黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

試行錯誤しながらの投稿です…(;^ω^)

それではどうぞ!



第164Q~真っ向勝負~

 

 

 

第1Q、残り9分16秒

 

 

花月 2

桐皇 3

 

 

試合が開始され、ジャンプボールを制した桐皇が特攻隊長桜井で攻めるも、空のブロックに阻まれた。ターンオーバーからのオフェンス、大地が青峰と1ON1を仕掛け、得点を決める事に成功した。

 

直後の桐皇のオフェンス。先程の借りを返さんばかりに青峰と大地の1ON1。変則のドリブルに備える大地だったが、青峰が意表を突くスリーを放ち、度肝を抜いた。

 

「来いよ」

 

「言われなくとも…!」

 

花月のオフェンス、空は大地にパスを出し、再びエース対決が始まる。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

一気に加速し、仕掛ける大地。同時にバックチェンジで右から左へとボールを切り返し、スライドするように身体を左へと移動させる。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

それと同時に急停止する大地。

 

「…っ」

 

大地が上体を前に沈める。

 

「(…来るか!?)」

 

そのまま仕掛けて来ると見た青峰はドリブルに対応する為に重心を後ろにかける。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

しかし、大地は進まず、バックステップで再び距離を空けた。

 

「(ちっ! あの体勢から下がんのかよ…!)」

 

裏を掻かれた青峰。すぐさま大地との距離を詰める。

 

 

――スッ…。

 

 

下がった直後にボールを掴んだ大地はそこからステップバックでスリーポイントラインの外側にステップし、すぐさまクイックリリースのスリーを放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放たれたスリーはリングを潜り抜けた。

 

「野郎…」

 

重心を後ろにかけてしまった事が仇となり、ブロックに間に合わず、悪態を吐く青峰だったが、その表情は笑っていた。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

次いでの桐皇のオフェンス。ハンドラーの今吉はすぐさま青峰にボールを託す。ボールを受けた青峰は視線を1度リングに向けたと同時にドライブで切り込んだ。

 

「…っ!」

 

先程スリーを決められてしまった為、距離を取れない大地。目線のフェイクによって僅かに反応が遅れてしまう。

 

大地の横を抜けたと同時にボールを掴み、飛ぶ青峰。

 

「…っ! まだです!」

 

得意のバックステップで下がりながら青峰を追いかけ、ボールを放つ前にシュートコースを塞ぐ大地。

 

『あの体勢から追いついた!?』

 

「…それで止めたつもりか?」

 

「っ!?」

 

 

――スッ…。

 

 

青峰は大地が現れるのと同時に青峰は持っていたボールを下に下げ、そのまま下からボールをリングに向かって放り投げた。

 

 

――バス!!!

 

 

ボールはバックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

「…ふぅ」

 

得点を決められた大地。だが、その表情に焦りはなく、落ち着いていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『うぉー!!! 綾瀬がまた決めた!!!』

 

『青峰も負けてねえ!?』

 

その後もエース同士のぶつかり合いが繰り広げられる。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ロッカーモーションでバックステップと見せかけ、青峰を抜きさる大地。

 

「決めさせるか!」

 

リングに向かって飛ぶ大地に対し、國枝がヘルプに飛び出し、ブロックに現れた。

 

 

――ドン!!!

 

 

大地と國枝が空中で接触する。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

同時に審判が笛を吹く。

 

「…っ」

 

空中で何とか体勢を立て直した大地は持っていたボールをリングに向かって放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放たれたボールはリングを潜り抜けた。

 

『ディフェンス、イリーガル、黒10番! バスケットカウントワンスロー!』

 

審判がディフェンスファールとフリースローをコールした。

 

「なっ!?」

 

コールされると國枝がリングに振り返りながら驚愕した。

 

『スゲー! 当たりながら決めやがった!』

 

「…ふむ、去年の彼(大地)ならば、決められなかったでしょうね」

 

