黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

映画を見て、上がったテンションのまま連続投稿です。

それではどうぞ!



第63Q~答え~

 

 

 

第1Q、残り9分53秒。

 

 

花月  2

J・W 0

 

 

試合開始早々、空のパスからの大地のアリウープによって花月が先制する。

 

「…」

 

ディフェンスに戻る花月の選手達。ナッシュとすれ違う様…。

 

「……何処かで見たと思ったが、そういや、2匹のサルを何年か前に潰した事があったな…」

 

ポツリと呟くようにナッシュが言うと、三杉が足を止めた。

 

「思い出してくれて何よりだ」

 

表情を変えず、ナッシュの方へ振り向くことなく三杉はそう返した。

 

「お前、まだバスケやってたのか?」

 

「おかげさまで、あれからバスケが楽しくて仕方なくてね」

 

ナッシュの挑発交じりの言葉に、皮肉交じりに答えた。するとナッシュは鼻を鳴らした。

 

「やはりサルはサルか。言葉や実力を見せつけても無駄か。…なら、やっぱり腕をへし折ってバスケを出来なくするしかないようだな」

 

「やれるものならな。…あと、あんまりサルサル言わない方がいい。サル以下にはなりたくないだろう?」

 

「…すぐにその減らず口を吐けないようにしてやるよ…!」

 

そう告げてディフェンスに戻ると、その背中をナッシュが睨みつけながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

試合は花月の先制を皮切りに、花月ペースで進んでいった。

 

「もらった!」

 

ボールを受け取ったニックがジャンプショットを放つ。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「させへんで!」

 

そのシュートは天野によってブロックされる。

 

「ちっ!」

 

ルーズボールを拾ったザックが舌打ちをしながらボールをナッシュへと戻した。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

「迂闊だぜ!」

 

そのパスは空によってスティールされる。

 

「おっしゃ、カウンター!」

 

ボールを奪った空が前線に大きくボールを放った。そこには、既にセンターサークルを越えたところまで走っていた大地の姿があった。

 

「ナイスパスです!」

 

ボールを貰った大地はそのままワンマン速攻を仕掛ける。

 

「(あいつ、さっきまで俺の目の前にいたのにもうあそこまで…!)」

 

大地をマークしていたアレンは大地のスピードに目を見開く。リング付近までドリブルで進んだ大地はそのままレイアップの態勢に入る。

 

「させるか!」

 

「…っ!」

 

大地に追いついたザックが大地のシュートコースを塞ぐようにブロックに現れた。

 

『うぉっ! ジャバウォックも速ぇっ!』

 

スピードに特化で有名な大地に追いついたことに観客から声が上がる。

 

 

――スッ…。

 

 

大地はレイアップを中断し、ボールを後方へ放るように落とした。

 

「ナイスパス!」

 

そこへ、先ほどスティールをした空が走り込んでいた。

 

「(こいつも…、とんでもないスピードだ!)」

 

今度は空のスピードに驚愕するアレン。

 

「そして今度は…俺の番だ!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

そのままワンハンドダンクを叩き込んだ。

 

『おぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

「イエイ!」

 

「ナイスです」

 

空と大地がハイタッチをする。

 

『くっ!』

 

悔しさを露わにするジャバウォックの選手達。

 

「リスタートだ。早くしろ」

 

ナッシュだけは表情を変えずにリスタートを促した。

 

「…」

 

「…」

 

ナッシュがボールを進めると、三杉がディフェンスに入った。

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

前方、股下、後方に、高速にドリブルをしながら三杉に揺さぶりをかけるナッシュ。だが…。

 

「……ちっ」

 

三杉は特に翻弄されることなくその動きにピタリと付いていく。抜くことを諦めたナッシュはボールを止めてニックへのパスに切り替えた。

 

「…へっ」

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

ディフェンスに入ったのは空。ボールを貰ったニックはその場で高速かつトリッキーな動きを交ぜたドリブルを始める。

 

「…っ、…っ!」

 

抜かれまいと空はそのドリブルに付いていく。

 

「へっ!」

 

ひとしきりトリッキーなドリブルで翻弄した後、ニックは空の頭目掛けてボールを投げつけた。

 

 

――パシィ…。

 

 

「っ!?」

 

「ナイスパス」

 

だが、ボールが頭に当たる直前、空はそのボールを右手で受け止めた。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

そのままクロスオーバーでニックを抜きさり、そのままドリブルで進行。

 

「っ!」

 

フロントコートに入り、スリーポイントライン目前で、ナッシュが目の前に立ち塞がる。

 

