黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

奇跡的にネタが降り注ぎ、週1投稿です…(^^)/~~~

それではどうぞ!



第175Q~存在感~

 

 

 

第2Q、残り9分57秒

 

 

秀徳 24

海常 18

 

 

最初の10分が終わり、秀徳リードで始まった試合。第2Q開始早々秀徳が動いた。何と、緑間がポイントガードと言う奇策を打った。

 

「…」

 

「…っ」

 

淡々とボールをキープする緑間。黄瀬は戸惑いながらも緑間のディフェンスに付いている。

 

 

「ミドリンがポイントガードって、やってる所見た事ないけど…」

 

桃井のデータにもない緑間のポイントガード。

 

元々の緑間のポジションであるSG(シューティングガード)は時としてポイントガードに代わってボール運びをする事もあるポジションでもあるが、あくまでもボール運びであり、ゲームメイクを担うのはポイントガード仕事である。ましてや、帝光中時代は赤司、現秀徳では高尾と言う、全国屈指のポイントガードがいた緑間にとって、ゲームメイクを担う機会は皆無に等しい。

 

「お前も緑間の性格は知ってんだろ。あいつは出来ねえ事はやらねえ奴だ」

 

青峰はそう言い、試合を見守った。

 

 

「(今日の緑間っちにはホント驚かされてばかりッスね。さて、何が狙いか…)」

 

気持ちを切り替え、緑間の動きに要警戒する黄瀬。

 

「…」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

突如、緑間が加速、仕掛ける。

 

「(…来た!)」

 

緑間のドライブに黄瀬もすかさず反応、付いていく。

 

 

――スッ…。

 

 

直後に急停止した緑間は頭上からパスを出す。

 

「ナイスパス!」

 

中でボールを受け取った高尾はすぐさまシュート体勢に入る。

 

「させん!」

 

これを見て三枝がブロックに現れる。

 

「残念♪」

 

しかしボールを頭上に掲げるだけで飛んではおらず、その体勢から飛んだ三枝の足元から弾ませるようにゴール下へパスを出す。

 

 

――バス!!!

 

 

ゴール下でボールを受け取った戸塚がそのまま得点を決めた。

 

 

秀徳 26

海常 18

 

 

「よし!」

 

得点を決め、拳を握る戸塚。

 

『いいぞいいぞ戸塚! いいぞいいぞ戸塚!』

 

同時に秀徳の部員達がエールを贈る。

 

「あの男…、なかなかの曲者じゃのう。本来の司令塔だけあって視野も広い」

 

緑間のパスからアシストを演出した高尾を評価する三枝。

 

「…1回だけじゃ狙いは見えてこないッスけど、とりあえず様にはなってるみたいッスね」

 

黄瀬が緑間の今のプレーを見た感想を口にする。

 

「直に狙いは見えて来る。じゃけん、今はオフェンスじゃ。点とらんと肝心な点差は縮まらん」

 

「もちろんッス。…ボール欲しいッス。いい加減、やられてばかりじゃ癪っスから。そろそろお返ししないと」

 

そう呟くと、黄瀬の表情が一変したのだった。

 

 

「頼みます!」

 

海常のオフェンス。ボールを運んだ小牧は早々に右ウィングに立つ黄瀬にパスを出す。

 

「覚悟するッスよ!」

 

「…来い」

 

高らかに宣言する黄瀬に対し、静かに答える緑間。

 

「…」

 

「…」

 

ジャブステップを踏み、ボールを小刻みに動かしながら牽制する黄瀬。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

意を決して黄瀬が仕掛ける。

 

「…っ」

 

これに対して緑間も遅れずに対応する。

 

「おぉっ!」

 

緑間に肩を触れながら強引にカットインする黄瀬。緑間も中に切り込ますまいと身体を張る。

 

 

――スッ…。

 

 

「っ!?」

 

ハイポストで停止した黄瀬はそこでボールを掴み、バックステップ。その際に下がりながらフェイダウェイシュートを放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

慌てて緑間がブロックに飛ぶも届かず、決められてしまう。

 

 

秀徳 26

海常 20

 

 

「今のは花月の綾瀬の…!」

 

黄瀬が披露した技に驚く高尾。今のは大地が使う片足でのフェイダウェイシュートであった。

 

「せっかく覚えた技ッスからね。…きっちりお返しさせてもらったッスよ。緑間っちと違ってパスで逃げたりせずに、ね」

 

ニヤリと笑みを浮かべながら言う黄瀬。

 

「…」

 

