黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

少しずつ暑くなってきましたね…(;^ω^)

それではどうぞ!



第161Q~アメリカでの出来事 side空~

 

 

 

「どうしてこうなった…」

 

空は困惑していた。

 

『おぉぉぉーーーーーっ!!!』

 

現在、空はストリートバスケの会場に来ていた。コート上に立つ空。その周囲は大勢の観客が大いに盛り上がっていた。

 

「…」

 

突如渡されたユニフォームに着替えて訳も分からずコートに立つ空。それ以上に困惑しているのは…。

 

「おいサル。足引っ張りやがったらぶち殺すからな」

 

「それがわざわざ助っ人に来てやった奴に言う言葉か?」

 

「ハッ! 調子に乗んじゃねえ。てめえなんざ数合わせに決まってんだろ」

 

「あぁっ!?」

 

話しかけられ、悪態を吐いた白人のアメリカ人に掴みかかろうとする空。

 

「ストップだ! 悪い、あいつは少し口が悪いんだ。こらえてくれ。…おい、無理やり連れて来たんだから少しは抑えてくれよ」

 

衝突仕掛ける2人の間に入って仲裁に入る1人の黒人。

 

「…ふん」

 

「…ちっ」

 

間に入られ、渋々矛を収める2人。

 

「おいおい、シルバーは来ねえわその穴埋めに来たのはこんなジャパニーズな上に目に見えてナッシュとは馬が合わねえ。こんなんで勝てるのか?」

 

「全くだぜ」

 

一連の様子を見ていた白人のアメリカ人ニックと、黒人のアメリカ人のザックが溜息を吐く。

 

現在、空はジャバウォックのユニフォームを着て今まさに始まろうとしている試合に出場しようとしている。何故そうなったのかと言うと、話は1時間程前に遡る…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「休みかー。と言っても、何をしたらいいのやら…」

 

スティーブから練習の休みを告げられた空。暇を持て余した空は外へと足を運んでいた。

 

「今日までバスケ漬けだったからな。…何か楽しそうな所は…」

 

面白い物目当てに辺りを散策する空。未だ、英語での会話は上手く出来ず、ジェスチャーと片言の単語で何とか乗り切っている空。携帯やガイドブック等に目を通しても読めないので適当にブラついている。

 

「…おっ?」

 

しばらく歩いていると、バスケットのリングが設置されている小さな公園に辿り着いた。そこでは地元の子供達がストリートバスケを楽しんでいた。

 

「楽しそうだな。…これは、行くしかねえだろ」

 

目を輝かせながら公園内に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

「あぁっ? シルバーが来ねえだと?」

 

場所は変わってストリートバスケ会場。ナッシュが苛立ち交じりに言う。

 

「電話にも出やがらねえ。ったく、何してんだよあいつ…」

 

少々焦りながら電話をかけ続けるザック。

 

「あのバカ野郎が…!」

 

今にも怒りを爆発させそうなナッシュ。

 

ナッシュが所属するストリートバスケチームのジャバウォックはストリートバスケの大会に参加しており、その決勝戦が1時間後に迫っていた。しかし、同じく所属する選手のジェイソン・シルバーいつまで立っても会場に来ず、連絡も取れないのだ。

 

「そういえばあいつ、昨日飲みに行くとか言ってたな…」

 

思い出したかのようにニックが呟く。

 

「あいつの酒癖の悪さ知ってんだろ。何で止めなかった!?」

 

「俺が言って止まる奴じゃねえだろ!」

 

思わずニックに掴みかかるナッシュ。ニックは手を振りながら返事をした。

 

「今は喧嘩してる場合じゃないだろ。どうする? 正直、シルバー抜きであいつら相手はきついぜ?」

 

アレンが仲裁に入り、対応策を尋ねた。

 

「……仕方ねえ。代わりになりそうな奴を捕まえてくるしかねえ」

 

苦い表情をしながらナッシュが決断する。

 

「お前らは準備してろ。俺はその辺のストリートバスケ場で使い物になりそうな奴を探してくる」

 

そう指示を出したナッシュはその場を後にしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…ちっ!」

 

