黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

190 / 218

投稿します!

今週、えっぐい程に寒かった…(>_<)

それではどうぞ!



第189Q~下克上に向けて~

 

 

 

第1試合、第2試合が終わり、注目の第3試合、海常高校対陽泉高校の試合がやってきた。

 

 

海常高校スターティングメンバー

 

 

4番SF:黄瀬涼太 193㎝

 

5番SG:氏原晴喜 182㎝

 

8番PG:小牧拓馬 178㎝

 

10番PF:末広一也 194㎝

 

12番 C:三枝海  199㎝

 

 

『来た!!!』

 

『キセキの世代、黄瀬涼太を擁する、青の精鋭、海常高校!』

 

『ここまで攻守に渡った圧倒的な安定感で勝ち上がってきた強豪校だ!』

 

 

陽泉高校スターティングメンバー

 

4番PG:永野健司     181㎝

 

5番SG:木下秀治     192㎝

 

6番 C:紫原敦      211㎝

 

9番PF:渡辺一輝     201㎝

 

11番SF:アンリ・ムジャイ 193㎝

 

 

『対するは、同じキセキの世代、紫原敦を擁する、絶対防御(イージス)、陽泉高校!』

 

『ここまで無失点で勝ち上がってきた最強のディフェンス力を持つ、こちらも強豪校だ!』

 

盛り上がる観客。

 

 

スタメンに選ばれた両校の選手達がセンターサークル内に集まった。

 

「これより、海常高校対陽泉高校の試合を始めます」

 

『よろしくお願いします!!!』

 

整列を終えると、黄瀬が紫原の下へ歩み寄る。

 

「コートの上で会うのは1年振りッスね、紫原っち」

 

「そーだねー」

 

黄瀬に話しかけられた紫原だったが、ぶっきらぼうに答える。

 

「今日は勝たせてもらうから、覚悟しておいてくれッス」

 

「…勝つのは俺だし」

 

宣戦布告をした黄瀬に対し、視線を黄瀬に向けながら紫原は返したのだった。

 

「ハッハッハッ! 久しいのう!」

 

そこへ、豪快に笑いながら三枝がやってきた。

 

「…」

 

紫原は三枝に視線を向ける。

 

「この試合を楽しみにしておったんじゃ。よろしゅーのう!」

 

そう言って、右手を差し出した。

 

「…あっそ。俺、お前に興味ないし」

 

その差し出された右手を無視し、紫原はその場を離れる。

 

「つれないのう。…まあよい。素質と口だけ(・・・・・)じゃった貴様が、どれほどマシになったか、見せてもらうとするかのう」

 

その言葉に、紫原は足をピタリと止める。

 

「…あっ?」

 

そして、三枝を睨み付けながら振り返った。その様子を見て三枝はニヤリと笑う。

 

「良いチームメイトじゃ。実に頼もしい者達が揃っておる。良かったのう。きっとまたお前を助けてくれるぞ?」

 

尚も三枝は挑発を続ける。

 

「…っ!」

 

この言葉にかつて、試合をした時の屈辱を思い出し、三枝の眼前に歩み寄る。

 

「うわぁ…それ紫原っちに絶対言っちゃダメな奴ッスよ」

 

過去に紫原と試合をした事を三枝から聞いていた黄瀬は三枝の挑発の言葉を聞いてハラハラとさせた。

 

「木吉鉄平とか、神城空とか、過去にもイラつく奴はいたけど、お前はその中でも飛びぬけて1番だわ」

 

三枝の傍まで歩み寄った紫原。

 

「――捻り潰す」

 

眼前で鋭い形相で睨み付けた。

 

「ハッハッハッ! ええ顔になったわ! …やれるもんならやってみぃ」

 

不敵な笑みを浮かべながら三枝も眼前に顔を寄せ、返した。

 

『…っ』

 

顔が触れ合う程に近付ける2人。まさに一触即発。喧嘩でも始めかねない空気を醸し出している両者の睨み合いに、海常、陽泉両選手達が思わず息を飲む。その時…。

 

「ヤアヤア! 君ト戦ウノヲ楽シミニシテタンダ。今日ハヨロシクネ!」

 

張り詰めた空気を余所に、アンリが黄瀬の下に駆け寄ると、にこやかに挨拶をすると同時に黄瀬の手を取ってブンブンとさせた。

 