「はい。せいぜいリングに向かって投げるのが精一杯だったと思います」

 

今のプレーを見た原澤と桃井が言葉を交わす。

 

「なるほど。この1年……いや、インターハイが終わってからかなりフィジカルアップを果たしたみたいですね」

 

大地の姿を見てその成長ぶりを原澤は再確認した。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

フリースローを決め、大地は3点プレーを成功させた。

 

「くそっ…!」

 

「気にすんな。すぐに取り返すぞ」

 

悔しがる國枝を福山がフォローする。

 

 

「…」

 

「…」

 

桐皇のオフェンス。再び大地と青峰の1ON1が始まる。

 

「(…私の知る青峰さんなら先程抜かれて決められたままで黙っていられる性格をしていません。ここは抜きに来るはず…)」

 

抜きに来ると読んだ大地はドライブを警戒。

 

「…」

 

「…っ!?」

 

大地の読みとは裏腹に青峰はスリーを放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングを的確に射抜いた。

 

「…ふん」

 

鼻を鳴らす青峰。

 

「(抜きに来ませんでしたか…。今日の青峰さんは勝負を楽しむ事以上に勝ちに来ている…)」

 

有効と見てスリーを打つようになった青峰。過去の試合で打ってこなかったのはドリブルで相手を抜きさってそこから決める方がバスケや勝負を楽しめるからだろう。だが、スリーを躊躇わらず打ってきた事から、今日の青峰は試合に勝つ為に有効かつ最善の選択をしてくると言う事だ。

 

「矜持を捨ててまで勝ちに来るとなると、いよいよ一筋縄では行きそうにありませんね」

 

一息吐く大地。改めて今日の相手の強大さを痛感したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「(あの野郎…、あからさまに外の警戒を解きやがって。試しやがったな…)」

 

僅かに苛立つ青峰。先程の大地は敢えてスリーの警戒を解いた事に気付いたからだ。挑発とも取れる大地のディフェンス。

 

「(ぶち抜いときゃ良かったぜ…)」

 

軽く青峰は後悔していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「今のスリー。間違いねえ。青峰のスリーはまぐれじゃねえな」

 

きっちり2本スリーを決めた青峰を見て火神は頷く。

 

「青峰君の性格上、ハッタリや博打で打つ事はないでしょうから、練習したんでしょうね」

 

中学時代から青峰を知る黒子が口にする。

 

「(俺に止められるか? スリーも選択肢に入った青峰を…)」

 

自分がマッチアップする事を想定した火神は背中に冷たいもの滴るのだった。

 

 

「まさか、あの青峰っちが…」

 

同じく青峰を中学時代から知る黄瀬も今日の青峰に驚いていた。

 

「ったく、また一から青峰っちのコピーをし直さなきゃならないッスね…」

 

愚痴る黄瀬。だが、その表情は僅かに笑みが浮かんでいたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

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・・・・

 

 

「練習の成果が出ているようですね」

 

桐皇ベンチの原澤が満足そうに頷く。

 

「大ちゃんは乗り気ではありませんでしたけど」

 

苦笑する桃井。

 

今年のインターハイ。試合での負傷が原因で大事な試合を欠場し、敗北を喫した桐皇。自分が出ていれば勝てた、と思う一方で、その後の試合を見届けた青峰にある考えがよぎった。

 

 

――もし、仮に自分が試合に出ていれば、勝てたのか…。

 

 

緑間は狂信的なこだわりを持っていたスリーを捨て、ドライブ技術やポストアップ等のリングに近い位置でオフェンス。さらにスリーに磨きをかけた。

 

紫原はフィジカルアップを果たし、キセキの世代屈指のポテンシャルを誇る身体能力に磨きをかけるのと同時にその継続時間を増やすまで鍛え上げた。

 

赤司は自身のみならず、チーム全体の連携を磨き上げ、高校生のレベルを超えたチームを作り上げた。

 

