黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

だいぶ間が空いてしまいました(^-^;)

それではどうぞ!


第45Q~才能~

 

 

 

第1Q終了

 

花月 16

桐皇 22

 

 

桐皇リードで第1Qを終える。

 

花月ベンチ…。

 

ベンチに腰掛けるスタメンの5人。

 

「…っ!」

 

「くそっ…!」

 

その中でも、大地と松永はひと際悔しさを露わにしている。

 

第1Qでの失点は22点。その内訳は、青峰が14点、若松が6点、福山が2点。つまり、綾瀬、松永からの失点がほとんどである。

 

「…見るのと実際に相手するのとでは、これほど勝手が違うとは…。動きが読めない変則的なプレースタイルに加え、あのスピード。対応出来ません…!」

 

「ちっ! …どうしても、フィジカルに差が出て、押し合いで勝てない…!」

 

型にはまらない、変幻自在のバスケ。大地はその、独特のリズム、圧倒的なスピードの青峰に、大地は付いていけない。

 

松永も、未だ、フィジカルは発展途上の為、ほぼ完成しきっている若松とフィジカルの差から出るパワーの差により、ポジション争いや押し合いに勝てず、ゴール下を完全に支配されている。

 

エースを止められず、ゴール下は制圧されている為、花月は苦しい戦いを強いられていた。

 

「どうもやりにくいディフェンスをしてくるよな。まるで、こっちの動きが読まれているみたいだ」

 

桐皇のディフェンスは、陽泉のような鉄壁ではない為、点は取れている。だが、動きが読まれているのか、どうにも後手後手に回ってしまっている。

 

「文字通り、読まれているのだろう」

 

汗をタオルで拭いながら三杉が言葉を挟む。

 

「桐皇の反応が速すぎる。相手の手を見てからではあそこまでの対応は出来ない。よく、研究しているのだろう。大方、とても優秀なブレーンでもいるのだろうな」

 

汗を拭い終えた三杉は、タオルを首に掛け、傍に置いていたドリンクを手に取り、喉を潤していく。

 

「ま、こういう展開になることは分かっていたことだ。試合はまだ、4分の1を終えたばかりだ。慌てることもないさ」

 

あっけらかんと普段と変わらない調子で告げる三杉。

 

『…』

 

いつもであれば、三杉の一言で不安を取り除けるのだが、今回ばかりは不安が拭えなかった。

 

大地は青峰を止めきれない上、インサイドも若松に制圧されている。

 

何より、三杉が、青峰相手に攻めあぐねていることが、花月選手達にとって、1番の不安要素であった。

 

花月のオフェンス時、三杉をマークするのは青峰。最初の激突後も、2人が対決する場面はいくつかあったのだが、いずれも、青峰を振り切れず、パスを捌いているのが現状だ。

 

三杉のプレーはいつもと変わりはない。つまり、青峰のスピードと野生が、三杉を上回っていることを意味している。

 

「三杉、第2Qはどうする気だ? 続けて青峰は綾瀬にマークさせるのか?」

 

堀田が、暗くなった空気を変えるかのように言葉を挟む。

 

「もちろんだ。引き続き、青峰大輝は綾瀬に任せる」

 

「っ! はい、止めて見せます」

 

マークを変えられると思っていた大地は瞬間胸を撫でおろすが、その後、表情を引き締めた。

 

「後は…、ゴール下か。松永、現状、センターとしては、相手の方が1枚上だ。…ならば、どうするか。練習を思い出せ。そこに答えがあるぞ」

 

「は、はい!」

 

三杉の言葉に、松永は気を引き締めた。

 

「とりあえず、こんなところだな。そろそろ時間だ。…行こう」

 

『はい(おう!!!)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

桐皇ベンチ…。

 

第1Qをリードで終え、まずまずの立ち上がり。

 

「…第1Qをリードで終えたのは良好と言えますね。…ですが、点差は6点。決して楽観視出来る点差ではありません。こちらも、16点も取られていますからね」

 

決して、セーフティとは言えない点差に、原澤は選手達に釘を刺すように言う。

 

試合は青峰が得点を重ね、桐皇が圧倒的リードに終わったように見えたのだが、蓋を開けて見れば、わずか6点差であった。

 

理由として、花月は、青峰からの失点を防げないまでも、要所要所できっちり点を決めているからだ。

 

それと、もう1つ理由は…。

 

「やはり、桜井君が封じられてしまっているのが大きいですね」

 

