦へと移行していくのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





ここ最近、どうもモチベーションが上がらない今日この頃です。

一定の短い間隔で投稿を続けて人はどうモチベーションを維持しているんですかね? 執筆活動を始めた当初は毎日執筆が楽しかったはずなんですが、今では忙しさも相まってテンションが上がらんとです…( ;∀;)

感想、アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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