火神や黄瀬も、主将としてチームを率いる立場となった事で勝利への執着心を見せつけた。

 

そんなキセキの世代と鎬を削る事で空と大地はその才能を遺憾なく発揮し、勝利した。

 

自身のライバル達が頂点に立つ為にそれぞれが進化を遂げたり、新たな武器を身に着けた。青峰自身、昨年のインターハイで三杉とマッチアップした際に自身のバスケの欠点を知り、パスを組み込むようになったが、それでも他の者程変わった訳ではない。

 

「インターハイでの彼の負傷は残念な事ではありましたが、結果的に自分を見つめ直すいいきっかけになったのかもしれませんね」

 

そう結論付ける原澤。実際、その言葉は正しかった。もし、アクシデントが起こらず、黄瀬や他のキセキ級の者達と戦っていたなら、例え敗れたとしても今のままのスタイルを貫き続けていただろう。だが、負傷し、考える時間と自分を見つめ直す時間が出来た事で青峰は自分が更なる進化を遂げるにはどうすれば良いかを考えるようになった。

 

その結果、練習後の走り込みでスタミナをアップを図り、スリーを身に着ける事でオフェンスでの選択肢を増やし、ディフェンスに迷いを生ませる結果となった。

 

「もちろん青峰君だけではありません。他の4人も青峰君同様、目まぐるしい成長をしてくれました。そろそろ桐皇が頂点に立ってもいい頃合いです」

 

確信めいたように原澤は口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

試合は両校のエース対決をきっかけに激しい点の取り合いとなった。だが、桐皇の司令塔である今吉はエース一辺倒ではなく、随所でボールを散らしていた。

 

「らあっ!」

 

福山が力強い切り返しで天野を翻弄し、中へと切り込んで行く。

 

「…っ! やるやんけ、やがその程度じゃ抜かせへんわ!」

 

キレのあるクロスオーバーに一瞬息を飲むも天野はこの動きに付いていく。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

福山は急停止し、ボールを掴んでジャンプシュートの体勢に入った。

 

「甘いわ、外せてへんで!」

 

これに反応した天野はブロックに飛び、シュートコースを塞いだ。

 

 

――スッ…。

 

 

天野がブロックに現れると福山はジャンプシュートを中断。フックシュートに切り替え、天野のブロックを越えるようにボールを放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放られたボールは天野のブロックを上を越えながらリングを潜り抜けた。

 

「しゃあ! うちは青峰だけじゃねえぞ!」

 

咆哮を上げるように福山が拳を握りながら叫んだ。

 

「決められてもうた!」

 

決められた天野は頭を抱えながら天を仰いだ。

 

「(天さん相手にあっさり決めた。あいつ、オフェンスだけならキセキの世代とタメ張るかもしれねーな…)」

 

全国屈指のディフェンス力を誇る天野からこうもあっさり点を取った福山を見て空は高く評価した。

 

 

「オラオラどうした! その程度じゃ俺は抜けねえぞ!」

 

変わって花月のオフェンス。大地のマークがきつかった為、天野にボールを渡した空。天野が福山に対して仕掛けるも福山のディフェンスに阻まれ、シュートまで持っていけない。

 

「(…っ! 様になっとる。去年とはまるで別人や!)」

 

オフェンスにさほど長けている訳ではない天野だが、それでも去年はディフェンスがザルな福山から点を取らせてもらえたのだが、今日の福山は点どころか碌にシュートまで持っていけない。

 

 

「桐皇に入学して長所を伸ばし続けた福山君ですが、主将に任命してから短所にも目を向けました。例え全国レベルの選手であっても、オフェンスが不得手な選手相手なら今の彼は止められますよ」

 

そう語る原澤。青峰と絶えず1ON1をし続けた結果。今では全国レベルの選手で抑えられるレベルに成長していた。

 

 

「天野先輩、こっちです!」

 

