黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

遂に物語の本筋に! けれど、内容は薄い…orz

それではどうぞ!



第71Q~ハイスコアゲーム~

 

 

 

第1Q、残り9分55秒。

 

 

花月 0

秀徳 3

 

 

試合開始直後、高尾・緑間による、空中装填式(スカイ・ダイレクト)3Pシュートが炸裂し、秀徳が先制点をあげた。

 

「…ちっ、事前に見た試合映像にもあったが、まさか、いきなり打ってくるとはな」

 

舌打ちをしながら空が苦々しい表情を取る。

 

今2人が見せた連携によるスリーは花月の選手達は把握していた。だが、試合開始直後に打ってくる事は予想外であった為、動揺を隠せない。

 

「空坊、惚けてる場合ちゃうで。早う取り返さんと」

 

「っ! そうッスね」

 

天野に促され、気持ちを切り替え、気合を入れ直す空。

 

「…」

 

花月の選手達がオフェンスに切り替える中、生嶋だけがリングを茫然と見つめていた。

 

「おい生嶋。いつまでボーっとしてんだよ」

 

スローワーからボールを受けるポジションに向かいながら生嶋に声を掛けた。

 

「…くー、すごいよ。今の聞こえたかい? あの美しい音を…」

 

「……音?」

 

言ってる意味が分からず、思わず聞き返す空。

 

「ボールがネットを潜り抜けた瞬間のあの音。数あるシュートの中でもスリーは格別。その中でも緑間さんのは別格だよ。美し過ぎて鳥肌が立ってしまったよ」

 

「…」

 

両腕を抱きしめるように組む生嶋に対し、空は毒気を抜かれたような表情になった。

 

花月の1年生において、生嶋はひと際変わっている。元々、彼がシューターを志すようになったきっかけは、シュートの距離が遠い程ネットをボールが潜った時の音が美しいからの一点である。

 

生嶋の家は音楽家系。生嶋自身、ピアノからバイオリンまであらゆる楽器を弾き事が出来る。その為か、音に対してひと際こだわりが強い。

 

「……よく分らんが、惚けてる場合じゃねえぞ。やられたら返さねえと」

 

「うん。分かってるよ。さあ、1本返そうか」

 

そう返して生嶋は走っていった。

 

「……相変わらず、あいつは分かんねえ」

 

肩を竦めながらスローワーとなった天野からボールを受け取った。。

 

「…よし、1本、返すぞ!」

 

空がゆっくりとボールをフロントコートまで運んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「先制点は秀徳かー」

 

「まさか、いきなりあれを打ってくるなんてね」

 

観客席の一角、洛山のジャージを着た選手達が座っていた。

 

「どっちが勝つと思うよ?」

 

「秀徳っしょ。選手の質と経験が違い過ぎるし」

 

勝敗予想を尋ねた根布谷に対し、葉山が後頭部で両手を組みながら答えた。

 

「私も小太郎と同じ予想ね。征ちゃんはどう?」

 

実渕も葉山の回答に同意し、赤司に話を振った。

 

「そうだね。……8-2で秀徳勝利と予想するよ」

 

「8-2……征ちゃんが言うと何か起こりそうな予想ね」

 

赤司の回答に、実渕が含みを持たせた視線を赤司に向けた。

 

「葉山の言う通り、選手の質、経験、その他においても秀徳が優れている。だが、秀徳には不安要素が3つある。まず、チームの相性だ」

 

赤司は視線をコートに向けたまま詳細な予想を話し始めた。

 

「秀徳は速い展開を得意とするチームとの相性が良いとはいえない。現に、緑間が加入してから、似たチームスタイルである誠凛との戦績が1勝2敗1引き分けと勝率は良くない。総合力では誠凛を上回っているにも関わらずだ。そこから見ても、秀徳は速い展開を得意とするチームの相性が良くない。これが1つ」

 

『…』

 

「次は、これは不安要素と言うよりも、不確定要素と言った方が正しいかな。神城空と綾瀬大地の存在だ」

 

ここで、視線がコート上の空と大地の2人に向く。

 

「彼らがこの大会までにどこまで成長したか。それ次第で結果は大きく変わってくる。これが2つ目」

 

『…』

 

「3つ目は……これについては、花月が秀徳を追い詰める事が出来れば、浮かび上がってくる。追い詰める事が出来れば、ね」

 

