投稿します!
この二次の新年1発目の投稿となります。
それではどうぞ!
インターハイの激闘が終わり、数日が経過した。
花月の選手達は静岡に帰郷し、インターハイ制覇の余韻もそこそこに、既に次の目標に向けて、猛練習を重ねていた。
ちなみに、目の前に迫る大会は三大大会の1つである、国体なのだが、静岡選抜に確実に呼ばれるであろう三杉と堀田は8月下旬にアメリカへ戻る為、辞退する予定であり、有力候補の空、大地、天野も既に辞退の意思を固めている。
花月の照準は冬の選抜、ウィンターカップに定まっており、県の選抜の選手達と試合をするより、アメリカに戻るまで残り僅かな期間、三杉と堀田に練習及び指導を受けた方が有益だと判断した結果である。
だが、今、花月の選手達の話題は、国体でもウィンターカップでもなく…。
「ジャバウォックって、どういうチームなんだ?」
休憩時間、給水を終えた空がボールをいじりながら大地に尋ねた。
「私も詳しくは存じませんが、アメリカでは有名なストリートバスケのチームで、人気、実力共にアメリカ内で随一らしいですよ」
大地がボールを起用に指で回しながら質問に答えた。
「めっちゃつよーて有名らしいな? 俺も聞いたことくらいはあるで?」
そこへ、天野がタオルで汗を拭いながら話に加わってくる。
「アメリカと言えば……三杉さん、堀田さんはこいつらのこと知ってますか?」
ここで空が、遅れてやってきた三杉と堀田に話を振った。
「……知っている」
「良く知っているよ。……良く、ね」
「?」
どこか歯切れの悪い2人を見て、疑問に思う空だったが、深くは追及はしなかった。
「東京で開催されるエキシビションマッチが午後にテレビ放送されるんやから、楽しみはそれまでとっとこうや。休憩時間はもう終いや。ぼちぼち練習再開しよか。監督がおらんからってサボったらあかんで」
「おっと、そうっスね」
天野に促され、空を始めとする花月の選手達は練習を再開した。
※ ※ ※
その日の練習を終え、各々が学校に備え付けられているシャワーで汗を流し、着替えると、学校の一室に集まった。
「さてさて、いよいよだな」
その場にいる全員が備え付けのテレビモニターに釘付けになる。そして、ついに待ちに待った試合中継が始まる。
司会進行役に促され、本日の試合の対戦カードのチームの1つ、チームstrkyがやってくる。このエキシビションマッチ前に開催された大会に参加し、並み居る猛者を擁するチームを薙倒し、ジャバウォックへの挑戦権を獲得した。
「チームstrky。昨年時、キセキの世代を擁する高校の主将、主力だった選手達が集まったチーム。現在、在籍している大学でも1年生ながらスタメン、あるいはベンチ入りを果たした実力者達よ」
姫川がコートにやってきた5人の解説をする。
「知ってるぜ。去年のキセキの世代の試合の資料映像で見た。かなりいい動きしてたよな。…けど、あの5番だけは知らねぇな」
空が、チームstrkyの5番を指差す。
「樋口正太。洛山のマネージャーやっとった選手やけど、かなり出来るで」
「知ってるんですか?」
「直接やりおーたことはあらへんけど、1度だけ見たことがある。身長こそ恵まれへんかったみたいやけど、実力は相当やった。3年に進級する直前に怪我して最後の年は試合に出られへんようになって、それで去年はマネージャーやっとったらしいで」
「なるほど」
天野の説明に空は納得し、再びテレビ画面に注目した。
そして、司会進行にアナウンスによって、チームstrkyと反対側のコートに目当てのチームがやってくる。
「来た…! ジャバウォック!」
チームジャバウォック。アメリカ最強のストリートバスケチームがコートにやってきた。
「っ! …やっぱ、アメリカ人だけあってでかいな」
「うん。テレビ越しに威圧感が伝わってくるよ」
テレビ画面に注目していた松永と生嶋がコートに出てきたジャバウォックの5人の迫力に思わず冷や汗を流す。
「特に、あの4番と8番が特に…。他の3人も規格外ですが、彼らはその中でも別格です」
大地は、その中の2人に注目した。
「ナッシュ・ゴールド・Jr、ジェイソン・シルバー。あの2人は良く見ておけ」
堀田が2人を指しながら言った。
「ああ。あの2人は現時点でのキセキの世代を上回る実力者だ」
『っ!?』
「っ!? マジすか」
キセキの世代の実力を身をもって知っているだけに、空も、他の花月の選手達も驚きを隠せなかった。
整列が終了し、互いに礼をすると、待ちに待った試合が始まる。
――ティップオフ…。
ジャンプボールを制したのは、身長2メートルを誇る岡村の遥か上をシルバーが叩き、ジャバウォックボールからスタートした。
ボールは4番、ナッシュに渡る。マークするのは7番笠松。笠松がディフェンスに入ると、ナッシュはリズミカルにかつスピーディーにドリブルを始める。
『…っ! …っ!』
その、あまりに速く、変則的なドリブルに、笠松は翻弄される。ひとしきりドリブルをすると突如、ナッシュが両腕を広げた。
「……? ボールは何処に行った?」
テレビの試合に注目していた馬場だったが、ボールの所在を見失う。カメラマンも同じく見失ったらしく、別カメラに映像が切り替わったり、引きの画面になっている。
「っ! ボールはナッシュの背中だ!」
見えていた空が指を指しながら立ち上がった。ナッシュが肘を背中に突き動かすと、そこからボールが飛び出し、ボールは7番のもとに。
――ザシュッ!!!