「すいません! すいません!」

 

桐皇の特攻隊長にして、アウトサイドシューターの桜井が三杉の徹底マークに合い、得点どころか、ろくにボールも触らせてもらっていない。桐皇は外を封じられ、2点ずつしか得点出来ていないのも要因の1つだ。

 

当事者である桜井は、ただただ頭を下げ、謝っていた。

 

原澤は、顎に手を当てて、考えをまとめ、そして口を開く。

 

「…ふむ、とりあえず、福山君はチェンジで、新村君、第2Q頭からお願いします」

 

「えっ!?」

 

「分かりました」

 

原澤の指示に、新村は返事をしてシャツを脱ぎ、福山は声を上げる。

 

「ちょっと待ってください! 何で俺が…」

 

「てめぇが穴だからに決まってんだろ」

 

理解出来ないと監督を問い詰める福山に、青峰がきつめに言葉をかける。

 

「第1Qの失点の大半はてめぇからだろ。それで試合に出続けられると思ってんなら、頭悪すぎだろ」

 

「なんだと!?」

 

馬鹿にするような物言いに、福山は思わず青峰に詰め寄る。

 

「ディフェンスがザルなてめぇでも、点を取ってきたから試合に出れた。だが、今日何点決めた? たったの2点だろ。今のてめぇは、弱点しかねぇ雑魚も同然なんだよ。分かったらとっととベンチに座ってろ」

 

「…青峰。言い方を考えろよ」

 

きつい言葉をぶつける青峰を、若松が窘める。

 

普段、青峰の横暴を止める時のような強い口調ではないことから、若松も少なからず青峰と同意見なのだろう。

 

「……くそっ!」

 

それを感じ取った福山は悔しさを露わにする。

 

「…のちにあなたの得点力が必要な時が来ることは十分考えられます。試合から気持ちを離さないでくださいね」

 

「は、はい!」

 

落ち込みかけていた気持ちが戻り、元気よく返事をした。

 

「…青峰君。相手は綾瀬君ですが、どうですか?」

 

「雑魚だ。話にならねぇ」

 

「結構です。第2Qもこのまま、青峰君を中心に行きます。青峰君のボールを集めてください」

 

その後も、原澤は指示を続ける。

 

「…ちっ」

 

桐皇選手の中で、青峰だけが苛立っていた。

 

「(…三杉誠也。こんなもんなのか?)」

 

ディフェンスだけとは言え、マッチアップしている青峰の、第1Q終わっての感想はこの一言だった。

 

確かに、テクニックはある。身体能力も高い。だが、これなら、他のキセキの世代や火神の方がよほど驚異だ。

 

第1Q,最初の激突後、それから何度かやりあった両者だが、三杉は、青峰を1度も抜くことが出来ず、全て、パスで逃げている。

 

「(…これじゃあ、さつきにデータを見せてもらってまで緑間に勝った意味がねぇじゃねぇか…!)」

 

花月と…、三杉や堀田と戦うため、秀徳戦、緑間との勝負を、楽しむことより、勝つことに専念した青峰。

 

楽しみを1つ捨ててまでこの試合に臨んだことと、強敵だと思っていた相手がこの体たらくであることへの失望が、青峰を苛立たせていた。

 

「(これが全力じゃねぇだろ。まだ底があるなら、早く見せてみろ…!)」

 

青峰は、相手ベンチ…、三杉を睨みつけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「序盤は、桐皇リードか…」

 

観客席の一角に座る、火神がポツリと呟くように漏らす。

 

「桐皇はとにかく青峰君にボールを集めているようですね」

 

隣に座る黒子が、第1Qを見た感想を口にする。

 

黒子、火神の2人は、冬に向けての偵察を兼ねて、準決勝の観戦に来ていた。

 

本来なら、このような偵察の仕事は、1年生の役割なのだが、試合を目の前で見たかった黒子と火神がかって出たのだ。

 

誠凛は、冬の大会に向けて、練習を再開している。そのため、誠凛の主力である、黒子と火神にも当然、練習に参加してほしいところであったが、試合が気になり、集中を欠いた状態で参加させても意味がないと判断したリコは、渋々観戦を許可した。

 

「ああ。…対して、花月は、神城、綾瀬、松永が、天野を中継して確実に得点を重ねているな」

 

花月は、三杉が青峰を上手く引き付け、そこからパスを捌き、得点を重ねている。

 

「ここまで、大きな力の差はない……だが…」

 