「よ、よろしくッス」

 

周囲の空気にそぐわないアンリの行動に、黄瀬は戸惑いながらも挨拶を返した。

 

「…ちっ」

 

そんなアンリに水を差されたのか、紫原は舌打ちをしてその場を離れた。

 

「ハッハッハッ! なかなか面白い外国人じゃのう!」

 

対して三枝は特に気にする素振りはなく、アンリの行動を見て豪快に笑っていた。

 

「海っち~、試合前にああいうテンションは勘弁してくれッス」

 

咎めるように黄瀬が三枝に言う。

 

「ただの挨拶じゃ、あんなもん。…あ奴は気分屋なのじゃろう? 最初から本気でも来てもらわんとのう」

 

「…ハァ。とにかく、喧嘩は絶対ダメッスからね」

 

「心配せんでも喧嘩なんかせんわい。…何せ、センター同士の戦いは、喧嘩とは比較にならん程熱い戦いじゃ。そっちの方が断然の楽しめるってもんじゃ」

 

三枝が再度不敵に笑ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「今、ムッ君と三枝君の空気がおかしかったけど、何があったんだろう」

 

観客席で紫原と三枝の一連の動きを見ていた桃井。

 

「何がって、見たまんまだろ。あの三枝って奴が、紫原に喧嘩売ったんだろ」

 

桃井の疑問に青峰がぶっきらぼうに答える。

 

「喧嘩売ったって、何の為に…」

 

「さあな」

 

分からないと答える青峰。

 

「(2年前の木吉や、今年の夏の神城の時みてーな作戦の為の挑発じゃねえ。あれはただ単に紫原に本気を出させる為だけに喧嘩売りやがったな)」

 

三枝の行動の意図を察した青峰。

 

「過去に対戦経験がある2人だけど、その時は試合ではムッ君のチームが勝ったみたいだけど、個人戦では三枝君が優勢だったんだよね」

 

自身の情報がまとめてあるノートをめくる桃井。

 

「つっても、ミニバス時代…それも、紫原がバスケを始めて間もない時の話だろ? 参考になるかよ」

 

過去の勝敗はあてにならないと情報を一蹴する青峰。

 

「(あの堀田って奴以外に、紫原と真っ向からやり合える奴がいるとは思えねえが、何処までやるかな…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

遂に試合開始の時が来る。センターサークル内に、両チームのジャンパー、紫原と三枝が審判を挟んで立つ。

 

「…」

 

「…」

 

三枝を睨み付ける紫原とその視線を受けて不敵に笑う三枝。

 

「…」

 

審判が双方に視線を配り、ボールを構え、高く上げられた。

 

 

――ティップオフ!!!

 

 

「「…っ!」」

 

ボールが上げられると同時にジャンパーの2人がボールに飛び付く。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

ジャンプボールを制したのは……紫原。

 

「(ぬぅっ!? さすがに高いのう!)」

 

身長もジャンプ力もある三枝だが、紫原はその更に上を行っており、三枝の上でボールを叩いた。

 

「ナイス紫原! …っし、行くぞ!」

 

ボールを抑えた永野がそのままドリブルを開始する。

 

「行かせませんよ!」

 

その永野に対し、すぐさま小牧が立ち塞がる。

 

 

――ダムッ…ダムッ…!!!

 

 

立ち塞がる小牧に対し、永野はクロスオーバー、レッグスルーを繰り出しながら揺さぶりをかけていく。

 

「…っ、…っ!」

 

永野の揺さぶりに付いていく小牧。

 

「(簡単には抜かせてくれないか…)…やるな」

 

「こっちは花月の神城を想定して練習してきたんでね。この程度じゃ抜かせませんよ」

 

互いに不敵に笑う。

 

「頼む!」

 

小牧を抜く事を諦めた永野がパスを出す。

 

 

『来た来た!』

 

『この試合注目のマッチアップが早速来た!』

 

パスの先を見た観客が沸き上がる。

 

 

「ハハッ! 勝負ダヨ!」

 

ボールを掴んだのはアンリ。

 

「よろしく。どのくらいうやるか、見せてもらうッスよ」

 

そのアンリに立ち塞がるのは、黄瀬。

 

「…」

 

「…」

 

