黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

忙しく、投稿予定が1週間遅れたしまいました…(^-^;)

それではどうぞ!



第55Q~大地VS葉山~

 

 

 

第4Q、残り9分57秒。

 

 

花月 58

洛山 72

 

 

試合は最終Q、洛山ボール。現在、赤司がボールをキープしている。

 

「…」

 

赤司の前に立つのは三杉。第4Qから空に代わって赤司のディフェンスをしている。

 

「……1つ聞く。君は誰だ?」

 

おもむろに、三杉が赤司に尋ねた。

 

「君は試合開始直後と今とではまるで別人だ。言動も、バスケスタイルも…」

 

「妙なことを聞くね。僕は赤司征十郎に決まっているだろう」

 

その質問に、赤司は淡々と答えた。

 

「……なるほど」

 

三杉は何かを理解したのか、1人で納得したかのように頷いた。

 

 

「赤司はどう動く?」

 

赤司の目の前に立ちはだかるのは三杉。仕掛けるか否か。赤司の動きに火神は注目する。

 

 

「…」

 

目の前の三杉を注視する赤司。赤司の選択は…。

 

 

――ピッ!

 

 

右サイドにパスを出した。

 

 

「赤司は仕掛けなかったか…」

 

「赤司は自分から仕掛けるタイプじゃない。仮に三杉を抜けても、インサイドの密集地帯で囲まれるだけだった。当然の選択だ」

 

日向の言葉に、伊月が状況の説明を捕捉して解説する。

 

 

赤司から放られたボールの行き先は…。

 

「おっ、きたきた!」

 

葉山の下にボールが渡る。

 

「そんじゃ、早速行っちゃおうか」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

葉山がドリブルを始める。同時に、耳をつんざく程の轟音がコート上に駆け巡る。

 

「っ!」

 

それと同時に、大地は腰を落とし、全神経を集中させ、葉山のドリブルに備える。

 

「さっきの言葉に免じて、見せてやるよ。ライトニングドリブル、レベル5!」

 

葉山のボールを突く指に親指が加わる。

 

「(…来る!)」

 

親指が加わった事で葉山の気迫が変わる。5本の指の力がボールに伝わる。

 

 

――ダムッ!!!!!!

 

 

指の力がボールに行き渡ると、そのまま一気にドライブ、大地の左側から仕掛ける。圧倒的なスピードを誇る葉山のライトニングドリブル、レベル5。だが、それでも大地はそのドリブルに食らい付く。

 

『うおっ! あのドリブルに付いていってる!』

 

そこから葉山がクロスオーバーで切り返す。

 

「っ!」

 

これにも大地は反応し、葉山の進路を塞いだ。

 

「やるね! けど、ここからがこれ(ライトニングドリブル)の真骨頂ぉっ!」

 

道を塞がれるのと同時に葉山が今度は背中、後ろからボールを切り返した。

 

 

「出た! 葉山の新たな武器、ライトニングドリブルのバックチェンジ!」

 

実際に目の前で体験した伊月が思わず立ち上がる。

 

 

「っ!?」

 

その瞬間、大地の視界からボールが消える。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

『抜いたぁぁぁぁぁっ!』

 

大地を抜った葉山はゴールへと切り込み、レイアップの態勢に入る。

 

「ちっ」

 

堀田がヘルプに行き、ブロックに向かう。

 

「おっと」

 

堀田が飛んだのと同時にレイアップを中断し、ボールを落とすように放り投げる。

 

「ナイスパース!」

 

そのボールを根武谷が受け取る。そして…。

 

 

――バキャァァァァッ!!!

