黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

暑い…(;^ω^)

それではどうぞ!



第167Q~暗雲~

 

 

 

第2Q、残り6分51秒

 

 

花月 36

桐皇 40

 

 

「もう少し楽しむつもりだったが……止めだ。こっからは本気で勝ちに行ってやる。お前らに、力の差ってやつを教えてやるよ」

 

ボールを持った青峰がそう宣言する。

 

「(来る…!)」

 

青峰の目の前に立つ大地。青峰の変化に気付く。

 

「(俺にまで伝わってきやがる。青峰の集中力が増しやがった!)」

 

離れた位置にいる空も肌で感じ取っていた。

 

「…」

 

右のウィングの位置でボールを小刻みに動かしながら牽制する青峰。

 

「(僅かにでも気を抜けば外から打たれる。型にハマらないストリートバスケによるハンドリングはもはや予測不能。とにかく集中して食らいつかなければ…!)」

 

青峰の一挙手一投足に最善の注意を払うように神経を集中させた大地。

 

『…っ』

 

互いに張り詰める程に集中して対峙する2人。その緊張感は観客にも伝わり、思わず息を飲む。

 

「(…何を考えてんのか一目瞭然だな。だが…)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

青峰は突如として加速し、一気に切り込んだ。

 

「…っ!」

 

突然の青峰の急発進。しかし、集中状態でディフェンスをしていた大地は遅れる事無くバックステップしながら反転し、並走する。

 

「(読みどおり…、後はここからの急停止とストリートのテクニックに警戒して――)」

 

「あめーよ」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

しかし、青峰は止まるでも切り返すでもなく、そのままリングへと突き進み、ボールを掴んでリングに向かって飛んだ。

 

「…くっ!」

 

大地もブロックに飛ぶ。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

青峰は大地の上からボールをリングに叩きつけた。

 

 

花月 36

桐皇 42

 

 

『うおぉぉぉっ!!!』

 

「ボールをこねくり回すだけが俺のバスケだとか思ってんのか?」

 

リングから手を放し、着地した青峰が口を開く。

 

「そんな面倒くせー事しなくても点なんざ取れんだよ」

 

そう言い放ち、青峰はディフェンスに戻っていった。

 

「ようやく本性出してきたな」

 

空が大地に近寄りながら話しかける。

 

「…ええ。さすがは青峰さんです」

 

「どうする?」

 

と、空が尋ねると…。

 

「もちろん、こちらも負けていられません。真っ向勝負を挑みます」

 

真剣な表情で答える大地。その答えに満足した空はニヤリと笑みを浮かべ…。

 

「そうこなくちゃな。相手が誰だろうと関係ねえ。花月(うち)のエースはお前だ。ぶちかましてやれ」

 

そう語り掛けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

花月のオフェンスとなり、空がボールを運ぶ。フロントコートまでボールを進めると、空は迷う事無くパスを出した。

 

「そこで来るとは薄っすら予想しとったけど、…正直おすすめせんで?」

 

「うちのエースをなめんなよ。エンジンかかってきたのはそっちのエースだけじゃねえんだよ」

 

苦笑しながら忠告をする今吉に対し、空はそう返した。

 

「そうでなきゃ面白くねえ、来いよ」

 

「言われずとも」

 

笑みを浮かべながら言う青峰に対し、真剣な表情で返す大地。

 

「…」

 

「…」

 

ボールを小刻みに動かしながら牽制する大地。その動きに合わせて対応する青峰。

 

『(…ゴクッ)』

 

対峙しながら睨み合う両者。その緊張感が周囲の者及び観客にも伝わり、思わず息を飲む。

 

「…」

 

チャンスを窺う大地。時間にして数秒だが、その間に両者の間で緻密な駆け引きが行われている。そして…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

次の瞬間、大地が動く。一気に加速し、カットインする。

 

『行った!!!』

 

「…っ」

 

一気に切り込んだ大地に並走しながら追いかける青峰。

 

『さすが青峰! 簡単には抜かせねえ!』

 

『けど、綾瀬にはここから前後の緩急があるぜ!』

 

もはや大地の代名詞となっている全速のドライブからの高速バックステップ。同じキセキの世代さえも出し抜いた大地の必殺技。しかし…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

大地は下がらず、そのまま前進した。

 

『下がらねえぞ!?』

 

『まさか、やり返す気か!?』

 