「(面白れぇ、このままこいつも抜きさ――)」

 

仕掛ける直前、ナッシュのプレッシャーが空に襲い掛かる。

 

「……まだ無理だな」

 

距離が詰まる寸前で空はビハインドバックパスボールを横に流した。そこに、三杉が駆けつけ、ボールを受け取り、そのままレイアップで得点を重ねた。

 

「ナイス判断だ」

 

「…うす」

 

肩を叩く三杉に、空は複雑な表情で返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

ジャバウォックボール。ナッシュが三杉の隙を付き、天野のマークを振り切ってゴール下へ走り込んでいたザックにパスを出した。

 

「くたばれ!」

 

ボールを貰ったザックはボールを右手で持ち、ワンハンドダンクを叩き込む。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

「甘いわ!」

 

だが、そのダンクは堀田によってブロックされた。

 

「ほれ、空坊!」

 

ルーズボールを拾った天野が前線へと大きな縦パスを出すと、堀田のブロックと同時に速攻に走っていた空がパスを受け取った。

 

『ちっ!』

 

慌ててディフェンスに戻ろうとするも、空はそのままレイアップを決めた。

 

「よーし!」

 

拳を握り、喜びを露わにする空。

 

「…」

 

ナッシュは、花月の選手達を特に言葉を発することなく視線を向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで、第1Q終了のブザーが鳴り、コート上の選手達は2分間のインターバルの為、ベンチへと下がっていく。

 

「第1Qは花月のリードで終わりましたね」

 

「三杉と堀田だけじゃない、神城、綾瀬、天野もかなり試合に貢献している」

 

観客席で試合を観戦していた黒子と火神が感想を言い合っていた。

 

 

第1Q終了。

 

 

花月  22

J・W 18

 

 

「だが、リードはたったの4点なのだよ」

 

「おっかしいッスね、花月の押せ押せの優勢に見えたんッスけど」

 

メガネのブリッジを押す緑間。怪訝そうな表情を取る黄瀬。そこに青峰が口を挟む。

 

「理由ははっきりしてんだろ。点差が開かなかった原因は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「……ちっ」

 

「…」

 

舌打ちをする空と、無言で汗をタオルで拭っている大地。

 

「(点差はたった4点。思ったより開かなかったな。やはり、神城と綾瀬のところがネックか…)」

 

ベンチの前で顎に手を当てる上杉。スティールや速攻で得点を重ねる空と大地だが、反面、失点の多くが2人のところからである。

 

「(だが、それは多少は覚悟はしていたことだ。今はそれよりも、選手達の消耗が激しい)」

 

まだ、試合の4分の1を消化しただけにも関わらず、選手達はかなりの汗を掻いている。

 

「(三杉と堀田でさえこの消耗ぶり。ナッシュとシルバーを直接マークをしながら周囲にも気を配っているから当然の話だ。特に…)」

 

「……ふぅ」

 

無言で呼吸を整えている天野。

 

「(天野の消耗が1番激しいな。体力無視してディフェンスに臨んでいるのだからな)」

 

練習量日本一の環境で1年以上過ごした天野の体力は並みではない。普段なら言葉を発してチームを盛り上げる天野なのだが、今日は極力言葉を発せず、体力回復に努めている。

 

「(天野は最後までもたないかもしれないな。後は…)」

 

チラリと上杉は空と大地に視線を向ける。

 

「ちっくしょう! 止められねぇ!」

 

「落ち着いて下さい。空」

 

悔しさを露わにする空と、それを慰める大地。

 

「(……あの2人は問題ないな)」

 

無尽蔵の体力を誇る空と大地の普段と変わらない様子を見て問題なしと判断した。

 

「さて、序盤はまあ、こんなもんだろ。問題はここからだ」

 

『…』

 

選手達が上杉に注目する。

 

「一応はリードはしている。が、神城と綾瀬の速攻頼みのオフェンスがいつまでも通用する程馬鹿じゃない。当然、次の手を打たねばならない」

 

「ですが、神城君と綾瀬君の速攻の脅威は残っているはずです。オフェンスは2人も起点に別パターンを加えればまだ通用すると思います。今、問題なのはディフェンスかと思います」

 

次の戦略を模索する上杉に姫川が意見を述べる。

 

「第1Qで、2人のところが狙い目だと言うことが浮彫になりました。当然、狙ってくると思います。ここは、三杉先輩をナッシュに付けて、後はゾーンディフェンスで対抗するというのはどうでしょうか?」

 

