黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

遅くなりましたが、明けましておめでとうございます…(;^ω^)

何とか投稿に漕ぎつけました…(>_<)

それではどうぞ!



第178Q~流れ~

 

 

 

――アメリカ某所…。

 

 

『おぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

開かれたノートパソコンから漏れ出す大歓声。

 

「おっ? アレン、何見てんだ?」

 

「ジャパンハイスクールのバスケのネット中継さ」

 

「ジャパン? …おいおい、ジャパニーズの試合の何が面白い――って、ソラじゃねえか!」

 

肩を竦めながらパソコンの画面に視線を移すニック。コートに立つ空の姿を発見する。

 

アメリカでの短期留学の折、アメリカのストリートバスケチーム、ジャバウォックと交流した空は、ジャバウォックのメンバーにも一目置かれる存在となっている。

 

「全国大会の準々決勝だ」

 

「へぇー、…だがよ、ソラがいるなら楽勝だろ」

 

「そうとも限らないぜ。ソラが言ってただろ? ジャパンにはソラと同等の才能を持つ逸材がまだまだいるって。今日はその1人がいるチームが相手らしい」

 

「あのソラと互角以上にやれる奴が他にもいるって話か。にわかに信じられない話だ」

 

僅かな期間とは言え、空とバスケをしたニックは空の実力をよく理解している。それ故、空と同等以上の実力者が日本に他にもいる事が信じられなかった。

 

「何かと思えば、サル同士の試合なんざ見てんじゃねえよ」

 

「「ナッシュ」」

 

そこへ、ナッシュが現れた。

 

「見ろよナッシュ。ソラが出てるぜ」

 

「興味ねえ」

 

場面を指差すニック。しかしナッシュは一瞥もくれず、椅子に座る。画面上では花月、洛山のスタメン選手達がコート中央へと移動していた。

 

「…」

 

アレンとニックの後ろから何気なくパソコンの画面に視線を向けるナッシュ。ナッシュは画面に映る空と…。

 

「…」

 

白のユニフォーム。洛山の4番のユニフォームを着た選手、赤司に注目したのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

審判によって高く上げられたボール。

 

「「…っ!」」

 

ジャンパーの両選手が同時にボールに飛び付く。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「…ちっ」

 

ジャンプボールは五河が制した。

 

「…」

 

叩かれたボールは赤司の下へ向かい、赤司がボールが掴み、洛山ボールから試合が開始された。

 

「っしゃ! 1本止めるぞ!」

 

空が両腕を広げながら檄を飛ばした。

 

 

「花月のディフェンスは、前に2人、後ろに3人のゾーンディフェンスだね」

 

ディフェンスに入る花月。その布陣を桃井が口にする。

 

花月は従来のマンツーマンディフェンスではなく、前に空と大地。後ろに生嶋、松永、天野の2-3ゾーンでディフェンスに入った。

 

 

「…」

 

ゆっくりとボールを進める赤司。

 

「83番だ」

 

コールと同時に赤司がパスを出す。

 

「オッケー!」

 

ハイポストでパスを受けた四条がすぐさまボールを捌く。

 

 

『来た! 洛山のナンバーコールからのデザインプレー!』

 

『80番台って、またパターンを増やしたのか!?』

 

今年の洛山のお家芸である司令塔、赤司からナンバーコールが発せられ、それを受けたたの選手達が絶えず足を動かす。コールナンバーの大きさに観客は驚く。

 

 

『…っ!』

 

選手とボールが目まぐるしく動き回り、花月の選手達は何とか食らいつく。

 

 

――ピッ!!!

 

 

シュートクロックが残り5秒を切った所で赤司が左アウトサイドに移動した二宮に向けて矢のようなパスを放つ。

 

「…っ」

 

すかさず生嶋がチェックに向かう。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

二宮はスリーのフェイクを入れ、すぐさまドライブ。生嶋を抜きさる。

 

 

「まずい! あのパス回しでゾーンディフェンスが乱されてやがる!」

 

思わず立ち上がる菅野。これまでの一連のパス回しで花月のゾーンは右側へと偏っており、生嶋をかわした二宮の前には阻む者はなかった。

 

「ちぃっ!」

 

これを見て松永がすかさずヘルプに飛び出し、リングに向かって飛んだ二宮に対してブロックに飛ぶ。

 

