黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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やっとの試合。

書きたいこと書いていたら結構文字数増えるもんですね…。

それではどうぞ!




第30Q~VS正邦高校~

 

 

試合開始の時間となり、花月、正邦のスタメン達がセンターサークル内に集まる。

 

 

花月高校スターティングメンバー

 

4番SG:三杉誠也 190㎝

 

5番 C:堀田健  204㎝

 

8番PF:天野幸次 192㎝

 

10番PG:神城空  179㎝

 

11番SF:綾瀬大地 182㎝

 

 

正邦高校スターティングメンバー

 

4番PG:早蕨春人 180㎝

 

5番 C:石野五郎 191㎝

 

7番PF:藪清志郎 189㎝

 

8番SG:津川智紀 181㎝

 

9番SF:東海林巌 178㎝

 

 

『…』

 

『…』

 

先程の正邦は津川、花月は上杉の挑発とも言える言動により、両者共、若干だが、殺伐とした空気が流れている。

 

「さっき聞こえちゃったけど、何か100点以上取って失点を30点以内にしないとインハイ出れないんだって? じゃーもうインハイ出れないねー。そうだ! どうせならこっちもそれを目標にしましょうよ!」

 

津川がそんな空気の中、おちゃらけた口調で喋り出す。

 

「お前はもう余計なこと喋んな!」

 

主将の早蕨が厳しく注意を促す。

 

「元はと言えば、このバカ(津川)がきっかけだ。試合はお互いクリーンで行こう」

 

「もちろん」

 

三杉と早蕨がギスギスした空気を緩和させるべく、言葉を交わしていく。

 

「だが、こいつ(津川)じゃないが、こっちはこれでも去年までは東京都で三大王者と呼ばれていたんだ。今年は去年を上回っていると自負している。さっきの目標、やれるものならやってみな」

 

「監督は、一度吐いた唾は飲まない堅い人でね。是非とも達成しないと、言葉通りにインハイを欠場されかねないから、目標、果たさせてもらうよ」

 

両校主将同士、表情はにこやかだが、胸の内を熱くさせながら握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

整列も終わり、いよいよ試合開始となる。堀田がジャンプボールをするためにセンターサークルに向おうとすると…。

 

「待った、健」

 

「? どうした?」

 

三杉に呼び止められた堀田が立ち止まる。

 

「せっかくだ。スタートから相手にサプライズをしようか」

 

そう言うと、三杉は視線を空に向け、ニコリと笑った。

 

「? ……っ! なるほど…」

 

三杉の真意を察した空が同じくニコリと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

ジャンプボールのため、正邦は、5番の石野がセンターサークルに入る。

 

対する花月側は…。

 

『っ!? これは!?』

 

正邦は今目の前の光景に目を見開く。何故なら、ジャンプボールに入ったのは…。

 

「10番、神城がジャンパー!?」

 

花月のスタメンの中でもっとも身長が低い神城がジャンパーとなった。

 

正邦は、当然、堀田がジャンパーを務めるものと思っていたため、軽く頭が混乱させられる。

 

ジャンプボールは、必ずしもチーム最高身長の者が務めるとは限らないが、チームで最も身長が低い者が務める理由などない。

 

「(何が狙いだ…。何か裏があるのか? それともただの挑発か? それとも…)」

 

正邦側は必死に花月側の狙いを探し出そうとする。

 

センターサークル内で屈伸運動をする空。

 

「(…ちっ! 去年、新設校に…それも、その前の年に大勝している誠凛に敗れてインハイもウィンターカップも逃したことで、ある程度舐められることは覚悟していたが、こうもあからさまとはな…)」

 

正邦側のジャンパーの石野は不快感を露わにする。

 

「狙いは分からんが、…奇策ってのは、大概が策を練り過ぎたあまりに自分を見失った故の愚挙だというのは知ってるか?」

 

早蕨が横に立つ三杉に探りを入れる。

 

「奇策? …ああ、先に言っておくと、ウチに狙いはない。だから、考えるだけ無駄だよ」

 

「なに?」

 

「それと、ウチのルーキー、結構面白いよ」

 

にこやかに告げる三杉。それと同時に審判がボールを上げ、ティップ・オフ。

 