火神は、桐皇…青峰はスロースターターであり、彼が調子が上がってくるのはこれからであることを知っている。

 

「花月は堀田がいない。あの綾瀬って奴に、青峰が抑えられるわけがねぇ。このままじゃあ、点差はさらに開いてばかりだ。…第2Qで、花月側がどう動くか…」

 

先の読めない展開。ここから先、どうなるか考えていると…。

 

「やあ、タイガ」

 

「っ!? タツヤ!? 来てたのか…」

 

そこへ、陽泉の氷室が現れた。

 

「ここ、いいかな?」

 

「どうぞ」

 

空いている黒子の隣の席を指さすと、黒子が了承し、席に座る。

 

「タツヤ、まだ帰ってなかったんだな」

 

「そういうタイガこそ。…こっちは、敦の付き添いさ。この近くに、評判の良い医者がいると聞いたからね」

 

「医者? 紫原の奴、どこか怪我でもしたのか?」

 

「ああ。花月戦で無理をして膝を少しね。とはいえ、そんなに大袈裟な怪我ではなく、少しの間、安静にしていれば、完治する程度さ。…堀田が試合を欠場しているのも、同様の理由だろうね」

 

横で話を聞いていた黒子は、紫原の怪我が軽いことに胸を撫でおろす。

 

「しかし、第1Q、あの堀田がいないとは言え、花月がリードを許して終わるとは…」

 

2回戦で対戦し、完敗した氷室は、この結果には少々驚いていた。

 

「ああ。三杉は青峰にほぼ抑えられている。他が何とか点を取っているとはいえ、このままだと多分、もっと点差は開くぜ」

 

「……腑に落ちないな。実際、マッチアップした俺から見て、青峰より、三杉の方が上だと思っていたんだが…」

 

「実際、三杉は、パスを捌くので精一杯だ。青峰も、去年の冬からかなり伸びているからな」

 

「…」

 

それでも、顎に手を当て、腑に落ちないとばかりに首をかしげる氷室。

 

「このまま、堀田が出場出来ないなら、試合は第2Qにでも決まりかもしれないな」

 

火神が呟くと、花月、桐皇の双方のベンチから、選手達がコートへとやってくる。

 

そして、第2Qが始まった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

第2Qが始まる。

 

ボールは桐皇。花月はマンツーマンディフェンスを布いてくる。

 

「…っ!」

 

ギリっと、歯ぎしり聞こえそうなばかりに青峰が表情を険しくする。

 

花月のマッチアップ相手は第1Qと同じ。天野のマークが交代した新村になっただけ。つまり、青峰をマークするのは、大地。

 

「…てめぇら、俺をイラつかせるのも大概にしろよ? てめぇ(大地)じゃ、俺の相手にならねぇってことがまだ分かんねぇのか?」

 

低い声で、かつ、怒りがこもった声で正面の大地……そして、三杉に告げる。

 

「…」

 

三杉は、一瞬、青峰の方へ視線を向けるが、すぐさま目の前の桜井に視線を戻す。

 

「ちっ!」

 

そんな三杉の行動が、青峰をさらに苛立たせる。

 

ボールが、青峰に渡る。

 

「…っ!」

 

大地は、自身の全精力を注ぎ、青峰のマークに徹する。

 

「いくらやる気見せたって無駄だ。てめぇは俺の足元にも及ばねぇ。…どういうつもりかは知らねぇが、てめぇがそういうつもりなら――」

 

 

 

――ダムッ!!!

 

 

 

「――取り返しが付かねぇくらいの点差を付けてやるだけだ」

 

青峰が、変則のチェンジオブペースからのドライブを仕掛ける。

 

「(っ! 第1Q、ただやられていた訳ではありません。スピードと緩急には慣れてきました。リズムも、ようやく掴んできました。これからは、簡単には抜かれません!)」

 

大地は、このドライブに何とか食らいつく。

 

「おっと」

 

ボールを反対側にバウンドさせ、反転させながら大地の横を抜けようとする。

 

「くっ!」

 

相変わらずの変則的なドリブル。それでも、大地は歯を食いしばって食らいつく。

 

「へぇ、さすがに、俺にマークさせるだけあって、ただのへぼじゃないらしいな」

 

「…っ」

 

感心する青峰だが、大地は言葉を返す余裕は一切ない。

 

「お前、誇っていいぜ? あの火神も、俺と初めてやりあった時は、全く付いてこれなかったんだからな」

 

一歩下がってテンポを落ち着ける。

 

「もう少しだけ本気を出してやる。こっちはとっととあいつ(三杉)を引きずり出さなきゃなんねぇからな」

 

ゆったりとテンポに1度戻し…。

 

 

 

――ダムっ!!!