先程の青峰が小細工無し。持ち前のスピードとアジリティで得点を見ていた観客が同じ事をやり返そうとしているのか、と期待し、思わず沸き上がる。

 

「ハッ! やれるもんならやってみろ!」

 

並走しながら青峰が言い放つ。

 

リング付近まで切り込んだ大地はボールを掴み、飛ぶ。それに合わせて青峰もブロックに飛んだ。

 

「っ!?」

 

しかし、ここでブロックに飛んだ青峰が目を見開いた。大地はボールを掴んだ後、リングにではなく、直角に右方向へと飛んでいたからだ。

 

「…ちっ!」

 

思わず舌打ちをし、青峰が懸命に手を伸ばす。

 

 

――バス!!!

 

 

しかし届かず。大地は右斜めに飛びながらボールをリリースし、バックボードに当てながら得点を決めた。

 

 

花月 38

桐皇 42

 

 

「こちらも引く気はありません。あなたを超えるまでは」

 

「上等だ、そうこなくちゃな」

 

先程のお返しとばかりに言い放つ大地に対し、青峰はニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

ここから、試合は両校のエース同士の対決に移行する。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ボールを受け取った青峰は得意のストリートバスケによる変則ドリブルを始める。

 

「…っ!」

 

大地はこのドリブルに食らいつきながらディフェンスをする。青峰がバックチェンジで左から右へと同時にボールを掴み、シュート体勢に入る。

 

「…っ」

 

これに反応し、バックチェンジと同時にスライドするように移動した大地はブロックに飛び、シュートコースを塞ぐ。

 

「っ!?」

 

次の瞬間、青峰が上半身を後方に寝かせるように倒し、その体勢からボールをリリースした。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはブロックの為に伸ばした大地の手の上を越えていき、リングを潜り抜けた。

 

 

花月 38

桐皇 44

 

 

『出た! 青峰のフォームレスシュート!』

 

『何度見ても信じられねえ! 何であれが入るんだ!?』

 

「いい反応するようになったじゃねーか。だがまだあめーよ」

 

「…っ」

 

挑発するように青峰が大地に告げる。

 

 

「やり返してやれ!」

 

変わって花月のオフェンス。空がボールを運び、早々に大地にボールを託す。

 

 

――ダムッ…ダムッ…!!!

 

 

ボールを受け取った大地はチェンジペースからのクロスオーバーで青峰の横を抜ける。

 

「…っ」

 

タイミングを読み切った青峰は抜かせる事無く大地の動きに反応する。

 

 

――キュキュッ!!! …ダムッ!!!

 

 

直後に大地は急停止し、同時に高速でバックステップをして下がった。

 

「…ちっ!」

 

舌打ちをしながらも青峰も停止し、反転して再度大地を追いかける。

 

 

――ピッ!!!

 

 

バックステップと同時にボールを掴んだ大地は同時にステップバックで右へとスライドし、シュート体勢に入った。

 

「…っ!?」

 

ブロックに飛んだ青峰だったが、大地はフェイダウェイで後ろに飛びながら、かつクイックリリースで素早くリリースした為、僅かに届かなかった。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放たれたボールはリングの中心を的確に射抜いた。

 

 

花月 40

桐皇 44

 

 

『こっちも負けてねえ!!!』

 

『あんなスピードを一瞬で殺して、しかもあのスピードで下がった挙句にステップバックされたら止めようがねえよ!!!』

 

「再び4点差です」

 

「…」

 

お返しとばかりに告げる大地。

 

 

「…っ、相変わらず寒気がするぜ。あのドライブのスピードを一瞬で殺しちまうだけでも異常なのに、そのドライブと同等のスピードでバックステップ、そこからステップバックしてフェイダウェイしながらクイックリリース。普通あんなの入らねえ…ていうかそもそも出来ねえよ」

 

今のプレーを見て高尾が冷や汗を掻く。

 

「それだけではない。ドリブルからシュートまでの繋ぎが夏の時と比べてスムーズになった。もはやあれは高校生レベルでは止める事は不可能なのだよ」

 

緑間が補足するように言ったのだった。

 

 

 

――ダムッ!!!