苛立ち交じりに舌打ちをするナッシュ。代わりの選手を探し回っていたが、戦力になりそうにない者ばかりで、いっそ4人で試合をした方がマシなレベルの者しか見つからなかった。

 

「時間がねえ。次の場所で捕まえるしかねえ」

 

試合の時間が刻一刻と近付き、未だ、シルバーがやってきた連絡も来ていない。試合時間を考えて次のストリートバスケ場が最後となった。

 

「…」

 

バスケコートがある場所に足を運ぶナッシュ。そこには…。

 

「ハハハッ! やるじゃないか!」

 

無邪気にバスケを楽しむ者達。その中で…。

 

「…っ!?」

 

1人の日本人が一際活躍をしていた。

 

「(なんだあいつは…、見たところサル(日本人)か…)」

 

ナッシュが侮蔑する日本人。巧みにボールを操り、コート上で飛びぬけて存在感を表していた。

 

「(…ちっ、サルなんざ興味ねえ。他にマシそうな奴は…)」

 

矜持に障る為、他の適任の選手を探すナッシュ。だが、単純な体格ならまだしも、身体能力やテクニックに関して、遙かに質が劣る選手しかいない。

 

「(…もう時間がねえ。イラつくが仕方ねえ)…おい、そこのサル!」

 

「…あっ?」

 

もはや悩んでいる時間がないナッシュはそのコート上の日本人に声を掛けた。

 

「何だてめえいきなり――っ!? お前は、ナッシュ・ゴールド・Jr!?」

 

振り返った日本人はいきなりな物言いに怒りを露にしたが、その顔を見て表情を変えた。

 

「…あん? てめえ何処かで――っ!? てめえは…!」

 

ナッシュも何処か見覚えがあり、記憶を辿り、行き着いた。

 

「てめえ確か、セイヤとタケシのいたチームにいたサルか」

 

「何であんたがこんな所に…」

 

まさかの再開に驚く2人。

 

「時間がねえ。話は後だ。俺と一緒に来い」

 

「あん? ……来いって言ってんのか? 何処にだよ!?」

 

単語を拾って何とか言葉を理解する空。

 

「良いから黙って付いて来いサル! 時間がねえって言ってんだろ!」

 

「それが人にモノを頼む態度かよ! 痛ぇな、放しやがれ!」

 

痺れを切らしたナッシュは空の首根っこを掴み、無理やり連れて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「「…ちっ」」

 

互いに舌打ちをし、そっぽを向く空とナッシュ。

 

ナッシュに引き摺られるように連れてこられた空。ナッシュが日本人を助っ人に連れて来た事に驚いたジャバウォックの選手達だったが、いがみ合う空を宥めながら片言ながら日本語が喋れるアレンが事情を説明。

 

・現在、ジャバウォックはストリートバスケの大会に参加しており、今はその決勝である事。

 

・どういう訳かシルバーが来ず、決勝の相手は今いる控えのメンバーでは力不足である事。

 

・その穴埋めとして空を連れて来た事。

 

以上の事を空は説明を受けた。当初はナッシュの態度を見て断ろうとしたが、アレンが必死に頭を下げたので渋々参加を決めたのだった。

 

「ようナッシュ」

 

その時、今日の決勝の相手チームの1人がナッシュに歩み寄り、話しかけた。

 

「あのデカブツの姿が見えねえな。まさか怖気づいて逃げたのか?」

 

「…んな訳ねえだろ。てめえら如き、あいつ抜きでも充分なんだよ」

 

ニヤニヤしながら話しかける相手チームの選手。対してナッシュは鼻を鳴らしながら返す。

 

「相変わらずだな。さすが、わざわざジャパンに行ってハイスクールのチームに無様に負けちまうような恥知らずは違うぜ。俺なら恥ずかし過ぎて自殺ものだけどな」

 

「…っ! てめえ、殺されてえのか」

 

この言葉にナッシュが怒りを露にする。

 

「…おっとこれは禁句だったか」

 

ナッシュの反応を見て満足そうに肩を竦める。

 

