黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

191 / 218

投稿します!

雪凄かったなー…(>_<)

それではどうぞ!



第190Q~彼らのように~

 

 

 

「~~っ! やっと終わったぁ…!」

 

大きく伸びをしながら歩く空。

 

花月の選手達はコートで行われている試合を観戦出来る観客席に向かって歩いている。

 

「お疲れです。…でも、1時間も反省ミーティングするのは予想外でしたね」

 

げんなりする空を横で励ます竜崎。

 

「勝利したとは言え、反省点がなかった訳ではありませんでしたからね。忘れない内に反省点を洗い出す事は大切な事です」

 

同じく空を励ます大地。

 

「お前早々に船漕いでたやないかい。…ところで、多岐川東と田加良の試合はどないなったんや?」

 

ジト目で空を見つつ、次の対戦相手を決める試合結果が気になる天野。

 

「田加良が勝ったみたいですよ」

 

「ほー、多岐川東負けたんかい。となると、準決の相手はあの摩天楼チームかい。明日も俺はしんどい試合になりそうやなー」

 

結果を松永から聞いた天野は顔を顰める。相手が高身長の選手が揃った田加良となると、その負担を受けるのはインサイドの一角を担う天野だからだ。

 

 

『おぉぉぉぉー--っ!!!』

 

 

その時、観客席に出る通路の先から、歓声が響き渡った。

 

「おー、盛り上がってんなー。今は第3試合だから、海常対陽泉の試合か」

 

「時間的に、今は第3Qの半ばくらいかな?」

 

空の言葉に、時計を見ながら補足する生嶋。

 

「どちらも強敵。キセキの世代と、その彼らと対抗出来る選手を擁するチーム。試合予想は、難しいですね」

 

夏に双方と戦った花月。その経験から経過を予測しようとした大地だったが、答えは出なかった。

 

「ま、どないな試合になっとるか、この目で確かめたろうやないか」

 

天野の言葉と同時に、花月の選手達はコートが一望出来る観客席のあるフロアに足を進めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『おぉぉぉぉー--っ!!!』

 

 

大歓声がコートを包み込む。

 

「…」

 

空が得点が表示されている電光掲示板に視線を向ける。

 

 

第3Q、残り4分33秒

 

 

海常 39

陽泉 42

 

 

「(3点差か…)…おっ?」

 

点差を確認した空は、ミーティングには参加せず、第2、第3試合のデータを取りにいち早く観客席に来ていた姫川を発見する。

 

「どんな感じ?」

 

「拮抗しているわ。どっちも流れを掴めない、掴ませない。きっかけが掴めないから完全にロースコアゲームよ」

 

となりに並んだ空に対し、姫川はコートに視線を向けたまま大まかな試合展開を説明する。

 

「…見た所、黄瀬にはアンリが、紫原には海兄が付いているのか。ここは?」

 

「第1Qこそ、キセキの世代が押されていたのだけれど、第2Qに入ってからは逆に2人が抑え込まれているわね」

 

「…っ、あの2人でもそうなのか」

 

三枝にしろアンリにしろ、その実力は確かであり、それは直接手を合わせた空自身が良く理解していた。

 

コート上では現在、陽泉のオフェンス。アンリがスリーポイントラインの外側、右45度付近に位置でボールを受けていた。そのアンリの目の前には黄瀬。

 

「さて、お手並み拝見させてもらいますかね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「どうしたんスか? 打つなり抜くなりしたらどうスか?」

 

不敵な笑みを浮かべながら煽るように挑発する黄瀬。

 

「…クッ!」

 

対してアンリは表情は苦悶に満ちている。

 

アンリをマークをする黄瀬。ここで黄瀬は若干であるがアンリから距離を取る。

 

「打ちたいなら打っても構わないッスよ?」

 

スリーを打つように促す黄瀬。

 

「…ッ」

 

だが、アンリは打たない。いや、打てない。アンリはスリーは不得意であり、成功確率が低いからだ。

 

「そんなに俺を抜いて決めたいんスか? なら、望み通り…」

 

そう言うと、今度は黄瀬はアンリと距離を詰めた。

 

「ッ!? 舐メルナ!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

黄瀬の行動に激昂したアンリは感情のまま仕掛ける。

 

「またそれッスか? いい加減、見飽きたッスよ」

 

持ち前のアジリティーとスピードを活かしたドライブ。しかし、黄瀬は悠々と付いていく。

 

「…ッ! ダッタラ…!」

 

ここでボールを掴んでターンアラウンドで反転、ジャンプシュートの体勢に入る。

 

「そのスピードとアジリティーにジャンプ力。青峰っちと火神っちの良い所取りしたような身体能力は確かに脅威ッス。けど…」

 

 

――バシィィィィッ!!!