 

 

得意のストリートのムーブで大地を翻弄する青峰。

 

「…っ!」

 

抜かせまいと大地も必死に青峰の動きに付いていく。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

僅かに大地の右足に体重が乗った瞬間、青峰はボールを左から右へと切り返し、大地の左手側を抜ける。

 

「…っ! まだです!」

 

大地はバックステップで下がりながら反転し、青峰を追いかける。

 

「なっ!? あの体勢から追いつけんのかよ!?」

 

不十分な体勢にも関わらず青峰に食らいついた大地に驚く福山。

 

ボールを掴んだ青峰が飛ぶ。

 

「っ!? …くっ!」

 

リングとは逆方向に飛ぶ青峰。狙いにすぐさま気付いた大地もすぐさまブロックに飛んだ。

 

 

――バス!!!

 

 

飛んだ後、ボールを右手に構えた青峰は放り投げるようにリングに向かってボールを投げた。大地も懸命に手を伸ばすが届かず、ボールはバックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

 

「青峰っちも譲らないッスね」

 

「…むぅ、夏に戦えんかったのは残念じゃったが、実際戦ってたら考えると寒気がするのう」

 

黄瀬が呟くと、三枝は複雑な表情をした。

 

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ボールを受け取った大地は目の前の青峰に対し、ボールを小刻みに動かしたり、ジャブステップを踏みながら牽制し、その後、切り込んだ。

 

「…っ」

 

「…っ」

 

身体を張ってディフェンスをする青峰。大地は強引に突破を図る。リングの近くまで切り込んだ大地はボールを掴んで飛んだ。

 

「っ!?」

 

ブロックに飛んだ青峰だったが、目を見開いて驚いた。大地は前方のリングに向かってではなく、後ろへと飛んでいたからだ。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

フェイダウェイで青峰のブロックをかわした大地はそのままジャンプショットを決めた。

 

 

「出タ! アツシヲカワシテ決メタアノジャンプダ!」

 

インターハイ時のトドメの1発を思い出すアンリ。

 

「…ふん」

 

紫原はただ鼻を鳴らした。

 

 

桐皇のオフェンス。ボールを運んだ今吉はやはり青峰にボールを渡した。

 

「(スピードとリズムにだいぶ慣れてきました。ここを止めて一気に流れを――っ!?)」

 

ボールを奪い、連続得点を決めて流れをものに…そう考えた大地だったが、ここである失策をしていた事に気付く。

 

スリーの体勢に入る青峰。

 

「…くっ!」

 

ドリブルを意識過ぎたあまり、無意識に僅かに距離を取り、重心を後方に向けてしまい、対応が遅れてしまう。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

僅かにブロックが間に合わず、放たれたスリーは無情にもリングを射抜かれる。

 

『ここでスリーキター!!!』

 

「…ちぃ! ここで打ってくるんかい!」

 

思わず舌打ちが飛び出る天野。4点差と6点差を来る返していたエース対決。その均衡が崩れた。その影響が少なからず影響が出るだろう。

 

『…っ』

 

エース対決に際し、青峰に1歩リードされてしまい、表情が曇る花月の選手達。

 

「切り替えろ! 1本、行くぞ!!!」

 

そんな不安をかき消すように空が声を張り上げ、ボールを運ぶ。

 

「大地!」

 

フロントコートに入ると同時に空は大地にボールを渡す。

 

「(今のスリーの影響が出るのは確実や。青峰はん必ず止める。仮にここ決められても関係あらへん。均衡が崩れた事には変わらへんからのう)」

 

胸中でほくそ笑む今吉。

 

「予想以上に白熱しとったけど、エース対決は終いや。結局最強は青峰はん――」

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

空に振り返って勝ち誇った表情をした今吉だったが…。

 

「はっ?」

 

リングの方へ視線を向けると、リングの下で転々と跳ねるボール。

 

「っ!?」

 

続いて大地の方へ振り返ると、ゆっくりと右手を降ろす大地の姿。

 

『……おっ――』

 

『おぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

一瞬の静寂の後、観客は大歓声を上げた。

 

大地は空からボールを受け取った直後、すぐさまその場でシュート体勢に入り、ボールを放った。青峰はまだ完全にマークに来ていなかった為、半ばフリーの状態。

 

「そんな…、信じられない…」

 

桜井が言葉を失う。大地がスリーを放ったのはスリーポイントラインから2メートル近く離れた位置。しかも、自身のクイックリリースよりも速いリリースで決めてしまったのだ。

 

「何か言ったか?」

 

「…っ!」

 

笑みを浮かべながら空が今吉に告げる。

 

