黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

195 / 218

投稿します!

遂に新年度に突入。今年も平穏に暮らせるか…((+_+))

それではどうぞ!



第194Q~切り札~

 

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

インターバルが終了し、両校の選手達がコートへと戻って来る。誠凛、鳳舞共に、選手交代はなし。

 

「…」

 

審判からボールを受け取った朝日奈が新海にパスを出し、第2Qが開始される。

 

「…」

 

ゆっくりとボールを運ぶ新海。鳳舞のディフェンスはこれも変わらず、マンツーマンディフェンスを敷いている。

 

「こっちだ、来い!」

 

どう攻めるか、ゲームメイクをしていると、池永がボールを要求する。

 

「速くボール寄越せ! おらっ!」

 

尚も激しく主張しながら池永がボールの要求を続ける。

 

「…ハァ、分かったよ」

 

あまりに自己主張を続ける池永に、新海はげんなりしながらパスを出した。

 

「おっしゃ、第2Q、早々にかますぜ」

 

「…来い」

 

右ウィングの位置でボールを受けた池永。その前に大城が静かに対峙する。

 

「…」

 

「…」

 

右足でジャブステップを踏み、ボールを動かしながら大城を牽制する。

 

 

「ジャブステップか? にしては、随分ステップが大きいな」

 

「ボールも凄い動かしてる」

 

池永の動きに、菅野と帆足が反応。池永はかなり大きく右足を動かし、ボールは頭上から足元へと大きく動かしているのだ。

 

 

「…っ」

 

その大きな池永のムーブにやり辛さを覚える大城。

 

「らぁっ!」

 

大きく前に右足を動かし、大城を下がらせると、池永はシュート体勢に入る。

 

「…ちっ」

 

すぐさま距離を詰め、ブロックに向かう大城。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

しかし、これはフェイク。池永はボールを頭上にリフトさせると、そこからドライブ。大城を抜きさる。

 

 

『おぉっ! あいつ、口だけじゃないぞ!?』

 

 

「たりめえだろうが!」

 

観客のどよめきに半ばツッコミを入れながらリングへと突き進む池永。

 

「来いや!!!」

 

その先に待ち受けるのは鳴海。

 

「言われなくとも!!!」

 

叫びながらボールを掴んだ池永。

 

「(右か!?)」

 

左足の1歩目のステップを踏んだ池永を見て、自身から見て右から攻めると読み、警戒する鳴海。

 

「残念!」

 

「っ!?」

 

しかし、読みとは異なり、池永は2歩目は左へとステップを踏み、鳴海をかわす。

 

「いただき♪」

 

鳴海をかわした池永は悠々とレイアップの体勢に入った。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「…はっ?」

 

「雑魚が調子に乗ってんじゃねえよ」

 

ボールを放った瞬間、後ろから現れた灰崎によってボールはブロックされた。

 

「寄越せ!」

 

「は、はい!」

 

ルーズボールを拾った三浦。ブロックをしてすぐさま速攻に走り、ボールを要求した灰崎にすぐさまパスを出した。

 

「行くぜ」

 

ボールを受けた灰崎はそのままドリブルを開始した。

 

「来いよ」

 

いち早くディフェンスに戻っていた火神が待ち受ける。

 

「…っ」

 

灰崎は火神が立ち塞がってもお構いなしに強引に突き進み、火神は身体を張って阻む。

 

「…もらうぜ、さっきの!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

宣言と共に灰崎は高速ロールでリングに向かって反転し、ボールを掴んでリングに向かって飛んだ。

 

 

『うおーっ! さっきの火神の技だ!』

 

第1Q終了目前に火神が披露した、フルドライブからの高速ロールワンハンドダンク。動きそのままの技に、観客が沸き上がる。

 

 

灰崎がボールをリングに叩きつける。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

両目を見開く灰崎。ボールがリングに叩きつけられる直前、そのボールは叩き落された。

 

「来ると思ったぜ。馬鹿の一つ覚えにパクりやがって、んなもん、決めさすかよ」

 

 

『おぉぉぉぉー--っ! 火神止めたぁっ!!!』

 