 

 

そのままボースハンドダンクでリングに叩きつけた。

 

「良いパスだったぜ!」

 

「痛! 加減しろよ馬鹿力!」

 

根武谷が労いの言葉と共に葉山の背中を叩き、葉山がそれに激怒した。

 

「…」

 

それを見つめる大地。

 

「おい、随分と簡単に抜かれたな。今の、もう少し粘れたんじゃないのか?」

 

一連のプレーを見た空が不満気味に大地に歩み寄る。

 

「えぇ。ですが、それでも今のは止められなかったと思います」

 

「おいおい、随分と弱気だな」

 

「今のはあえて『見』に回りました。大丈夫です。今のでスピードにも慣れましたしリズムも掴みました。…次は止めます」

 

そう空に告げ、大地は走っていった。

 

「空坊、相方は大丈夫なんか?」

 

心配になった天野が空に尋ねる。

 

「大丈夫です。あいつは止めるって言いました。あいつは出来ない事は言いません。ああ言い切ったことは、次からは大丈夫です」

 

ニヤリと空は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「よし、1本返すぞ!」

 

空に代わってPGになった三杉がゲームメイクを始める。すると…。

 

『洛山がゾーンディフェンスを解いた!』

 

洛山のディフェンスがゾーンからマンツーに切り替わる。

 

 

「どうしてだ? ゾーンディフェンスは効果的だった。そのまま押し通せば…」

 

日向が洛山の選択に疑問の声を上げる。

 

「多分ッスけど、トドメを刺しに来たんだと思います」

 

日向の疑問に、火神が答える。

 

「1対1で確実に潰すことで花月を息の根を確実に止めに来たんじゃないでしょうか」

 

「確かに、ここで1ON1を制すれば、残り時間を考えても、花月に逆転は不可能だな」

 

「それが理由の1つよ。1番の理由は、スタミナよ」

 

リコが捕捉説明を始める。

 

「ゾーンディフェンスは機能すれば確かに効果的だけれど、スタミナの消耗が激しいディフェンスでもあるわ。スピード、テクニック、運動量の多い花月相手では最後までもたない。だから、マンツーに切り替えてきたのよ」

 

「…そういうことか」

 

リコの説明に日向は納得し、コートへと視線を戻したのだった。

 

 

ボールを進める三杉の前に立ち塞がるのは赤司。

 

「下さい!」

 

そこへ、大地がボールを要求する。

 

「(綾瀬がここまで主張するのは珍しいな。…良いだろう、やってみろ)」

 

三杉はボール要求する大地にパスを出した。

 

『早速やり返す気か!?』

 

大地がボールを受け取り、腰を落とす。

 

「来いよ」

 

葉山は腰を落とし、大地のドリブルに備える。

 

「…野生か」

 

三杉がボソリと呟く。葉山は、集中を最大にし、読みではなく、直感で大地を止めようと立ち塞がっている。

 

「…」

 

大地は、その迫力を肌で感じるも、表情は一点の曇りもない。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

そして、自身最速のドライブで葉山に仕掛ける。

 

『こっちも速ぇーっ!』

 

大地が葉山の左手側から抜けようとする。

 

「甘いね!」

 

だが、葉山の野生がこれに反応し、大地のドリブルに遅れずに付いていく。そこから、大地はバックロールターンで逆を突く。

 

「残念!」

 

葉山、これにも反応し、大地の道を塞ぐ。

 

『ダメだ! 綾瀬では五将には敵わない!』

 

「…」

 

大地は想定したのか、特に表情に曇りはない。そこから大地はフルバックステップで後方へ急バックする。

 

「下がるんだろ。そんなの分かって――なっ!?」

 

フルバックステップを読んでいた葉山だったが、そのバックスピードが想定以上に速かった為に驚愕する。

 

「(疲労が溜まる終盤だってのに、スピードが上がった!?)…いいや、まだだね!」

 

下がる大地を、葉山が必死に追いかけるべく、前進して距離を詰める。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

それと同時に大地は再び全速で前進する。

 

「くっ…そ…!」

 

歯を食い縛り、自身の横を抜けようとする大地のボールに手を伸ばし、カットしようと試みる。葉山の手がボールに触れようとした瞬間…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

切り返し、これをかわした。

 

『綾瀬が抜き返したぁぁぁぁぁっ!』

 

葉山を見事かわし、大地がグングン進軍し、そのまま右手でボールを掴み、ワンハンドダンクの態勢に入る。

 

「させるかぁぁぁぁぁっ!」

 

そこへ、根武谷がブロックに現れた。

 

「…っ」

 

大地はダンクを中断。右手のボールを左手で抑え、ボールを下げた。

 

「なに!?」

 

ボールを下げると、空中で根武谷をかわし、そこからリングにボールを放り投げた。

 

 

――バス!!!

