黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

約1ヶ月ぶりの投稿です…(;^ω^)

それではどうぞ!



第166Q~3年生の執念~

 

 

 

第2Q、残り9分15秒

 

 

花月 31

桐皇 31

 

 

第2Q最初の花月のオフェンスは青峰に止められ失敗。ターンオーバーからの失点を喫し、流れを奪われたかのように見えた。しかし、直後のオフェンス、大地が青峰のディフェンスからスリーを決め、流れを引き戻した。

 

「…ほな、1本行こか」

 

人差し指を立てながら今吉がボールを運ぶ。

 

「っしゃ! 来い!」

 

フロントコートまでボールを進めると、待ち受けるのは空。気合いを発しながら両腕を広げてディフェンスに臨む。

 

「…」

 

今吉は上手く間合いを計りながら慎重に攻め手を定める。

 

「(……とまあ、悩んだフリしとるけど、ここ一択やろ)…頼んまっせ!」

 

ここで今吉はパスを出す。ボールの先は…。

 

『来た! エース対決!』

 

右ウイング位置でボールが青峰に渡り、大地が立ち塞がると、観客が沸き上がった。今日数度目となるエース対決。数を重ねる事に注目度は上がっていく。

 

「…」

 

「…」

 

ボールを小刻みに動かし、ジャブステップを踏みながら牽制する青峰。隙を作らないように対応する大地。

 

「(…チラッ)」

 

ここで青峰がリングに視線を向けた。

 

「(スリー? ……いや違う!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

直後、青峰がカットイン。切り込んだ。

 

「…っ!」

 

ギリギリの所で読み切った大地が青峰に食らいつく。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

それと同時に青峰は急停止し…。

 

「(パス!?)」

 

左方向へパスを放る。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

と、見せかけてロールしながら左へとスライド。

 

「…くっ!」

 

強引に身体を動かし、抜かせまいと大地も横へスライド。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

これを見て青峰は再度右へと切り返し、直後にボールを掴んでシュート体勢に入った。

 

「…くっ…そ…」

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

何とかブロックに飛んだ大地だったが、僅かに届かず、青峰の放ったジャンプシュートはリングを潜り抜けた。

 

 

花月 31

桐皇 33

 

 

『おぉっ! 青峰も負けてねえ!』

 

 

「視線のフェイクでスリーを意識させられた事でほんの僅か、0.1秒程反応が遅れた。その後のパスのフェイクで更に0.1秒。計0.2秒程後手に回された。他の者ならいざ知らず、青峰に相手にこの0.2秒の対応の遅れは命取りなのだよ」

 

一連の2人の対決を見た緑間は青峰の駆け引きを口にした。

 

 

「…っ」

 

得点を奪われ、表情を曇らせる大地。

 

「気にすんな。取られたら取り返す。切り替えろ!」

 

そんな大地に発破をかける空。

 

「もちろんです。どんどんパスを回してください」

 

空の言葉に表情を引き締め、走っていった。

 

 

「走れ!」

 

そう叫ぶと同時にフロントコートに花月の選手達が走り込んだ。

 

「っ! ラン&ガンかい! あくまでもワシらに点の取り合いを挑むつもりかいな」

 

花月の選択に僅かに面を食らう今吉。

 

「っしゃ!」

 

ドリブルで突き進む空。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

スリーポイントライン目前に立つ今吉の目の前でクロスオーバーで右から左へと切り返す。

 

「読めとるわ!」

 

次の行動とタイミングを読み切った今吉は空が切り返したボールに手を伸ばした。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

しかし、今吉の手がボールを捉える前に空が逆へと切り返し、今吉を抜きさった。

 

「(アッカンわ…! やっぱり話にならへん!)」

 

桃井のデータを基に先を読んだ今吉だったが、スピード、アジリティ、反応速度が段違いの空が相手ではそれでも追い付けず、思わず苦笑してしまう。

 

「っしゃ!」

 

中に切り込んだ空はボールを掴み飛ぶ。

 