『?』

 

赤司の言う3つ目が理解出来ず、洛山の選手達は頭に『?』を浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

空がフロントコートを越えると、秀徳が花月の選手をマンツーでマークを始めた。

 

空には高尾。生嶋には宮地。大地には緑間。天野には木村。松永には支倉。生嶋と大地のポジション以外はポジションどおりのマッチアップである。

 

「(…やっぱり、大地に緑間が付いたか)」

 

チラリと視線を向け、大地をマークする緑間を確認する。花月のエースであり、得点源の1つである大地。そのマークに、秀徳のエースである緑間がやってきた。

 

「(……よし)」

 

空はゆっくりボールを突きながら前へ進んでいく。

 

「…来いよ」

 

高尾が腰を落とし、空の前に立ち塞がる。空は股下でボールを2度程通し…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「うおっ!?」

 

一気に加速。クロスオーバーで高尾の左手側から高速で通り抜ける。高尾を抜いた空はそのままグングン加速していき、リングに突っ込んでいく。

 

「行かせん!」

 

「止める!」

 

レイアップの態勢に入ると、支倉と木村がヘルプにやってきて、ブロックに現れる。

 

 

――スッ……。

 

 

「「っ!?」」

 

ブロックでシュートコースを塞がれると、空はレイアップを中断。ビハインドパスでボールを左アウトサイドへと流す。そこには、生嶋が駆け込んでいた。ボールを受けた生嶋がすぐさまシュート態勢に入る。

 

「打たせるか――っ!?」

 

そこへ、素早く宮地がブロックに現れ、シュートコースを塞ぎにかかる。が、生嶋は斜めに飛ぶ事でブロックをかわし、エンドラインを越えながらスリーを放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはバックボードの真上付近から落下し、リングの中央を射抜いた。

 

「なっ!?」

 

宮地が驚きの表情でリングに視線を向けた。ボールに触れる事は出来なかったが、態勢は崩れ、かつバックボードの邪魔が入る角度からのスリーだった為、外れると予測していた宮地だっただけに、決まった事に驚きを隠せなかった。

 

「ドンマイッス。返しましょう!」

 

スローワーである木村からボールを受け取った高尾が宮地に声を掛けた。

 

「おう。そうだな」

 

ディフェンスが甘かった事を戒め、宮地はオフェンスへと向かっていった。

 

 

高尾がフロントコートまでボールを運ぶと、花月がディフェンスに入る。

 

「…そう来たか」

 

ボールをキープする高尾がポツリと呟く。

 

花月は昨日の試合で布いたマンツーではなく、緑間1人にマークを付け、残りは2-2のゾーンを組んだボックスワンを布いた。

 

陽泉程の高さはないが、それでも全国で屈指のインサイドを誇る秀徳。それに加えて緑間という絶対的なシューターがいるので、ボックスワンで来る事は予測の範囲内であった。だが、唯一予想外であったのが…。

 

「お前が来たか」

 

「…」

 

緑間をマンツーマンでマークしているのが大地であった事だ。高さがあり、ディフェンスに定評がある天野が来ると予想していた秀徳。これには意表を突かれていた。

 

「いいのか? あいつじゃ多分、真ちゃんは止められないぜ?」

 

「どうかな」

 

ボールを持つ高尾の前に立つ空に向けて告げると、不敵な笑みで空はそう返した。

 

「…」

 

「…」

 

ボールをキープする高尾に対し、空中装填式3Pシュートを撃たせない為にタイトにディフェンスをしている。万が一抜かれてもゾーンで捕まえられるので、空は強気で前に出ている。

 

「…っとと、気合入ってんな。そんな張り切り過ぎるとガス欠起こしちまうぜ」

 

軽い口調で空に告げると、ビハインドパスで逆サイドに展開していた宮地にパスを出す。ボールが渡ると、生嶋がすかさずディフェンスに付いた。

 

「(…ちっ、こいつ、なかなか良いディフェンスをする)…けど、甘いぜ!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「うっ!?」

 

密着マークを受けるも兄顔負けのキレのあるドライブで生嶋を抜きさった。そのまま切り込んでいくと、天野が立ち塞がった。

 

「行かせへんで」

 