今度は火神のブロックに沸き上がる観客。

 

 

「ナイスキャプテン! 速攻!」

 

ルーズボールを拾った朝日奈はボールを新海に預け、そのまま前線へと走った。

 

「…ちっ」

 

ダンクが決まると思っていた灰崎は軽く不機嫌そうに舌打ちをする。

 

「こっちだ!」

 

フロントコートまでボールを運ぶと、火神がボールを要求する。

 

「頼みます!」

 

新海は躊躇う事無くパスを出した。

 

「俺には渋ったくせに何で火神には躊躇なく出すんだよ」

 

軽く愚痴る池永。

 

「伊達にリョータ達には勝ってねえみてーだな。次は止めてやるよ」

 

腰を落とし、集中力を高める灰崎。

 

「…」

 

ジャブステップを踏みながら牽制する火神。

 

 

――スッ…。

 

 

火神がボールを揺らしながら1歩踏み出してスペースを作り、その後、後ろに飛びながらジャンプシュート体勢に入った。

 

「バカが、そんな甘い崩しにかかる訳ねえだろ!」

 

空いたスペースをすぐさま詰めた灰崎がブロックに飛んだ。

 

「……っ!?」

 

ブロックを確信し、1度は不敵に笑った灰崎の表情が一変、驚愕へと代わる。

 

「(届…かねぇ…!?)」

 

踏み込んで飛んだはずの灰崎のブロック。しかし、火神が掲げたボールはその更に上にあった。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

灰崎の上から放ったフェイダウェイシュートは、リングを的確に射抜いた。

 

 

「へぇ…」

 

一連のムーブからのフェイダウェイ。これを見て青峰は唸り声を上げる。

 

「火神君のフェイダウェイシュート。シンプルだけど、ジャンプ力のある火神君が使えばそれだけで相手からすれば脅威だね」

 

桃井が今のプレーの効果を口にする。

 

「今の1本は楔になる」

 

「楔?」

 

「今後、火神が同じようにムーブやステップを見せれば、今のフェイダウェイがちらつく」

 

「…」

 

「あいつはドライブもあっから、迂闊に距離を詰めればたちまち抜かれる。…灰崎じゃあ止められねえ」

 

断言する青峰と、納得する桃井。

 

「…次のプレーで盗んでくるかな?」

 

「あいつの性格を考えればな。技自体は単純だから盗むのは簡単だ。もっとも――」

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「盗んだ所でブロックされんのがオチだがな」

 

青峰の言葉通り、オフェンスが鳳舞に切り替わり、ボールを受け取った灰崎が先程の火神の技を盗もうとしたが、リリースしたボールを火神に再び叩き落された。

 

「っ!?」

 

コート上では灰崎が目を見開いていた。

 

「火神が使う技はどれもバスケの基本的なテクニックで特別、派手でもなければ難度もそこまで高くもねえ。だが、火神のジャンプ力(‥‥‥‥)が加わった瞬間、その技は必殺技に変貌する。まともに止めるのは俺でも多少、手を焼く程度には厄介だ」

 

「うん。大ちゃんに勝ってるだけあるよね」

 

「…1ON1なら俺の方が上だ」

 

「フフッ」

 

負けん気を見せる青峰に対し、微笑ましく笑う桃井。

 

「エース対決が火神君に分があるなら、やっぱり大ちゃんに言う通り、誠凛が優勢、だよね?」

 

「そう言ってんだろ。…見たとこ、火神以外の所も誠凛が上みてーだからな。何もなければ(・・・・・・)、このまま誠凛が押し切って終わりだ」

 

「…何もなければ」

 

ここで桃井は視線を鳳舞ベンチ…、にこやかにベンチに腰掛ける織田に向ける。

 

「高校大学問わず、長い監督キャリアで幾度となくチームを優勝まで押し上げ、全日本代表の監督経験もある織田さん。監督に任命されて1年で鳳舞を全国出場に導いた名伯楽…」

 

「…要するに古狸か。確かに、何処ぞの腹黒メガネみてーに悪そうな性格してそうだな」

 

かつての桐皇の主将、今吉翔一と照らし合わせる青峰。

 