 

――スッ…。

 

 

「っ!?」

 

しかし、松永がブロックに現れると、二宮は1度ボールを下げ、そのブロックを掻い潜る。リングを越えて所で再度ボールを構え、リングに背を向けた状態でボールを放った。

 

『先取点は洛山――』

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

誰もが洛山の先取点を確信した瞬間、放たれたボールが突如現れた1本の手に叩き落とされた。

 

『神城だぁっ!!!』

 

ブロックしたのは空。赤司のパスと同時に乱されたゾーンにいち早く気付き、即座に動いていたのだ。

 

「っしゃ、速攻だ!」

 

「ええで空坊!」

 

着地と同時に声を出し、速攻に走る空。ルーズボールを拾った天野が走る空に縦パスを出した。

 

「っと…」

 

ボールを掴んでそのまま速攻に走った空だが、フロントコートに数歩足を踏み入れた所で足を止める。

 

「良く止めた。だが、先取点はやれないな」

 

赤司が目の前に立ちはだかり、空は無理に仕掛けず、1度その場で足を止めたのだった。その間に洛山の選手達はディフェンスに戻り、花月の選手達も各ポジションに付いた。

 

「…」

 

「…」

 

ゆっくりドリブルをしながらゲームメイクをする空。

 

洛山のディフェンスはマンツーマンディフェンス。空には赤司、生嶋には二宮。松永には五河。大地に三村と四条がダブルチームでマークし、天野がフリーの状態である。

 

「(自ら仕掛けてくるか、それとも…)」

 

空の一挙手一投足に注目する四条。ダブルチームの傍ら、いつでもヘルプに飛び出せるように備える。

 

「…」

 

目の前の赤司を注視しながらドリブルをする空。

 

 

――スッ…。

 

 

突如ボールを掴んだ空は頭上からオーバーヘッドパスで赤司にブロックされないようハイポストに立つフリーの天野にパスを出した。

 

「…っ」

 

パスと同時に天野に向かって猛ダッシュする空。すれ違い様に天野は差し出すようにボールを出し、空がそのボールを受けてそのままリングに向かって突き進む。

 

「決めさせん!」

 

天野からボールを受け取ったのを見て五河がヘルプに向かい、空の前に立ち塞がる。

 

「(ダンクやジャンプショットなら問題なく防げる。警戒すべきはフローターやフィンガーロール!)」

 

自ら空が決めに来ると読んだ五河。空がジャンプショットやダンクをしてくれば五河ならブロック出来る。そんな安易な選択を空がしないと見越した五河。相手のブロックをかわすフローターとフィンガーロールに狙いを絞り、タイミングを合わせる。

 

「…」

 

リングから少し離れた位置でボールを掴んだ空はそこから飛ぶ。

 

「(…ここだ!)」

 

タイミングを合わせて五河がブロックに飛ぶ。

 

「よし! ナイスタイミングだ!」

 

絶妙なタイミングでのブロックに他の洛山の選手達はブロックを確信する。

 

 

――スッ…。

 

 

しかしここで空はボールを下げ、ビハインドバックパスに切り替える。

 

「(パスか!?)」

 

右手でボールを持った空。左アウトサイドには生嶋の姿が。これを見て五河がすかさず右手を伸ばしてパスコースを塞ぐ。

 

 

――バチィ!!!

 

 

右手で放られたボール。

 

「なっ!?」

 

パスコースを塞いだ五河だったがここで目を見開く。右手で放られたボールは左方向で右方向へと飛んでいったからだ。

 

「(エルボーパス!?)」

 

右手で背中からパスを出した瞬間、空は左肘を突きだしてボールを当て、パスの方向を変えたのだ。ボールは逆サイド。右アウトサイドに立った大地のいる方向へ。

 

『っ!?』

 

意表を突かれたエルボーパス。フリーの大地にボールが渡れば先取点を確実。誰もが花月の先取点を確信した。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

しかし、大地の手にボールが収まる直前、突如現れた手に阻まれた。

 

『赤司だぁっ!!!』

 

パスをスティールしたのは赤司。空が走り込んだ直後、マークを外してフリーの位置に動く大地を視認し、動いていたのだ。

 

「(あのアイコンタクト余計だったな…)」

 