手詰まりとなる天野に対し、ローポストに立っていた松永がボールを要求した。

 

「スマン、頼むで!」

 

すかさずそこへパスを出した。

 

「来い!」

 

ボールが松永に渡ると、背中に張り付くように國枝がディフェンスに入った。

 

 

――キュキュッ…。

 

 

松永が左からターン…と見せかけて右からターンをし、そのままシュート体勢に入る。

 

「(読めてる!)」

 

これを読んだ國枝はリングとの間へブロックに飛んだ。

 

「っ!?」

 

が、松永は飛んではおらず、ボールを頭上にリフトさせたのみで、そこから更に左へターンし、改めてシュート体勢に入った。

 

 

――バス!!!

 

 

冷静に松永がゴール下から得点を決めた。

 

「よー決めた!」

 

駆け寄った天野と松永がハイタッチを交わす。

 

「くそっ…!」

 

フェイクにかかり、得点を許してしまった國枝が悔しがる。

 

 

「若さが出ちまったな。恐らくあのマネージャーのデータで先読みしたんだろうけどよ」

 

桃井のデータに従い、松永の動きに対応しようとした國枝だったが、右へのターン後のシュートフェイクについかかってしまった。

 

「花月の今年の強みの1つだな。去年は若松にスペックで完全に押されてほぼ何も出来なかったが、今年の桐皇のセンターはスタメンに選ばれるだけあって結構やるが、それでも松永の方が1枚か2枚上だ」

 

火神はセンター同士のマッチアップは松永に分があると断じた。

 

 

「寄越せ!」

 

桐皇のオフェンスに切り替わると、青峰がボールを要求し、ボールを運ぶ今吉が言われるがままボールを渡した。

 

「…」

 

「(……来る!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

青峰がクロスオーバーで切り込む。

 

「…っ」

 

これに大地は反応、咄嗟に横に1歩踏み出し、進路を塞ぐ。

 

 

――ボムッ!!!

 

 

次の瞬間、青峰は1歩踏み出した大地の股下にボールを投げつけ、リング付近にボールを高く弾ませた。

 

「「っ!?」」

 

突如、リング付近に高く舞ったボールを見てゴール下に立っていた松永と國枝が驚く。

 

「(パス? ……いや違う!)」

 

國枝へのパスを一瞬思い浮かべた大地だったが、すぐにその考えを改めた。ボールを弾ませた青峰がすぐさまそのボールに向かって行ったからだ。

 

『うぉっ! 青峰の1人アリウープだ!』

 

ボールに飛び付く青峰を見て青峰が何をする気かを知った観客が沸き上がる。

 

「…ちっ!」

 

ブロックに飛ぼうとした松永だったが、國枝が身体で松永を抑え込んだ為、それが出来ず、舌打ちをする。

 

青峰の手にボールが収まり、そのままリングに向かってボールを振り下ろした。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「させませんよ!」

 

その瞬間、リングと青峰の間に現れた大地がブロックに現れ、リングに振り下ろされたボールを抑えた。

 

「あそこから間に合うのかよ!?」

 

思わず福山が声を上げる。完全に虚を突かれた大地。しかし大地はバックステップで追いかけ、そのまま青峰のアリウープを防いだ。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

ブロックの甲斐があり、青峰の手からボールが零れる。

 

「ちっ」

 

アリウープが防がれ、舌打ちをする青峰。しかし、すぐさま零れたボールを再度空中で掴み取り、左方向へと無造作に放り投げた。

 

「すいません!」

 

青峰がボールを投げた方向、左アウトサイドに桜井が走り込んでおり、ボールを掴んだ桜井はそのままスリーを放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングを潜り抜けた。

 

「よし!」

 

スリーを決めた桜井は拳を握る。

 

 

「あそこからパスに切り替えやがった。青峰の奴、視野も相当広がってやがるな…」

 

1人呟く火神。狙って出したならまだしも、咄嗟のリカバリーでパスに切り替えた青峰。広い視野を持ち合わせていなければ出来ない芸当である。

 