「ボックスワンか…」

 

現状で、空と大地は1対1では分が悪い。だが、ゾーンであればある程度の実力差は解消され、尚且つ、2人の機動力がさらに生きる。チームの起点であるナッシュは三杉が抑え、向こうの歯車を狂わせる。これが姫川が考えた作戦だ。

 

「確かに、それも有効な手段の1つではある…」

 

作戦の有用性を理解し、考え込む上杉。現状を考えれば実行に移したいのだが、何処か引っ掛かるところがある上杉は踏み切れない。

 

「……三杉はどう考える?」

 

ここで、上杉は三杉に意見を求めた。

 

「そうですね――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

ジャバウォックベンチ…。

 

「……予想以上にやりやがるな。まさか、ここまでやれる奴が日本にいるとはな」

 

汗を拭いながら花月ベンチ…三杉と堀田に視線を向けるナッシュ。

 

「さっき、あの2人を潰したとか聞こえたが、本当なのか?」

 

三杉とナッシュの会話を聞いていたアレンが尋ねる。

 

「覚えてねえよ」

 

「あっ?」

 

「何年か前に向こう(アメリカ)でサルを2匹潰したって記憶があるだけだ。潰したサルのことなんざ、いちいち覚えてねえよ」

 

そう言ってナッシュは背もたれに体重を預けた。

 

「何だそりゃ? まあいい、これからどうする? こっちは楽勝だぜ」

 

基本、大地を相手にするアレンが嘲笑を浮かべながら尋ねる。

 

「そうだな――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

インターバルが終了し、第2Qが開始される。試合開始早々、ジャバウォックが動く。

 

シルバーが突如、ゴール下から離れる。

 

「…むっ?」

 

堀田が追いかけようとすると、アレンのスクリーンに捕まる。スリーポイントラインの外側でシルバーはナッシュからのパスを受けた。

 

『シルバーがゴール下から離れた!?』

 

『何をする気だ?』

 

シルバーの行動に観客は疑問は尽きない。

 

スクリーンに捕まった堀田に代わり、天野がヘルプディフェンスに入る。

 

「(空いたゴール下にパス。……ちゃうな、これは…!)」

 

ボールを受けると、シルバーはドリブルを始める。天野も、腰を落として警戒態勢に入る。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

左右からの切り返しから一気に加速。クロスオーバーで天野を一瞬で抜きさる。

 

「(速すぎやろ! 今のは、インハイの青峰……下手したらそれ以上や!)」

 

天野を抜きさったシルバーはグングン加速し、そのままワンハンドダンクの態勢に入った。

 

「させん」

 

ゴール下まで戻った堀田がブロックに飛んだ。

 

 

「まさか、堀田とやる気か?」

 

「馬鹿な、一番ディフェンスが固いということは分かっているはずだ!」

 

ジャバウォックのまさかの選択に、観客席にいる誠凛の日向、伊月は理解出来なかった。

 

 

「まさか、本当にこんなことが…」

 

ベンチの姫川は驚きを隠せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『そうですね。恐らく、向こうは健のところから攻めてくるでしょうね』

 

『まさか、堀田先輩のところが一番突破が困難なことは相手も分かっているはずです』

 

三杉の予想に姫川が反論する。

 

『普通に考えればそうだ。だが、向こうはこちらを未だ舐めている上に、向こうの一番の強みがシルバーだ。力を誇示する為、まず間違いなく狙ってくる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

堀田の手がシルバーの持つボールを捉えた。

 

「よっしゃ! ナイス堀田さ……」

 

 

――ズン…。

 

 

「っ!」

 

ボールを捉えた堀田だが、少しずつ押され始める。

 

「ハッ! くたばれや!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「ぐっ!」

 

ブロックに飛んだ堀田をそのまま吹き飛ばし、ダンクを決めた。

 

「嘘……だろ。紫原を凌駕するパワーを持つ堀田さんが…」

 

今の光景を目の当たりにした空は驚きを隠せなかった。

 

 

「…っ」

 

観客席で見ていた、秋田から試合を見に来ていた紫原も同様であった。

 

 

「ハッハッハッ! おいおい、ちょっと本気出したらこれかよ! 貧弱過ぎるぜ! これじゃあ怪我させねえように気を付けなきゃならねえな!」

 

高笑いを上げながらディフェンスに戻るシルバー。

 

「ハッ! サル相手に弱点付くなんざ真似は必要ねえ。一番強いところを付いて力の差を分からせてやるんだよ」

 

嘲笑を浮かべるナッシュ。

 