胸中で呟く赤司。空は天野にパスを出す直前、大地に一瞬視線を向け、合図を出していた。これを見た赤司は大地へのパスを読み切ったのだ。

 

「ナイス赤司! 速攻!」

 

ルーズボールを拾った五河が前方に大きな縦パスを出す。そこには既に二宮が速攻に走っていた。

 

「っしゃ!」

 

ボールを掴んだ二宮はそのままワンマン速攻に走る。

 

「…っ」

 

スリーポイントライン目前で立ち止まる二宮。

 

「先取点は決めさせません」

 

二宮の前を大地が立ち塞がった。ボールが赤司にカットされたのと同時に速攻に走る二宮を見つけ、即座に大地はディフェンスに戻っていたのだ。

 

「くそっ!」

 

速攻のチャンスを潰され、悪態を吐く二宮。大地が相手では分が悪いと見て無理に仕掛けず、味方が攻め上がるのを待ち、赤司にボールを渡す。その間に花月もディフェンスに戻り、ゾーンディフェンスを形成した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――キュッキュッ!!!

 

 

コート上をスキール音が響き渡る。強豪同士の激突に当初は盛り上がっていた観客だったが、今では静まり返っている。

 

『…っ!』

 

息を飲む観客。

 

『点が、入らねえ…!』

 

 

第1Q、残り8分13秒。

 

 

花月 0

洛山 0

 

 

試合が開始されてもうすぐ2分。両チームとも未だスコアを動かす事が出来ていなかった。

 

洛山は赤司が的確に指示を飛ばし、他の選手達も抜群のチームワークでフリーの選手を作らせず、花月のオフェンスをシャットアウト。

 

花月も空が赤司に負けじと指示を飛ばし、足りない部分は勘と自らのスピードを駆使し、他の選手達も止めるか空か大地のヘルプが来るまで時間を稼ぎ、洛山のオフェンスをシャットアウトしていた。

 

「…夏の時と同じ展開だね」

 

今年のインターハイで激突した両校。その時も試合開始直後から主導権を得る為に両校が死に物狂いで先取点を奪いにいく展開であった。

 

「そうだっけか?」

 

「そうだよ! もう、あの時大ちゃんが寄り道するから…」

 

記憶のない青峰に対し、桃井が唇を尖らせる。

 

 

※ 夏の試合では青峰が推しの写真集を買いに寄り道した為、第1Qは見ていない。

 

 

「うっせーな。…けどまあ、こうなっちまったら、先取点取った方に流れが行くだろうな」

 

「そうなると、洛山有利?」

 

「そうとも限らねえ。洛山にしても点は取れてねえからな。この場合、半端なチームワークより、1人でどうにか出来る奴がいた方が今の状況を打開出来る」

 

「つまり、カギを握るのは――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

洛山のオフェンスは天野の執念のブロックに失敗。再び空がボールを運ぶ。

 

「…」

 

目の前の赤司を警戒しながら空がゲームメイクをする。

 

「(試合が始まって2分…)」

 

「(先取点が欲しいこの状況…)」

 

「(となれば必ず…)」

 

二宮、三村、四条の視線が1人の選手に集まる。

 

「…」

 

ボールをキープする空と自身をマークする三村と四条を交互に視線を向ける大地。洛山の選手のみならず、観客の注目も大地に集まっていた。

 

試合が始まって大地は未だにボールに触れていない。試合開始当初から洛山は大地を警戒し、常にダブルチームで大地をマークし、ボールを持たせないよう努めていた。

 

「…ふぅ」

 

一息吐く空。ここまで空はパスを捌いて得点チャンスを窺うも実らず、自ら得点を狙おうにも赤司がそれを許さなかった。

 

「…」

 

次の瞬間、大地が動く。

 

「「っ!?」」

 

空に向かって走り出した。

 

「(直接ボールを貰いに行くつもりか!?)…スイッチ!」

 

三村が声を出す。

 

急速に空との距離を詰める大地。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

しかし空はボールを渡さず、大地が赤司の目の前で両腕を胸の前でクロスして急停止するのと同時に切り込んだ。

 

「スクリーン!? だが、赤司にスクリーンが通じると思うな!」

 

まさかの行動に驚く四条だったが、すぐに表情を改める。言葉通り、赤司は大地のスクリーンをロールしながらかわし、空を追いかけた。

 