言われた緑間は何か言い返すどころか表情すら変える事なかった。

 

 

秀徳のオフェンス…。

 

緑間がボールを運び、中に切り込む素振りをみせつつ外の斎藤にパス。斎藤はチェックが来る前に中に走り込んだ高尾にパス。高尾が自らに走り寄る緑間にボールを手渡し…する直前にボールを引っ込め、逆のハイポストに立つ木村にパスを出し…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

その木村がその位置からジャンプシュートを決めた。

 

 

秀徳 28

海常 20

 

 

「ナイッシュー木村!」

 

ジャンプシュートを決めた木村に高尾が駆け寄り、肩を叩きながら労った。

 

「(…挑発には乗らないッスか。以前の緑間っちだったらやり返しにきてた所ッスけど)」

 

見た目に反して負けん気も強ければプライドも高い緑間。黄瀬の挑発を仕掛けても全く乗っては来なかった。

 

「(緑間っちのゲームメイクは丁寧で実に教科書通り。…けど、これなら高尾君に任せても同じ…いや、むしろ緑間っちの負担が増えるだけ…)」

 

現状、オフェンスはハンドラーが変わっただけで変化はない。ならば緑間にポイントガードをやらせる狙いは何かと考える黄瀬。

 

「…そろそろ始めるのだよ」

 

そんな黄瀬を他所に緑間は1人呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

海常のオフェンス。小牧が中の三枝にパスを出す。

 

「…むっ?」

 

三枝がボールを掴んだ瞬間、戸塚、木村、斎藤の3人が三枝を囲むようにディフェンスに入った。

 

『うぉっ!? 三枝にトリプルチーム!?』

 

「来おったかい! じゃけん、お見通しじゃあ!」

 

予想の範囲内であった三枝は動じず、頭上から外の氏原にパスを出す。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「なに!?」

 

「だろうな。中に人が集まりゃ、外にパスを捌くってな」

 

パスコースに割り込んだ高尾がボールをカットした。

 

「ほらよ真ちゃん!」

 

ボールを奪った高尾はすかさず緑間にパスを出した。

 

「さすがに単純過ぎたッスね。…けど、これ以上はさせないッスよ」

 

いち早くディフェンスに戻った黄瀬が緑間に立ち塞がった。

 

「…」

 

「…」

 

黄瀬が現れ、緑間は無理をせず、足を止めた。

 

「(行って下さい!)」

 

ここで木村が黄瀬にスクリーンをかけて合図する。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

合図を受けて緑間がカットイン。

 

「甘いッスよ」

 

しかし黄瀬はスクリーンを読み切り、ロールしながらスクリーンをかわし、緑間を追いかける。

 

「来いやぁっ!!!」

 

前方では三枝が咆哮を上げ、両腕を広げながら待ち受ける。すぐ横には黄瀬が並走。

 

「…」

 

緑間は無理をせず、後ろにいる高尾にボールを戻した。

 

「オッケー」

 

ボールを受けた高尾はすぐさまボールをコーナーに放る。

 

『っ!?』

 

するとそこには緑間がおり、海常の選手達が全員が目を見開いた。

 

「しまった!」

 

慌ててチェックに向かう黄瀬だったが…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

緑間のリリースの方が早く、悠々とスリーを決めた。

 

 

秀徳 31

海常 20

 

 

「ナイス真ちゃん!」

 

「お前もナイスパスなのだよ」

 

肩を叩いて労う高尾。緑間は眼鏡のブリッジを押しながら高尾を労う。

 

「くそっ…」

 

悔しがる黄瀬。緑間はパスを出すのと同時にスペースの空いたコーナーへ全速力で移動していたのだ。パスを出して一瞬意識が自分から離れた隙に。

 

そこから、秀徳のオフェンスが猛威を振るい始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

緑間がこれまで通りボールを運び、中に切り込むかあるいはパスを出す。

 

「…っ」

 

同時に緑間がフリーのスペースに移動し、そこからスリーを決める。他の秀徳の選手達もスクリーンをかけたり緑間のパスと同時にインサイドにポジションを移動してマークを中に引きつける等してスペースを作るお膳立てに徹していた。

 

 

「なるほどな」

 

「えっ?」

 

試合を見守っていた青峰が納得するように頷いた。

 

「緑間にポイントガードをやらせた理由はこの形を作り出したかったからだ」

 

青峰が秀徳のオフェンス戦術について解説を始めた。

 

「緑間はポイントガードとしてボール運びをしてはいるが、実質的なゲームメイクはこれまで通り5番(高尾)に任せてる」

 