空と石野が同時に跳ぶ。

 

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

 

『なっ! なにぃぃぃーーーっ!!!』

 

体育館中に驚愕の声が響く。

 

ジャンプボールを制したのは、空。

 

「っしゃぁっ!」

 

自分より12㎝も高い相手の上からボールをはたく。こぼれたボールを拾ったのが大地。

 

「ナイスです、空」

 

すぐさま、正邦ゴールへとドリブルしていく。

 

「させないよ!」

 

それを阻んだのが津川。

 

「(…試合開始直後の最初の1本。味方を待って万全を期するのがセオリーですが…)」

 

だが、強敵を求める本能が抑えられない大地は…。

 

「行きますよ」

 

その場で止まり、レッグスルーからの…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

クロスオーバー。津川の左手側から一気に仕掛ける。

 

「はやっ! けど、足りないね」

 

「っ!」

 

だが、津川は遅れずに大地に付いていき、左手を大きく広げ、進路を塞ぐ。道を塞がれた大地はドリブルを止め、動きを止める。

 

「(さすが、火神さんを抑え込んだ実力は本物ですね。速いというより、上手さを感じます)」

 

決して高い身体能力を持っているわけではない津川。古武術の動きと読みを利用し、先回りして大地の道を塞ぐ。

 

「(古武術は左右の揺さぶりに強いようですね。左右がダメなら…)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

大地は再度ドライブを仕掛け、津川の横を抜けようと試みる。

 

「何度やっても同じだって!」

 

津川はやはり、そのドライブに対応する。

 

 

――スッ…。

 

 

「っ!?」

 

高速ドライブ後、大地は高速のバックステップで津川との距離を空ける。

 

そして、リングへと視線を向ける。

 

「こんの! させないよ!」

 

津川は何とか踏ん張り、下がった大地との距離を詰めようとする。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

だが、大地はそれを嘲笑うかのように再びドライブを仕掛ける。

 

「ぐっ…ぐっ…!」

 

再度、ドライブに対応しようとしたが…。

 

「あっ…」

 

前後の揺さぶりに足腰が踏ん張れず、その場で尻餅を付いてしまう。

 

「津川がかわされた!」

 

ディフェンス優れた正邦選手の中でも、指折りなディフェンス力を持つ津川が振り切られたことに正邦側がざわつく。

 

「行かせん!」

 

ヘルプに来た津川が止めていた間に下がっていた石野が来る。

 

「ふっ!」

 

右、左の切り替えしを繰り返し…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

これをかわす。リング近くまで進軍した大地が跳躍する。

 

「させるかー!」

 

藪がブロックするべく跳躍してやってくる。

 

「はぁ!」

 

 

 

――バキャァァッ!!!

 

 

 

『なっ!?』

 

大地は、藪の上からワンハンドダンクを叩きこんだ。

 

「まじかよ!? あの身長差で…!」

 

身長差8㎝。そして、180㎝前半の大地のダンク一閃に体育館中に驚愕の声が上がる。

 

「(あれが180㎝程度の人間のジャンプ力かよ…)」

 

開始早々、12㎝差もある空がジャンプボールを制し、大地が正邦の要の1人である津川をかわし、身長差のある藪の上から叩きこむスーパーダンク。

 

奇襲という意味では、大成功とも言える。

 

「さて、目標はまだ遠い、早くリスタートしてくれると助かるかな」

 

「っ! まだ試合は始まったばかりだ。藪、ボール拾え! 津川も! 切り替えろ! 1本! 返すぞ!」

 

ボールを受け取った早蕨がチームを落ち着かせる為、声をかけ、ゆっくりゲームメイクをする。

 

「ディフェンス! 1本止めるぞ!」

 

三杉の檄にチーム全体が呼応し、それぞれが同ポジションの相手にマークに付く。

 

「…」

 

早蕨がゆっくりボールを付き、ゲームメイクを始める。

 

空は腰を落とし、早蕨の一挙手一投足に注視する。

 

「(…なるほど、伊達に全中を制した選手ではないな。いいディフェンスをする)」

 

隙のないディフェンスに、内心で賛辞の言葉を贈る。

 

「…(チラッ)」

 