「っ!?」

 

ここで赤司の目が見開く。空の目の前に立った赤司だったが、空の手にボールがなかったからだ。

 

「充!」

 

ボールの所在をすぐさま察知した赤司が指示を飛ばす。

 

「よし!」

 

ボールはローポストに立つ松永の手に渡っていた。赤司がスクリーンをかわす為にロールしたその瞬間に空はパスを出していたのだ。

 

「空けてないぜ!」

 

不意は突かれたものの、五河はすぐさま松永の背中に張り付くようにディフェンスに入った。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

松永は五河に背中をぶつけ、押し込み始める。

 

「(パワーも高さも俺が上。何も出来ずに外にパスを捌くはず!)」

 

実力差を見て五河はそう予測する。しかし…。

 

「おぉっ!」

 

「なに!?」

 

予測に反して松永はスピンムーブで一気にゴール下まで進み、強引にシュートを打ちに行った。

 

「ちぃっ!」

 

慌ててブロックに向かう五河。

 

 

――ガシィィィッ!!!

 

 

激しく交錯する2人。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

「…ぐっ!」

 

ぶつかりながらも強引にシュートを放つ松永。

 

 

――ガン!!!

 

 

だがボールはリングに弾かれた。

 

『ディフェンス、プッシング、白8番(五河)!』

 

審判はディフェンスファールをコールし、フリースローが与えられた。

 

「…ちっ」

 

是が非でも先制点が欲しかった今の状況。きっちり決める事が出来ず、思わず舌打ちが飛び出る松永。

 

「よし」

 

ベンチに座る上杉が今のプレーを見て満足そうに頷く。

 

「(くそっ…、まさか強引に打ちに来るとはな…)」

 

夏に戦った時はどこか消極的で真っ向勝負は避ける傾向があった松永。

 

「(純粋な能力アップだけじゃない。神城と綾瀬抜きで一ノ瀬率いる緑川を倒した事で自信を付けたという事か…)」

 

五河は松永の認識を改めた。

 

 

「…」

 

フリースローラインに立ち、じっくりボールの縫い目を確かめる松永。

 

「……よし」

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

1投目を決め…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

2投目もきっちり決め、フリースロー2本成功させた。

 

 

花月 2

洛山 0

 

 

『遂にスコアが動いた!』

 

『これで流れが変わるか!?』

 

 

変わって洛山のオフェンス…。

 

『…っ』

 

これまで同様、流れるようなパスワークで花月を翻弄、しかし…。

 

『うぉっ、はえー!?』

 

先程までとパスのスピードから人の動きがまた一段早くなったのだ。

 

「アウトサイドは俺と大地でカバーする。きっちりインサイド抑えろ!」

 

空が指示を飛ばす。

 

 

――ピッ!!!

 

 

息の付く間もない程の高速のパスワークで花月のゾーンディフェンスを翻弄する。

 

「…っ!?」

 

その時、赤司が中へと切り込み、ボールを貰いに動く。これを見て空が赤司との距離を詰める。

 

「甘いな」

 

「っ!? …ちぃっ!」

 

ボソリと呟く赤司。直後、空が気付く。二宮が赤司の動きに呼応して右アウトサイドに移動していた事に。

 

「っ!?」

 

すかさず出されるパス。大地もコーナーに釣り出されており、チェックに間に合わない。

 

「くそっ!」

 

放たれるスリー。慌てて空が距離を詰めてブロックに飛ぶも紙一重で間に合わず…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングの中心を潜り抜けた。

 

 

花月 2

洛山 3

 

 

「よーし!」

 

無事スリーを決めた二宮はガッツポーズ。

 

『さすが洛山!』

 

『先制点直後に鮮やかに返した!』

 

「だー、ちくしょう!」

 

自身の失態で先制点直後の止めて流れに乗りたい相手のオフェンスをみすみす決められてしまい、頭を抱える空。

 

「今のは仕方ありません」

 

「そや、しゃーない。中まで気にかけんでええ。その為のゾーンディフェンスや。空坊はスリーだけに警戒しいや」

 

「うす!」

 

悔しがる空を大地と天野がフォローする。

 

 

続く、花月のオフェンス…。

 

これまで通り、空はゆっくりボールを運ぶ。

 