 

 

ボールはリングを潜り抜けた。

 

『決めたぁぁぁぁぁっ!』

 

「ナイス!」

 

空が大地に駆け寄り、ハイタッチをした。

 

「あの野郎、小太郎並みの身軽さ……下手したらそれ以上…!」

 

目の前でかわされ、ダブルクラッチを決められた根武谷は驚愕する。

 

「くそっ!」

 

その前に抜かれた葉山も悔しさを露わにする。

 

そして、オフェンスが切り替わる。

 

 

ボールを運ぶ赤司。

 

「赤司、くれ!」

 

葉山が強くボールを要求する。

 

「…」

 

一瞬考え、赤司は葉山にボールを託した。

 

葉山にボールが渡り、当然、目の前に立ち塞がるのは大地。

 

「(調子に乗りやがって! けどな、俺の進化したライトニングドリブルは誰にも止められない。たとえ、キセキの世代でもな!)」

 

ボールに5本の指が添えられ、指の力がボールに伝わる。

 

「(葉山さんのドリブルスピードは速い。ボールの動きを目で追うことは難しい。ですが…)」

 

大地が腰を落とし、左足を僅かに下げる。

 

「(葉山さん自身のスピードはそこまで脅威ではありません。三杉さんや青峰さんに比べれば劣ります。そして、空に――)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

葉山のライトニングドリブル、レベル5で仕掛けられる。葉山が大地の横を抜ける。

 

「(空は、これよりはるかに速い!)」

 

大地は振り返ることなくバックステップで葉山を猛追する。

 

「なにっ!?」

 

完全に抜いたと思っていた葉山は驚愕する。後ろ向きのまま大地に追いつかれたからだ。大地は、そのまま葉山の進路を塞ぎにかかる。

 

「くっ! けど、ここからだ! 進化した俺のドリブルはお前じゃ止められない!」

 

そこから葉山がバックチェンジで切り返す。これにより、大地の視界からボールが消える。

 

「(ボールが見えなくなっただけで、消えてなくなったわけではありません)」

 

ボールを見失うも、大地の心中には焦りはない。

 

「(葉山さんのドリブルを何度も体験して、リズムとタイミングは掴みました。指の本数が増えても、スピードが上がりますが、これは変わりません。ボールは……ここです!)」

 

経験からボールの行方を推察し、切り返した葉山を追いかけ、手を伸ばして再度進路を塞いだ。

 

「うそっ!?」

 

進化したライトニングドリブルで抜くことが出来ず、葉山に初めて動揺が走る。

 

「なんの!」

 

気持ちを瞬時に切り替え、再び切り返す為、指に力を込める。

 

「(このドリブルの欠点は、その勢いの為、急な方向転換が出来ない。故に、方向転換する時、動きが一瞬だけ止まります)」

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「なら私は、その一瞬を狙い撃つだけです!」

 

大地の手が葉山のボールを捉え、弾き飛ばした。

 

「なっ!?」

 

弾かれたボールを大地がすかさず抑えた。

 

 

「葉山を止めた…!」

 

2人の対決を観戦していた伊月が思わず声を上げる。

 

 

「大地ー!」

 

既に速攻に走っていた空がボールを要求する。

 

「空!」

 

大地が前線へ大きくボールを投げる。

 

「っしゃあ!」

 

スリーポイントラインの外側でボールを貰った空がそのままワンマン速攻でリングへと向かい、そのままレイアップの態勢に入る。

 

 

――スッ…。

 

 

空はボールをリング……にではなく、真上に放った。その時…。

 

「ちっ」

 

空の近くから舌打ちが聞こえてくる。それと同時に、空の後方から1本の手が現れる。葉山が止められると洛山の中で唯一読んだ赤司が空を追いかけていた。

 

「あいにく、視野の広さには自信があるんでね」

 

ボールがリング付近に放られると、そこへ1人の影が飛び込む。

 

『あ、綾瀬だぁっ!』

 

放られたボールを大地が右手で抑えた。

 

「あいつ! さっきまで自陣にいたのに、なんてスピードだ」

 

その、あまりの速さに、四条が茫然とする。大地は空中でボールを掴み…。

 

 

――バキャァァァァ!!!