「くそっ、何度もやらせるか!」

 

これを見た國枝がヘルプに飛び出し、ブロックに飛んでシュートコースを塞いだ。

 

「っと」

 

シュートコースを塞がれた空はボールを下げ、右方向に視線を向ける。そこには青峰のマークを振り切った大地の姿があった。

 

「(パスか!?)」

 

同時に大地の姿に気付いた國枝が左手を伸ばし、パスの阻止にかかる。

 

 

――スッ…。

 

 

空はパスを出す。

 

「っ!?」

 

しかし、ボールは大地のいる右方向ではなく、左方向へと放られた。

 

「ナイスパスや!」

 

そこに走り込んでいた天野がボールを掴んだ。

 

「もろたで!」

 

ボールを掴んだ天野は即座にリングに向かって飛んだ。

 

「ぶち込め!!!」

 

ベンチから菅野が声を出す。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

ボールがリングに叩きこまれる直前、横から伸びて来た1本の手によってボールは叩かれた。

 

「決めさす訳ねえだろこらぁ!!!」

 

咆哮を上げるように叫ぶ福山。

 

「お前かい!」

 

ブロックに現れた人物に驚く天野。

 

「おいおい、今のファールじゃねえのか!?」

 

ベンチから立ち上がりながら抗議する菅野。

 

『…』

 

しかし、審判は笛を吹かない。

 

「ファールなんかするかよ! おら、速攻だ!」

 

ルーズボールを拾った福山が今吉にボールを渡す。

 

「(よー言うわ。こっからやとディフェンスファールなのが丸わかりや。ま、今はもうけもんと思とこか…)」

 

偶然、審判の位置から見え辛い位置であった為、笛を吹かれなかったのだが、今吉はツキが向いたと判断し、そのままドリブルを始めた。

 

「…ちっ、ツイてねえ。だが、簡単には速攻は決めさせねえぜ」

 

「…っ!? ホンマに、どない規格外なスピードしとんねん…!」

 

先頭でボールを掴んで速攻に走った今吉だったが、シュートはおろか、スリーポイントラインを越える前に空に回り込まれ、苦笑した。

 

「こっちだ、寄越せ!」

 

続いて横から走ってきた福山がボールを要求した。

 

「ほな、頼んまっせ」

 

今吉は横に放るにボールを投げ、福山にボールを渡した。

 

「ハッハッ! ぶちかますぜ!」

 

そのまま中に切り込んだ福山がボールを掴んでリングに向かって飛んだ。

 

「調子に、乗んな!」

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

リングに振り下ろされるボール。空が後ろからブロックに飛び、これを阻んだ。

 

「うおっ!?」

 

現れた空に驚く福山。ボールを弾かれ、宙に舞った。

 

「何の、まだまだ!!!」

 

宙に舞うボールを福山が着地と同時にもう1回飛び、もぎ取る。

 

「くそっ!」

 

ルーズボールを抑えたかった空だったが、ボールが飛んだ位置が悪く、それが出来ず、思わず舌打ちをする。

 

「おらぁっ!!!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ボールを掴んで着地をした福山はポストアップをし、背中で空を押し込み、ゴール下へと向かう。

 

「…ちっ!」

 

何とか堪えようとする空だったが、体格差を覆す事が出来ず、徐々に押し込まれてしまう。

 

 

――バス!!!

 

 

ゴール下まで侵入した福山はそのままゴール下から得点を決めた。

 

 

花月 31

桐皇 35

 

 

「っしゃ!」

 

得点を決めた福山は拳を握りながら喜びを露にし、ディフェンスに戻っていった。

 

「スマン、俺のせいや」

 

ボールを拾った天野がスローワーになって空にパスを出しながら謝る。

 

「天さんだけのせいじゃないですよ。…っし、きっちり取り返しましょう!」

 

ボールを受け取った空はそう返し、フロントコートに向かってドリブルを始めた。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

フロントコートまで進んだ空はカットインし、中に切り込んだ。

 

 

――ピッ!!!

