本格的に原作キャラが登場し、オリキャラとの絡みが始まります。
うまく表現できるか…。
それではどうぞ!
第23Q~運命~
とある某所…。
「…っ! …っ!」
1人の長身の男がトレーニング器具を用いて自身の身体を鍛えている。男の身体は見て分かる程の筋肉質の体型であり、顔つきも厳しさが窺える。
その男の身体からはおびただしい程の汗が流れており、長時間身体を酷使していたことが窺える。
「ふぅ」
ひとしきりトレーニングをすると、男は器具から手を放し、一息吐く。
「お疲れ、相変わらず精が出るな」
そこに、もう1人の男が現れ、身体を鍛えていた男を労う。現れた男は一見すると優しげな風貌が窺える。
「ほら」
現れた男が持っていたタオルを手渡す。
「すまない」
タオルを受け取り、礼を言うと、男は身体の汗を拭い始める。
「部屋へ戻ったのではなかったのか?」
「ああ。戻ったよ。そしたら、これが部屋に届いていてね」
優しげな男が人差し指と中指に挟み込んだ1通の手紙を見せる。
「理事長からのエアメールだ」
それを聞くと厳つい男がげんなりとした表情を取る。
「はぁ…またか。何度頼まれても答えは変わらん。お前も同様だろ?」
「ああ。俺もそのつもり『だった』」
「だった?」
優しげな男の答えに厳つい男は疑問を持った。
「今回は少々趣が違ってね。手紙と一緒にこれが届いていてね」
優しげな男が1枚のDVDを見せた。
「返事はこれを見てからでも遅くはないと思ってね。君も一緒にどうだい?」
厳つい男は数秒考え…。
「分かった。シャワーで汗を流したらお前の部屋に向かう」
「了解」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
20分後、部屋に集まると、件のDVDをデッキに差し込み、中身を確認する。
――おぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!
DVDを再生すると、大歓声が轟く。
――キュッキュッ!!!
それと同時にスキール音が鳴り響く。DVDの中身はバスケの試合であった。
――バキャァァァッ!!!
1人の選手のダンクが炸裂する。
「…なかなかだな」
それを見て、厳つい男が感嘆の声を上げる。
「今のが青峰大輝。このチームのエースみたいだね」
優しげな男がDVDに同封されていた手紙を見ながら説明する。
「型破りなバスケスタイル。日本では珍しいストリートのバスケを取り入れているみたいだ」
「ふむ、確かに。『こっち』ではさほど珍しくはないが、まさか日本のバスケで見られるとはな」
――ザシュッ!!!
高弾道のシュートがリングに掠ることなく潜る。
「今のが緑間真太郎。このチームのシューターだね。…ハハッ! あの距離、でたらめだな」
「偶然だと思いたいが、あの様子を見るに、決められる自信と確信があって打っているな」
「みたいだね。敵にまわしたら面倒だな。あの距離から撃つには全身の力が必要だろうから弾数に限りはあるだろうけど、常にボックス・ワンでマークする必要があるから並みのスタミナではもたない」
説明しながら笑みを浮かべる。
――バキャァァァッ!!!
再びダンクが炸裂する。
「この選手は黄瀬涼太。…ふむ、恐らくだけど、彼、バスケを始めてまだ間もないね」
「で、あろうな。ドリブル突破の際にハンドリング技術がまだ拙い。ボールを持っていない時の動きはまさにそれを感じさせる」
「けど、センスは感じられる。この1~2年でかなり伸びるだろうね」
2人は分析結果をそれぞれ口にしていく。
――バキャァァァッ!!!
再度、1番迫力のあるダンクが叩きこまれる。
「…ほう」
厳つい男が目を輝かせ、薄っすらと笑みを浮かべる。
「彼は紫原敦。君にとっては1番興味がそそられる選手だろうね」
「…このパワーと迫力。これほどのものを持っている選手は『こっち』でもそう多くはない」
「それだけじゃない。スピード、反射神経もかなりのものだ。この守備エリアの範囲は君と同等クラス。同ポジションとしては、当然、興味が沸くよね?」
「ああ。実際にマッチアップをしたら、どうなるか…」
厳つい男は、あまり表情には出さないが、内心では興奮を隠せないでいる。
「…で、最後が、キャプテンである、名前は赤司征十郎」
「…だが、この映像では実力は判断できんな。基本的にはパスを捌くばかりで、ドリブルもシュートも最低限しかしていない」
「ま、これだけの選手に囲まれていれば、無理をする必要はないだろうから、それで充分だろう。…とはいえ、この4人を率いているのだから、弱いわけがない。間違いなく他の4人と同等…もしかしたら、それ以上のものを持っている…かもね」
試合はこの5人の圧倒的な試合運びにより、どんどん点差が開いていく。
「彼らは、今、日本で『キセキの世代』と呼ばれている。これを見る限り、その言葉に偽りはないね」
「同感だ。…強くなるために早々に見限ってはいたが、それは訂正する必要がありそうだ。日本もまだ捨てたものじゃない」
「……それで、理事長への返事だけど…」
「無論、答えはもう決まっている」
厳つい男がニヤリと笑みを浮かべる。
「了解。…じゃあ、理事長にはOKと返事を出しておくよ」
優しげな男もニヤリと笑みを浮かべる。
「この資料は去年の物。話しでは5人はそれぞれが別々の高校に進学したみたいだから、今年にキセキの世代同士に優劣が付く。となれば、彼らはさらに進化を遂げるということだ。…さて、今年もそうだろうけど、来年も面白くなるだろうね…」
『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』
暗い室内に、試合終了を告げるブザーが鳴り響く。
試合は、キセキの世代率いる帝光中が、圧倒的大差で試合を終えるのだった……。
※ ※ ※
星南中学校が全中大会を制してから幾ばくか過ぎたある日のこと。
――ザシュッ!!!