「ストリートバスケチーム最強だとかメディアに取り上げられて調子に乗ってるみたいだがよ。それも今日限りだ。……ん?」

 

その時、踵を返してチームメイトの下に戻ろうとした時、空の姿に気付いた。

 

「何だそのジャパニーズは? まさか、こいつが試合に参加するとか冗談言わねえよな?」

 

「…」

 

その質問に対し、ナッシュは何も返さない。

 

「ハッハッハッ! ジャパニーズに負けた挙句そのジャパニーズに加入させたか!? 遂に落ちる所まで落ちたな!」

 

これを見て相手選手は肯定と見てゲラゲラと笑い始めた。

 

「こりゃ今日は楽勝だな。せめてもの慈悲だ。お前達がこれ以上無様にならねえように手加減してやらねえとな!」

 

そう言って、相手選手はその場を後にしていった。

 

「クソ雑魚が…!」

 

言われたい放題言われたナッシュは目に見えて怒りを露にしていた。

 

「…あんたら(ジャバウォック)も大概だが、あいつらも相当だな」

 

一連の会話を近くで聞いていた空は嘆息していた。

 

「あいつらは最近結成したストリートバスケチームだ。アメリカの強豪のハイスクールのエース崩れを集めてメキメキと頭角を現したチームだ。今では俺達に次ぐストリートバスケチーム……中にはあいつらが最強だと推すメディアもいるくらいだ」

 

アレンが相手チームの説明をした。

 

「今日は事実上の最強のストリートバスケチームを決める勝負だ。だから負けられないのさ」

 

「…なるほど」

 

空が相手チームに視線を向けると、空と目が合った選手が空を指差しながらゲラゲラと笑い始めた。

 

「…相当舐め腐ってるな。さっきも何言ってるか全部は分からなかったけど、バカにされてるって事だけは分かった。正直、試合の勝敗はどうでも良かったが、気が変わった。あいつら絶対ぶちのめしてやる」

 

静かに怒りを露にする空であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

そして試合開始時刻となり、両チームの選手達がセンターサークルの周囲に散らばっていく。

 

『…』

 

ジャンパーはジャバウォック側はシルバーが不在た為、ザックが任された。

 

「…」

 

審判が両チームのジャンパーの間に立ち、ボールを構え、ティップオフがされた。

 

「「…っ」」

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

ティップオフされたボールをジャンパーが同時に叩かれ、弾かれる。

 

「オーライ――」

 

弾かれたボールが相手チームの方へに飛んでいき、その選手がボールを保持しようとしたその時…。

 

「いただきだ!」

 

それよりも速く空が横っ飛びでボールを確保した。

 

「おぉっ! やるじゃねえか!」

 

これにニックが歓声を上げる。

 

「っしゃぁっ! 1本――」

 

「なにボール運ぼうとしてんだクソザル! さっさと俺にボール寄越せ!」

 

いつものようにゲームメイクを始めようとした空だったが、ナッシュの罵声に水を差される。

 

「…そういや、俺ポイントガードじゃねえんだった」

 

試合前にポジションを決める時に…。

 

『サル。お前は2番に入れ』

 

と言われていたのを思い出した。

 

「…ちっ、しゃーねえ、ナッシュにボールを運ばせてやるか」

 

仕方なく空がナッシュにパスを出そうとしたその時…。

 

「ヘイ! カモン、リトルモンキー!」

 

空の目の前に立った相手選手が挑発交じりに空に向けて言い放った。

 

「……あっ?」

 

さすがに何を言われているか理解した空はこめかみ付近に青筋を立てる。

 

「…良いぜ、やってやらぁ!」

 

宣言と同時に空は相手選手の間合いに踏み込んだ。

 

「おいサル! さっさとパスを出さねえか! …ちっ、あの野郎、何か余計な言いやがったな」

 

空と相手の表情から2人の間で何があったかを察し、苛立つナッシュ。

 

「…確か、これストリートバスケの大会だったな。…ならこういうのはどうよ」

 

その場で空がクロスオーバー、レッグスルー、バックチェンジを繰り返すハンドリングを始める。

 

 

――ダムッ…ダムッ…!!!