更なる青峰の進化を目の当たりにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

試合開始し直後から得意の激しい点の取り合いを繰り広げる両校。

 

 

第1Q、残り1分53秒。

 

 

花月 23

桐皇 25

 

 

『とんでもない点の取り合いだ!』

 

『試合開始直後からもはや殴り合いだ!』

 

目まぐるしく攻守が切り替わり、得点を奪い合う試合展開を見て観客は大盛り上がる。

 

「今の所は互角かな?」

 

「ああ。去年は花月リードで第1Qを終えていたが、それは情報不足や青峰のスロースターター等が加味しての事だ」

 

高尾の予想に緑間が頷いた。

 

「今回はスタートから青峰はほぼ全開状態。桃井のデータも機能している。それを踏まえてのこの結果。互角と言わざるを得ないのだよ」

 

「桐皇はエースの青峰はもちろん、福山、桜井がきっちり点を取ってる。國枝もやや劣勢ながらもきっちり仕事をこなしている。花月はエースの綾瀬に、生嶋と松永も要所要所できっちり点を取ってる。天野も点こそ取れてねえけどポストプレーやスクリーンを駆使して得点に貢献してる」

 

両校の選手共にきっちり得点を上げ、得点に貢献していると高尾が口にする。

 

「エース対決は真ちゃんから見てどうよ?」

 

「…差はだいぶ……いや、ほとんど縮まっているのだよ。綾瀬は夏から今日まで相当レベルアップをしている。青峰とある程度張り合えるまでのフィジカルアップ、しかもそれでいて持ち前のスピードも落ちていない」

 

フィジカルアップを急ピッチで行うとスピードが落ちてしまう事があるが、それもないと緑間は断ずる。

 

「だが、それを考慮してもまだ青峰の方が上だ。経験、体格差、総合的なアジリティ。この辺りで青峰が優位に立っているのだよ」

 

「やっぱかー。まあ、去年の結果を考えれば1年でここまで差を縮めただけでもスゲー事なんだけどさ」

 

緑間の分析に苦笑する高尾。

 

「だが、これだけなら互角の試合展開にはならないのだよ。ここまで競った試合展開になっているのは――」

 

「神城、だろ?」

 

2人の視線がコート上の空に向く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

ゆっくりドリブルをしながらボールを運ぶ空。

 

「(来るで…、チェンジオブペースからのクロスオーバー…)」

 

空をマークする今吉が事前に桃井から聞いたデータを基に空の次の動きを先読みする。

 

「(1…2…3…ここや!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

タイミングを読み切り、空が動くのと同時に今吉も動く。しかし、空の持ち前のスピードと加速力であっさりちぎられてしまう。

 

「(あっかん…、もはや実力やない、ワシとは格がちゃうわ!)」

 

いつ、何を仕掛けてくるかドンピシャで予測したのにも関わらずあっさり振り切られ、表情を曇らせる今吉。

 

「止める!」

 

中にカットインした空に対し、國枝がすかさずヘルプに飛び出す。

 

「…」

 

直後に空はボールを掴み、ジャンプシュートの体勢に入った。

 

「おぉっ!」

 

これを見て國枝がブロックに飛んだ。

 

 

――スッ…。

 

 

目の前に國枝が現れると、空はジャンプシュートを中断。ボールを右手に持ち替え、手首のスナップを利かせるように放った。

 

「っ!?」

 

ボールは國枝が伸ばした手の上を放物線を描くように越えていき…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

そのままリングを潜り抜けた。

 

 

花月 25

桐皇 25

 

 

「っしゃ」

 

得点を決めた空は小さくガッツポーズをした。

 

「…フィンガーロール」

 

技ありのフィンガーロールを決められ、思わず空を睨み付ける國枝。

 

「ちっ…、突き放してもすぐに食らいついてきやがる…!」

 