楽しそうに笑みを浮かべるアンリと、不敵に笑う黄瀬。

 

 

――キュッキュッ…。

 

 

小刻みにボールを動かし、右足でジャブステップを踏みながら牽制するアンリと、アンリの一挙手一投足に合わせて身体を反応させる黄瀬。

 

「(ハハッ、凄イ! 隙ガ全然ナイヤ。ダッタラ…!)」

 

「(…来る!)」

 

意を決したアンリと、仕掛ける気配を感じ取った黄瀬。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

腰を落としたアンリが急発進、一気に加速し、仕掛ける。

 

「…っ」

 

同時に動き、アンリの動きに合わせて追走する黄瀬。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

1歩目はアンリの動きに付いていった黄瀬。しかし、2歩目、更に加速したアンリは、持ち前の歩幅を広くとるストライド走法で黄瀬をちぎり、振り切った。

 

 

『抜いたぁっ!!!』

 

『ファーストコンタクトはアンリの勝ちか!?』

 

 

黄瀬を抜いたアンリはグングンリングへと突き進み、ボールを掴んでリングに向かって飛んだ。

 

「(黄瀬さんが抜かれた!? だが、先取点はやらない!)…おぉっ!」

 

ヘルプに飛び出した末広がリングに向かったアンリのブロックに向かう。しかし…。

 

「(っ!? 嘘だろ!? 後に飛んだ俺が先に落ちる!?)」

 

アンリより後に飛び、ブロックに飛んだはずの末広。だが、依然として空中に舞っているアンリに対し、末広は落下を始めていた。

 

「先取点ハ、頂キダヨ!」

 

右手で掴んだボールをリングに叩きつける。

 

 

――バシィィィィッ!!!

 

 

「…エッ!?」

 

しかし、ボールがリングに叩きつけられる直前、そのボールを叩き出されてしまう。

 

「貴様やるのう! じゃが、先取点はやれんのう」

 

「海さん!」

 

既に着地していた末広が笑みを浮かべる。

 

アンリがダンクするタイミングに合わせて、三枝がアンリの後ろからボールを叩き出したのだ。

 

「海さんナイスブロック! …速攻!」

 

ルーズボールを拾った末広が小牧にボールを渡し、海常のカウンター。

 

「(アンリをブロックするか!)…戻れ、ディフェンスだ!」

 

アンリのダンクを防いだ三枝に驚愕するも冷静に指示を出す永野。

 

「ここは通さん!」

 

先頭でボールを運ぶ小牧の前に、スリーポイントラインの手前でいち早く追い付いた永野立ち塞がる。

 

「行くぞ!」

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

宣言と共に小牧は永野の手前で右から左へとクロスオーバー、直後に再度右へとクロスオーバーで切り返した。

 

「…っ!?」

 

スピードに乗った状態での小牧が得意の左右へのダブルクロスオーバー。しかし、永野は翻弄されず、冷静に1歩踏み出しながら左手を伸ばして進路を塞ぎ、小牧の足を止める。

 

「その程度か? 神城のはスピードもキレは今の比じゃねえぞ?」

 

不敵に永野は笑った。

 

小牧はワンマン速攻を諦め、その場でボールをキープしながら味方が攻め上がるのを待つ。海常の選手が攻め上がるのと同時に、陽泉の選手達も戻り、ディフェンスを構築する。

 

「1本、止めるぞ!!!」

 

陽泉のお家芸である2-3ゾーンディフェンスが敷かれるのと同時に主将の永野が両腕を広げながら声を上げ、チームを鼓舞する。

 

「(…さすが、190㎝代が2人に2m代が2人のゾーンディフェンス、映像でも感じたが、実際、目の当たりにすると半端じゃない迫力だ…)」

 

今大会ナンバーワンの平均身長を誇る陽泉のスタメン5人。高校バスケ随一のディフェンスを誇る陽泉のディフェンスからくる圧力に思わず圧倒される小牧。

 

「(うちの最初のオフェンス。ここを決めて流れは掴んでおきたい。何処から攻めて――っ、分かりました、では、頼みます!)」

 

どう攻めるか、ゲームメイクをしていた所、とある人物がボールを要求。一瞬、躊躇うも、小牧は意を決してパスを出した。

 

 

『おぉっ!!!』

 