 

 

そのハンドリングスピードはどんどんと上がっていく。

 

「…っ、…っ!?」

 

どんどん上がる空のハンドリングスピードに当初はニヤついていた表情から一変、余裕がなくなる。

 

「遊んでねえでさっさと俺にボール――」

 

 

――バチィッ!!!

 

 

高速ハンドリングで牽制する空に苛立ったナッシュが再度ボールを要求しようとしたその時、突如ナッシュ目掛けてボールが飛んでいき、咄嗟に右手でキャッチした。

 

「ほらよ。これでいいんだろ?」

 

鼻を鳴らしながら空がポツリと呟いた。

 

『うぉっ!!! 何だ今の!?』

 

『とんでもねえスピードでドリブルやり出したと思ったら気が付いたらパスしてやがった!』

 

今のプレーに観客が大興奮し始めた。

 

空はハンドリングの途中で背中で弾ませたボールを肘をぶつけ、ナッシュにパスを出していたのだ。

 

「ちっ、サルが…」

 

悪態を吐きながらナッシュはドリブルを始めた。

 

「…」

 

最初の1本、どう攻めるか考えるナッシュ。

 

「来いよナッシュ」

 

ナッシュの目の前に立った選手が指をクイッとさせながら挑発する。

 

「……ふん」

 

それを聞いたナッシュは鼻を鳴らし…。

 

 

――ピッ!!!

 

 

ノーモーションのクイックパスを出した。

 

「お、おいナッシュ!?」

 

このパスを見てアレンが慌てる。ナッシュのパスの先は同じジャバウォックのチームメイトではなく、空だったからだ。予備動作がほとんどない上にパススピードが尋常ではないこのパスはある程度の慣れがなければ味方ですら容易に取れない。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

「…っと!」

 

しかし、空はこのパスを右手で掴み取った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

直後にジャンプショットを放ち、得点を決めた。

 

「嘘だろ!? あのサル、ナッシュのパスを1発で掴みやがった…!」

 

事前の練習はおろか打ち合わせもなく空がナッシュのパスを取った事に驚きを隠せないニック。

 

「あいつ…、もしかしたら…」

 

アレンは空を見て何かを予感していた。

 

「「…」」

 

空とナッシュは特に言葉を交わすでもなくディフェンスに戻っていく。

 

「…ナッシュはあのサルが最初からあのパスを取れる事を分かっていたのか?」

 

疑問を覚えるザック。

 

「(…ちっ、顔面ぶつけて黙らせてやるつもりだったのによ)」

 

「(このクソ野郎、俺の顔面に当てようとしやがったな)」

 

実際はナッシュはただ空を黙らせようとしただけであり、空はそれに気付いていた。もっとも、最初に空がナッシュにボールをぶつけようとしたのだが…。

 

「これはもしかしたら…」

 

一連のプレーを見ていたアレンは何か可能性を感じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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第1Qはジャバウォックペースで試合は進んだ。

 

 

――ピッ!!!

 

 

ナッシュが得意のパスでボールを散らし、そのパスを受けた選手が得点を決める。空も得意のスピードを駆使して試合に貢献した。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ブザーが鳴り、第1Qはジャバウォックリードで終わった。

 

「ヘイ! お前、なかなかやるじゃねえか!」

 

健闘した空をニックが肩を叩きながら称えた。ザックやアレンも空に好意的に声を掛けていた。

 

「(…ふん、少しはマシになったみたいだな)」

 

ナッシュだけは離れた位置で鼻を鳴らしていた。

 

「ナッシュ。第2Qはどうする?」

 

「とりあえず変更はなしだ。俺がボールを散らす。これまでどおり点を取りに行け」

 

「分かった」

 

作戦を尋ねるアレン。ナッシュは現状維持を指示した。

 

「っしゃ、ガンガンボール寄越せよ」

 

やる気を見せる空。

 

「てめえはスクリーンかけてフォローだ。余計な事はするな」

 

「おい! ポジション的に俺の役割じゃねえだろ! 第1Qの活躍忘れたのか!?」

 