そのまま7番がシュートを決め、先取点を決めた。
「高速かつ変則のドリブルからのエルボーパスかよ…。スゲーな」
一連のプレーに、空は素直に驚愕する。
試合はそのまま、ジャバウォックペースで進行していく。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
『…』
試合は終盤、点差は既に、勝敗が覆りようが無い程のまでに広がっている。ジャバウォックは、当初の期待通り、ハイレベルのテクニックを披露している。だが…。
「……何か、胸糞悪いな」
静まり返った室内で、空が沈黙を破るように言った。
ジャバウォックは、相手をおちょくったり、挑発するかのようなテクニックを披露している。ストリートバスケにおいて、それらは高度なテクニックであるのだが、ジャバウォックは、それしかやっていない。それ故、そのプレーが相手を見下しているように映り、憤りを隠せない。
試合を生で観戦している観客もそれを感じとっており、当初は沸いていた観客も、試合終盤の今では静まり返っている。
『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』
試合はそのまま、ジャバウォックの圧勝で終わった。
『……っ』
あまりに一方的、圧倒的な点差では終わってしまった為、チームstrkyの選手達は何も言葉を発せずにいた。
チームstrkyの7番、笠松が悔しさを押し殺しながら相手のリーダーであるナッシュに握手を求めた。それと同時に局アナの1人がマイクを持ってインタビューを求めた。
『今日の試合で確信したよ。この国でバスケごっこしている奴ら全員、今すぐやめるか死んでくれ』
ナッシュの口から飛び出したのは、日本でバスケを行う全ての者に対しての侮辱だった。
続いてナッシュは、自分達の今の心境を相撲と猿に例え、日本人はその猿であると言い放つ。
『バスケは俺達人間(アメリカ人)が行う崇高なスポーツだ。お前達サル(日本人)に、バスケをする資格なんてねぇんだよ』
そう締めくくり、握手を求めた笠松の手に唾を吐きかけたのだった。
会場の空気は最早最悪であった。大半が憤りを隠せなかった。それは、この中継を見ている者達も同様であった。
「あのクズ野郎共! ふざけたこと言いやがって!」
ダン! と、机を強く叩き、憤りを露わにした。他の花月の者達も、一様に険しい表情をしていた。
「ハハハッ、彼は本当に変わらないな」
そんな中で、三杉だけが、笑い声を上げていた。
「三杉さん! 笑い事じゃないですよ! あいつら、俺達のこと舐めくさって――っ!?」
笑う三杉に怒りをぶつけながら振り返る空だったが、その瞬間、心臓を握りしめられたかのような感覚に陥り、最後まで言葉を続ける事が出来なかった。
「本当に変わらない。あの時と全く…」
当の三杉の表情は全く笑っておらず、それどころかその眼は今でかつて見たことがない程鋭くなっていたからだ。
「…三杉さんは、彼らのこと知ってるんですか?」
そんな三杉の圧倒されながらも、大地が尋ねた。
「……良く知っている。ナッシュ・ゴールド・Jr、ジェイソン・シルバーは、アメリカに渡った俺達に挫折と絶望……そして、屈辱を植え付けた奴らだ」
三杉の変わって説明をする堀田だったが、その表情は鬼のように険しくなっており、過去の悔しからか、きつく食い縛った際の歯ぎしりまで伝わってきた。
「……三杉さんと堀田さんは、あの2人と何かあったんですか?」
恐る恐る空が尋ねた。
「ああ。…あの出来事は今でも夢に出るくらいだからな」
そう前置きすると、三杉は話し始めた……。
※ ※ ※
場所は変わって、東京のストリートバスケの会場…。
会場は、ナッシュの発言により、怒りに震える者、気分を害した者など、異様な空気に包まれていた。
『……っ!』
その中でも、試合では圧倒的な点差を付けられた上に、挑発紛いのテクニックの的にされたチームstrkyの5人はひと際悔しがっていた。
「……あの悪ガキ共…!」
チームstrkyの5人と同じくらい怒りを露わにしている者がいた。それは、今回、ジャバウォックのガイドを担当していた、相田景虎である。
ここまでにも、ジャバウォックは騒動を起こしたり等、怒りを抱えていたが、ここに来てのナッシュの発言でそれが爆発した。