「…」

 

「自ら仕掛ける事で海常のディフェンスを掻きまわす。その後、自ら決めるか、出来なければ5番にボールを戻す。直後に黄瀬のマークを引き剥がしながら空いてるスペースに移動してそこから緑間が決める。これが秀徳の基本戦術だ」

 

「…けど、それなら他の選手がミドリンにディナイをかけてボールを持たせないようにすれば…」

 

「言ったろ。実質的なゲームメイクは5番に任せてるってよ」

 

コート上で桃井の指摘通り、中に切り込んで高尾にパスを出して空いてるスペースに移動する緑間に対して末広がパスコースを塞ぎにかかった。

 

「…あっ!?」

 

しかし、高尾はコーナーに移動した緑間ではなく、パスコースを塞ぐ為にフリーにしてしまった木村にパスを出した。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

木村はフリーでボールを受け取り、そのまま得点を決めた。

 

「緑間にマークが集中すりゃ他が空いて決められちまう」

 

「なるほど…」

 

解説を聞いて納得する桃井。

 

「そして、緑間が与える影響はこれだけじゃねえ」

 

 

次の秀徳のオフェンス。中に切り込んだ緑間が外の高尾にキックアウト。そこからコーナーの空いてるスペースへとすぐさま移動した。

 

「…良い感じだぜ」

 

ニヤリと笑う高尾がパスを出す。

 

『っ!?』

 

高尾がパスを出したのは右コーナーに向かった緑間ではなく、左ウィングの位置に立っていた斎藤であった。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールを受けた斎藤が確実にスリーを決めた。

 

 

「これだ。緑間が動けば当然緑間に意識が向かって今みたいに空いてるスペースが出来ちまう。結果、フリーの選手が空いたスペースを有効に使って決められちまう」

 

「凄い…」

 

解説を聞いた桃井から出た言葉はこれの一言だった。

 

「緑間のオフェンス力と存在感を巧みに利用した秀徳のチームオフェンス。さすがの黄瀬も緑間1人ならどうにか出来てもチーム戦術までには手が回らねえ。…こりゃ、このままだとさらに点差が開くかもな」

 

予言めいた言葉を青峰が呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「(まずい…、このままだとまずいッスよ…)」

 

危機感を募らせる黄瀬。

 

 

第2Q、残り3分12秒。

 

 

秀徳 47

海常 28

 

 

第2Qが残り3分になろうとしている今、点差はもうすぐ20点差にまで開こうとしていた。

 

インサイドで三枝と言う強みを持つ海常だが、秀徳が徐々に対応してきているのだ。

 

 

――ガン!!!

 

 

氏原が放ったスリーがリングに弾かれる。

 

「おぉっ!」

 

「…っ」

 

ゴール下でのリバウンド争い。戸塚は背中で相手を抑え込む従来のスクリーンアウトではなく、相手に向かい合い、両腕を胸の前で揃えて三枝をゴール下から追い出しにかかった。

 

「おのれぃ…!」

 

戸塚を睨み付ける三枝。パワーではある程度拮抗していた2人だが、高さとテクニックで三枝が勝っていた為、これまでリバウンド争いを制していたが、戸塚がリバウンドを取る事を諦め、三枝に取らせない事に専念し始めた事で状況が変わってきた。

 

「よし!」

 

2人がリバウンド争いから外れた事で残った木村と末広がリバウンド争い。木村が末広を抑え込み、リバウンドを制した。

 

これにより、ゴール下でのパワーバランスが拮抗し始め、ますます不利になった海常。黄瀬も得点を決めてはいるが、緑間とマッチアップしている為、そこまで得点チャンスを得る事が出来てはいなかった。

 

「(監督、このままじゃヤバいッス。パーフェクトコピーを使わせて下さい!)」

 

黄瀬がディフェンスに戻りながらベンチの武内に目線を向けて懇願する。

 

「…」

 

その目線を受け、黄瀬が何を求めているのかを瞬時に悟り、顎に手を当てながら思案する。

 

「(確かにこのまま点差が広がるのは望ましくはない。秀徳のチームオフェンスに対応出来てない今、やむを得ないか…)」

 

残り時間を見て武内が決断する。

 

「(分かった。許可する)」

 

「(…コクッ)」

 

黄瀬に目線を合わせて合図する武内。メッセージを受け取った黄瀬は頷いた。

 

 

秀徳のターンオーバー。これまど通り、緑間が海常ディフェンスを掻きまわし、他の選手が緑間をフリーにする為に動く。右ウィングの位置でボールを掴んだ緑間がスリーを放った。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

放たれたスリーは横から現れた1本の腕にブロックされた。

 

「さすがにこれ以上点差を開かせる訳には行かないッスからね」

 

「黄瀬…!」

 

黄瀬にブロックされた事を悟った緑間。同時に黄瀬の変化にも気付く。

 

「反撃返しッスよ」

 

青峰のアジリティと紫原のディフェンスでブロックした黄瀬。黄瀬のパーフェクトコピーを発動された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

ここから黄瀬が猛威を振るい始めた。

 

 

――バス!!!