「またそういう事言う…。原澤監督もそうだけど、中学時代に途中まで監督だった、白金監督もお世話になった事がある程の人だよ」

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

『チャージドタイムアウト、鳳舞()!』

 

ここで、鳳舞のタイムアウトがコールされた。

 

「…ふん、いいタイミングだな。灰崎(あのバカ)が熱くなりかけた所で取ったか。…さて、今の誠凛相手にどんな手打って来るか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

鳳舞のタイムアウトがコールされ、1分間の時間の後、選手達がコートに戻ってくる。

 

「…」

 

「(明らかに熱くなってた灰崎が落ち着きを取り戻してやがるな。何を言ったか知らねえが、あの爺さん、さすが、監督が警戒するだけあるな…)」

 

冷静さを取り戻している灰崎を見て、百戦錬磨は伊達ではないと相手監督を意識する。

 

「祐二!」

 

外園が三浦にボールを渡し、試合が再開される。

 

「(…タイムアウト直後の1本、どう来る?)」

 

読みを働かせつつ、目の前の相手に集中する新海。

 

「頼みます!」

 

ボールを捌く三浦。

 

「…いいぜ、何度でも相手になってやるよ」

 

出されたパスは灰崎に渡る。

 

「…」

 

「…」

 

スリーポイントラインの外側、右ウィング付近で睨み合う火神と灰崎。

 

 

――スッ…。

 

 

その時、大城が動き、火神の背後で両腕を胸の前でクロスして立つ。

 

「っ!? スクリーンだ!」

 

動きを見た池永が火神に知らせる。直後に灰崎が1歩踏み出す。

 

「(チームプレーで来るか。だが、やらせねえ!)」

 

ドライブに備える火神。

 

「っ!?」

 

しかし、火神の読みとは裏腹に、灰崎はシュート体勢に入る。

 

「…ちっ」

 

これを見て、火神は舌打ちをしながらブロックに飛ぶ。だが、その手がボールに触れるより速くボールはリリースされる。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放たれたボールはリングを潜り抜けた。

 

「…余計な事してんじゃねえよ」

 

ディフェンスに戻る最中、灰崎が不機嫌そうに大城に抗議する。

 

「監督の指示だ」

 

対して大城は、淡々と返した。

 

「今のは…」

 

ブロックに間に合わなかった火神。今の灰崎のスリー。火神には見覚えがあった。

 

 

「あれって、桜井君の…!」

 

「ああ。良のスリーだ」

 

同様に、桃井も気付いた。今の灰崎のスリーは、チームメイトである桜井のクイックリリースと同じであったのだ。

 

「フン、なるほど、事前に灰崎に色々盗ませてたって訳か」

 

鳳舞ベンチにて、ニコニコしながら試合を見つめている織田に視線を向ける青峰。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

そこから、灰崎は、持ち前の強奪の技術で得た技を披露していく。

 

 

――スッ…。

 

 

「っ!?」

 

スリーポイントラインの外側で、シュート体勢に入る灰崎。ボールを両手で掴み、下から放り投げるようにリリースする。

 

「(ちっ、今度は海常の…!)」

 

ブロックに飛んだ火神だったが、タイミングが合わず、ボールはリングへと向かって行く。

 

 

「…あんなに回転がユニークなスリーは初めて見るよ」

 

安定しないボールの回転を見て思わず感想を漏らす生嶋。

 

「入らんか?」

 

「…ううん。入るね」

 

首を横に振る生嶋。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールは言葉通り、リングを潜り抜けた。

 

「…っ、あんな汚ねえ回転でも入っちまうんだな。つうか、灰崎が使ったって事は、過去にあの打ち方してた奴がいるって事だよな? 良くあれで決められるな…」

 

「…ま、シュートなんて、結局の所、入れば良い訳ですし」

 

苦笑する菅野。空はあれはあれでありだと頷く。

 

 

――スッ…。

 

 

中に切り込んだ灰崎がボールを掴んで飛ぶ。

 

「…っ」

 

火神がブロックに飛ぶ。すると…。

 

「っ!?」

 