「あぁ!? このまま突っ切ってやるよ!」

 

クロスオーバーで切り返して天野の右手側を攻める。

 

「残念やけど通行止めや」

 

「っ!?」

 

即座に反応し、宮地の進路を塞ぎ、動きを止めた。そこへ、生嶋が宮地を囲う為に後ろから距離を詰めていく。

 

「キャプテン!」

 

ハイポストに走り込んだ木村がボールを要求。宮地はすぐさまパス。ボールを受けた木村はすかさずバックパス。ボールは高尾に渡り、すぐさまパス。

 

『来た!』

 

ボールは緑間に渡り、チェイサーである大地が立ち塞がる。

 

「…っ」

 

腰を深く落としてディフェンスに臨む大地。他の4人も緑間の動きに注視する。

 

「…」

 

「…」

 

ボールを小刻みに動かしながら牽制する緑間。全神経を集中させて対応する大地。次の瞬間。

 

「っ!」

 

緑間がシュート態勢に入った。大地は慌ててチェックしに距離を詰めた。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

だが、緑間は途中でシュートを中断。距離を詰める為に大地の動きに合わせてその横をドライブで通り抜けた。

 

「くっ!」

 

裏を掻かれて抜かれるも、大地はバックステップで緑間を追いかける。しかし、それを見越してか、緑間は大地を抜いた直後に急停止し、レッグスルーをした後スリーポイントラインの外側にまでバックステップをし、再度シュート態勢に入った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

慌ててブロックに向かった大地だったが、間に合わず、得点を許してしまう。

 

「おー魅せるね真ちゃん」

 

「…ふん」

 

褒める高尾に対し、緑間は鼻を鳴らした。

 

「くれっ!」

 

リングを潜ったボールを松永が拾うと、空がすぐさまボールを貰いにいく。

 

「走れ!」

 

ボールを受けると空はフロントコート目掛けて速攻を仕掛けた。空の号令に合わせて他の4人もフロントコート目掛けて走り出した。

 

「なにっ!?」

 

突然に花月の速攻に、秀徳の選手達は面を食らう。

 

『は、速えーっ!』

 

あっと言う間に全員がフロントコートにまで駆け上がり、観客から驚きの声が上がった。

 

「ちっ、何度も行かせるかよ!」

 

ガンガン切り込んでいく空に、高尾が並走しながら追いかけていく。

 

 

――キュッ…!

 

 

空はフリースローライン目前で止まり、バックパス。後方、スリーポイントラインの外側に控えていた生嶋にパスを出した。

 

「今度こそ!」

 

生嶋がボールを受けた直後、宮地が厳しめにチェックに入った。

 

「…っ」

 

自分より大きい選手からの厳しいディフェンスに生嶋の表情も曇る。

 

「あかん、イク、こっちや!」

 

見かねた天野がボールを貰いに生嶋の横へと下がる。生嶋は天野の方へ視線を向けるのと同時にシュート態勢に入った。

 

「そんなもんに!」

 

ディフェンスをする宮地は一瞬視線に釣られるも、すぐさまブロックに飛んだ。生嶋はブロックに捕まる前にボールをリリースする。

 

「(バランスを崩した。リズムも悪い。そんな慌てて撃ったシュートが入るかよ!)リバウンド!」

 

外れる事を確信した宮地が叫ぶ。支倉、木村がスクリーンアウトの態勢を取ってリバウンドに備える。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

だが、ボールはリングの中央は的確に射抜いた。

 

「やるやんけ!」

 

スリーを決めた生嶋を天野が肩を抱いて労った。

 

「何であれが入るんだよ…」

 

ボールにこそ触れる事は出来なかったが、確実にシュートセレクションは乱したはずだった。それでも決められてしまい、信じられない者を見る目で宮地は生嶋を見ていた。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

再び、緑間が大地をかわしてスリーを決める。花月は先ほどと同様、空がボールを受けるのと同時にチーム全員がフロントコートに駆け上がる。空は高尾がマークに付く前に左アウトサイドに展開していた生嶋にパスを出した。

 

「打たせたら終わりだってんなら!」

 

ディフェンスをする宮地は先ほど以上、シュート態勢にすら入らせない程のフェイスガードでべったり生嶋をディフェンスに臨む。

 

「くっ!」

 