 

 

「ッ!?」

 

「君には火神っちのように外がなければ青峰っちのように左右の動きもない。慣れてしまえば止めるのは簡単ッス」

 

ボールを頭上にリフトさせようとした瞬間、黄瀬がボールを叩き落とした。

 

「身体能力頼りの一辺倒のオフェンスがいつまでも通用する程、バスケは甘くないッスよ。いっそ、陸上競技にでも転向したらどうッスか?」

 

零れたボールを拾いながら黄瀬は嘲るような言葉をアンリにかけた。

 

「…」

 

この言葉に、茫然とした表情となった。

 

「アンリ、ディフェンスだ! 戻れ!」

 

そんなアンリに渡辺が声をかける。

 

「(…紫原さんもきつい言葉を使う時はある。けど、あの人は悪意はない。だがこの人は…!)」

 

黄瀬に不快感を覚える渡辺。過去に、紫原に同等の言葉をかけられた事はあるが、紫原はその時その時に思った事を口に出すだけで、それ以上の感情はない事は理解していた。だが、黄瀬は明確に悪意を以てアンリを貶める言葉を吐いてる。どちらが質が悪いかはともかく、渡辺はそんな黄瀬の傲慢な態度と言葉に苛立ちを覚えた。

 

「…っ」

 

キッと黄瀬を睨み付ける渡辺。

 

「(…そんな睨み付けないでほしいッス。俺だって正直、気分は良くないッスから)」

 

そんな渡辺の視線を感じ取った黄瀬は思わず苦笑する。

 

黄瀬とて、アンリを貶めたいからでもなければ力を誇示して悦に入りたいた訳でもないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

陽泉のオフェンス。ローポストで紫原がボールを受ける。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「…っ」

 

紫原の背中に立つ三枝。紫原のポストアップを歯を食い縛りってその場で押し止め、ゴール下への侵入を阻止していた。

 

「…よく頑張るねー。…けど」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「無駄だけどね」

 

スピンムーブで三枝の背後へと高速で抜け、ボールを掴んだ。

 

「っ!? まだやぁっ!!!」

 

即座に反転し、紫原を追いかけ、ブロックに飛んだ。

 

 

『あの体勢から追いついた!?』

 

観客が騒めく。

 

 

紫原のダンクを阻止しようとする三枝。しかし…。

 

「っ!?」

 

紫原は右手でボールを掴むと、回転しながらリングに向かってジャンプする。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「ぐおっ!」

 

ボールをリングに振り下ろす紫原。三枝のブロックを吹き飛ばしながらボールをリングへと叩きつけた。

 

 

『うおぉぉぉぉっ!!! 何だ今の!?』

 

そのダンクに観客が頭を抱えながら沸き上がった。

 

 

「今のお前じゃ相手にならないし。怪我する前に諦めるんだねー」

 

リングから手を放し、着地した紫原は、コートに尻餅を付いた三枝を見下すような表情でそんな言葉をかけ、ディフェンスに戻っていった。

 

「大丈夫ッスか?」

 

そんな三枝に駆け寄り、手を差し出す黄瀬。

 

「スマン! 次は絶対に抑えちゃるわい!」

 

手を取って立ち上がった三枝は謝罪をした。

 

「……見た事のないダンク。また厄介な技を出して来たもんッスね」

 

自陣に戻る紫原の背中を見つめながら呟く黄瀬。

 

「ハァ…ハァ…!」

 

「…」

 

フロントコートへと駆け上がる三枝。その身体からは大量に汗が流れ、呼吸も乱れていた。そんな三枝を見やる黄瀬。

 

第1Qからは一転、紫原に抑え込まれ、止めきれない三枝。どちらが優れているかは誰の目から見ても明らか。

 

キセキの世代の中でも随一の資質を持つ紫原。インサイドに限定すれば、他のキセキの世代、それこそ火神を含めても、勝負にならないだろう。そんな紫原に対し、勝てないまでも勝負に持ち込めている三枝はそれだけでも充分過ぎる働きである。