「…ちっ」

 

舌打ちをしながら堀田は立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

オフェンスは花月の切り替わる。

 

空がボールを運び、ハイポストに立つ天野にパスを出し、そこから大地にボールが渡る。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

ノーマークなのを確認し、フェイダウェイのミドルシュートを放ったが、ゴール下から現れたシルバーによってブロックされてしまう。

 

「(あの距離からブロックされた…!)」

 

想定外の距離からのブロックに大地の表情も歪む。

 

ルーズボールを拾ったナッシュが前線へ大きな縦パスを出す。そこには…。

 

『なっ、シルバー!?』

 

先ほどブロックをしたシルバーが誰よりも前に走り込んでいた。ボールを貰ったシルバーはそのままドリブルを始めた。

 

「くそっ、追いつけへん!」

 

シルバーを追いかける天野だったが、そのあまりの速さに、全く距離を詰められないでいた。その時…。

 

「…っ!」

 

天野の横を猛スピードで2つの何かが追い越していった。

 

「行かせるか!」

 

「ここで…!」

 

全力疾走で走り、スリーポイントライン目前で空と大地がシルバーを捉え、立ち塞がった。

 

「おいおい、あのチビ2人、シルバーに追いつきやがったぞ」

 

前を走るシルバーを追い越した2人に、ジャバウォックの選手達も感心した。

 

「あのシルバーに追いつくとはな。なかなかやるな」

 

ナッシュもこれには感心を示した。

 

「だが、お前らごときが追いついたところで、何が出来んだよ」

 

 

――ダッ!!!

 

 

シルバーがフリースローラインでボールを掴み、跳躍した。ブロックしようと空と大地も飛ぼうとする。

 

「待て、飛ぶな!」

 

「「っ!」」

 

三杉からのまさかの指示に、2人はその場で留まった。

 

「ハッ! そこから俺様の美技をせいぜい見上げてな!」

 

フリースローラインから飛んだシルバー右手に持ったボールを回しながら両手に持ち替え…。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

そのままリングに叩きこんだ。

 

「見たかサル共! 一生かかってもお前らには出来ない技だ! 精々歯軋りしながら力の差を思い知るんだな!」

 

その場にいる観客に言い聞かせるようにシルバーは叫んだ。

 

「…っ! すいません」

 

「いやいい。今のはお前達でなくても止められなかった」

 

頭を下げる空に、三杉は首を振った。

 

三杉は2人をブロックに飛ばせなかった。飛んでも止められなかった上、下手をすればシルバーに吹き飛ばされ、最悪負傷退場してしまう恐れがあったからだ。

 

「切り替えろ。次行くぞ」

 

3人はディフェンスに戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

試合はここから、ジャバウォックペースで進んでいった。

 

シルバーがポジションを無視し、縦横無尽に暴れまわった。

 

花月はシルバーを止められず、シルバーを突破出来ず、点差は開いていった。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

『チャージドタイムアウト、花月!』

 

たまらず、上杉はタイムアウトを取った。

 

 

第2Q、残り5分4秒。

 

 

花月  26

J・W 35

 

 

「状況は最悪だな」

 

表情を曇らせながら上杉が唸る。

 

花月一の鉄壁を誇る堀田がシルバーを止められず、点差が開いていく。

 

「…現状シルバーをどうにかしなければ点差は開くばかりだ。…シルバーにもう1人付けるか?」

 

上杉が提案する。

 

「インサイドを強化する必要があると思います。神城君か綾瀬を君を下げ、松永君を投入するというのも1つの手段かと」

 

「「…っ」」

 

姫川がインサイド強化の必要性を説く。反論出来ない空と大地は表情を曇らせる。

 

「確かに、それが良策だが……どうする、健?」

 

「…いや、このまま行かせてほしい」

 

シルバーにダブルチームで当たる作戦に、堀田は首を横に振る。

 

「……任せていいんだな?」

 

「ああ。任せてくれ」

 

「…分かった。なら、シルバーはこのまま健に任せる。監督、とりあえずこのままで」

 

「…お前達がそう言うなら任せよう」

 

三杉と堀田のやり取りを見て、上杉は現状のままを選択した。

 

「姫川の意見も1つの手だが、松永では平面で後れを取ってしまう。メンバーチェンジはひとまず無しだ。神城、綾瀬、これ以上奴等に好き勝手させるな。お前達に力はこんなものではないはずだ」

 

「「はい!」」

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

「行って来い!」

 

『はい!!!』

 

タイムアウト終了のブザーが鳴り、選手達はコートへと戻ってきた。

 