納得が出来ない空はナッシュにかみつく。

 

「調子に乗んなクソザル。さっきまで上手くやれたのはてめえが舐められてた上にデータがなかったからだ。警戒されりゃてめえは何も出来ねえんだから大人しくしてろサル」

 

「てめえ――」

 

「喧嘩してる場合じゃないだろ。悪いがここはナッシュの顔を立ててくれないか?」

 

「…ちっ」

 

掴みを始めそうだった2人の間にアレンが割って入り、空を宥めると、空は渋々聞き入れただった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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インターバルが終わり、第2Qが始まると相手チームが動きを見せた。

 

「(…ん? マンツーマンからゾーンディフェンスに変えたのか?)」

 

これまでのマンツーマンディフェンスから1-1-3のゾーンディフェンスに変わった事に空が気付く。

 

「…」

 

ボールを運ぶナッシュ。ゾーンを組まれている為、迂闊に中に切り込めず、慎重にボールを運ぶ。

 

「(こっちだ!)」

 

ニックがボールを貰う為に動きを見せると、ナッシュがノーモーションクイックパスを出した。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「なにっ!?」

 

しかし、そのパスは相手チームのスティールで阻まれてしまう。

 

 

――バス!!!

 

 

ボールを奪った相手選手はそのままワンマン速攻を決めた。

 

「ドンマイナッシュ。たまたまだ」

 

スローワーとなったザックがナッシュに声を掛けた。

 

「…ハッ!」

 

相手選手はナッシュ達を見て不敵に笑った。

 

「?」

 

そんな相手を空は怪訝そうな表情で見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

その後も異変が続いた。ナッシュが繰り出すパスがことごとくスティールされてしまうのだ。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

カウンターから相手選手のジャンプショットが決まる。

 

「ナイス」

 

ハイタッチを交わすあいて選手。

 

「どうなってんだ? ナッシュのパスが通らねえ…」

 

立て続けのパスミスからのオフェンス失敗にあっという間に逆転を許し、茫然とするザック。

 

「…っ!」

 

当のナッシュが1番悔しそうな表情をしている。

 

「…おい、流れは最悪だ。1度タイムアウトを取って流れを――」

 

「うるせえ!!! 俺に話しかけんじゃねえサル!!!」

 

流れを切る為にタイムアウトを提案した空にナッシュが激昂する。

 

「…ちっ!」

 

怒りを露にしながらナッシュはボールを運ぶ。

 

その後もナッシュのパスは上手く行かず、時折通ったパスから何とか得点に繋げてはいた。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

空が中に切り込み、ゾーンディフェンスが収縮するタイミングを狙ってパスを捌き、アシストをする。

 

健闘を続ける空だったが、それでも点差は開いていく。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

第2Q残り僅か。ナッシュのパスが再びスティールされ、カウンターから速攻に走られた。

 

「ハッ! くらえ!」

 

相手選手はボールを掴んでリングに向かって飛び、リングに向かってボールを振り下ろした。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「させっか!!!」

 

直前、空がボールを叩き落とした。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

同時に第2Q終了のブザーが鳴った。

 

「ふぅ、助かった…」

 

胸を撫で下ろすニック。

 

両チームの選手達はベンチへと下がっていった。

 

「まずいな、どうする?」

 

ベンチに戻り、開口一番アレンが口を開く。

 

『…』

 

悪い状況に他の選手達も口を閉じる。

 

「無様な姿晒しやがって」

 

そんな中、空が苛立ち気味に口を開いた。

 

「…てめえは黙ってろ」

 

「てめえに言ってんだよナッシュ」

 

「…あっ?」

 

空の指名され、怒りながら立ち上がるナッシュ。

 

「てめえのパスのタイミングとパスコースが読まれてるなんざ一目瞭然だろうが。馬鹿の一つ覚えにパス捌きやがって。勝つ気あんのか?」

 

「ぶっ殺されてえのか!?」

 

遂にいかりが爆発したナッシュが空に掴みかかる。

 

「何の為に日本人嫌いのてめえが俺入れてまでこの試合に臨んだんだ? 勝つ為じゃねえのか? 視野狭めて自滅する気か?」

 