 

 

青峰のコピーで緑間のブロックをかわしながらボールを放り投げて黄瀬が決める。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

ディフェンスでは紫原のコピーで秀徳のオフェンスをシャットアウトした。

 

「マジ半端ねえ。オフェンスもディフェンスも手が付けられねえよ…!」

 

「キセキの世代全員を相手してるようなものだぜ…」

 

完全無欠の黄瀬のパーフェクトコピー。キセキの世代の技が秀徳を苦しめ、思わず弱音を吐く戸塚と斎藤。

 

「狼狽えるな」

 

浮足立つ選手達を緑間が一喝する。

 

「黄瀬が全員のキセキの世代の技が使えると言っても、キセキの世代全員を相手にしている訳ではない。如何に黄瀬でもこちらのオフェンスを止めるにも限度があるのだよ」

 

「ではどうします?」

 

木村が尋ねる。

 

「やる事は変わらないのだよ。これまで通り、俺がディフェンスを掻きまわす。…高尾、お前も国体で1度は目の前でパーフェクトコピーを経験したはずだ」

 

「ああ。ちょっと面食らったけどよ、ようやく少しだけど慣れてきた。何とかボール回すぜ」

 

緑間に尋ねられ、返す高尾。

 

「行くぞ。何も恐れる事はない。これまでやって来た事をやるだけだ。…行くぞ」

 

『おう!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

緑間の声掛けによって落ち着きを取り戻した秀徳の選手達。

 

「…」

 

それを見ていた中谷。

 

「すまない。タイムアウトは取り消させてもらうよ」

 

オフィシャルテーブルで申請したタイムアウトを取り消した。

 

「ここが正念場だ。ここを耐えれば再びこちらに流れが来る。月並みだが、踏ん張れ」

 

そう呟きながらベンチへと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

秀徳はこれまで通り、緑間を中心としたチームオフェンスで黄瀬のパーフェクトコピーに対抗した。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

外主体の秀徳のオフェンスは如何にパーフェクトコピーを使った黄瀬でも完全に止める事は出来ず、要所要所で得点を重ねた。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

しかし、黄瀬のパーフェクトコピーの破壊力は凄まじく。秀徳は止める事は叶わなかった。

 

 

第2Q、残り10秒

 

 

秀徳 51

海常 43

 

 

黄瀬の活躍によって、一時は20点近く開いた点差も一桁にまで縮まっていた。

 

「よーし!」

 

点差を一桁にしたダンクを決めた黄瀬とハイタッチを交わす三枝。

 

「ディフェンス! ここ止めて終わるッスよ!」

 

『おう!!!』

 

黄瀬が声を出すと、海常の選手達が応えた。

 

「(欲を言えばもっと点差は縮められなかったッスけど、充分ッス。この勢いのまま後半戦――)…えっ?」

 

自陣に戻る黄瀬の目にとんでもない光景が飛び込んで来た。

 

「よもや、忘れた訳ではないだろうな? 俺の『本来』のシュートエリアを…」

 

自陣ゴール下でボールを構える緑間。

 

『っ!?』

 

遅れて気付いた海常の選手達が目を見開く。

 

「フォームをクイックリリースに替えてから狭まった俺のシュートエリアだが、従来のシュートフォームに戻せば元通りだ」

 

ゆっくりボールの縫い目に指をかけながら沈み込む緑間。

 

「しまっ――」

 

気付いた時には既に遅かった。膝を曲げて沈み込んだ緑間はそこからボールをリリース。放られたボールは高弾道。大きな放物線を描きながら向かいのリングへと飛んでいく。

 

「忘れていたのならその目に焼き付けろ。俺のシュートエリアを。そして俺のシュートは、落ちん!」

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

高々と上げられたボールがリングの中心に落下し、潜り抜けた。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

同時に第2Q終了のブザーが鳴った。

 

 

第2Q終了

 

 

秀徳 54

海常 43

 