灰崎は、レイアップの体勢で火神のブロックを越えるようにボールを放り投げた。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ブロックの上を弧を描くように越えたボールがリングを通過する。

 

「…かつてのチームメイトの技まで」

 

リコが顎の手を当てながら呟く。

 

今のスクープショット。これはかつて、灰崎が福田総合に所属していた頃のチームメイトであった、望月の技である。

 

「盗品の大盤振る舞いね」

 

思わずリコがそう感想を漏らす。

 

「…」

 

黒子は、そんな灰崎に対し、無言で視線を向けていた。

 

 

灰崎が強奪した技で得点を重ねていく。しかし、灰崎一辺倒では攻めず…。

 

「あっ!?」

 

思わず声を上げる池永。池永の背後を取った大城がハイポストでボールを掴む。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

そこからジャンプショットを放ち、決める。

 

「…おいおい、自分のマークから目を離すなよ」

 

「あーあー、悪かった悪かった!」

 

呆れた視線を向ける朝日奈。池永はバツが悪そうにしながら謝罪をする。

 

「(とは言え、抜群のタイミングだったな…)」

 

同時に、安定して灰崎が得点を重ねている中、池永の注意が大城から逸れている事に察してパスを出した三浦を胸中で称賛する朝日奈だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「へぇ…」

 

抜群のタイミングでの三浦のパスに同じく感心する空。

 

「灰崎さんが調子良く得点出来ている中で、池永さんに僅かに出来た隙を突いてのパス。…あなたならあの状況で出せましたか?」

 

「いや、俺なら自分で突破して決めてた」

 

「……でしょうね」

 

尋ねた大地だったが、斜め上の空らしい答えに苦笑する。

 

「しかし、中学時代にやり合った時から思ってけど、あいつ、良い司令塔だよな」

 

全中大会の地域予選決勝でマッチアップした経験のある空。その実力は認めていた。

 

「それはそうだよ」

 

その言葉に、生嶋が口を挟む。

 

「キセキの世代が全中を三連覇した後の新人戦で、注目を浴びた司令塔が3人にいたんだ」

 

「ほうほう」

 

空はその頃、バスケ部に所属しておらず、その辺りの事情は知らない。事情を知る生嶋の話に興味を示す。

 

「1人は僕と同じ、城ヶ崎中の小牧(マッキー)、それと、2人目は帝光中の新海君、3人目は――」

 

「三浦って訳か。なるほど」

 

いずれも実力者であり、納得する空。

 

「3人共、司令塔としてはタイプが異なりますね。小牧さんはドライブ技術も外もある1ON1に長けた選手、三浦さんは広い視野とパスセンスに長けたプレイメーカー、新海さんは得点も出来てパスも出来るオールラウンダー…」

 

異なる特性を持っている事に着目した大地。

 

「僕達が3年の時の全中大会は、その3人の司令塔対決も1つの注目の対象だったんだよ。…もっとも、勝者はくーだった訳だけど」

 

「そうか、神城はその3人とマッチアップしたんだったな」

 

東郷中、城ヶ崎中、帝光中と、その3人が所属するチームと中学で戦い、その全てに勝ったのが空のいる星南中。その事実を思い出す松永。

 

「今、コートにいる三浦と新海は、全中では新海が勝っていたが…」

 

「とは言えあれは、こう言ったら悪いが、他の4人の力の差が大き過ぎた。味方を生かせない状況じゃ、三浦は不利だろ」

 

全中で戦った帝光中対東郷中は、大差で帝光中が勝利したが、司令塔対決だけに注目した場合、それだけでは勝敗は測れないと空が言う。

 

「だが、今回はだいぶその力の差は埋まっているように見えるが?」

 

「どうかな」

 

今度こそ、2人の司令塔対決に優劣が付く、と、考えた松永だったが、空は首を横に振る。

 

「あれを見ろよ」

 

空が電光掲示板を指差す。

 

 

第2Q、残り2分11秒

 

 

誠凛 43

鳳舞 34

 

 

「灰崎が決めだして、鳳舞が押し出したように見えっけど、点差は縮まってねえぜ」

 

「…っ、そういえば」

 