 

 

同時に前方から國枝が、横から福山が包囲にかかるのを見てボールを左方向へと放った。

 

「ナイスパスくー!」

 

そこには生嶋がフリーになって立っていた。

 

「あっ!?」

 

生嶋をマークしている桜井。空のカットインに釣られ、僅かに生嶋のマークを外してしまっており、慌ててディフェンスに付く。

 

「…」

 

スリーの体勢に入る生嶋。距離を空けてしまった為、もはやフェイスガードは間に合わない。

 

「(来る! 彼のブロックをかわしながら打つスリーが…!)」

 

桜井が脳内で確信する。生嶋得意の変則リリースによるスリー。例えブロックに間に合ってもブロックを避けるように飛んでスリーを放ち、しかも確実に決めて来る。

 

シュート体勢に入る生嶋。

 

「(良く見るんだ。彼の重心を…)」

 

試合前のミーティングで桃井から渡されたデータを思い出す桜井。

 

『生嶋君がシュート体勢に入ったら見るべきはボールではなく重心です。ブロックをかわすために横に飛ぶ際、どちらかの左右どちらかに重心が傾きます』

 

「(重心は……左!)」

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

右足に生嶋の重心が傾いたのを確認した桜井は左に飛び、放たれたボールをブロックした。

 

「生嶋のスリーが読まれた!?」

 

ひとたびシュート体勢に入ってしまえばブロックが困難な生嶋のスリーがブロックされ、驚く松永。

 

「ホンマ、頼りになる先輩達でっせ!」

 

ルーズボールを今吉が抑え、そのまま速攻に走った。

 

「だーちくしょう、上手く行かねえな!」

 

「…やっぱり追い付かれてまうんやな。もうすっかり慣れてしもたわ」

 

速攻を成功させる遙か手前で空に追い付かれてしまう事実を受け入れる今吉。

 

「…」

 

空を相手に無理な仕掛けはせず、味方が攻め上がるまで足を止めてボールキープに努める今吉。

 

「こっちだ。俺に持って来い!」

 

ハイポストの位置からスリーポイントラインの外側まで走ってボールを要求する福山。

 

「今調子良さそうみたいやし、頼んまっせ!」

 

絶賛波に乗っていると見た福山にパスを出す今吉。

 

「ド阿呆、何度も決めさせ――っ!?」

 

移動する福山を追いかけようとする天野だったが、何かにぶつかり、阻まれる。

 

「…っ」

 

そこには、國枝がスクリーンをかけていた。

 

「マジかよ!?」

 

個人技主体の桐皇がやらないプレー。少なくとも去年は見られなかったプレーに驚く菅野。

 

「別に禁止されとる訳あらへんからのう。國枝君はこういうのもやってくれるんやで」

 

ニヤリと笑う今吉。

 

「アカン、スイッチや!」

 

「…ちっ」

 

スイッチの声に松永が反応し、福山を追いかけ、立ち塞がる。

 

「お前が相手か。残念だが、お前じゃ俺は止められねえぜ」

 

「っ!? 舐めるな!」

 

侮るかのような福山の言葉に激昂する松永。

 

「…」

 

「…」

 

睨み合うように対峙する両者。

 

 

――スッ…。

 

 

突如、福山がスリーの体勢に入る。これを見てすかさず松永が両腕を上げる。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

しかしこれはフェイク。ボールを頭上にリフトさせると、福山は飛ばずにそのままドリブルで切り込んだ。

 

「それで出し抜けると思うなよ!」

 

松永もこれに反応。スリーはフェイクだと読み切った松永はフェイクにかかったフリをして福山を追走する。

 

「…言ったろ。お前じゃ俺は止められねえって!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

直後にクロスオーバーで切り返し、松永を抜きさった。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

松永を抜きさった直後にボールを掴み、ジャンプショットを決めた。

 

 

花月 31

桐皇 37

 

 

『うおー!!! 連続得点!!!』

 

『桐皇のキャプテンは伊達じゃねえぞ!?』

 

観客が一様に福山に注目する。

 