早蕨が藪に一瞬アイコンタクトを取る。藪はコクリと頷く。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

意を決して早蕨がドライブを仕掛ける。空は遅れずにそのドライブに付いていく。

 

振りきれないことが想定内であった早蕨はハイポストに入っていた藪にパスをする。

 

ボールを受け取った藪の背中に天野が付く。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

スピンターンで天野をかわしにかかる。

 

「あかんで。そんなもんじゃ俺はかわせんでぇ!」

 

天野は一歩踏み出し、左手を大きく広げ、進路を塞ぐ。

 

「ちっ!」

 

かわしきれなかった藪は舌打ちをし、ゴール下まで侵入していた石野にパスをする。

 

ボールを受け取った石野が背中に付く堀田を押し切ろうと身体をぶつける。

 

「ぐっ…!」

 

だが、堀田の身体はビクともせず、1ミリたりとも動く気配がない。

 

「(重すぎる…、まるで山でも押してるみたいだ!)」

 

パワー勝負では勝ち目がないと判断した石野はターンアラウンドで反転し、フェイダウェイで、後ろに飛びながらジャンプショットを放つ。

 

 

――バシィィッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

191㎝を誇る石野が後ろに飛んで距離を空けてもなお、堀田の上を超すことは出来ず、ブロックに阻まれる。

 

「たっ、高い!」

 

圧倒的高さを誇る堀田のブロック。それを目の当たりにした石野は茫然とする。

 

「ルーズボールいただきや! それ、カウンター!」

 

こぼれたボールを拾った天野が前方へ大きくロングパス。ボールを受けとったのは三杉。

 

「っ! 止めてやる!」

 

その前に立ちふさがるのは津川。

 

「…」

 

「…」

 

対峙し、睨み合う両者。そこへ、左側から空が走り込み、手を上げてパスを要求。

 

「…(チラッ)」

 

三杉は一瞬そちらへ視線を向ける。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

その瞬間にドライブで切り込む。

 

「あっ!」

 

ほんの一瞬そちらへつられて視線を逸らした津川は成す術もなく抜き去られる。

 

 

――バス!!!

 

 

そのまま難なくレイアップを決める。

 

試合の主導権は花月が握り、完全に花月ペースで試合は進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

空の放ったスリーが決まる。

 

「っし!」

 

拳を強く握り、喜びを露わにする。

 

1度握った主導権を明け渡すことなく、試合は進んでいく。

 

「天さん。ちょっと頼みが…」

 

「ん? 何や?」

 

空と天野がヒソヒソと話し込む。

 

「おう、ええで。うまいこと演出したるで」

 

空の提案に、天野は快くオーケーサインを出す。

 

 

――バチィィッ!!!

 

 

正邦のオフェンス。パスを回してチャンスを窺う正邦だが、大地によってスティールされる。

 

「速攻!」

 

大地がターンオーバーを取り、素早く速攻を決める。

 

「大地、ストップ!」

 

それを空が大声で止める。

 

「?」

 

大地は空の声で止まり、後ろにいる空の方へと振り返る。

 

振り返ると、空がパスを要求している。大地は空にボールを戻す。

 

「っしゃあ! 1本!」

 

空は人差し指を天高く上げ、ゲームメイクを始める。

 

「(ディレイドオフェンス? 空は早い展開のオフェンスの方が好みなはずですが、いったい何を考えて…)」

 

空はゆっくりフロントコートへと侵入していく。マークに付くのは早蕨。

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

ゆっくりボールを付きながらチャンスを窺う空。

 

「……(よし!)」

 

何かを待つようにゆっくりドリブルを続ける空。天野から合図が出ると…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

一気に加速し、ぺネトレイトで正邦ペイントエリアに侵入する。

 

「行かせ…っ!?」

 

早蕨が止めるべく動く。フェイクにかかったわけではないので、すぐさま追いかけようとするが、天野のスクリーンにぶつかる。

 

マークが外れた空に、ヘルプに来たのが…。

 

「(…これこれ! 待ってました!)」

 

津川がやってくる。

 

先程の空と天野のやりとり。

 

 

『何とか、俺に津川がマークに来るようにしてもらえませんか?』

 

『津川と? …なるほど、ええで、うまいこと演出したるで』

 

 

こんなやりとりがあった。

 