 

「緑間っち…!」

 

「最後の最後で油断したな。簡単に良い流れ、良い形で終わらせる程甘くはないのだよ」

 

そう黄瀬に告げ、緑間はベンチへと戻っていった。ハーフタイムの為、両校の選手達は控室へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

秀徳控室…。

 

「よーし! 何とか被害を最小限にとどめたぞ!」

 

控室に入ると、斎藤が喜びを露にした。パーフェクトコピーを使われ、点差が縮まったが、それでも二桁の点差で折り返す事が出来た為、戦果としては上々であった。

 

「…けど、あまり楽観視出来ないね。黄瀬のパーフェクトコピーの使用時間は優に残っているからね」

 

喜ぶ選手達を他所に、中谷は冷静に今の状況を見つめていた。

 

「同感です。最後の奇襲で何とか点差を二桁で終われましたが、この先、あのような愚は2度と犯さないでしょう」

 

同じく緑間も危機感を募らせる。

 

「後半戦もあの戦術プランを続けるとして、真ちゃん、スタミナの方は大丈夫か?」

 

「無論、問題ないのだよ。俺は今日まで人事を尽くしてきたのだ。最後まで走り抜くのだよ」

 

心配する高尾に対し、緑間は真剣な表情で返したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

海常の控室…。

 

「最後の最後でしてやられたわい」

 

ドカッとベンチに座る三枝。

 

「最後の最後で油断したッス。今後は2度と打たせないッス」

 

同じく座りながら黄瀬が謝罪した。

 

「…ここからどうする?」

 

氏原が本題を切り出す。

 

海常は秀徳のチームオフェンスは止めきれていないのが現状。黄瀬がパーフェクトコピーで何とか止めてはいたが、パーフェクトコピーは終盤の勝負所まで残しておく必要がある。となれば、どうにか止める必要がある。

 

『…』

 

選手達が対抗策を考える。

 

「……皆、ちょっといいスか?」

 

静まり返る控室。その沈黙を黄瀬が破り、皆が注目する。

 

「俺に考えがあるんスけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

『おぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

ハーフタイムが終わり、コートに両校の選手達が戻って来ると、観客の大歓声が選手達を出迎えた。

 

各ベンチに戻ると、それぞれ5人の選手達がコートへと足を踏み入れる。両校共に選手交代はなし。

 

『…』

 

海常ボールからの再開。審判からボールを受け取った氏原がパスを出し、第3Qが開始された。

 

「…なっ!?」

 

『なにぃぃぃぃぃぃっ!?』

 

試合が再開されると同時に観客から声が上がった。

 

 

「マジかよ…」

 

苦笑する青峰。

 

 

「さあ、1本行くッスよ!」

 

声高々に宣言してボールを運ぶ黄瀬。何と、黄瀬がポイントガードをやり始めたのだ。

 

「どういうつもりなのだよ」

 

ボールを運ぶ黄瀬の前に立った緑間が思わず尋ねる。

 

「どういうつもりも何も、緑間っちなら分かるっしょ?」

 

淡々と返す黄瀬。

 

「付け焼き刃でやれるとでも思っているのか?」

 

「出来なきゃ海常が負けるッスね。…これでも俺は一応オールラウンダーって呼ばれてるッスからね。出来る出来ないじゃない。やってやるッスよ」

 

真剣な表情で答える黄瀬。

 

「…なるほど、覚悟は出来てると言う訳か」

 

黄瀬の表情を見てただの思い付きによる奇策ではなく、相応の覚悟を感じ取った緑間。

 

「良いだろう。やってみるのだよ。そして思い知らせてやるのだよ。勝つのは俺達だと」

 

同じく真剣な表情で緑間が告げたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

試合の半分が終わり、秀徳リードで後半戦が開始された。

 

1度は大きく開いた点差も黄瀬のパーフェクトコピーで点差を縮めた海常。良い流れで海常が第2Qを折り返すと思いきや、緑間がこれに待ったをかけた。

 

そして始まった第3Q。海常は黄瀬がポイントガードを務め、緑間のお株を奪うと言うとんでもない作戦に打って出た。

 

この作戦が吉と出るか凶と出るか、試合は、後半戦に突入する……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





緑間をいじるのが楽しくなってきた…(;^ω^)

ただ1つ間違えるととんでもない事になるので、戦々恐々もしてたりします…(-_-;)

さて、この試合もそうなんですが、この先のウィンターカップの試合を考えるにあたって頭を悩ませています。さて、どうするか…(>_<)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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