コート上の雰囲気で気付かなったが、点差を見て、松永は第2Qが始まってから点差が縮まっていない。むしろ、僅かに広がっている。

 

「やはり、総合力では誠凛が上か」

 

ここで上杉が口を挟む。

 

「灰崎が状況に応じた技を使い出した事で、エース対決は均衡し始めたが、それ以外では誠凛が優位に動いている」

 

言葉通り、朝日奈はマッチアップ相手が代わっても変わらず、体格差を生かしたポストプレーで、新海も同様に高さのミスマッチを突き、池永は1ON1スキルを活かし、田仲は堅実なプレーで、鳳舞を圧倒していた。

 

「織田さんの采配で何とか食らいついているが、それでも追いすがるのが現状やっとだ。鳳舞が逆転するには、何か強力な切り札(・・・・・・)のようなものがなければ厳しいだろうな」

 

胸の前で両腕を組みながら上杉が試合を解説する。

 

「強力な切り札、か…」

 

空が1人、呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

火神のジャンプショットが決まる。

 

 

誠凛 45

鳳舞 34

 

 

「(これで11点差…)」

 

電光掲示板で得点を確認する火神。

 

「…クソが!」

 

タイムアウトを取り、その際の織田の言葉で落ち着きを取り戻し、火神から得点が出来るようになった灰崎だったが、着実に開いていく点差にイラつきを隠せなかった。

 

「……ふぅ」

 

一息吐いて、頭を落ち着かせる灰崎。

 

「(まさか、テツヤのいねえ誠凛(こいつら)がここまでやるとはな。…仕方ねえ、リョータとやるまで使わねえつもりだったが…)」

 

ここで灰崎がベンチの織田に視線を向ける。

 

「…?」

 

「(ジジイ、あれ(・・)、使うぜ)」

 

織田に向けて、合図を出す灰崎。

 

「うーん…」

 

その合図を見て、その内容を組んだ織田が思案する。電光掲示板に視線を向け、残り時間を確認した後…。

 

「(いいよー)」

 

右手の親指と人差し指で丸を作り、オッケーのサインを出した。

 

「(ハハッ! そうこなくちゃな)…寄越せ!」

 

スローワーとなった鳴海に対し、ボールを要求する灰崎。

 

「あん?」

 

怪訝そうにする鳴海。

 

「良いから早くボール寄越せボケ!」

 

「まさかてめえがボール運ぶのか? あー分かったよ! 取られんじゃねえぞ」

 

仕方なく鳴海は灰崎にボールを渡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「ディフェンス、止めるぞ! 各自、しっかりマークしろよ!」

 

『おう!!!』

 

火神が鼓舞し、選手達が応える。自陣に戻った誠凛の選手達が、鳳舞のオフェンスに備える。

 

「…ちょっと舐めてたぜ。いいぜ、少し本気になってやるよ」

 

『?』

 

自陣のリングの少し前でボールを保持している灰崎。ボールをフロントコートに運ばない姿を怪訝そうに見つめる誠凛の選手達。

 

「っ!?」

 

ボールを胸の前へとリフトさせた所で火神が気付いた。

 

灰崎が深く膝を曲げて沈み込む。

 

「…まさか!?」

 

「っ!?」

 

ここでリコと黒子も気付く。

 

 

――ピッ!!!

 

 

次の瞬間、灰崎は高く飛びながらボールをリリースする。

 

『っ!?』

 

これに、コート上の他の選手達も驚愕する。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

高くループしたボールはその後、落下し、リングの中心を通過した。

 

『…』

 

静まり返る会場。ボールが転々とする音だけが響き渡る。

 

「何、驚いてんだ? リョータに出来て、俺に出来ねえわけがねえだろうが」

 

静まり返る中、灰崎が口を開く。

 

「俺のものだ」

 

不敵に笑った灰崎が、自身の右手の親指をペロッと舐めたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





やっぱりと言うか、長くなったorz

まあ、この先のネタ集めも完璧ではないので、ま、いっか…(;^ω^)

とりあえず、早く花粉シーズン終わってくれ……って、過去の前書き後書き見返すと、この季節、自分はそればっかりだと気付いた今日この頃…(>_<)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。