これには生嶋も苦悶の声を上げる。厳しい宮地のディフェンスの前に、ボールをキープするだけで手一杯になる。

 

「こっちです!」

 

大地が生嶋に駆け寄り、ボールを貰いにいく。生嶋はすかさず宮地の脇の下からボールを通し、パスを出した。ボールを受けた大地はすぐさまシュート態勢に入った。

 

「させないのだよ」

 

そこへ、緑間がブロックに現れた。

 

 

――チッ…。

 

 

放たれたボールは、緑間の指先に僅かに触れた。

 

「っ! リバウンド!」

 

大地が声を上げると、ゴール下の天野、松永がリバウンドに備える。同時に、支倉、木村もリバウンドに備えた。

 

 

――ガン!!!

 

 

ボールは予想通り外れた。同時に、ゴール下でリバウンドに備えていた4人がリバウンドボールを確保する為に飛んだ。

 

「(…あかんな。場所が悪い。これは取られてまう)」

 

絶好のポジションを木村に取られてしまい、ポジションが悪い天野。松永も同様であった。

 

「…けどな、リバウンドは俺の領分や。これだけはタダは譲らんで!」

 

 

――ポン…。

 

 

天野が懸命に右手を伸ばし、ボールを中指で引っかけた。

 

「「っ!?」」

 

ボールは木村の手に収まる直前に天野によって掻き出され、目を見開く支倉と木村。

 

「ナイス、天さん!」

 

掻き出されたボールを空が飛んで確保した。その直後、空はボールを後ろへと放った。そこへ、リバウンド争い後、ゴール下を離れ、走り込んできた松永がボールを掴む。

 

「よし!」

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールを受けた松永はすかさず反転し、そのままシュート。後を追いかけてきた支倉のブロックを紙一重でかわしながら決めた。

 

「おっしゃーっ!」

 

空と松永がハイタッチを交わす。

 

「ディフェンス! 今度こそ止めるぞ!」

 

ディフェンスに戻りながら大声を出し、チームを鼓舞する空。次こそはと気合を入れる花月の選手達。だが…。

 

『っ!?』

 

自陣に戻り、振り返った花月の選手達の目に飛び込んできた光景に目を見開いた。その目に飛び込んできたのは、ゴール下でボールを持ち、縫い目をその手に合わせている緑間の姿だった。

 

「よもや、知らない訳ではないだろうな? 俺のシュートレンジを…」

 

縫い目を合わせた緑間は両足を深く沈め、シュート態勢に入った。

 

「くっ…!」

 

気付いた大地が慌てて緑間の下へ走っていく。緑間は全身の力をボールに伝わせ、ボールを放つ。

 

 

――ピッ!!!

 

 

その手から放たれたボールは高い軌道を描きながら花月のリングへと向かっていく。

 

「俺のシュートレンジは、コート全てだ」

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

大きい弧を描いたボールはリングの中央を垂直に射抜いた。

 

『おぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

『出たぁっ! 緑間の代名詞、超長距離3Pシュート!』

 

リングをボールが潜るのと同時に観客が盛大に沸き上がった。

 

「ここからならば、得意の速攻も意味を為さないのだよ」

 

自陣のゴール下からメガネのブリッジを押しながら緑間は言った。

 

『…っ!』

 

花月の選手達は険しい表情で緑間を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「1本、返すぞ!」

 

先ほどとは一転、ゆっくりと空はボールをフロントコートまで進めた。他の選手達も各々ポジションに付いた。

 

 

「意外と動揺は少ないな」

 

秀徳ベンチの選手が呟くように言った。

 

「ふむ、内心ではどうだろうね。分かってはいても、実際に目の当たりにするとダメージは大きいものだよ」

 

両腕を胸の前で組みながら中谷は言った。

 

「ここを止めて流れに乗りたいところだね」

 

 

「…」

 

ゆっくりとボールをキープする空。目の前でマークをする高尾は、多少距離を空けてディフェンスに臨んでいた。

 

「…(行ったれ)」

 

「…(うす!)」

 

天野がスクリーンの合図を出し、合図と同時に空がドライブで一気に仕掛ける。空を追いかける高尾が天野のスクリーンに掴まる…と思った瞬間、反転しながら天野のスクリーンをかわしながら空を追いかけた。

 

「っ!」

 