コートを後にしようとしているジャバウォックの選手達を引き留めるべく、コートに足を向かわせる。だが…。
「………何の真似だ?」
そんな景虎の肩に手を置き、止める者が現れた。
「放せ。ここまでコケにされて黙って引き下がれとか言うんじゃねぇだろうな。……ゴウ」
景虎を引き留めたのは、上杉であった。
「そんなことは言わん」
「だったら――」
「お前、まさか忘れた訳じゃないだろうな?」
「忘れるだぁ? いったい、何の――っ!」
上杉の言葉に、景虎はあることを思い出した……。
※ ※ ※
「あれは、4年近く前、俺と健がアメリカに渡って2年が経った頃の事だ」
三杉が背もたれに体重を預け、話し始めた。
「アメリカ渡った当初、俺達のバスケはすぐには通用しなかった。身体能力面でも、テクニック面でも、やはり、アメリカ人との差は大きかった」
『…』
「それでも、俺達はがむしゃらに練習をし、力を付けていった。2年が経った頃になってようやく通用し始めた。当初は勝てなかった相手にも勝てるようになり、その結果、チームメイトにも認められ、確かな手応えを感じていた。そんな時、あいつらは現れた」
――おいおい、ここはいつから動物園になったんだ?
「ナッシュとシルバー。彼らは、俺達に蔑んだ目を向けながらそこに現れた。その時、一目見て、この2人は他のアメリカ人とは別格だと理解した。だから俺達は、侮辱とも取れる言葉を俺達に吐き掛ける2人に勝負を挑んだ」
――サルが…、2度とそんな生意気な口叩けねぇようにしてやるよ。
「結果は惨敗。俺達のバスケは、彼らの足元にも及ばなかった。俺のテクニックも、健のパワーも、あの2人の前では全くの無力だった。今日の彼ら(チームstrky)と同じく、屈辱的な負け方をした」
――ここまで力の差を見せつけりゃ、サルのお前らでも十分理解出来ただろ? バスケは人間(アメリカ人)がする崇高なスポーツだ。サルはとっとと動物園に帰ってバナナでも咥えてるんだな。
「悔しかった。彼らの言葉を否定することは愚か、一矢も報いることも出来なかったことに…」
『…』
三杉と堀田は当時の無念を思い出し、悔しそうな表情をする。その悔しさは、他の花月の選手の者達にも伝わった。
「それがきっかけとなって、俺達は今まで以上に努力をするようになった。アメリカ人からはクレイジーだと言われるほどにね」
最後は皮肉気に笑いながら言った。
「……信じられないですよ。あのクソ野郎共が、三杉さん達より強いなんて…」
三杉を尊敬し、慕う空は、三杉からの話を聞いても信じることが出来なかった。それは空だけでもなく、他の花月の選手達も同様だった。
「何を暗くなっているんだ? 手も足も出なかったのは事実だ。…だが、それはその当時の話だ」
語られた事実により、下を向いていた者達が、堀田の言葉を聞いて顔を上げる。
「今の俺達はあの時とは違う。俺達は、いつか来るであろう『この時』の為に、力を付けた――」
※ ※ ※
場所は変わって、東京のストリートバスケの会場…。
景虎はあることを思い出した。
ジャバウォックが日本に滞在中、親善試合は2試合組まれている。1試合は、チームstrkyとの試合。もう1試合は、今年度の総体王者校との試合である。それはつまり…。
「あのガキ共を叩き潰すのは、俺の教え子達の役目だ」
上杉は、ジャバウォックの選手達を睨みつけながら言った。
「…っ、だが、あの三杉と堀田をいるとはいえ、かなり厳しい戦いになるぞ。勝率は万に一つ……ほとんど0に近い勝率だ」
「かもしれないな」
「それでもやるって言うのか?」
「当然だ」
景虎が懸念をするも、上杉は迷いなく言い切った。
「……分かった。そこまで言うならお前達に任せる。だがな、もし、お前達が負けたなら――」
「その時は好きにしろ」
「……可能な限り、俺もバックアップをする。必要なら、あいつらにも協力を要請する。何かあれば、俺に言え」
「恩に着る」
景虎に礼を言い、上杉は会場を後にしていった……。
※ ※ ※
「日本に帰ってきて良かった。キセキの世代という、新たな可能性と戦えることが出来ただけではなく、かつての雪辱を晴らす機会を与えてくれたのだからね」
「試合は1週間後。相手は見ての通りの強敵だ。インターハイ決勝の洛山とは比較にはならない程にだ。全員、覚悟は出来ているな?」