「これで元通りです」

 

「…」

 

そう告げる大地を無限で視線を向ける青峰。

 

青峰とてスリーを想定していなかった訳ではない。むしろ警戒していたくらいである。だが、あの距離から打ってくる事が想定外であった。

 

 

「あいつ…、いくら青峰が無警戒だったからって緑間じゃあるまいし、普通打たねえぞ」

 

大胆なスリーを見て火神も驚いていた。

 

「綾瀬君にとっても賭けだったのでしょうね。…けど、賭けを打った甲斐はあったと言えるわ」

 

傾きかけた流れを引き戻す事に成功し、賭けは成ったとリコは断じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

始まったエース対決。互いに互角の様相を呈していた。

 

「あの青峰と互角か…」

 

「また1つ格を上げやがったな…」

 

観客席の洛山高校の三村と四条が2人の勝負を見て驚愕している。

 

「…」

 

他の選手の同様の表情をしている中、赤司だけは表情を変える事なく2人の勝負を見つめていた。

 

「何か気になる事でもあるのか?」

 

そんな赤司に気付いた二宮が尋ねる。

 

「…少し思う所があってね」

 

「?」

 

赤司はただそれだけ返事をしたのだった。

 

 

「なるほど、伊達に黄瀬や紫原に勝った訳じゃなさそうだな」

 

ボールを受け取った青峰が目の前の大地に向かって告げる。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

同時に青峰が仕掛ける。

 

「…っ!」

 

相変わらずのスピードとアジリティを誇る青峰のドライブ。大地も何とか食らいつく。

 

 

――スッ…。

 

 

「っ!?」

 

ロールと同時に青峰がボールをリングに向かって放る。大地はボールに手を伸ばすも僅かに届かず。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングを潜り抜けた。

 

「けどな、例えあいつらに勝てても俺には勝てねえ」

 

「…っ」

 

大地の方に視線を向ける事無く青峰は告げ、ディフェンスに戻っていった。

 

 

続く花月のオフェンス。これまで同様、空はフロントコートにボールを運ぶと同時に大地にボールを託す。

 

「…」

 

「…」

 

睨み合うように対峙する2人。

 

「(スリーは……当たり前ですが、打たせてもらえそうにありませんね。…ならば!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

スリーは無理と見て大地が仕掛ける。

 

『抜いたぁっ!!!』

 

一気に加速した大地は青峰の横を抜け、そのままリングへとドリブルをし、ボールを掴んでリングに向かって飛んだ。

 

「いっけぇぇぇーーーっ!!!」

 

ベンチに菅野が声を張り上げる。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

ボールがリングに叩きこまれる直前、後ろから伸びて来た青峰の手でブロックされた。

 

「青峰先輩!」

 

ルーズボールを拾った國枝がブロックと同時に速攻に走った青峰に縦パスを出した。

 

「あかん! カウンターや、戻れ!」

 

慌てて天野が声を張り上げながら自陣へと戻る。

 

「…ちっ、ここは行かせねえ!」

 

フロントコートに入った辺りで空が青峰に追い付き、並走する。

 

「俺に追い付くかよ。相変わらずのスピードだなおい」

 

皮肉交じりに空を称賛する青峰。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

スリーポイントライン目前で急停止する青峰。

 

「…っと!」

 

空も直後に急停止するも全速力で走っていた事もあり、軽く足元が踊る。

 

「…っ!?」

 

振り返ると視線をリングに向ける青峰の姿が映り、慌てて距離を詰める空。

 

「(やっば!!!)」

 

同時に空は失策に気付く。青峰は視線をリングに向けてはいたが、ボールは保持していなかったのだ。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

そこから再加速し、青峰は空の横を抜けていった。

 

「ここは止めて見せます!」

 

リングに向かって飛んだ青峰。空との攻防の隙に追い付いた大地がブロックに現れた。

 

「よー追い付いた! 止めてまえ!」

 

青峰とリングの間に割り込むようにブロックに飛んだ大地。

 

「っ!?」

 

しかし、青峰はダンクするでも放るでもなく、そのままエンドラインを越える青峰。

 

 

――スッ…。

 

 

エンドラインを通り過ぎた青峰はバックボードの裏からボールを放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

バックボード裏から放られたボールは嘲笑うかのようにリングを潜り抜けた。

 

 

花月 45

桐皇 53

 

 