『点差が開いて来た。このままジリジリ放されるのか!?』

 

第1Q終わった時点で1点だった点差が6点にまで開いてしまう。

 

『…っ』

 

花月の選手達に僅かに焦りの色が出る。

 

「…」

 

ベンチで胸の前で腕を組みながら試合を見守っていた上杉が立ち上がり、オフィシャルテーブルに向かう。オフェンス特化の桐皇をこれ以上波に乗せてしまうと去年同様、たちまち点差を放されてしまう。流れを切る為にタイムアウトの申請に向かう。

 

「タイムアウトを――」

 

『おぉぉぉーーーっ!!!』

 

その時、観客席から大歓声が上がる。

 

「?」

 

この歓声に反応し、視線をコートに向ける上杉。そこには、右手を頭上に掲げ、そして振り返って自陣に戻る空の姿が。ボールはリングの下で転々と跳ねていた。

 

『スリー決めやがった!!!』

 

「スリー?」

 

観客から聞こえた言葉を口に出す。

 

 

攻守が切り替わり、ボールをゆっくり運ぶ空。

 

「(どうにか流れを変えなあかんこの状況。確実に決めたいこの状況で不確定要素の大きいエース(大地)には任せんやろ…)」

 

大地をマークしているのは当然青峰。ここを開ければ当然大きい。だが、リスクが大き過ぎる。その為、ここはないと踏む今吉。

 

「(そうなるとや、ここは自ら取りに来るはずや。流れを変える為の派手な1本を取りに。ほならやる事は1つ。切り込んできたらファールでもかまへんから止めたる。これでこの流れを維持出来る!)」

 

方針が決まった今吉は目の前の空に発進に備える。

 

「…」

 

しかし、ここで空が選んだ選択は…。

 

『っ!?』

 

突如シュート体勢に入る空。スリーポイントラインから1メートル程離れた位置からスリーを放った。

 

「嘘やろ!?」

 

無警戒だった為、空のスリーを見送った今吉が振り返り、ボールの行方を追う。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールをリングの中心を潜り抜けた。

 

 

花月 34

桐皇 37

 

 

「俺達は去年とは一味も二味も違うんだ。簡単に流れは渡さねえよ」

 

「っ!?」

 

背中から聞こえた空の声に振り返る今吉。空がしたり顔でそう告げ、ディフェンスに戻っていった。

 

「…ハァ。まさかスリー打って来るとはのう」

 

まさかの選択。そして見事に決めてしまう空に溜息を吐く今吉。

 

「まぁ、同じシチュエーションやったら翔兄も同じ事したやろうなぁ」

 

ここで今吉は自身の従兄であり、かつての桐皇の主将を務めた今吉翔一のあくどい笑みを思い出す。

 

「前途は多難や」

 

自身のマッチアップ相手にげんなりするも今吉は気合いを入れ直したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…ふむ、まさかスリーを打って来ましたか」

 

桐皇ベンチで前髪を弄りながら呟く監督の原澤。

 

「去年の……いえ、今年のインターハイ時での神城君なら間違いなく突破してダンクを狙いにいったと思います」

 

横で自身のノートを見ながら補足する桃井。

 

「チームに勢い付ける1発を狙うのではなく、こちらの勢いを止めに来ましたか。…なるほど、インターハイから今日にかけて、司令塔としてまた1つ成長したようですね」

 

派手に花形のダンクを決められればチームに勢いをもたらすかもしれない。しかし、リスクが大きい上、成功しても流れは変わらないかもしれない。だが、スリーと言う嫌な1本を決めれば桐皇にもたらされた勢いに水を差す1本となりえる為、得られる価値は大きい。目の前の今吉は外に無警戒である為、ブロックを気にする必要はない為、外のある空からすればローリスクである。

 

「贅沢を言えば出来ればここでリードを広げたかった所ですが、去年のように行ける程、甘くはないようですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

スリーを決めた空を見つめる上杉。

 

「申し訳ない。タイムアウトは取り消す」

 