パスが出された先を見て観客が沸き上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「行くぞ!!!」

 

「来いよ、捻り潰してやる!」

 

小牧からローポストの三枝にボールが渡る。三枝の背中に張り付くように紫原がディフェンスに入る。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

三枝が背中をぶつけ、パワーで押し込み始める。

 

「…っ」

 

ポストアップの圧力に紫原の表情が僅かに曇る。

 

 

『うぉっ! スゲー当たり!』

 

気迫溢れる当たりに観客がどよめく。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

再び背中をぶつける。

 

「…っ! 調子に乗るなよ…!」

 

激しい三枝の当たりに、紫原はその場で踏ん張って侵入を許さない。

 

「やるのう、ならば…!」

 

 

――キュッキュッ!!!

 

 

フロントターンで一気に侵入し…。

 

「ふん!」

 

そこからシュートを狙う。

 

「はぁっ!? それでかわしたつもりかよ!」

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

すぐさま紫原がブロックに飛び、ボールを挟んで2人の右手と右手がぶつかる。

 

「ちぃっ!」

 

足元に零れたボールをすぐさま三枝が拾う。

 

 

――スッ…。

 

 

直後にポンプフェイクを入れ、再びシュートを狙う。

 

「無駄だって言って――っ!?」

 

フェイクを見抜き、2度目のリフトに合わせてブロックに飛ぶ紫原。しかし、これもフェイク。三枝は飛んでいなかった。

 

「ふん!」

 

紫原が飛んだその後に三枝は改めてシュートを狙った。

 

「…っ! 決めさせるかよ!」

 

 

――ガシィィィッ!!!

 

 

フェイクにかかっても尚、ブロックに飛ぶ紫原。空中で2人は激しく交錯する。

 

 

『ピピー------ッ!!!』

 

 

同時に審判が笛を吹く。

 

「…っ!」

 

 

――バス!!!

 

 

交錯して体勢を崩しながらも三枝はリングに向かってボールを放る。ボールはリングに当たり、その後、リングの周辺をクルクルと回り、リングの中心を潜り抜けた。

 

『ディフェンス、プッシング、白6番! バスケットカウントワンスロー!』

 

2人が着地したすぐ後に、審判が笛を口から放し、紫原のファールをコールした。

 

 

『おぉぉぉぉー--っ!!!』

 

『いきなりキセキの世代から得点を奪いやがった!?』

 

先制点をもぎ取った三枝に驚愕の声が上がる。

 

 

「…ちっ」

 

得点を防げず、しかもボーナススローまで与えてしまい、思わず舌打ちをする紫原。

 

「よーし!!!」

 

「ナイス海さん!」

 

三枝と末広がハイタッチを交わす。

 

「彼モ凄イ。アノアツシカラ得点ヲ奪ウトハ…」

 

先制のダンクを阻止され、直後に紫原から得点を奪った三枝に驚く隠せないアンリ。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボーナススローをきっちり決め、3点プレーを三枝は成功させた。

 

 

海常 3

陽泉 0

 

 

『火神や神城、綾瀬だけじゃない…』

 

『紫原から得点を決めた三枝と、その前の黄瀬を抜いたアンリもスゲー!!!』

 

『この試合、キセキの世代だけじゃないぞ!?』

 

キセキの世代同士の戦いに当初、注目した観客達。その目当ての者を圧倒した2人の逸材に注目をし始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――キュッキュッ!!!

 

 

その後も試合は白熱していく。中でも圧倒的な存在感を醸し出しているのは…。

 

 

――チッ…。

 

 

「…っ!」

 

小牧からハイポストでパスを受けた黄瀬が、ボールを掴んだのと同時にリングに向かって反転し、後ろに飛びながらクイックリリースでジャンプシュートを放つ。

 

「サセナイヨ!」

 

しかし、横から現れたアンリの伸ばした手の指先に僅かにボールが触れる。

 

 

――ガン!!!