「…っ」

 

怯まず、眼光を鋭くして言い放つ空を見てユニフォームを掴んだ力が僅かに緩む。

 

「どうすんだ? このままだと負けんぞ」

 

「……ちっ」

 

舌打ちをすると、ナッシュは掴んでいた手を放した。

 

『…』

 

2人のやり取りによって険悪な空気となるベンチ。

 

「……ふん、俺のパスコースとタイミングだけじゃねえ、お前らの動きも読まれてやがる」

 

落ち着きを取り戻したのか、ナッシュが冷静に状況を分析する。

 

「ならどうする? パスはやめて1ON1を仕掛けるか?」

 

「それも分が悪いな。向こうはゾーンディフェンス…それも、マッチアップゾーンディフェンスだからな」

 

アレンの提案をナッシュが退ける。

 

「ならどうするんだよ?」

 

万策が浮かばないザックがナッシュに尋ねる。

 

「…」

 

顎に手を当て、何かを考えるナッシュ。そして、舌打ちを打つと、空の方を振り向いた。

 

「サル」

 

「あん?」

 

「さっきは俺に舐めて口利きやがったんだ。てめえ、分かってんな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

ハーフタイムが終わり、第3Qが始まる。

 

「…」

 

ボールを運ぶナッシュ。相手はこれまでと変わらず1-1-3のマッチアップゾーンディフェンスでハンドラーのナッシュにのみディフェンスに付いている。

 

「…」

 

慎重にゲームメイクをするナッシュ。

 

 

『やる事はこれまでと変わらねえ。俺がボールを回す』

 

『けどよ、俺達の動きやパスコースとタイミングは読まれてんだろ?』

 

『ああ。…だが、唯一読まれずに使えるパスコースがある。そこを使う』

 

 

「……ちっ」

 

自分で提案した作戦に苛立ち交じりに舌打ちをするナッシュ。

 

 

――ピッ!!!

 

 

そして得意のノーモーションクイックパスを出す。

 

「(バカめ、お前のパスコースはお見通し――なっ!?)」

 

スティールを狙う相手選手だったが、次の瞬間、表情が驚愕に変わる。

 

「っしゃぁっ!」

 

ボールはハイポストに移動した空の手に渡る。

 

ジャバウォックの選手達の動きを入念に研究していただけあり、ナッシュのパスのタイミングやコース、他の選手の動きは読まれていた。だが、唯一空だけは動きが読まれず、これまでもパスが通っていた。

 

 

『動きが読まれてねえサルを経由してボールを動かす。…サル。ファンブルしたりその後ミスったりしたら殺すからな』

 

『殺してみろ』

 

 

これが、ナッシュが即席で立てた作戦だった。

 

「…っし」

 

ボールを受け取った空はすかさずゴール下付近にボールを放った。

 

「おぉっ! ナイスパス!」

 

 

――バキャァァッ!!!

 

 

そこへ走り込んでいたザックがそのままワンハンドダンクを叩き込んだ。

 

「ナイスパスだ!」

 

「当然」

 

見事にパスを繋げた空をザックが称える。

 

その後も、ジャバウォックは空を起点にボールを回し、得点に繋げた。

 

「決めろ!」

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

中で空がナッシュのパスを受け、そこから外のアレンにボールを捌き、スリーを決めた。この作戦に切り替えてから目に見えてジャバウォックに良い流れをもたらした。

 

「にしてもよ、あいつよくナッシュのパスを平然と何度も受けられるな」

 

ファンブルせずにパスを受ける空に驚きを隠せないニック。

 

「もともと日本でやり合った時に片鱗はあったぜ。…それとあいつ(空)はナッシュと…」

 

アレンが抱いた可能性は確信へと変わっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

第2Qで1度は開いた点差だったが、空がパスを中継するようになってから点差は確実に縮まっていった。しかし…。

 

「…っ」

 

ボールを貰おうと動き空だが、瞬時にパスコースを塞がれてしまう。

 

第4Qに入ってから相手チームが空の動きに対応出来るようになってきたのだ。

 

「(…ちっ、さすがにサル一辺倒のオフェンスがいつまでも通用する訳がねえ)」

 

作戦の限界が遂に来てしまい、表情には出さないが焦りを覚えるナッシュ。点差は縮まったものの、まだ逆転に至っていない。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

ローポストでボールを掴んだザックがポストアップで無理やり得点を狙うが、ブロックされてしまう。

 

 

――バキャァァッ!!!

