黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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第4Q~全中に向けて~

 

 

 

――キュッキュッ!

 

――ダムッ!!!

 

 

 

 

 

 

バスケ部に新たな監督が着任し、バスケ部員はより一層練習に励んでいる。

 

「おらぁっ!!! そこのガキィッ! なにチンタラ走っとんのじゃ! そんなんで試合に勝てるかい!」

 

「は、はいぃ!」

 

注意を受けた部員は身体をビクつかせながら返事をする。

 

「スクリーンかけるのが遅いんじゃぁっ! そんなもんに誰がかかるんじゃボケェッ!」

 

「す、すいません~!」

 

先程と同じく、指示を受けた部員が身体をビクつかせる。

 

新しく龍川が監督に着任してから数日が経過した。以前までは部員が練習メニューを組んでいた関係で、どうしても練習は軽めになってしまっていたのだが、龍川が着任してからは練習量は大幅に増え、怠けていると檄が飛ぶので、適度に緊張感のある練習風景となっている。

 

龍川は白いスーツに竹刀を肩にかけながら指導を行っている。

 

部員の中には急激に練習量が増え、厳しい指導が行われるようになって部活を辞めようと思った者も少なからずいたのだが、空と大地がいれば全中大会に出れるかも、という理由で辞めずに汗を流している。

 

「おし! 3分休憩じゃぁっ!」

 

竹刀をドン! と床に突きながら休憩を告げる。部員達はヘロヘロになりながら水分補給をするために体育館の外に設置されている水道へと向かっていく。

 

「あの、龍川先生…」

 

水分補給を終えた田仲がおそるおそる龍川に尋ねる。

 

「神城と綾瀬は今の練習でいいんですか?」

 

現在、体育館の練習に空と大地はいない。2人がどうしているのかというと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              ※ ※ ※

 

 

「「おぉぉぉーーーっ!」」

 

空と大地は学校近くにある砂浜で走り込みをしていた。

 

「くっ!」

 

「っ! 負けません!」

 

空が一歩前に出ると負けじと大地が前に出る。砂浜での走り込みは砂に足を取られるため、舗装された道の何倍もきつい。

 

「いよっしゃーっ! 俺の勝ちぃっ!」

 

僅差で空が先にゴールする。

 

「ハァ…ハァ…、や、やりますね…」

 

大地は膝に手を置き、息を切らしながら悔しがる。

 

「よ、42本目…、お、俺の勝ち…だ…」

 

空は勝利に歓喜するも、息は絶え絶えだった。

 

2人は歩きながらゆっくり呼吸を整えていく。

 

「…なぁ、最近、ボール全然触ってないような気がするんだけど…」

 

「それは、私達は基礎トレーニングが主な練習メニューとなっていますからね」

 

龍川が監督に着任してからというもの、空と大地は他の部員達とは別メニューをしており、その主な内容が砂浜や近くの山中のダッシュなど、基礎づくりが中心…というよりほぼ基礎づくり中心だ。

 

「基礎が大事だってのはわかってるけどさ、やっぱボール使った練習がしたいよなぁ」

 

空は半ば愚痴交じりに呟く。

 

2人に命じられた練習量はかなりの量で、常人なら半分もこなせるかどうかという程の量であり、すべてこなした時には部活動の時間は終わっている時間になっており、その後に自主的にやろうと思ってもオーバーワークでヘロヘロであるため、最近ではほとんどボールに触れていない。

 

「基礎は重要です。不満が一切ない、と言えば嘘になりますが、着実に基礎能力が向上していると実感できていますから、私としては有益だと思っていますよ」

 

「うーん、それはそうなんだけど…」

 

大地に宥められるも空はいまいち納得できていない様子である。

 

「では、龍川先生の練習メニューを無視して勝手にやりますか?」

 

「…それこそ胃が痛くなるな…」

 

白いスーツにパンチパーマ、竹刀を持った龍川の姿を想像して思わず顔を顰める。

 

「とりあえず指示を受けた練習メニューをこなしましょう。最近ではこの練習にも慣れてきましたし、その後に好きなだけボールに触れればいいでしょう」

 

「ま、そうだな。…おし! それじゃ、次行くか。…次も負けねぇからな」

 

「こちらこそ、次は譲りませんよ」

 

空と大地は再び走り込みを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              ※ ※ ※

 

 

「あいつらはあれでええんじゃ」

 

「ですけど、少しはボールを使った練習もさせた方が…、それに、別メニューばかりじゃチームとの連携も…」

 

田仲は自身が思った懸念を告げてみた。龍川は真剣な面持ちを取り…。

 

「…あいつらに今必要なのは小手先のテクニックでも連携でもない、絶対的な基礎や。如何なる才能も潜在能力も、基礎なくして開花はせん。ずっとバスケ部から離れとったわりにはなかなかもんでもあるが…、あれではまだ足りんわな」

 

「…」

 

「今、あいつらが積み上げとるもんは、この先の全中大会…、ひいては、来年からのバケモノ共(キセキの世代)とやり合う時に大いに生きてくるはずや」

 

いつのまにか集まっていた部員達が龍川の話しに無言で耳を傾けていた。

 

「それに、あの2人は…、言いたかないが、なかなかのもん持っとるからのう、放っておいてもテクニックは勝手に身につく。やから今はとにかく基礎や…おっ? 3分過ぎとるやないか。…おらぁっ! 休憩終わりじゃクソガキ共! スリーメンじゃ! 1人でもつまらんミスしよったら連帯責任で全員その場で腕立てスクワット50回やってからやり直しさせるから気ぃ引き締めてやれやぁっ!」

 

『は、はいっ!』

 

部員達は返事をするや否や一目散に所定の場所へとダッシュで移動していった。

 

空と大地の別メニューは全中大会の3週間程前まで続き、両者共に多少の不満を感じながらも龍川の出した練習メニューは全てこなし、何だったらそれ以上の量もこなしていき、最後の方ではその後にボールを使っての個人練習もやっていた。

 

全中大会予選3週間前に本格的に空と大地はチームに合流し、練習試合や紅白戦をやりながら連携面を磨き、チームを熟成させていった。

 

星南中学バスケ部は、空と大地の2人をチームの軸とし、それ以外の部員は2人をより生かすため、ディフェンスであったり、囮の動きや、2人を自由にするためにスクリーンをかけたり、身体を張ったリバウンドなど、ロールプレイヤーの役割を課した。

 

龍川が監督に就任し、練習を開始するその日にチームの構想を部員達に発表し、部員達はそれを了承した上で今まで練習に取り組んでおり、大会3週間前とギリギリで2人が合流したにも関わらず大会前までにチームを形にすることができた。

 

そして、月日は全中大会予選の日となり、空と大地の、中学生活における最初で最後の公式戦…、全中大会地域予選が開幕した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 


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