マンツーが基本ディフェンスの正邦。それぞれのマッチアップ相手は同ポジションなので、何かしらのお膳立てがなければ空が津川を相手にすることはない。

 

故に、空は先程の大地の速攻を止め、ディレイドオフェンスを慣行し、正邦側を自陣へと戻させた。

 

「(さて、絶好の機会だ。ここで勝負!)」

 

空は津川に突っ込んでいく。

 

空は右、左と揺さぶりをかけ、隙を窺う。だが、津川もディフェンスを得意とするだけはあり、揺さぶられず、空の動きにピタリと付いていく。

 

「(…やる。大地の奴、さっきよくあっさりぶち抜けたな…)」

 

考え事をしていると…。

 

「空! 右!」

 

大地からの声掛け。右側から東海林がボールを狙いにきた。

 

「うおっ!」

 

慌ててボールを右から左に切り返した。

 

「もらい!」

 

だが、そこを津川が狙いすます。

 

タイミング、状況的に、再度切り返すことは不可能。

 

「こんの…!」

 

空は、この状況を打開すべく、上半身を後方に大きく、今にも倒れてしまいそうな程に反らし、ボールを僅かに後方へと下げる。

 

「なっ!?」

 

スティール出来ると確信していた津川だが、目標物を失い、思わず声を上げる。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

後方に上半身を逸らしたままビハインド・バックで背中から左手から右手にドリブルする手を変え、素早く上半身を起こすと、東海林の右からドリブルで抜け、この密集地帯を脱出する。

 

そのままゴール下まで侵入し、ジャンプ。石野がブロックに飛んだのを確認し、横へとボールを放る。

 

そこに駆け込んでいた堀田がボールを受け取り…。

 

 

 

――バキャァァッ!!!

 

 

 

ボースハンドダンクを叩きこんだ。

 

「いいパスだ」

 

アシストをした空の背中を叩きながら褒め称える。

 

「よくやった。あまり褒められたことではないが、積極的に勝負を仕掛ける気概は買うぞ」

 

「どもっす」

 

三杉は褒めつつも身勝手な行為に諌める。

 

「どんどん積極的に行け。PGはお前なんだ。お前がゲームメイクをするんだ。ミスは俺が拾ってやる」

 

「うっす!」

 

パチンと背中を叩いて激励した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

試合の優劣はもはや揺るぎなかった。

 

当初、古武術を絡めたディフェンスに空と大地は戸惑ったが、試合が進むごとにその動きにも対応できるようになり、自身の持ち味を存分に生かしたバスケが出来るようになっていった。

 

そして、三杉と堀田を止められる選手は正邦にはおらず、ガンガン得点を量産していった。

 

 

 

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

 

 

 

試合終了のブザーが鳴り響く。

 

『ハァ…ハァ…』

 

正邦の選手達は信じられないといった表情でただただ唖然としている。

 

「なんだよ…何なんだよ、お前ら…。無名の学校なのになんで…」

 

津川は歯を食い縛りながら花月の選手達を睨みつける。

 

 

花月 107

正邦  21

 

 

上杉が掲げた、得点100点以上、失点30点以内の目標を達成。

 

「ったく、上杉の奴、とんでもねぇ奴等を集めやがって…」

 

正邦の監督の松元は苦笑いを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「つえーよ、お前ら。前に見たキセキの世代並みだな」

 

「まあ、彼らに勝つために日本に帰ってきたからな」

 

主将同士、早蕨は悪態を吐きながら握手を交わす。

 

「日本に? ……そうか、だからそれだけの実力を持っていながら名前を聞いたことがなかったわけか。…ふっ、インハイ、俺達も死に物狂いで出場してやる。その時にリベンジだ」

 

「ああ。東京は大変そうだな。楽しみに待ってるよ」

 

そんな会話を交わした。

 

「おら、いつまでもグチグチ言ってないで、切り替えろ。インハイまで時間ないんだからな」

 

「はい……(グチグチ)」

 

津川は早蕨に引きずられながら下がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「(想像以上だわ…)」

 

花月側ベンチにて試合を見学していたリコはただただ言葉を失っていた。

 

正邦は決して弱くない。去年を上回る戦力に加え、去年にはなかった高さが備わっている。

 