 

 

そのままターンオーバーからのカウンターを食らい、速攻を決められてしまう。

 

「…ちっ」

 

再び状況が悪くなり、空も焦りを覚える。

 

『…っ』

 

それが他の選手達も同様であった。

 

もはや万策は尽き、絶体絶命。その時!

 

 

『ビビーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

「メンバーチェンジ! 黒(ジャバウォック)!!!」

 

ジャバウォックの選手交代がコールされた。

 

「ハッハッハッ! 待たせたな!」

 

選手達がオフィシャルテーブルに視線を向けると、そこにはジェイソン・シルバーの姿があった。

 

「おぉっ!」

 

「やっと来たのか!?」

 

「おせえよ!」

 

絶好のタイミングで現れたシルバーの姿に歓喜するジャバウォックの選手達。

 

「…この馬鹿野郎が!!! 今まで何処で何してやがった!!!」

 

唯一ナッシュは激怒しながらシルバーに詰める。

 

「わ、悪い、昨日飲みすぎちまってよ…」

 

あまりのナッシュの勢いにシルバーが圧倒されながら理由を話す。

 

「…ちっ」

 

理由を聞いて舌打ちをするナッシュ。

 

「(お役御免か…)」

 

シルバーがやってきて、正規のメンバーが揃った事で空はベンチに戻ろうとする。

 

「…待てサル」

 

そんな空をナッシュが引き留める。

 

「?」

 

「下がるのはニックだ」

 

「俺か!?」

 

まさかの指名に驚くニック。

 

「2度も言わせんな。言う通りにしろ」

 

「お、おう…」

 

睨み付けるように告げられ、ニックは素直に言う通りにベンチへと下がっていった。

 

「おいおい、何でサルが試合に出てんだ? 何でサルを残すんだよ?」

 

理由が理解出来ないシルバーがナッシュに尋ねる。

 

「てめえが来ねえからこんなサルを使う羽目になったんだろうが! てめえは汚名返上する事だけ考えてろ」

 

シルバーの質問にそう返事をするナッシュ。

 

「(ムカつくが、ボール運びとパスセンスがあるこのサルを残した方が今は懸命だ。…くそっ、この俺がサルなんかに…!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

シルバーがコートに入った事で状況は一変した。

 

「おらぁっ!!!」

 

 

――バキャァァッ!!!

 

 

シルバーがその圧倒的な身体能力を駆使して得点を重ねる。そのシルバーを止めようとマークが集中すると他が手薄となり、他の選手が得点を決める。

 

停滞しかけた流れが再びジャバウォックに向き、点差はみるみる詰まり、残り時間10秒の地点で1点差の所まで縮まった。

 

「決めさせるな! ここを止めれば俺達の勝ちだ!」

 

相手選手も力を振り絞り、必死にディフェンスに努める。

 

「…っ」

 

懸命なディフェンスに攻め手が定まらないナッシュ。ここをしくじれば負けは必須。刻一刻と試合終了の時間が近付き、ナッシュは焦りを覚える。

 

「…」

 

その時、ナッシュと空の視線がかち合う。

 

「(ここに出せ!)」

 

空がアイコンタクトでナッシュにとある場所にボールを要求した。

 

「(……上等だ。もし決められなかったらぶち殺すからな!)」

 

 

――ピッ!!!

 

 

意を決してナッシュがノーモーションクイックパスを出した。

 

「うぉっ!!!」

 

ローポストのシルバーが手を伸ばすもボールは手の上を越えていった。

 

「パスミスだ! 俺達の勝ちだ!」

 

パスミスと見た相手選手は勝利を確信する。

 

 

――バキャァァッ!!!