 

 

 

そこから再度加速をした。

 

「(は、速い! 先ほどまでとは違ってさらに…!)」

 

その後も、クロスオーバー、レッグスルー、バックチェンジを繰り返しながら大地を翻弄していく青峰、大地も、必死に猛追するが…。

 

「(だ、ダメだ…!)」

 

ついには、青峰の動きに付いていけず、バランスを崩して座り込んでしまう。

 

大地をかわした青峰は、そのままリングへと一直線に向かい、リングへと飛ぶ。

 

「させるか!」

 

ヘルプに来た松永がブロックに飛ぶ。

 

「…邪魔だ!」

 

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

 

「がっ!」

 

ブロックに飛んだ松永を弾き飛ばし、リングのボールを叩きつけた。

 

ダンクを叩き込んだ青峰はゆっくりとディフェンスに戻りながら、三杉のすれ違い様に…。

 

「さっさと来いよ。こっちはお前が来るまで待ってやるつもりはねぇ。来ねえなら、このQ中に勝負を決めちまうからな」

 

そう一言囁きながらディフェンスに戻っていった。

 

「…」

 

オフェンスが切り替わり、花月ボールとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

ボールをキープする空。目の前には今吉。

 

桐皇は第1Qと変わらず、マンツーで、マッチアップ相手も同じ。

 

 

――ピッ!!!

 

 

空から大地にパスが飛び、大地がハイポストの天野にボールを渡す。そこから空がボールを貰うも、厳しいマークに合い、そこからアウトサイドに展開していた大地に一旦戻す。そこから、三杉へとボールが渡った。

 

『来た! エース対決!』

 

何度目かの対決。両チームのエースの激突に、観客が沸き上がる。

 

「…」

 

「…」

 

睨み合う両者。

 

そこに、今吉のマークを振り切り、ボールを貰いに空が動く。

 

 

――ピッ!!!

 

 

動いた空に、間髪入れずにパスを出す。ボールを受け取った空はそのまま切り込んでいく。

 

「調子のんな!」

 

若松がヘルプに飛び出す。

 

レイアップの態勢に入り、若松がブロックに飛んだタイミングで空はパスを出す。

 

「あっ!?」

 

ボールの行く先は、ゴール下の松永。

 

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

 

松永はそのままリングにボースハンドダンクを叩き込んだ。

 

「よっしゃ!」

 

ハイタッチをする空と松永。2人の肩を叩いて労う三杉。

 

「…」

 

そんな光景を見つめる青峰。

 

「…誠二、ここからは全部俺にボールよこせ」

 

「?」

 

静かに、かつそれでいてはっきりとした口調で今吉に伝える。

 

「こんな不愉快でつまんねぇー試合はもう終わりだ。とっとと終わらしてやる」

 

「……分かりました」

 

鬼のような形相の青峰に、今吉は圧倒されつつも、それを表に出さず、ただ返事をしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

桐皇のオフェンス…。

 

フロントコートまで今吉がボールを進めると、迷わず、青峰にボールを渡す。

 

「(今度こそ止めて見せます!)」

 

腰を落とし、気合を入れて対峙する大地。

 

「…遊びは終わりだ」

 

 

 

――ダムッ!!!

 

 

 

「えっ…」

 

そう囁くように言ったの同時に青峰が切り込む。それは一陣の風が通り抜けるが如く、大地の横を抜けていった。

 

「行かせるかい!」

 

ヘルプにやってきた天野が青峰の進路を塞ぐ。青峰は、リング付近まで侵入すると、リングと反対方向に飛ぶ。

 

「(なにしとんねん? まだ俺をかわせてへんのに…)」

 

疑問を抱きつつも、天野もブロックに飛ぶ。

 

青峰は、ボールを右手に持ち替え…。

 

 

――ブン!!!

 

 

そのままリングめがけて放り投げた。

 

 

 

――バス!!!