「…」

 

フロントコートまでボールを運ぶと、空はノールックビハインドパスで左アウトサイドに展開している生嶋にパスを出す。

 

「打たせん!」

 

スリーを阻止する為、すぐさま二宮がタイト気味にディフェンスに入る。

 

「…むっ?」

 

しかし、生嶋はボールを掴むのと同時にすぐさま中にパス。そこにはパスと同時にハイポストのポジションに走り込んでいた空が。

 

「行くぜ」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ハイポストで赤司を背負うような形でボールを受け取った空。そのままドリブルを始め、背中で赤司を押し込み始めた。

 

「来やがったか! だが赤司だって夏から相当鍛え上げたんだ。そんな小細工通用しないぜ!」

 

洛山ベンチの選手が叫ぶ。

 

「百も承知だ。だが、神城とて夏は違う」

 

花月ベンチの上杉が胸の前で腕を組みながら呟く。

 

「…っ」

 

僅かに表情を歪ませる赤司。何とかポストアップを堪えようとする赤司だったが、ジリジリと押し込まれていく。

 

「アメリカでかなりフィジカルアップをしたようですからね。それに、三杉先輩の教えを思い出しながらポストアップしていた夏の時とは違い、きっちり姿勢から覚え込みましたから一味違いますよ」

 

姫川が続けて言う。

 

「…ちっ」

 

これを見て二宮がヘルプに動く。

 

「待て、秀平!」

 

制止をかける赤司。

 

「っ!?」

 

直後、二宮の顔スレスレをボールが通過する。

 

「絶好の景色だ」

 

フリーでボールを掴む生嶋。

 

「しまっ――」

 

振り返った時には既に遅く、生嶋は悠々とスリーを放つ。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングの中心を的確に射抜いた。

 

 

花月 5

洛山 3

 

 

「お返しだ」

 

「…」

 

鼻高々に告げる空。対して赤司は一瞥くれるのみ。

 

「くそっ!」

 

悔しがる二宮。空は二宮が自身のヘルプに来るのと同時にリングに視線を向けたままパスを出したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「やっぱりポストアップで攻めて来たね」

 

「ああ。この間やり合った時にも感じたが、あいつ(空)、相当鍛え上げてきた。赤司も貧弱な訳じゃねえが、それでも堪えるだろうな」

 

桃井の言葉に頷く青峰。

 

「後はエンペラーアイにポストアップが有効かどうかだね」

 

「有効とまでは行かねえだろうが、悪くはねえだろうな」

 

予測を立てる桃井。青峰はこれにも頷く。

 

「向かい合っての1ON1と違ってボールが遠くなる上、ポストアップに耐えなきゃならねえからボールを奪いにくるタイミングも限られる。他の奴ならいざ知らず、神城の反射神経なら紙一重でかわせる…かもな」

 

「なるほど…」

 

「このままポストアップを受け続ければジリジリスタミナを削られる。かと言って迂闊にヘルプに飛び出せば今みたいにパスを出される。…どうする赤司」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

洛山のオフェンス…。

 

 

――ピッ!!!

 

 

再び洛山の高速のパスワークが花月を襲う。

 

「(今度は惑わされねえ、スリーのみ警戒だ!)」

 

中のオフェンスは後ろの3人に任せ、アウトサイドに展開する選手に警戒を絞る空。

 

「…」

 

10秒程ボール交換が行われると、外の赤司から中にパスが出される。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「…ぐっ」

 

ボールはハイポストに立った二宮に出された。二宮は生嶋を背中に背負いながらポストアップで押し込み始める。

 

『うおー! やり返す気だ!』

 

「やらせるか!」

 

決してフィジカルの優れていない生嶋を狙われ、松永がヘルプに飛び出す。

 

「こっちだ!」

 

「頼む!」

 

その時、赤司が中に走り込み、二宮がそこへパスを出す。

 

「させるかい!」

 

その赤司へは天野が対応に向かう。

 

 

――バチン!!!