『うぉぉーーっ!!! 決めたぁっ!!!』

 

「「っ!?」」

 

空と大地の2人を抜きさって決めた青峰。

 

『…』

 

それを目の当たりにして茫然とする花月の選手達。

 

「ドンマイや。取り返したらええねん!」

 

気落ちする選手達を見て天野が声を出し、鼓舞する。

 

「当然、取り返すぞ!」

 

空も呼応するように声を張り上げた。

 

「…」

 

ボールを運ぶ空。

 

「どないしたん? おたくのエースにパス出さへんの?」

 

不敵に笑いながら今吉が空に尋ねる。

 

「…ちっ」

 

そんな今吉の表情を見て空が苛立ち交じりに舌打ちをする。

 

「…フー」

 

一呼吸吐いた空はボールを掴む。

 

 

――ピッ!!!

 

 

同時にパスを出す。

 

「っ!?」

 

しかし、パスの先は大地……ではなく。

 

「ナイスパス!」

 

國枝の裏を取った松永だった。

 

「なっ!?」

 

空のまさかの選択に國枝も予想外の反応を見せる。

 

 

――バス!!!

 

 

ボールを受け取った松永はそのままゴール下から得点を決めた。

 

 

花月 47

桐皇 53

 

 

「なんや、勝負避けるんかい。つまらんのう」

 

思わず愚痴る今吉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

その後も空はこれまで大地一辺倒のオフェンスを止め、他の選手にボールを散らす…あるいは自ら得点を決めるゲームメイクに切り替えた。それが功を奏したのか、点差は開くことなく試合は進んだ。

 

 

第2Q、残り12秒。

 

 

花月 56

桐皇 63

 

 

「…」

 

第2Q、恐らくこれが最後の花月のオフェンス。この1本はきっちり決めて終わりたいと考える空。

 

「下さい!」

 

空に対してボールを要求する大地。

 

「…」

 

悩む空。先程のターンオーバー以降、大地には一切パスを出さなくなった空。やられっぱなしのまま勝負を避けるのはチームの士気に関わる上、大地のモチベーションにも影響が出かねない。

 

「……よし」

 

覚悟を決めた空は大地にパスを出した。

 

「…」

 

「…」

 

ボールを構える大地。

 

「(必ず決めます。その為に皆さんに迷惑をかけてまでアメリカに行ったのですから)」

 

胸中で意気込みを露にする大地。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

一気に加速し、仕掛ける。

 

「(抜い――いやおかしい…)」

 

青峰の横を抜けた大地だったが、違和感を覚える。手応えがない。あっさり過ぎるのだ。

 

「っ!?」

 

その時、大地は気付く。青峰が自身のすぐ後ろにいる事に。

 

 

「やけにあっさり抜かせた思うたが、わざとか」

 

観客席の三枝は気付いた。青峰の狙いに。

 

 

「…くっ!」

 

前にいるとはいえ、闇雲に得点を狙いにいけば青峰にブロックされてしまう。

 

「ならば!」

 

ボールを掴んだ大地は真横に飛び、得点を決めにいく。

 

 

「…ダメだ。他の選手……いや、他のキセキの世代なら決められたかもしれない」

 

 

 

――チッ…。

 

 

「っ!?」

 

真横に飛んだ大地に反応し、大地が放ったボールに指先が触れる青峰。火神の予言通り、青峰にブロックされてしまう。

 

 

――ガン!!!

 

 

ボールに触れられた事でリングに嫌われるボール。

 

 

――ポン…。

 

 

そのボールを空がタップで押し込んだ。

 

 

『ビビーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで第2Q終了のブザーが鳴った。

 

 

第2Q終了。

 

 

花月 58

桐皇 63

 

 

「フー」

 

何とか得点を決めて終わり、深く息を吐く空。

 

「…っ」

 

対して大地の表情は曇っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

試合の半分が終わり、点差は5点。

 

試合開始直後にぶつかり、この試合2度目のエース対決。再び互角の戦いと思いきや、その勝負に変化が現れた。

 

点差だけ見ればほぼ互角であるが、エース対決は青峰に軍配が上がり始めた。

 

花月に本格的に牙を向き始めた青峰。試合は後半戦へと進んで行く……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





ネタが浮かばず、それが原因でモチベーションが下がり、今やスランプの状態です…(>_<)

去年まではネタが次から次へと浮かんだのになぁ…(/ω\)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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