「(あの三杉さん堀田さんは想像以上だわ。しかも、実力はほとんど見せていない…)」

 

自身がその目で弾きだした数値どおりの実力を披露した。そして、まだ底を見せていないことも見抜いた。

 

「(そして、ルーキーコンビも、以前にビデオで見た全中決勝の時よりさらに伸びてる。才能が覚醒する前とはいえ、火神君でさえ苦しめた津川君を何度か抜いてみせた)」

 

空の異常なバランス感覚を生かしたフェイントや、大地の強靱な足腰を生かした高速のバックステップに対応出来ず、ほとんど止めることが出来なかった津川。

 

古武術を生かしたバスケは全国でもあまり見かけない。誠凛も、昨年の対決時には、そのバスケに翻弄され、デッキが壊れる程研究したにも関わらず、対応出来るようになったのは後半に入ってから。

 

だが、花月は第1Qこそ、その動きに戸惑いを感じたものの、第2Qに入るとすぐさま対応出来るようになっていた。

 

「(天野君も、マッチアップ相手を完全に封じ込めていた。他の4人が派手すぎるから目立たないけど、スクリーンやポストプレーを巧みに使って味方をフォローしていた。黒子君とは違った形のチームの影だわ)」

 

三杉、堀田、天野、空、大地。常軌を逸した5人が集まった花月高校。

 

「(パパがこの試合を見に行けと言った意味が分かったわ。パパが見せたかったのは正邦じゃなくて、花月高校の方だったんだわ)」

 

リコの父、相田景虎は、花月高校の監督、上杉剛三と旧知の仲。

 

静岡から遠征試合にやってくることを知り、娘のリコを行かせた。

 

「(今年のインターハイ。花月高校は来るわ。…今年の優勝候補として)」

 

リコはそう予感したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

練習試合も終わり、帰り支度をし、正邦高校を後にするバスケ部面々。

 

「デビュー戦、初勝利! 幸先いいなぁ!」

 

完勝に終わった練習試合に、空は喜びを露わにする。

 

「あの津川って奴もぶち抜けたし、言うことなしだよな!」

 

隣を歩いていた大地の肩に手を回しながら同意を求める。

 

「ととっ、空、前を見てしっかり歩いてください」

 

大地は苦笑しながら空を諌める。

 

「とてもそう思える内容だとは思えないけど」

 

そこに、姫川が水を差す。

 

「あなたと津川さんとの勝負シチュエーションは、ターンオーバーからのアウトナンバーがほとんどだった。体勢も整わず、三杉さんが横に並んでいる状況では、あなただけを見ていられない。そのシチュエーションでは、津川さんが不利。唯一、最初のあなたの余計なディレイドオフェンスからの勝負は、初見殺しのトリックプレー。あなたに有利な状況での勝負だからあなたは勝てた。周りの援護もない、対等な条件での1ON1なら、今のあなたでは勝てなかったでしょうね」

 

「むっ」

 

冷静に今日の試合を分析する姫川に、空はムッとした表情をする。

 

「姫川ー、せっかく勝ったんだから、何も水差すことないじゃん」

 

空は口を尖らせながら文句を言う。

 

「勝ったからと言って、そこから何も学ばず、驕ることしか出来ないのなら、あなたはプレイヤーとしてそこまで。反省点が出るのは、負け試合からだけじゃないのよ? もう少し、自身を冷静に分析しなさい」

 

「ぐぬぬ…」

 

あまりの言いようだが、空にも思うところがあったのか、ただただ唸り声を上げるだけだった。

 

「(…実に的確な分析ですね…)」

 

今、姫川は実に的確な分析をした。それは、大地も同意見であった。

 

「(今のは、バスケに詳しい者でなければ言えない意見です。それも、経験者でなくては…。彼女はいったい…)」

 

大地は空と姫川がやり取りをしているのを、思案しながら眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

花月高校の面々は予約していた旅館に行き、そこで1泊した。

 

そして、翌日、泉真館へと向かうのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




泉真館との試合も一気に書きたかったんですが、思った以上にボリュームが増えてしまったので次回に持ち越し。

何か、だんだん三杉と堀田の影が薄くなってきたような…。

感想、アドバイスお待ちしています。

それではまた!


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