 

 

そのままリングに叩きつけた。

 

『アリウーーーープ!』

 

観客から歓声が上がる。

 

「ナイス!」

 

「最高のパスでしたよ」

 

パン! と、ハイタッチを交わす空と大地。

 

「…っ!」

 

自分の1番の武器を止められた葉山は怒りに震えていた。

 

洛山がリスタートをし、フロントコートまで赤司がボールを進める。

 

「赤司!」

 

葉山が赤司を睨み付けるように目でボールを要求する。

 

「…」

 

赤司は暫し考える。現状、葉山以外はパスコースを塞がれている。赤司の選択肢は、自ら切り込むか、葉山に託すか。

 

「よし!」

 

考えた結果、赤司は葉山にボールを託した。目の前の三杉をかわせても、囲まれるの明白だったからだ。赤司は得点の可能性が僅かに高い葉山にパスを出した。

 

「…絶対に止めます」

 

大地が葉山のドリブルに備える。

 

「(ふざけんな…、俺のドリブルが止められる訳がねぇ! ましてや、キセキの世代でもなんでもない1年坊なんかに…!)」

 

再び、ライトニングドリブルレベル5で大地に仕掛ける。クロスオーバー、バックステップの高速の切り返しで翻弄するも、大地はバックステップとスピードで抜かせない。強引に切り替えそうとした瞬間を再び狙い撃たれる。

 

「こんの…!」

 

ボールに迫ってくる大地の手を、さらに力を込め、強引にボールを掴むことでかわす。

 

「よし、これで!」

 

大地の手をかわした葉山はシュート態勢に入る。葉山の手からボールが放たれる。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

「これ以上、あなたに得点はさせませんよ」

 

そのミドルシュートは、大地のブロックに阻まれた。

 

「ホンマ、見せつけてくれるで!」

 

ルーズボールを天野が拾った。

 

「速攻!」

 

天野からボールを受け取った三杉が速攻に走る。

 

『ターンオーバーだ!』

 

グングン加速し、洛山のリングに進軍する三杉。

 

「っ! 行かせないわ」

 

そこへ、実渕が立ち塞がる。

 

「道を空けてもらうよ」

 

三杉はスピードを一切落とさず、実渕の至近距離でフェイクを入れる。フェイクに釣られた実渕は道を空けるように正面を空けてしまう。

 

「ちっ! 撃たせるかよ!」

 

根武谷がハイポスト付近で三杉に追いつき、ディフェンスに付く。

 

「…(チラッ)」

 

「うおっ!」

 

三杉が目線でシュートフェイクを入れる。これに釣られて根武谷がブロックに飛んでしまう。ブロックに飛んだ根武谷の横を三杉が悠々と抜けていく。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「っ!」

 

その瞬間、根武谷の影から1本の腕が飛び出し、三杉がキープするボールを弾いた。

 

『あ、赤司!?』

 

ボールを弾いたのは、赤司だった。抜かれることを想定し、その後ろで根武谷にエンペラーアイを使い、三杉が飛び出してくる方向とタイミングを計り、狙い撃った。

 

 

「あいつ! 去年、黒子がやったのと同じ事を…!」

 

「…っ!」

 

思わず、火神は立ち上がり、黒子は目を見開いた。

 

赤司が今、行ったことは、昨年、火神と黒子が赤司を止める為に行ったのと同じ戦法である。エンペラーアイを持つ赤司ならば再現することは容易。

 

 

「ちっ!」

 

 

――バチィン!!!

 

 

三杉は軽く舌打ちをすると、瞬時に右腕を後ろに伸ばし、身体を回転。その反動でボールを叩き、パスに切り替える。

 

『うおっ! 弾かれたボールをパスに変えやがった!』

 

ボールは、右アウトサイドに陣取っていた大地に渡った。

 

「来い! もう絶対抜かさねぇ!」

 

大地の前に、葉山が立ち塞がる。葉山は、大地に抜かれないように距離を取ってディフェンスに立っている。

 

「…」

 

「…」

 

睨み合う両者。

 

「良いのか? そんなに距離を取って…」

 

空がボソリと呟く。それと同時に大地がシュート態勢に入る。

 

「えっ!?」

 