 

 

ボールに触れた事で軌道が僅かにズレ、ボールはリングに弾かれた。

 

「おぉっ!」

 

リバウンドボールを末広を抑え込んだ渡辺が掴み取った。

 

「ナイスリバウンドダヨ、カズキ!」

 

「アンリこそ、ナイスブロック!」

 

ディフェンスリバウンドを制した渡辺にアンリが親指を立てながら労うと、渡辺も軽く手を振りながら返した。

 

「(マークは引き剥がしたつもりだったんスけど、まさか、あそこから間に合うんスか…)」

 

急旋回しながらカットの動きで自身をマークしているアンリを引き剥がした黄瀬だったが、シュート体勢に入ってボールをリリースした時には既にアンリのブロックがシュートコースを塞いでいた。

 

「(これが外国人特有の身体能力とバネ、と言った所ッスか…)」

 

 

ボールは渡辺から永野の渡り、永野がボールを運んで行く。

 

「紫原!」

 

フロントコートまでボールを運ぶと、永野はローポストに立った紫原にパスを出した。

 

「来いやぁっ!!!」

 

ボールを受けた紫原。その背中に立つのは三枝。威嚇するように三枝が声を張り上げた。

 

「うるさいな。言われなくても…!!!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ボールを掴んだのと同時にドリブルを始める紫原。背中で三枝を押し込み始める。

 

 

『うぉっ! スゲー迫力!?』

 

その圧倒的な身長と身体能力でポストアップをする紫原のパワーは、傍から見ている観客にも伝わり、思わず歓声が上がる。

 

 

「…っ!?」

 

紫原の放たれる圧力に表情が一変する三枝。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

絶えず、ポストアップを続ける紫原。数々のディフェンスを蹴散らし、無にしてきた紫原の圧倒的なパワー。ダブルチーム…時にはトリプルチームさえ物ともしなかった紫原の単純にして最強のパワー。しかし…。

 

 

『…お、押し込めない…?』

 

観客からの戸惑いの声が上がる。

 

 

ポストアップでゴール下まで押し込む紫原だったが、三枝はその場で紫原を押し止めていた。

 

「…ぬ、おぉぉぉぉー--っ!!!」

 

腰を落とし、表情を歪ませながらも侵入を食い止める三枝。

 

「…っ! うっざいな…、だったら!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

押し込めない事に痺れを切らした紫原はスピンムーブで反転、三枝の後方へと躍り出た。その後、ボールを掴み、リングに向かって飛んだ。

 

 

――バシィィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

「それでかわしたつもりか!」

 

ボールをリングに叩きつける直前、後方から三枝が腕を伸ばし、ボールを叩き落とした。

 

 

『おぉぉぉぉー--っ!!!』

 

 

「ナイス海さん! …速攻!」

 

ルーズボールを拾った小牧がボールを運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

試合が始まり、内容は激闘を予想させる展開であった。その中でも存在感を露にしているのは、キセキの世代の2人ではなく、三枝とアンリであった。

 

『スゲー、陽泉の外国人、あの黄瀬を圧倒してるよ』

 

『海常の三枝だって、紫原を1人で相手にしてるぜ?』

 

『もしかして、互いにキセキの世代が下克上される展開もあり得るか!?』

 

双方、キセキの世代のマークを任された三枝とアンリがまさかの優勢で思わぬ期待が膨らむ観客達。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで、第1Q終了のブザーが鳴った。

 

 

第1Q終了

 

 

海常 16

陽泉 14

 

 

海常が僅かのリードで第1Qが終了し、両校の選手達はそれぞれのベンチへと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

海常ベンチ…。

 

「悪くない試合展開だ」

 

試合に出場した選手達がベンチに腰掛ける。その選手達の前に立った武内が選手達を労う。

 

「海さん、最高ですよ! あの紫原を圧倒していますよ!」

 

「ハッハッハッ! キセキの世代がなんぼのもんじゃい!」

 

三枝にタオルとドリンクを渡しながら労う海常の選手。三枝は豪快に笑い、周囲の者達を沸かせていた。

 

「(…まだ試合の4分の1が終わっただけなのに凄い汗の量ッス。余裕なんて全くないッスね)」

 

周囲が盛り上がる中、隣に座っていた黄瀬だけは冷静に三枝を見ていた。

 

余裕を振りまいている三枝だったが、黄瀬は気付いていた。三枝に余裕は全くなく、それどころかいっぱいいっぱいである事に…。

 

「安心せい」

 

そんな黄瀬の視線に気付いた三枝が、黄瀬だけに聞こえる声量で話しかけた。

 