 

もし、三枝がいなければ、点差はもっと開いていただろう。それだけではなく、黄瀬自身もかなりの消耗を強いられていた。去年の敗戦もそれが要因であった。その為、紫原を1人で相手取っている三枝に対し、感謝こそすれ、文句や不満は黄瀬に一切ない。

 

だが、今のままでは三枝はいつまで持つか分からない。三枝がコートに立てなくなった時点でリードがなければ昨年の二の舞になってしまう。だからこそ、黄瀬はアンリに対し、煽りや心無い言葉をぶつけ、ムキになって向かって来たアンリを叩き潰し、自分には勝てない事を心身に刻み付ける事で潰そうとしたのだ。

 

「もっとも、紫原っちも同じ考えっぽいッスけど…」

 

敢えて新技を出した紫原の狙いは自身と同じだと黄瀬は判断。

 

「…けど、やらせないッスよ。同じ相手に2度負けるのは御免被るッスからね」

 

集中を入れ直した黄瀬は、オフェンスへと向かったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…やっぱり、キセキの世代はスゲーな」

 

観客席の花月の選手達が集まる一角。菅野が冷や汗を流しながら感想を呟く。

 

「アンリにしろ、三枝にしろ、相当苦労したよな?」

 

「はい。アンリさん身体能力は規格外でした。途中でシュートエリアが狭い事を知って多少は楽になりましたが、それでも簡単な相手ではありませんでした」

 

「三枝さんは、身体能力もそうですが、テクニックも多彩で、正直、室井が消耗させてなければ相手になりませんでした」

 

菅野の問いかけに、マッチアップをした大地、松永がその時の事を思い出し、感想を口にする。

 

「あのアンリを完璧に抑え込んでる黄瀬もスゲーが、紫原のあのダンク…」

 

「恐らく、紫原さんの破壊の鉄槌(トールハンマー)を改良した新しい技、でしょうね」

 

今し方見せた紫原のダンク。姫川が私見を口にする。

 

「ローポストのポジションからスピンムーブでディフェンスの背後を取り、そこから回転しながらダンク。従来のボースハンドダンクとは違ってワンハンドダンクだからパワーは落ちるけど、落ちたパワーはスピンムーブの勢いを利用する事で補っています」

 

『…』

 

「それでもやはり片手だから従来よりパワーは落ちますが、相手は紫原さんのポストアップに耐えるのに全力を注いでいるからブロックに対応出来ない。仮に対応出来ても体勢は不十分になるからあのダンクは防げない…」

 

「…よー出来た技や。少なくとも、直に紫原をマークしとる奴はまず止められんやろな」

 

姫川の分析を聞いて天野が実に理に適っていると険しい表情で頷く。

 

「改良型と言えば、ドリブルの勢いを利用してよりパワーを加えた奴もありましたが、あれは使用できるシチュエーションがどうしても限られますが、これなら使い勝手が良さそうですね」

 

大地も天野の言葉に頷いた。

 

「先を見据えた技なのだろうな。このウィンターカップを勝ち抜くだけではなく、卒業後も見据えた、な」

 

『監督!』

 

そこへ、遅れて上杉がやってきた。

 

「この試合、勝敗の鍵を握るのは、キセキの世代ではなく、そのキセキの世代をマークする、アンリと三枝だろう」

 

胸のまで腕を組みながら意見を口にする。

 

「最後まで心が折れるか、あるいは体力の限界を迎えるか。いずれにしろ、先にコートに立てなくなったチームが負ける」

 

上杉はそう結論付けたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで、第3Q終了のブザーが鳴った。

 

 

第3Q終了

 

 

海常 47

陽泉 49

 

 

両チームの選手達がそれぞれのベンチへと向かって行った。

 

 

海常ベンチ…。

 

「ハァ…ハァ…!」

 

息を切らしながらベンチに座る三枝。

 

「三枝! アイシングだ。後、栄養補給、すぐに準備しろ!」

 

三枝の様子を見た武内が迅速に指示を飛ばす。

 

「(…消耗が激しい、もはや限界寸前…いや超えているかもしれん。ここは1度ベンチに下げて回復に――)」

 

「…監督」

 

武内が控えの選手に準備をさせようとすると、三枝が制止する。

 