大地がフリースローラインからシュートを放ち、ボールがリングを潜る。
激闘が繰り広げられた夏休みが終わり、2学期が始まった。
現3年生は全中終了と同時にバスケ部を引退し、体育館に足を運ぶ機会も減った。
だが、空と大地だけは監督の龍川から練習メニューが出されており、高校進学までそれをこなすよう言われていた。
『来年、キセキの世代を倒したいんなら時間を無駄にするな。これでもやっとれ』
と、言われ、空と大地は毎日そのメニューを忠実に…または過剰にやっていた。
今日は、空が特別な用事があり、大地だけが学校近くのリングが設置してある公園でシュート練習をしていた。
シュートを決め、ボールを拾い、またシュート。それを繰り返していると…。
「おー、お待たせー」
公園の入り口から声が響く。大地は放とうしたボールを止め、そちらを振り返る。
「お疲れ様です。どうでしたか?」
大地がそう訪ねると、空はげんなりとした表情で首を横に振った。
「あー、ダメダメ。話になんねぇ」
「そういえば、今日のスカウトは何処からでしたか?」
空はつい先ほどまで学校に応接室にて、高校からのスカウトの話しを聞いていた。
全中優勝以降、実力も知名度も広まった空と大地の下に、高校の…それもバスケの強豪からのスカウトが全国から尋ねていた。2人は、連日、様々な高校からの話しを聞いている。
「えーっと、せーしんかんってとこ」
「せーしんかん……、ああ、東京都の泉真館ですね。あそこは東京都三大王者と呼ばれている高校で、今年もIHへと出場した高校だと聞いています。何が気に入らなかったのですか?」
「ふーん、そこって、そんな有名なんだ。…まあ、なんだ…」
空は1つ1つ説明していく。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
つい1時間程前、応接室に呼ばれ、足を運ぶと、そこには星南中学の学校長と40代程の男性が待っていた。彼は自分は泉真館の監督であり、スカウトに来た告げる。
挨拶もそこそこに話しが始まったのだが、空はものの数分でげんなりし始める。
泉真館は設備が充実し、実績もある高校であると、そこまではまだ良かった。だが、泉真館のバスケ部の伝統で――。
曰く、1年時は例外なく、基礎重視の練習が主となり、公式試合には一切出場できない。1年間、じっくり基礎をつくりあげてもらうとのこと。
曰く、典型的な体育会系世界であるため、先輩の言うことは基本的に絶対であること(これはかなりオブラートに包んで説明された)。
他にもいくつかあったが、空の中で著しく拒否反応を示したのがこの2つである。
実力で出れないというならともかく、たかだか伝統という理由だけで公式戦に出れないのは納得も我慢もできない。
空は、中学1、2年時、理不尽な縦社会が原因でバスケ部から離れている。よって、無駄に偉ぶる先輩の存在は煙たいだけである。
よって、空はまだまだ話を続ける泉真館監督の言葉を遮り…。
『悪いけど、話にならないので、お断りします』
空がバッサリ断ると、何が何でも空を獲得したい泉真館監督は焦りだし、必死に説得を試みだす。
『な、何が気に入らなかったのかな?』
『1年時に試合が出れないとかありえないでしょ? 試合出れないなら行く意味ないですし』
『それは伝統ある強豪校なら当然のことです。中学と高校は違う。安易に試合に出ても通用するとは限らない。ここで1年間基礎を積み上げた者だけが後の2年間の栄光を手に入れられるのですよ』
『そうとは思えないけど? 現に、キセキの世代は入学してからすぐにレギュラー取って試合に出てますけど? 赤司に至ってはキャプテンやってるみたいだし』
『あれは例外もいいところです。行き過ぎた知名度に惑わされた故の暴挙。彼らは後に後悔するはずです。念入りに基礎を積み上げてこなかったことを』
あくまでも食い下がる泉真館監督。早く話を切り上げたい空。不意に、空がふと疑問に思ったことを尋ねる。
『って言うかさぁ、東京の三大王者って、桐皇、秀徳、誠凛の3校じゃなかったっけ?』
これを聞いて泉真館監督は表情を曇らせ、激昂する。
『っ! もういいです。この話はなかったことに…!』
立ち上がると、足音荒く応接室を出ていった。