「試合が終わるまで何としてでもあ奴はワシが抑えちゃるわ。じゃけぇ、そんな顔をしていらん心配させるな」

 

誰よりも状況を理解している三枝。上がっているチームの士気を下げない為にも黄瀬を窘める三枝。

 

「…っ、そうッスね」

 

そんな三枝の意図を察し、男気を理解した黄瀬は表情を改めた。

 

「それよりも、あの外人に随分と気前良くやられとるみたいじゃのう」

 

「いやいや、昨日のミーティングでも、第1Qは相手の力を測る為に様子を見るって言ったじゃないスか」

 

茶化すように咎める三枝に対し、黄瀬は唇を尖らせながら返す。

 

「ハッハッハッ! そうじゃったな、スマンスマン。…それで、どうなんじゃ?」

 

「それなら――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

陽泉ベンチ…。

 

「順調とは言い難いが、悲観する事はない。想定の範囲内だ」

 

ベンチに座る陽泉の選手達。その前に立った荒木が指示を出していく。

 

「アンリ、あの黄瀬相手に見事だぜ」

 

「スゲーよお前!」

 

黄瀬をマッチアップしているアンリを労う永野と木下。

 

「任セテヨ! コノママ下克上? シテミセルヨ!」

 

次々と称賛の声をアンリにかけていく。

 

「(前二見タ彼ハコンナモノジャナカッタ。キット大変ナノハコレカラダ)」

 

当のアンリは、黄瀬がまだ本気ではない事を理解しており、笑顔を振りまきながらも気を引き締めていた。

 

「紫原、大丈夫か?」

 

「…んー、何がー?」

 

ドリンクを口にする紫原に、荒木が声を掛ける。

 

「三枝だ。かなりやられてるようだが?」

 

「…何その言い方ー? 最初の10分は様子を見ろって指示出したのまさこちんじゃん」

 

荒木の言い方にムッとしたのか、紫原は不機嫌そうに返事をした。

 

「まさこちんって呼ぶんじゃねえって言ってんだろ! …で、どうなんだ?」

 

自身の呼び名に激昂した荒木が持っていた竹刀で紫原の頭をしばいた。

 

「いたっ! …あー、それなら――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ちょろいッスね」

 

「――あいつ、大した事無い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

遂に火蓋が切られたこの日、もう1つの注目の試合である海常対陽泉の試合。

 

試合は双方の主力である、三枝、アンリがキセキの世代を圧倒する展開となった。

 

しかし、その双方共に、ここから先の激闘の予感を既にしていた。

 

ここから試合はどのように進み、どのような結末を迎えるのか…。

 

試合は、第2Qへと向かうのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





メインの試合ではないとは言え、キセキの世代を擁するチーム同士の対決。程々に話数で収めたいが、どうなる事やら…(>_<)

とりあえず、少し前の海常対秀徳戦程度か、出来ればもう少しギュッと纏めたいですね…(;^ω^)

紫原を見て改めて思ったのですが、正直、陽泉って、紫原のパワーと単独でやり合える奴がいないとメチャメチャ不利ですよね。最高到達点が火神以上の時点で、ディナイが通じず、ローポストに立たれた時点でほぼほぼ詰みで、ポストアップで押し込まれてダンクされたらどうしようもない。これで周囲が紫原以外雑魚なら人数かけまくってどうにか出来るかもしれませんが、残念な事に、原作では他にも2m代が2人に、単純な実力はゾーンに入っていないキセキの世代クラスの氷室がいる。これ、どうやって勝ったら良いんですかね…(;^ω^)

ぶっちゃけると、花月の室井総司ってキャラは、花月を陽泉に勝たせる為に考えたキャラでもあります。紫原のポストアップに耐えられるキャラがいれば、エクストラゲームでシルバーにやった対策が取れるからです。原作の紫原の、面倒くさがりで気が向くか本気にならないとオフェンスに参加しないと言う設定、当初は良いキャラ付けだなって思ったけど、今に思うと、紫原が緑間みたいに生真面目な性格で、試合開始から終了までオフェンスに参加されたら何処も勝てないからそのキャラ付けにしたんじゃって今は思っています…(;^ω^)

っと、こんな事を考える今日この頃です。この話を投稿が、再びネタを集めねば…(ノД`)・゜・。

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。