「あん?」

 

花月のフォーメーションに変化がなく、変わらず堀田がマークに付いたことに、シルバーは怪訝な表情をする。

 

「どうしてもシルバーとやりたいらしいな。あのサルじゃ、シルバーには勝てねえよ」

 

嘲笑を浮かべ、ボールをキープしながら目の前の三杉に告げるナッシュ。

 

「どうかな?」

 

「あっ?」

 

「困ったもので、健は昔からエンジンのかかりが遅くてね。ある程度試合が経過しないと力を最大限発揮出来ないんだ」

 

「…ほう」

 

「しかもかなりの負けず嫌いだ。ここからが彼は見物だよ」

 

「そうかよ。なら、そのお前の希望を絶望に変えてやるよ」

 

ここでナッシュはシルバーにパスを出した。

 

『来た! 堀田とシルバーの1ON1!』

 

「よほど無駄な努力が好きらしいな。ここでトドメを刺してやるよ!」

 

堀田と背中を向けてボールを受けたシルバー。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

高速のスピンムーブで堀田の横を抜ける。

 

「これが現実なんだよ!」

 

シルバーの勝利を確信をしたナッシュが声を上げる。

 

「終わりだ!」

 

ボールを掴んで跳躍する。そこへ…。

 

「…っ!」

 

リングとシルバーの間に堀田がブロックに現れる。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

シルバーの掴むボールを堀田の手が捉えた。

 

「このまま地べたに叩きつけてやるよ!」

 

シルバーが力を込め、ボールをリングに押し込もうとする。

 

「かつて絶望の淵に叩きつけられた時、君はテクニックではなく、あくまでも無謀とも言える力で勝利をすることを望んだ。見せてくれ、健。君の出した答えを」

 

 

――グッ…グッ…。

 

 

徐々にリングからボールが離れていく。

 

「(お、押し込めねえ!)」

 

「おぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!」

 

 

――バチィィィン!!!

 

 

大きな咆哮と共にボールはシルバーの手から弾き出された。

 

『なっ!?』

 

シルバーがブロックされるとは露程も思ってなかったジャバウォックの選手達は驚愕した。

 

「三杉はん!」

 

ルーズボールを拾った天野が三杉にボールを渡し、そのままドリブルで突き進んでいく。

 

「…ちっ」

 

ナッシュが目の前に立ち塞がると、三杉は右へパス。そこへ、ブロックをしてから走り込んでいた堀田が現れ、ボールを受けた。

 

「クソがぁっ!」

 

ディフェンスに戻ったシルバーが堀田の目の前に立ち塞がる。

 

 

――ゴッ!!!

 

 

堀田はシルバーに身体をぶつけ、ゴール下へと押し込んでいく。

 

「ぐっ! ……がっ!」

 

ジリジリと少しずつ押し込まれていく。

 

「っ! あのシルバーが侵入を阻止出来ないだと?」

 

力負けをするシルバーを目の当たりにし、目を見開くナッシュ。ゴール下までシルバーを押し込むと、そのままボールを掴んで跳躍する。

 

「ふざけんじゃねえぞ、サルが!」

 

シルバーがそれに合わせてブロックに飛ぶ。

 

「ふんがぁっ!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「がっ!」

 

そのままボースハンドダンクをリングに叩きつけ、シルバーを吹き飛ばした。

 

『うおぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

それと同時に大歓声が上がる。

 

「これが敗北を糧に鍛え上げた今の俺だ」

 

「っ!」

 

リングから手を放し、コートに着地すると、座り込むシルバーに一言告げ、ディフェンスに戻っていった。

 

「く・そ・がぁぁっ…!」

 

一言告げられたシルバーは激昂しながら立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

堀田がシルバーとの対決に優位に立つと、試合はジャバウォックペースから一転、花月ペースに切り替わる。

 

「ふん!」

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

堀田のブロックが炸裂する。

 

シルバーは堀田に封じ込められ、他の選手も堀田の鉄壁のディフェンスに阻まれる。

 

オフェンスでは、空と大地の高速速攻を軸に、得点を重ねていった。そして…。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで、第2Q終了のブザーが鳴った。

 

 

第2Q、終了。

 

 

花月  40

J・W 42

 

 

点差は、堀田の奮闘があり、僅かワンゴール差。

 

試合は、後半戦へと突入する……。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





一気に試合を折り返しまで進めました。

洛山戦と比べてボリュームがかなり少なくなると思いますが、この二次の本筋はその後ですので…。

感想、アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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