序盤からシーソーゲームを繰り広げ、崩れない均衡に顔を顰める福山。

 

「泣き言ほざいてんじゃねえよ」

 

そんな福山に悪態を吐く青峰。

 

「食らいついてくるなら出来なくなるまで突き放しゃいいだけだ。…誠二、ボール寄越せ」

 

「どうぞ」

 

ボールを要求した青峰に言われるがままボールを渡す今吉。

 

「…」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ボールを受け取った青峰は振り返ると、1人ドリブルを始め、フロントコートに突っ込んでいった。

 

「お、おい! 1人で行くんじゃねえよ!」

 

そんな青峰を見て慌てて追いかける他の4人。 

 

「(この状況でパスはありません。ここは何としてでも…!)」

 

フロントコートに入った青峰。その青峰の前に大地が立ち塞がる。

 

「伊達に黄瀬や紫原と互角にやり合った訳じゃねえみてーだな。認めてやるよ」

 

大地が現れるのと同時に急停止した青峰。

 

「だがな、まだ俺とやり合うにはあめー」

 

「っ!?」

 

そう告げるのと同時に青峰は後方でドリブルを始めた。

 

 

――スッ…。

 

 

「っ!?」

 

次の瞬間、大地はボールを見失う。同時に大地の横を駆け抜ける青峰。

 

「くっ!」

 

ここで初めてボールの所在を知った大地。青峰は後方でドリブルをし、途中で背中からボールを放り、大地の後ろにボールを落としていたのだ。

 

放ったボールを掴んだ青峰はそのままリングに向かって飛んだ。

 

「舐めんなおらぁっ!!!」

 

そこへ、ヘルプに向かっていた空がブロックに現れた。

 

「よっしゃ! よく追い付いた!」

 

ベンチの菅野が立ち上がりながら拳を握る。

 

 

――スッ…。

 

 

しかし、青峰は空が現れると空中でロールしながら空をかわす。

 

 

――バキャァァッ!!!

 

 

その後、ボールをリングに叩きつけた。

 

『うわー! 何だそりゃー!!!』

 

ビッグプレーに観客が頭を抱えながら驚愕する。

 

「いまいち調子が出なかったが、ようやくエンジンがかかってきたぜ」

 

リングから手を放し、コートに着地した青峰。

 

「まだ足りねえな。俺を倒してーんなら、もっと死ぬ気で来な」

 

「「…っ」」

 

不敵に笑いながら青峰は空と大地に告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…っ、青峰さんのスピードとキレが増した。まだ全開ではなかったの…!?」

 

驚きを隠せない姫川。

 

「スロースターターと言うのは簡単に解消されるものではない。事前にアップをきつめに行う事で試合前に調子を限りなく万全に上げてきたのだろうが、それでもまだ全開には至らなかった。それだけの話だ」

 

特に動揺する事無く淡々と口にする上杉。

 

「…どうしますか?」

 

タイムアウトを取って流れを変えるか、それとも青峰に対してダブルチームを仕掛けるか…。

 

「このまま続行だ」

 

しかし、上杉は動かない。

 

「この程度は想定の範囲内だ。相手はうちと同じオフェンス主体のチーム」

 

『…』

 

「真っ向勝負だ」

 

確固たる意志でそう口にしたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

遂に始まったリベンジマッチ。

 

開始当初から点の取り合いの激しいシーソーゲームが繰り広げられる。

 

全開と思われた青峰だったが、さらに上を見せつけ、空と大地を圧倒。

 

そんな状況で上杉が口にしたのはあくまでも真っ向勝負。

 

試合は、両者の矛が、ぶつかり合う……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





前話投稿後、まさかの日間ランキング入りをし、1人歓喜しました…(^_^)/

空前のネタ不足の為、次話以降、大雑把な試合展開が未定の為、もしかしたら投稿が遅れるかもしれませんが、お待ちいただければ幸いです…m(_ _)m

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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