オフィシャルテーブルに振り返った上杉は取りかけたタイムアウトを取り下げた。

 

「…フッ、今は選手達に任せてみるとしよう」

 

そう呟き、上杉はベンチへと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「さて…」

 

攻守が変わり、ボールを運ぶ今吉。

 

「(これから追い上げムードに入るはずが、ええ感じに水差されてもうたからのう。ここは1つエースに派手に決めてもらいたい……所やけど…)」

 

チラリと視線を青峰の方へ向ける。

 

「(さっすが、伊達にエースは張っとらんわ。空けてけーへんわ)」

 

青峰には大地がピッタリマークをしており、パスを出せる隙間がない。

 

「どうした、来ないのか?」

 

「そう焦らんでくれや」

 

目の前でディフェンスをしている空が問いかけると、今吉は苦笑しながら返した。

 

「(一瞬でも気ぃ抜いたらボールを奪われて即カウンターや。早いとこ考え纏めんと――)」

 

「いつまでチンタラボールキープしてんだ! 俺に寄越せ!」

 

その時、痺れを切らした福山が今吉に駆け寄りながらボールを要求。

 

「ほなら任せまっせ」

 

今吉の後ろを走り抜ける際に背後にボールを差し出し、福山はそれを受け取る。

 

「(ったく、神城と言い、綾瀬と言い、天才ってのは嫌な事や信じらねえ事を平気でしてきやがる…)」

 

ボールを掴んだ福山は胸中で愚痴る。

 

「けど負けねえ! この大会が最後の大会なんだ。1度も頂点に立たずに終われるかよ!」

 

叫びながらドリブルをし、そのままリングへと飛ぶ福山。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

ボールがリングに叩きつけられる瞬間、横から現れた1本の腕がこれを阻止する。

 

「阿呆が。最後のなのはお前だけちゃうわ!」

 

「天野!」

 

天野がブロックに現れ、ダンクを阻止し、ボールは高く舞った。

 

「…っ、ルーズボールを抑え――っ!?」

 

着地をした天野がボールを抑えようとしたその時…。

 

「…取らせませんよ」

 

國枝が天野の前に立ち、スクリーンアウトで飛ばせないよう抑え込んだ。

 

「いいぞ國枝。よくやった!」

 

天野が飛べなくなった事で福山が悠々とボールを抑えた。

 

「もういっちょ!」

 

再度福山が得点を狙いに行く。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

ボールを頭上にリフトさせようとしたその時、後ろから伸びて来た1本の手にボールを叩かれる。

 

「2度も打たせるかよ」

 

手の正体は空。空が後ろから福山の持つボールを叩いていた。

 

「…ちっ!」

 

慌てて零れたボールを抑える福山。

 

「もう打たせへんぞ」

 

「ここは止める」

 

天野が福山に張り付き、ディフェンスに入る。空も福山を包囲するようにディフェンスをする。

 

「(くそっ! 最悪な位置でボールを止めちまった!)」

 

ピッタリとディフェンスをされている為、シュートもドリブルも出来ず、焦る福山。このままではヴァイオレーション取られてしまう為、焦る福山。

 

「福山さん、こっち!」

 

その時、ボールを要求する声が福山の耳に届く。

 

「頼む、良!」

 

右アウトサイドでボールを要求した桜井にすかさずパスを出す福山。

 

「打たせないよ」

 

ボールが桜井に渡ると、すかさず生嶋がフェイスガードでディフェンスに入る。

 

「(…っ、相変わらず、シューターにとって嫌なディフェンスをしてくる)」

 

スリーそのものを打たせないよう張り付くようなディフェンスをする生嶋。

 

「(けど僕は負けない。この大会が最後なんだ。絶対に勝つんだ!)」

 

ディフェンスをものともせず、桜井は強引にスリーを放った。

 

「(っ!? これは!?)」

 

振り返った生嶋がボールの軌道を見て何かを確信する。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングを潜り抜けた。

 

 

花月 34

桐皇 40

 

 

「なっ! 決めよった!」

 