 

 

出されたパスに対し、赤司は両手で弾くように叩き、その軌道を変える。

 

「「あっ!?」」

 

思わず声を上げる松永。ボールはゴール下、そこへ走り込んだ五河に。松永と天野が飛び出してしまった事で空いてしまっていた。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

ボールを掴んだ五河はそのままボースハンドでダンクを叩き込んだ。

 

 

花月 5

洛山 5

 

 

『おぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

「うがっ! スマン!」

 

「ドンマイ! 取り返しましょう!」

 

頭を抱える天野を空が励ます。

 

 

花月のオフェンス。先程同様、空がボールを運び、パスと同時に中に走り込むが…。

 

「っ!?」

 

ハイポストに空が立つと、赤司はボールマンと空の間にポジション取りし、空に背中を預けるように立った。

 

「…ちっ!」

 

背中をぶつけるようにマークされ、やり辛そうにする空。

 

「(ポストアップのお手本のようなディフェンスや。さすがは赤司、もう対応してきよったか!)」

 

高さとパワーで劣る選手がポストアップする際の最適なポジション取りとディフェンスをする赤司に思わず胸中で称賛の言葉を贈ってしまう天野。

 

「…っ」

 

生嶋が赤司の頭を超えるように高さのあるパスを空に出すが…。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

フワリと浮かせた事が仇となり、四条にパスをカットされてしまう。

 

「アウトオブバウンズ、赤(花月)!」

 

そのボールはラインを割ってしまう。

 

「…ちっ」

 

「ドンマイ、ナイスカット四条」

 

マイボールに出来ずに舌打ちをする四条を三村が肩を叩いて励ます。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

『チャージドタイムアウト、花月!』

 

同時にブザーが鳴り、花月のタイムアウトがコールされた。

 

『早くも花月がタイムアウトを取ったぞ!』

 

選手達はベンチへと下がっていった。

 

 

花月ベンチ…。

 

「フー…」

 

ベンチに座るや否や、空は大きく息を吐きながらタオルで汗を拭う。

 

『…っ』

 

他の選手達も同様に、やや疲労の色を見せている。

 

「(いつもの攻守の切り替えが激しい点の取り合いじゃないにも関わらず消耗している。それだけ神経をすり減らしているんだわ…)」

 

息の詰まるような展開が続き、精神的疲労が激しさを感じ取る姫川。

 

「プハー! 相変わらず楽させてくれへん相手や!」

 

「スコア的には互角だけど、何かきっかけが欲しいよね」

 

今の展開に愚痴る天野。この流れを変えるきっかけを求める生嶋。

 

「今は何とか食らい付けている。だが、洛山相手に今のペースで戦えばいずれジワジワと放されて行くのは目に見えてる。…どうする?」

 

生嶋と同様の見解を示す松永が尋ねる。

 

「どうするもこうするも、今の状況で下手に動いても逆効果だ。今はとりあえず我慢だな。今大事なのはリバウンドをきっちり抑えないとな」

 

空の口から飛び出したのは我慢…つまりは現状維持の言葉だった。

 

「(神城の口からそんな言葉が出るとはな…)」

 

比較的焦れ性の空の言葉に菅野が驚く。

 

「とは言え…、ただ黙って迎え撃つのも性に合わねえ。……おい」

 

その時、空がおもむろに声をかける。

 

「随分と大人しいじゃねえか」

 

尋ねた相手は大地。

 

「ここまで大した活躍はなし。エースがそれじゃあ困るんだが?」

 

「それはすみません、これでもパスを待っていたのですが?」

 

「今日のお前の相手はキセキの世代じゃねえんだ。弱音も言い訳も聞きたくないぜ?」

 

「言いませんよ」

 

互いに視線を合わせずに会話をする空と大地。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここでタイムアウト終了のブザーが鳴った。

 

「…っと、そんじゃ行くか。…さあ、エースの時間だぜ」

 

ニヤリと空が笑ったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

試合が始まり、両者が激突。

 

試合は互いに膠着状態となり、スコアが伸び悩み、ロースコアゲームとなった。

 

同じみの横綱相撲で花月を迎え撃つ洛山。

 

タイムアウト終了後、これまで沈黙を保っていた花月のエースが立ち上がるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





ネタ不足に陥り、そこからモチベーションが低下し、気が付けば前回投稿から実に一月半経過していました…(>_<)

正直、今でもネタを集めながら執筆しているので、これまでの週一投稿が難しく、不定期投稿となるかと思いますので、投稿をお待ちいただいている方、おりましたら申し訳ありません…m(_ _)m

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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