「残念!」

 

スクリーンをかわした高尾が空の進路を塞いだ。

 

「(こいつ…、俺のドライブにもう対応してやがる…)」

 

天野のスクリーンをかわした事にも驚いたが、それ以上に別段、スピードがある訳でもない高尾に追いつかれた事に空は驚いていた。

 

「(そういや、こいつには鷹の眼(ホークアイ)があるんだっけか。特殊な視野を持ってるからスクリーンをかわす事も俺のスピードにも対応出来るのか…)」

 

自分に追いついた理由にあたりを付けた空は、1度レッグスルーを入れ、シュート態勢に入った。

 

「やっべ…!」

 

シュート態勢に入った空を見て焦りの色が入る高尾。両者の身長差は僅か2㎝程度だが、ジャンプ力に大きな差がある為、シュート態勢に入られてしまうと高尾ではブロックが出来ない。

 

「任せろ!」

 

支倉がヘルプに飛び出し、ブロックに向かった。

 

「むっ」

 

ヘルプが速かった為、支倉は空のシュートコースを塞ぐことに成功した。

 

「ちっ」

 

やむを得ず空はシュートを中断。パスに切り替え、ボールを左へと放った。

 

「ナイスパスです」

 

そこへ駆け込んだ大地がボールを受け取り、そのまま切り込んでいった。

 

「はぁっ!」

 

ゴール下から僅かに離れた所でボールを右手で掴み、大地はリングに向かって跳躍した。ボールを持った右手がリングを越えると、大地はそのままボールをリングに叩きつけた。

 

 

――バチィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

ボールがリングに叩きつけられる直前、1本の腕が現れ、それを阻止した。

 

「そう易々とダンクを決められると思うな」

 

「緑間!」

 

ダンク阻止に現れたのは緑間だった。

 

「くっ!」

 

緑間によってボールが手から零れたが、大地は空中で再度ボールを手元に手繰り寄せる。そのままボールを下へと落とした。

 

「さすが、タダでやられる訳がないと思っていたぜ!」

 

走り込んでいた空がボールを受け取った。

 

「2発目!」

 

今度は空がダンクへと向かった。

 

「舐めんなよ1年坊主!」

 

そこへ、ヘルプに走り込んでいた宮地がブロックに現れた。

 

「…ま、そうだよな」

 

右手で持ったボールを左手で抑え、ダンクを中断すると、空はボールを頭の上から後ろへと落とした。落とした所に立っていた天野がボールを受け、そのまま右アウトサイドへとパスを出した。

 

「あっ!?」

 

そこには、ノーマークの生嶋が立っていた。マークを外してしまった宮地は思わず声を上げる。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ノーマークの生嶋は悠々とスリーを決めた。

 

「おっしゃ、ええでイク!」

 

アシストした天野と決めた生嶋がハイタッチを交わした。

 

「ちっ」

 

得点を決められ、秀徳から舌打ちが漏れる。

 

秀徳のオフェンス。空、生嶋、天野、松永が自陣まで戻り、ゾーンを布く中、大地だけがフロントコートに止まり、緑間にマークに付いていた。

 

「(…ま、真ちゃんのアレ見せられたらそうするわな。けどな、それは1番やっちゃいけない愚策だぜ)」

 

ボールを貰い、ゲームメイクを始める高尾が横目で緑間と緑間をマークする大地を横目で見ながら心中で呟く。

 

「…」

 

目の前でディフェンスに集中する空。高尾の一挙手一投足に全神経を集中させる。

 

 

――ダムッ…ダムッ…ダムッ!!!

 

 

ゆっくりボールを突き、3度目でテンポアップ、ドライブで切り込んでいく。

 

「チェンジオブペース…だが、この程度なら…!」

 

空は遅れずに高尾の横を並走しながら追いかける。高尾の進行先に天野が先回りし、包囲にかかる。

 

「あらよっと」

 

包囲される前に高尾が立ち止まり、ノールックビハインドパスを出す。

 

「よし!」

 

ハイポストに立っていた木村にボールが渡る。ボールを受けた木村はすぐさまローポストに立つ支倉にパスを出した。

 

「行かせん!」

 

支倉の背後に立った松永が両腕を広げ、ディフェンスに臨む。

 

 

――ドン…!!!