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・・・・
「とまあ、こんな感じ」
「…なるほど、怒って帰ってしまったと」
空の説明に、大地は苦笑いを浮かべる。
2人は話しながら1ON1を始める。
「あーあ、高校、何処行こうかなぁ…そういや、大地のところにもスカウト来てたよな?」
「ええ。私のところには、有名な高校ですと、秀徳高校と陽泉高校からお話が来てますね」
「俺のところには、今日のせーしんかん以外だと、海常高校と桐皇学園から来たな」
空と大地の下には全国区の強豪校から誘いがいくつもきている。
「けどまあ、そこに行く気はないけどな」
空がニヤリと笑みを浮かべる。
「ふふっ、そうですね」
同じく大地も笑みを浮かべる。
今挙げた高校には、言わずと知れたキセキの世代が在籍している。彼らを倒すことを目標としている2人からすれば、それらの高校はハナから選択肢から外している。
「正直、キセキの世代と戦えればどこでもいいんだけど、やる気のない弱小校に行って周りに足を引っ張られるのはなぁ…」
強力なチームメイトに頼りきりなるつもりはないが、レベルの低いチームメイトに足を引っ張られるのも困る。
「そうなると、私達の条件に沿いそうな高校となると…大仁多高校が妥当でしょうか」
「大仁多高校か…」
大仁多高校…、全国区のPG、小林圭介を有する栃木県最強の高校。昨年はインターハイをベスト4まで勝ち上がり、実績も実力もある高校である。
「条件は良いんだけど、ここ(静岡)からだと遠いんだよなぁ…」
越境入学が必要なことに空は難色を示す。
「家元を離れるのは辛いことですが、そこは仕方ありませんよ。近場の強豪校となると、今年のインターハイの静岡代表の1校である松葉高校ですが…」
「あそこは絶対にやだ」
静岡の強豪校、松葉高校。空がそこを嫌う理由は、上下関係が厳しい、典型的な強豪校だからだ。
「まだ時間はあるし、幸い、全中優勝とMVPと得点王の恩恵のおかげでスカウトはいっぱい来てるから、もう少し考えてみますか…隙あり!」
空がシュート体勢に入る。
「甘いですよ!」
――バチィィッ!!!
不意を突いたシュートは大地に看破され、ブロックされる。
「うげっ!」
ボールは弾かれ後方に転がっていく。
「あ~あ」
空は転がっていったボールを拾いに行く。
「…?」
ボールが転がった先、1人の男が立っている。男はボールを拾いあげる。
「すいません~、ボールとって下さ……い…?」
――ダムッ…ダムッ…。
男は薄い笑みを浮かべながらゆっくりボールを右手で突きはじめる。空いている左手の人差し指を…。
――クィクィ…。
と、まるでこのボールを奪ってみろと言わんばかりに動かす。
この日、この出会いが、キセキの世代の…キセキならざるキセキとその影の…そして、空と大地の運命を大きく動かすこととなる……。
※ ※ ※
キセキの世代が高校に進学し、高校の勢力図が一変する。
彼らのその才能は、バスケを志す者に畏怖を与えた。
そして、この年の彼らの集大成とも言える冬のウィンターカップ。
この大会を制したのはキセキの世代のいずれでもなく、彼らが一目置いた影、幻の6人目(シックスマン)と、彼らと異なる道を歩んだキセキならざるキセキが所属する誠凛高校であった。
翌年、初の敗北を糧に、キセキの世代達は失った覇権をプライドを取り戻すべく、彼らを降した誠凛は得た王者の座を死守するべく、大会に臨んでいく。
だが、彼らの前に立ちふさがる新たなる挑戦者がやってくる。
最強の王者を破った次世代の挑戦者。
彼らがキセキの世代打倒に名乗りをあげる。
だが、それだけではなく、遠い異国の空より、最強にして最高の脅威がやってくる。
その脅威がキセキの世代とキセキならざるキセキ、次世代の挑戦者にもたらすものは…。
昨年を上回る、更なる激闘が、始まるのだった……。
~ 第2章 高校生編 開幕 ~
続く
めちゃめちゃ大風呂敷を広げました(^_^;)
完全自由に書いていた前章と違い、今章はそういかないので、ちょっと不安と緊張が…。
…にしても熱い…。完全に夏バテ中です(T_T)
熱中症と脱水症状には十分気を付けて下さい(^o^)ノシ
それではまた!