 

 

 

ボールは、バックボードに当たりながらリングを潜った。

 

『うおぉぉぉぉぉっ!!! 青峰のフォームレスシュートだぁぁっ!!!』

 

「何やねん、それ!?」

 

正当なフォームから逸脱したシュート。だが、ボールはリングの中央を射抜く。

 

 

「来やがったな。青峰のエンジンがかかり始めた…!」

 

観客席の火神がポツリと言う。

 

 

ここから、試合は青峰の独壇場となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「ちっ! 1本、返すぞ!」

 

先ほどの青峰のプレーを振り払うように空が声を上げる。

 

「(…チラッ)」

 

空が天野にアイコンタクトをする。それと同時に切り込む。

 

「読めとるで!」

 

今吉は、桃井のデータによる先読みで、空のプレーを読み切り、空を猛追する。

 

「あんさんのそれ(スクリーン)も織り込み済みや!」

 

今吉は、天野のスクリーンも読み切り、かわしながら空を追いかける。

 

「天さん、あざっす!」

 

「っ!? あかん!」

 

ここで、今吉は空の狙いに気付く。

 

スクリーンをかわせば、わずかに加速が遅れ、尚且つ、距離が膨らむ。空と今吉のスピード差を考えれば、それは致命的。

 

これは、陽泉の氷室が、三杉をかわすために行った戦法だ。

 

今吉は振り切った空は、そのままリングに突っ込む。

 

「舐めんな、1年坊!」

 

あまりの無謀とも言える空の進軍に、若松がいきり立ちながらブロックにやってくる。

 

 

――スッ…。

 

 

「がっ!」

 

それを嘲笑うように真横にトスするようにボールを放る。

 

「よし!」

 

空からボールを受け取った大地が、がら空きになったリングに向かって跳躍する。右手に持ったボールをリングに向けて叩きつける。

 

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

 

「なっ!?」

 

ボールがリングに叩きつけられる直前、大地の手からボールが弾き飛ばされる。

 

ダンクが決まると確信していた大地は目を見開いて驚愕する。

 

「簡単にダンクなんかさせるわけねぇだろ」

 

ブロックしたのは青峰。強烈なアジリティーで一気に大地との距離を詰め、ダンクを阻止した。

 

ルーズボールを桜井が抑える。

 

着地した青峰が、前方を指差し、そのままフロントコートに加速していく。

 

桜井は、青峰の要求どおり、フロントコートにボールを投げる。

 

フロントコート手前でボールを掴み、そのままドリブル。

 

「ちくしょう!」

 

「くっ!」

 

空と大地が、青峰を追いかけるべく、相手リング下から猛ダッシュで青峰を追いかける。

 

ボールを持って尚、他者を突き放すほどのスピードを有する青峰。だが……。

 

「あん?」

 

同じく、スピードを信条とする空と大地。ペイントエリア直前で青峰を捉え、その道を阻む。

 

 

「うぉっ! あいつら、あの青峰に追いつきやがった…」

 

これに火神が驚愕する。

 

かつてはボールを持った青峰に逆に離された経験を持つだけに、青峰よりスタートが遅れたにも関わらず、シュート態勢に入る前に追いついた空と大地に軽く驚愕する。

 

 

「止めてやる!」

 

「これ以上は…!」

 

空と大地のルーキーコンビが青峰と対峙する。

 

「…無駄だ。お前ら程度じゃ、何人来ようが結果は一緒だ」

 

青峰が1度停止し、そこから再び加速。フロントチェンジからのクロスオーバー。

 

「っ!」

 

「ぐっ!」

 

これには何とか食らいつく2人。だが、これにより、2人の間にスペースが出来る。そこへ…。

 

 

 

――ダムッ!!!

 

 

 

「「っ!?」」

 

ロールしながら高速でその間を通り抜けた。

 

「こんのぉ…!」

 

諦めずと、空が後ろからバックチップを狙うべく、手を伸ばす。だが…。

 

 

 

――ダムッ!!!

 

 

 

あっさり切り返され、その手は空を切った。

 

青峰、その後、そのまま跳躍。

 

「させません!」

 

切り返しの間に大地が青峰の前方に回り込み、ブロックに飛んだ。

 

青峰は、1度上げたボールを下げ、大地の横を抜けていく。そのまま、リングの裏手にまで出てしまった。

 

「よっしゃ! ナイス――」

 

青峰を止めたと確信した空は思わず拳を握りこむ。

 

「ハッ! んなわけねぇだろ」

 

リングの真裏にまで行ったところで、青峰はリングに背を向けたままボールを放り投げる。

 

「っ!? まさ…か…」

 

ボールはリングの真裏から真正面に戻ってきて、そのまま……。

 