不意を突かれた葉山は思わず声を上げたが、すぐさまブロックに向かう。だが、距離を取ったことが仇となり、ボールに触れることは出来なかった。

 

「っ!」

 

振り返る葉山。ボールはリングへと向かい…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

綺麗にリングを潜った。

 

『おぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!!!!』

 

ボールが潜るのと同時に大歓声が上がる。

 

「よし!」

 

スリーが決まり、拳を握り、小さく喜びを露わにする大地。

 

『これで点差が一桁! 花月が猛追してきた!』

 

「…」

 

葉山は、茫然とリングを見つめていた。

 

 

「今ので綾瀬に軍配が上がった。これで葉山は、外も警戒しなければならなくなる。迷いが生じては、葉山に綾瀬は止められないのだよ」

 

今の2人の勝負で確信を得た緑間は、静かに語った。

 

 

洛山のオフェンス。洛山はパスを回し、チャンスを窺う。パスが飛び交い、そして、葉山にボールが渡った。

 

「…」

 

「…」

 

再び、大地と葉山が睨み合う。葉山は小刻みにボールを動かし、隙を窺う。

 

「(俺がこんな奴に負ける訳がねぇ! 俺が、こんな奴に…!)」

 

「…」

 

大地は葉山のドリブルに備え、ディフェンスに臨んでいる。

 

「っ!」

 

葉山は、ボールを赤司に戻した。そしてそれは、事実上の葉山の敗北宣言でもあった。

 

「…」

 

ボールを受け取った赤司は、特に動じることなく、ボールをキープする。

 

 

「あの葉山が引くなんて…」

 

マッチアップ経験のある伊月は、驚きを隠せなかった。

 

無冠の五将の1人に数えられ、『雷獣』と称される葉山。その実力は、全国屈指であり、当然、プライドも高い。

 

そんな葉山が、勝負を避けた。

 

 

「…」

 

赤司はそんな葉山には一瞥も与えず、目の前の三杉と対峙する。赤司は自ら仕掛けることはせず、パスを出す。

 

「まさか、小太郎がここまでやられるなんてね」

 

ボールを受け取った実渕が驚きの言葉を口にする。

 

「へへっ、どうよ、俺の相棒は」

 

目の前で対峙する空がドヤ顔で言葉を返す。

 

「…ええ、認めてあげるわ。さすが、全中を制しただけのことはあるわね」

 

ここで、実渕は空に視線を合わせる。

 

「けどここまでよ。あなた達と私達とでは背負っているものが違う。洛山のユニフォームを着る者に、これ以上の敗北は許されないのよ」

 

「ハッ! 随分と余計なものを背負ってるんだな。もっと楽しくバスケすりゃ良いのに。そんなんだから、去年負けたんじゃないの?」

 

「……伝統も実績もない高校にいるあなたには到底理解出来ないでしょうね」

 

小馬鹿にしたような空の物言いに、実渕は軽く苛立つ。

 

「伝統だの実績だの、試合が始まっちゃえばそんなもんは何の意味も持たない。楽しくバスケをして、それで強い奴に挑んでそれで勝つ。それが俺のバスケだ。そこにくだらないしがらみなんて無い」

 

今まで笑みを浮かべていた空だが、真剣な表情に変えて実渕に言った。

 

「あなたのバスケに対するポリシーに興味なんてないわ。さっきも言ったけど、私達にこれ以上の敗北は許されないの」

 

ここで実渕はトリプルスレッドの態勢に入る。

 

「小太郎にようにいくとは思わないことね。あなたでは私は止められない。ここで突き放してトドメを刺してあげるわ」

 

「へっ! 負けたくないのはこっちも同じなんだよ。さっきも言ったが、ここで五将の首を取る」

 

「返り討ちにしてあげるわ」

 

空と、夜叉、実渕玲央の一騎打ちが、始まる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





本当は空と実渕の対決まで書きたかったのですが、それだと容量がえらいことになるので、今回は大地と葉山の対決のみです。

年末に差し掛かり、忙しくなってきた為、執筆時間が減少する為、投稿ペースが落ちるかもしれません。何とか今年度中にインターハイを終わらせたいです…(^-^;)

感想、アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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