無理やり放ったスリー。リバウンドに備えていた天野だったが、見事に決められ、思わず声を上げる。

 

「…よし!」

 

スリーを決め、拳を握る桜井。

 

「國枝! お前もナイスフォローだったぞ!」

 

桐皇ベンチに座る新村が國枝にエールを贈る。最後の年の最後の大会。昨年時からベンチ入りもするもスタメン入り出来ず、それでも腐る事無く1年生でスタメン入りをした國枝に指導をした新村。

 

「…っ」

 

そんな新村に國枝は拳を握って応えた。

 

「…ふぅ。これが3年生の執念か」

 

執念でガムシャラにプレーをする桐皇の3年生。負けたら次はないと言う現実が資質や実力を越えて花月の選手達を襲い掛かる。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

続く花月のオフェンス。空はボールを運ぶと一気に加速して目の前の今吉を抜きさり、カットインした。

 

「それでも負けられねえんだよ。キセキの世代のいない『次』に用はねえんだ!」

 

切り込んだ空はボールを掴んでリングに目掛けて飛んだ。

 

「おぉっ!」

 

「決めさせるか!」

 

ヘルプに飛び出した福山と國枝が空の前にブロックに飛び、立ち塞がる。

 

 

――スッ…。

 

 

次の瞬間、空がボールを下げ、ブロックに飛んだ2人を空中でかわす。

 

「「っ!?」」

 

 

――バス!!!

 

 

その後にボールを放り、バックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

 

花月 36

桐皇 40

 

 

『うおぉぉぉっ!!! 空中で2人かわしながら決めやがった!!!』

 

技ありのダブルクラッチを決め、観客が沸き上がる。

 

「…ちっ」

 

みすみす得点を奪われた福山は思わず舌打ちをする。

 

「ホンマ、あれで同い年なんか? 嫉妬してまうわ」

 

苦笑しながらボールを運ぶ今吉。

 

「(4点なんてあってないようなものや。下手に拮抗してまうと体力削れて終盤に響いてまう。ここは――)」

 

「寄越せ誠二!」

 

その時、今吉の耳にそんな声が届く。

 

「…くくっ、もちろんや。言われんでもそのつもりでっせ」

 

大望の声を聞いて今吉は含み笑いをしながらそこへパスを出す。

 

「ったく、どいつもこいつも熱くなりやがって、良まで乗せられやがって、暑苦し過ぎんだよ」

 

ボールを受け取った青峰が溜息を吐きながらぼやく。そして、目の前に立つ大地の目を見据える。

 

「やるようになりやがったな。お前も、神城も」

 

「…」

 

「もう少し楽しむつもりだったが……止めだ。こっからは本気で勝ちに行ってやる。お前らに、力の差ってやつを教えてやるよ」

 

「っ!?」

 

そう宣言する青峰。同時に明らかに青峰に雰囲気が変わった事に大地は気付いたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「青峰に纏う空気が変わった…!」

 

火神も青峰の変化に気付いた。

 

「ここからが青峰の本領発揮なのだよ」

 

同じく緑間も気付く。

 

「過去にも青峰が本気でプレーした事はあった。けど、それでも何処かで試合を楽しんでいた」

 

赤司が青峰を見て喋り出す。

 

「どうなるんスかね。あの青峰っちが100%試合に勝ちに行ったら…」

 

未だ見た事ない自身のライバルの姿を見つめる黄瀬。

 

「…」

 

紫原は何も言葉を発する事無く試合を見つめていた。

 

3年生が執念を見せつけた桐皇。その執念も空が力でねじ伏せていった。

 

しかし、その執念に中てられた青峰の闘志に火が付いた。

 

キセキの世代のエース。その牙が花月に突き刺さろうとしていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





いやー空いてしまいましたorz

理由と致しまして、ネタ切れとこの暑さによるモチベーションの低下です…(;^ω^)

この先も未だネタが固まっていない為、投稿が遅れるかもしれませんがお待ちいただけると幸いです…m(_ _)m

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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