 

 

『っ!?』

 

次の瞬間、リング付近に放られたボールを空がそのままリングに叩きこんだ。

 

「っしゃぁっ!」

 

着地した空が拳を突き上げながら喜びを露にした。

 

 

『ビビーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

同時に、試合終了のブザーが鳴った。

 

「勝った!!!」

 

「よくやった!!!」

 

起死回生のアリウープが決まり、歓喜するジャバウォックの選手達。

 

「マジかよ、ナッシュのあのパスをアリウープで決めやがった…」

 

これにはシルバーも驚いていた。

 

「…やっぱりだ。あの日本人、カミシロとナッシュは、もしかしたら相性バツグンなディオかもしれない」

 

アレンはこれまで抱いた可能性を確信に変え、口に出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

試合が終わり、ストリートバスケの大会を無事優勝で終えたジャバウォック。

 

「ギャハハハハッ!!!」

 

飲み屋で打ち上げをするジャバウォックの選手達。

 

「…帰りてえ」

 

空も連れてこられ、打ち上げに参加させられていた。今日の試合で空の実力を認めたジャバウォックの選手達は親しく空と接していた。

 

「…サル、付いて来い」

 

その時、ナッシュが空を呼び、店の外へと連れ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「何処まで歩かせるつもりだよ?」

 

店を出て10分程歩かされ、悪態を吐く。やがて、ストリートバスケのコートがある公園に辿り着いた。

 

「今日の試合、あの程度の相手に手こずったのはてめえが役に立たねえからだ」

 

「……あっ?」

 

公園に連れてこられ、開口一番そんな言葉を言われた空は怒りを露にする。

 

「全く、これだからサルはムカつくんだよ。下手過ぎて目を当てられねえ」

 

「てめえ…、無理やり試合に引っ張った挙句、あんだけチームに貢献した俺に向かって…! やっぱり1度ぶん殴って――っ!?」

 

その時、空の手元にバスケットボールが飛んできて咄嗟に空はボールを掴んだ。

 

「来い。てめえに本物バスケを教えてやる」

 

挑発交じりにナッシュが空に向かって告げる。

 

「…上等だ。逆に俺がてめえを凹ませてやるよ!」

 

上着を脱ぎ捨てた空はナッシュの下へと向かって行った。

 

「ハハッ!」

 

バスケを始める2人。そんな2人を後を付けていったアレンが微笑ましいで表情で見ていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「とまあ、こんな感じですかね」

 

2人は体験談を話し終えた。

 

「…おもろい話やなあ。なんやかんやでお前らも向こうで修羅場潜っとったやな」

 

話を聞いて思わずそんな感想を述べる天野。

 

「大地なんか帰りの空港で留学先のバスケ部に引き留められたんだぜ? 一緒に全米のチャンピオンチームを目指そうって」

 

「そういうあなたはジャバウォックの方々から正式にメンバー入りしていたではありませんか」

 

帰りの空港での出来事を話す空と大地。

 

「…州のナンバーツーのチームにジャバウォック。改めて、とんでもない2人ですね」

 

驚きを隠せない竜崎が2人に圧倒される。

 

「ま、何はともあれ、こうして無事帰国してウィンターカップに参加出来る。後は、優勝するだけだ」

 

「キセキの世代と戦えるのはこの冬が最後です。今度こそ、彼らを倒しましょう」

 

空と大地が意気込みを露にする。

 

「せやな。この2人がおって負けたら俺らの責任や。…もう大会は目の前や。やれる事全部やって、優勝や!」

 

『おう!!!』

 

冬の寒空の中、花月の選手達が心を1つにし、迫るウィンターカップに向けて意気込みを露にしたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





これにて、アメリカでの2人出来事は終わりです。本来ならもう少し掘り下げながらやるべきかと思うんですが、原作キャラが出てこない話をダラダラ続けるのはどうかと思ったので…(;^ω^)

次話から本格的にウィンターカップに突入するのですが、ここからまた試合でのネタを集めなければなりません…(>_<)

もしかしたら投稿間隔が空くかもしれないので悪しからず…m(_ _)m

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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