「監督も分かっちょるでしょう? ここで儂が下がったら負ける言う事は…」

 

「…っ」

 

三枝の指摘に武内は言葉を詰まらせる。

 

ここで三枝がいなくなれば紫原を抑えられる者が黄瀬しかおらず、その負担は黄瀬に降りかかる事になる。如何に黄瀬でも、紫原とこれまでマークしていたアンリの両方を相手取るのは困難であり、三枝がいない時間帯にリードを広げられるだけではなく、体力を大きく削られてしまう。

 

攻守においてバランスが取れている海常高校。強いて弱点を挙げるならインサイドである。技巧派の選手が多く、陽泉のようなシンプルな高さとパワーでゴリゴリに攻めて来るチームとは相性が悪く、昨年の敗因はインサイドで対抗出来なかった事に尽きる。

 

しかし、三枝の加入によって弱点はなくなり、むしろ強力な武器に変わった。それだけ、三枝の存在は今の海常には替えの効かない存在となっている。

 

「楽しなるのはここからじゃ。最後まで楽しませてもらわんとのう」

 

不敵に三枝は笑った。

 

『…っ』

 

その様子を見て、言葉を詰まらせる他の選手達。やせ我慢をしているのは傍から見ても明らか。だが、ここで三枝が下がれば海常はかなり不利になる。その為、何も言う事は出来なかった。

 

「(紫原敦、つよーなったもんや。ここまで資質に差があるとはのう。…じゃが絶対に諦めん。最後まで食らいつく。そうじゃろ? 空、大地…!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

陽泉ベンチ…。

 

『ハァ…ハァ…!』

 

選手達はベンチに座ると、水とタオルを受け取り、呼吸を整えながら水分補給をし、汗を拭っている。

 

「(状況は悪くはないが、きっかけ1つで良くも悪くもひっくり返りかねない。さて…)」

 

顎に手を当てながら残り10分をどう戦うか、監督の荒木が指示を出そうしたその時…。

 

「…アンリ?」

 

渡辺が隣に座るアンリに対し、心配そうに声をかける。

 

「ハァ…ハァ…!」

 

大きく呼吸を乱しているアンリ。

 

「…っ、スゲー汗じゃねえか!?」

 

尋常じゃない、滝のように流れる汗を見て目を見開く永野。

 

「…っ、スタミナ切れか」

 

表情を曇らせながら呟く荒木。

 

「スタミナ切れって、アンリは決してスタミナが無いわけでは…!」

 

荒木の言葉を信じられない木下が疑問の声を上げる。

 

「…それだけ黄瀬のマークが効いたのだ」

 

その疑問に、荒木は苦々しい表情をしながら言葉を続ける。

 

「格上をマークすると言う事はそれだけ集中力を求められる。しかも黄瀬は要所要所でアンリを挑発していた。頭に血が上ると、普段と同じ動きをしているつもりでも無駄な力が入り、知らず知らずのうちに消耗させられる」

 

『…』

 

「しかも恐ろしいのは、頭に血が上っている間は自身の無駄な動きを自覚出来ないばかりか、限界を超えたとしても気付かない。頭を冷やすか、集中が切れた瞬間、身体は思い出したかのようにその代償を自覚してしまう」

 

『っ!?』

 

この言葉に選手達は目を見開く。

 

「(一時的にアンリを下げるか…、だが、アンリが下がって影響が出るのはオフェンス以上にディフェンスだ…)」

 

2-3ゾーンディフェンスが基本の陽泉のディフェンス。ゾーンディフェンスはスリーに弱い。海常にはスリーを打てる選手がシューターの氏原に加え、黄瀬もそこらのシューターよりスリーが打て、小牧にもスリーがある。

 

普段なら紫原のディフェンスエリアを信頼して前目にプレッシャーをかけているのだが、三枝と言う、紫原と1対1で対抗出来る選手がいる為、紫原はディフェンスエリアを狭めている。その狭めたディフェンスエリアをアンリが補っていたのだ。

 

「(やむを得ないか…)…立花――」

 

「…待ッタ!」

 

荒木が控えの立花に準備をさせようとした時、アンリがそれを制止した。

 

「ダイジョブダイジョブ。チョット休メバ動ケル。心配イラナイ」

 

笑みを浮かべるアンリ。

 

「最後マデ戦ウヨ。キセキノ世代ハ絶対抑エル。…任セテ!」

 