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

 

「「っ!?」」

 

空と大地を嘲笑うかのようにリングの中央を潜った。

 

「「…」」

 

信じられないとばかりに、空と大地は茫然とする。

 

「実力はまあ、認めてやってもいい。だがな、お前らはこっち側じゃねぇ。いいとこ、五将止まりだ」

 

スタスタ歩きながら自陣に戻っていく。そのすれ違い様に…。

 

「お前らじゃ、俺には永遠に勝てねぇよ」

 

残酷なまでの言葉を2人にかけていった。

 

「「…っ」」

 

圧倒的なまでな実力差を目の当たりにし、何も言い返すことが出来ない空と大地。

 

ただただ歯をきつく食いしばるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

その後も、青峰の独走は止まらない。

 

ボールが青峰が得点をどんどん量産し、リードを広げていく。

 

大地も、何とか止めようと奮闘するも、その驚異的なアジリティーと、変則的なストリートのバスケを前に、手も足も出ない。

 

司令塔である今吉が、青峰にボールを集め、青峰にマークが集中すれば、もう1つの得点源である若松にボールを捌くなどの機転を見せ、活躍していた。

 

ディフェンスも、福山が抜けたことで穴がなくなり、桃井のデータも相まって、花月の得点チャンスは確実に減っていった。

 

空がボールを大地に回し、大地が桜井をかわし、インサイドにカットイン。

 

だが、そこへ、青峰が現れる。

 

「大地!」

 

空がボールをもらうためにパスを要求。

 

「っ!」

 

大地は、青峰に1ON1を挑むため、突っ込む。

 

「分からねぇ奴だな」

 

 

 

――ダムッ!!!

 

 

 

レッグスルーからのクロスオーバーでかわしにかかる。だが、青峰は難なく付いていく。

 

「っ!」

 

そこから、バックロールターンで反転するが、これにも青峰は難なく対応する。

 

「ここからです!」

 

そこから大地が高速のバックステップで急バックする。そこからシュート態勢に入る。

 

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

 

「っ!? これも…」

 

大地の目の前に現れた青峰の手にボールが触れる。

 

「今のはなかなか良かったぜ」

 

自身の最大の武器すらも、青峰には通じなかった。

 

素早くルーズボールを拾った青峰はそのままワンマン速攻を仕掛ける。

 

「ちっくしょう!」

 

空が速攻を阻止するべく、全速で青峰を追いかける。

 

やはり、最高速で上回る空がシュート前に青峰を捉える。

 

「(青峰に追いついた。追いついたけど…)」

 

青峰と対峙する空。

 

「(…くそっ! 俺じゃ、青峰は止められねぇ!)」

 

左右の揺さぶりからのドライブで空の横をあっさり抜け、そのまま跳躍する。

 

「こんちくしょうがぁっ!」

 

声を張り上げ、青峰のダンクの阻止を試みる。

 

ボールがリングに叩きつけられる直前でボールに触れることが出来たが…。

 

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

 

「がっ!」

 

不安定な態勢に加え、元々の力の差もあり、空はあっさりと弾き飛ばされてしまう。

 

「…」

 

青峰は、空に一瞥もくれず、ディフェンスに戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

青峰にボールを集め、得点を量産する桐皇。

 

リードはどんどん広がり、劣勢を強いられる花月。

 

エンジンがかかった青峰を大地は止めることが出来ず、付いていくのが精一杯。

 

 

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

 

 

ここで、第2Q…、前半戦の終了を告げるブザーが鳴る。

 

 

第2Q終了

 

 

花月 29

桐皇 48

 

 

第1Q終了時、僅か6点だった点差が、19点にまで広がっていた。

 

「「…っ」」

 

悲痛な面持ちでベンチに戻っていく空と大地。

 

桐皇の圧倒的なオフェンス力を目の当たりにし、言葉が出ない花月選手達。

 

「…」

 

ただ1人、同じくベンチに下がっていく、桐皇の選手達を観察する三杉。その表情には、焦りは微塵も感じられなかった。

 

三杉はいったい何を考えているのか…。

 

試合は、これより、インターバルを迎えるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





花粉症、スランプのダブルパンチで、ここまで間が空いてしまいました…。

バスケの細かいルールなど、改めて調べているのですが、身近にバスケ経験者がいないので、四苦八苦しております(^-^;)

更新ペースを早く戻したいと思う今日この頃です。

感想、アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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