堀田が、戦う意思があるか否か、問いかけ、見渡すと、そこには、覚悟を決めた花月の選手達の表情があった。
「問われるまでもないですよ。あのクソ共は絶対ぶっ潰す」
「同感です。あのような礼儀もスポーツマンシップもない行いと言動は許せません」
「僕も…、自分にこんな感情があったことにびっくりしたよ。彼らは許せない」
「奴らをこのまま好き放題言わせたままアメリカに帰らせる訳にはいかない」
「せやな。あれはあかんわ。あないなバスケは大阪でも笑えんわ」
次々に、ジャバウォック達と戦う意欲と共に、怒りが露わになっていった。
「フフッ、聞くまでもなかったな。よし、これから試合に向けて、最後の調整に入る。当然、練習はこれまで以上に厳しくする。全員、付いて来いよ」
『はい(おう)!!!』
三杉の号令に、その場にいた全員が気合の入った声で応えたのだった……。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
花月の選手達は一斉に部屋を飛び出し、体育館に向かった。
試合までは残り1週間。勝率を少しでも上げる為、少しでも自身を成長させる為、自らに厳しい修練を課していく。
――キュッキュッ!!!
体育館内にスキール音が鳴り響く。
ボールを受け取った空が瞬間的に周囲を見渡し、そのままドライブで切り込んでいく。
「それでは判断が遅い! ボールを持ってから次の行動を考えるな。ボールを受け取る前に最低3パターンは考えておけ。ボールを受け取ると同時に最善のパターン選べるようにしろ」
「う、うす!」
「綾瀬、お前はまだドリブルの際に手元を意識し過ぎている。それではインターハイでは通用してもジャバウォックの連中には通用しないぞ」
「は、はい!」
体育館では三杉の指導の声が響いている。
今までにない厳しい指導の声。花月の選手達はその指導に必死に応えていた。
時刻が夜19時を越えた頃、体育館に東京でのジャバウォックの視察を終えた上杉が現れた。
「全員手を止めろ! 集まれ!」
体育館に入ると、上杉は選手達を集めた。
「監督。今日は東京で1泊されるのではなかったんですか?」
選手達が集まると、馬場が尋ねた。
「そんな悠長なことをしている場合じゃなくなったからな。とりあえず、今日はもう時間が時間だ。クールダウンして上がれ」
上杉は、選手達にクールダウンを指示した。
「帰ったらすぐにインターハイの時のように荷造りをしろ。それを持って明日、駅前に5時集合だ。遅れるな」
「荷造り? いったい、何処に行くんですか?」
疑問に思った空が尋ねる。
「東京に行く。予定では当日に行く予定だったが、理事長が当日、移動の疲労が残らないよう試合当日までホテルを手配してくれた」
「マジすか。理事長太っ腹ッスね」
理事長の配慮に空は苦笑いをした。
「東京に付いたらそこから秀徳高校で合同練習を行う。試合まで1週間しかないからな。今まで通りの環境で練習するより、違った環境、競い合う相手がいた方が捗るだろうからな」
「秀徳高校…」
東京のかつての三大王者の一角であり、キセキの世代の緑間が所属する東京屈指の強豪校である。
「秀徳は設備が整っているし、そこの監督とは旧知の仲で、突然の要請にも二つ返事で了承してくれた。当日、バックアップ要因を何人か呼ぶが…それは向こうで話す」
突然の上杉による決定に、戸惑う者もいたが、選手達は了承した。
「連絡事項は以上だ。全員クールダウンの後、急いで片付けを済ませて帰宅しろ。以上解散!」
上杉の号令と同時に選手達は散らばり、クールダウンをして後、片付けをしてから各々帰路に向かった。
そして翌日…。
早朝5時に集まった花月の選手達は、東京行きの新幹線に乗り、試合に向けての最後の調整場所である秀徳高校に向かったのだった……。
続く
と、この二次ではこのような形に致しました。
もしかしたら、疑問に思う方がもしかしたらいるかもしれないので、説明されていただくと、この話内で、三杉と堀田が惨敗した描写がありましたが、これは、2人が覚醒する前の話なので、ナッシュ達の実力は原作据え置きです。
ところで、黒子のバスケの映画が3月に放映されますね。ファンとしては待ち遠しい限りです。
感想、アドバイスお待ちしております。
それではまた!