努めて明るく、普段と同じようにアンリは皆に告げた。

 

「……分かった」

 

その言葉に荒木は頷き、了承した。

 

「(負ケナイ。最後マデ諦メナイ。ドンナニ絶望的ナ状況デモ、ドンナニ身体ガボロボロデモ、諦メズニ戦ッタ空と大地(彼ラ)ノヨウニ…!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

インターバル終了のブザーが鳴り、両チームの選手達がコートへとやってくる。両チームとも選手交代はなし。

 

 

「ふん!」

 

「…っ」

 

ローポストでボールを受け取った三枝が背後に立つ紫原に背中をぶつけ、ポストアップを仕掛ける。

 

「おぉっ!」

 

フロントターンで強引に紫原の背後に移動し、シュート体勢に入る。

 

「はぁっ!? 無駄なんだよ!」

 

素早くこれに反応した紫原がブロックに向かう。

 

「っ!?」

 

しかし、三枝はボールを頭上にリフトさせた所でボールを止め、再度反転、フロントターンする前の位置まで戻り、再びシュート体勢に入る。

 

「無駄だって、言ってんだろ!」

 

フェイクに釣られた紫原だったが、持ち前の反射速度でこれに対応、再びブロックに飛び、三枝のシュートコースを塞いだ。

 

「なっ!?」

 

しかしこれもフェイク。再びフロントターンで紫原の背後に抜ける。

 

 

――バス!!!

 

 

そのまま三枝はゴール下に侵入し、得点を決めた。

 

 

海常 49

陽泉 49

 

 

『よーし!!!』

 

海常ベンチに選手達が立ち上がりながら拳を握る。

 

「ドリームシェイクか!?」

 

渡辺が目を見開きながら呟く。

 

多彩なムーブとステップワークで相手を翻弄する、かのNBAのレジェンドプレーヤーが使い、その名を文字って名付けられた技。

 

「もはや、資質ではお前さんには敵わんのう。…じゃが、バスケでは負けん…!」

 

「…っ、三枝…!」

 

得点を奪われた紫原は苦々しい表情で三枝を睨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

代わって、陽泉のオフェンス。永野がボールを運び、そこからアンリへ。

 

「…」

 

アンリが得意のスリーポイントラインの外側、右45度のポジションに立つアンリ。

 

「…」

 

目の前に立ち塞がるのは当然黄瀬。

 

「…っ!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

意を決したアンリが一気に加速、仕掛ける。

 

「懲りないッスね!」

 

ドライブを仕掛けたアンリに並走しながら追いかける黄瀬。

 

 

――キュッキュッ!!!

 

 

直後にアンリが急ブレーキ。停止する。

 

「(止まった! 打たせ――っ!?)」

 

フルドライブからの急ブレーキ、そこからシュートと見た黄瀬がチェックに向かった。だが、アンリは腰の辺りでボールを一瞬止めただけでボールを掴んではいなかった。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「…っ」

 

ここで再度急発進。シュートチェックの為に距離を詰めていた黄瀬はこれに対応出来ず、抜かれてしまう。

 

「ハァッ!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

黄瀬を抜いた直後にボールを掴んでリングに向かって飛び、ボールを叩きつけた。

 

『いいぞアンリ!!!』

 

豪快なダンクに思わず陽泉ベンチの選手達が立ち上がる。

 

「負ケナイ。勝ッテモウ1度、決勝デ花月ト戦ウンダ!」

 

「…フゥ」

 

睨み付けながら告げるアンリ。黄瀬は思わず溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…はぁ、しぶといねー」

 

「…ふぅ、一筋縄では行かないッスね」

 

黄瀬と紫原が別々の場所でそれぞれ一息吐く。

 

「(黒ちんや火神、それに空と大地(あいつら)と同じ目…)」

 

「(どうやら、心を折るのは無理そうッスね)」

 

「(だったら――)」

 

「(それなら――)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(試合に勝つしかないッスね(試合に勝つしかないねー))」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海常対陽泉の試合は、クライマックスに向かって激化していくのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





試合は一気に第4Qへ。長々とは書く訳にもあっさりと流す訳にも行かず、3話目に…(>_<)

何か、この試合の主役はキセキの世代ではなく、三枝とアンリになってる感が凄い。でもまあ、たまには良い……よね…(;^ω^)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。