 

 

支倉が背中をぶつけ、ドリブルをしながらジリジリと押し込んでいく。

 

「(ぐっ! …ここは絶対死守だ。これ以上は梃子でも動かん!)」

 

グッと腰を落とし、力を込め、支倉の侵入を止める。

 

「(むっ、重くなった。押し込めない。ならば…!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

これ以上押し込めないと判断した支倉はスピンムーブで反転。松永の横を抜ける。

 

「おぉっ!」

 

そのまま支倉がゴール下でシュートに向かう。

 

「まだまだ!」

 

対する松永もすぐ後ろから追いかけ、後ろから懸命にブロックに向かった。

 

 

――ガン!!!

 

 

懸命に伸ばした手がボールに僅かに触れ、支倉のシュートは外れる。

 

「リバウンド!」

 

リバウンドボールを木村が抑える。そのままもう1度シュートに向かおうとした木村だったが、天野が木村の前に立ち塞がった。

 

「戻せ!」

 

木村の後方、スリーポイントラインの外側まで走り込んでいた高尾がボールを要求。すかさず木村が高尾にパスを出す。

 

「止める」

 

ボールが渡ったの同時に空がディフェンスに入る。

 

「ハハッ、無理だね」

 

そのまま高尾がボールを横に出す。ボールは右アウトサイドに展開していた緑間に渡った。

 

「…」

 

「…っ」

 

再び、大地対緑間の対決。緑間がボールを受けたのと同時にシュート態勢に入る。

 

「(フェイク? …違う、今度は…!)しまった!」

 

慌ててブロックに向かう大地だったが、緑間の放ったスリーに触れる事は出来なかった。

 

「くっ!」

 

大地が振り返ると、天井に届くのでは思う程の高いループを描きながらリングに向かっていく。放った本人の緑間は決まるのを確認する事なく踵を返し、自陣へと戻っていく。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

高く高く上ったボールは外れる気配なくリングの中央を落下していった。

 

「ここまで下がってしまえば得意の速攻は使え――」

 

 

――ブォン!!!

 

 

ボールが高いループを描いている内に自陣の最深部まで戻った緑間。花月の速攻を封じにきた緑間だったが、大地、生嶋、天野がフロントコートに構わず猛ダッシュ。スローワーとなった松永が空にボールを渡し…。

 

「速攻!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

目の前の木村を抜きさると、そのままフロントコートに駆け上がっていった。

 

5人全員が一気に駆け上がる。緑間と高尾以外はまだ戻り切れていない。ボールを持つ空は緑間に突っ込んでいく。

 

「思い上がるな!」

 

空を待ち受ける緑間。空はクロスオーバーからのバックロールターンで仕掛けていく。だが、緑間は遅れることなく空を追いかける。

 

「(っ! そういや、誠凛の火神も青峰も、この人に抑えられてんだよな…)」

 

全く揺さぶりをかけられなかった事に軽く驚く空。

 

「ならっ!」

 

急停止した空はフェイダウェイのクイックリリースでミドルシュートを放った。

 

「(そんなシュートが入るわけ――いや、これは!)」

 

シュートセレクションが悪い空のシュートに外れる事を確信した緑間だったが、すぐに気付いた。ボールの軌道が極端にリングから離れている事に。空がシュートを放った直後、後ろから松永が全速で走り込み、跳躍した。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

空中でボールを掴み、そのままボースハンドダンクで押し込んだ。

 

『うおぉぉぉっ! アリウープだぁぁぁっ!!!』

 

再び、得意の速い速攻を成功させる花月。

 

その後も、花月は運動量とスピードを武器に速攻を重ね、秀徳は緑間を中心に得点を重ねていった。

 

秀徳が決めれば、花月も決め返す。双方の矛が双方の盾を貫き、試合は、ハイスコアゲームとも言える試合ペースとなっていった。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで、第1Q終了のブザーが鳴った。

 

 

第1Q、終了

 

 

花月 24

秀徳 30

 

 

双方の選手がベンチへと戻っていく。

 

試合は、秀徳リードで4分の1が終わった……。

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





あまりの引き出しの少なさに、たった1話で第1Q終了…(^-^;)

正直、インハイの洛山戦があまりにも長すぎたと反省しています。

さて、この後どうしようかなぁ…。

感想、アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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