黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

新年、あけましておめでとうございます!!!

2021年もよろしくお願いします…m(_ _)m

それではどうぞ!



第145Q~もう1つの扉~

 

 

 

第4Q、残り1分7秒。

 

 

花月 92

洛山 95

 

 

赤司が空と大地の変則ダブルチームによってボールが奪われ、ターンオーバーとなり、空と大地が赤司のブロックを吹き飛ばして得点を決めたのと同時に洛山が申請したタイムアウトがコールされた。

 

 

洛山ベンチ…。

 

ベンチに戻った赤司はタオルを被りながら荒々しくベンチに腰掛けた。

 

「…っ!」

 

両の拳をこれでもかと言う程きつく握りしめている。それほど悔しさに怒りを感じているのだろう。

 

「(…以前のような崩れ方はしてはいない。…だが、冷静さを失っているのは事実。さて、残り1分弱、どう戦うか…)」

 

赤司の様子を確認した白金が作戦を考えるべく、頭を働かせる。

 

「赤司」

 

その時、赤司の下に歩み寄った出場選手の4人。その中から四条が声を掛けた。

 

「俺達も戦わせてくれ」

 

「…必要ない。引き続き僕のフォローとディフェンスに尽力しろ」

 

だが、赤司はチームメイトの四条の提案を突っぱねた。

 

「分かってんだろ!? 神城と綾瀬のコンビプレーは赤司でも止められなかった。だったら俺達も力を合わせるしかないだろ!」

 

その言葉に納得出来なかった五河が食い下がる。

 

「邪魔だと言っているんだ。大人しく僕の言う事が聞けないのなら――」

 

「赤司!」

 

「…っ」

 

食い下がる四条に苛立ちを覚えた赤司だったが、四条が赤司の胸倉を掴み上げた。

 

「俺達の中で1番偉いのはお前だ。1番上手いのもお前だ。けどな、このチームはお前1人のチームじゃねえんだよ!」

 

叫ぶように四条が赤司に言った。

 

「俺達はキセキの世代にはなれない。キセキの世代に勝つ事も。…けどよ、力にもなれないなら、俺達の存在はなんなんだよ!?」

 

四条の横に立っていた三村が心の底から吐露するように叫んだ。

 

「勝つ事も負ける事も黙って見ている事しか出来なかった俺達がようやくお前らと同じコートに立てたんだ。だから頼むよ。俺達にも戦わせてくれ! お前の背負ってる負担を少しでも背負わせてくれよ!」

 

続けて二宮が叫ぶ。その表情はもはや悲痛に満ちたものであった。

 

キセキの世代の圧倒的な力に絶望し、半ばその存在を否定された元帝光中の4人。それでもコートに立つ道を選んだ。今、再びその存在を否定されようとしている事実にもはや黙っている事は出来なかった。

 

「頼む、今度こそ俺達にも戦わせてくれ!」

 

「「「赤司!」」」

 

「お前達…」

 

4人の心からの願いを聞いた赤司が4人に視線を向ける。

 

 

『見るに堪えないとはこの事だな』

 

その時、内にいるもう1人の赤司が喋り始めた。

 

「(…っ、何の用だ? 言っておくが、僕はここで代わったりは――)」

 

『そのつもりはない』

 

「(なに?)」

 

『そのつもりはないと言ったんだ。ここで代わるくらいなら俺は始めからお前に代わったりはしない。俺は少なくともこの試合中は表に出るつもりはない。この試合がどのような結末を迎えようともな』

 

「(…)」

 

『だが、その様では結果はもはや決まったようなものだな』

 

「(なんだと…)」

 

内にいる赤司の言葉に憤りを覚える赤司。

 

『いつまで下らない意地とプライドにこだわっているつもりだ?』

 

「(っ!? 下らないだと?)」

 

『下らないさ。少なくとも俺からすればな。勝利と天秤にかける価値もない代物だ』

 

「(…っ)」

 

『高校に進学し、誠凛に負けて、黄瀬も緑間も変わった。青峰も、あの紫原でさえも変わった。お前くらいだ。未だに変わりきれていないのは』

 

「(っ!? 黙れ!)」

 

思わず叫ぶ表の赤司。

 

『どうするつもりだ? ここにいるチームメイトは、試合に勝つ為に死に物狂いで残りの時間をお前と共に戦う覚悟を持っているぞ?』

 

「(…)」

 

『どうするかはお前が決めろ。あくまでもお前1人でこのまま戦うか、それとも…』

 

 

「赤司!」

 

赤司の周囲で赤司の言葉を待つ4人。

 

「全く、お前はいつまでも…」

 

自嘲気味に呟く赤司。

 

「秀平、彰人、大智、充、僕はどうやら熱くなって周りが見えていなかった。すまなかった…」

 

立ち上がると、そう言って頭を下げた赤司。

 

「赤司…?」

 

その様子を見て茫然とする四条。

 

「この試合に勝つ為に、お前達を頼らせてもらう。力を貸してくれ」

 

「…っ! あぁ! もちろんだ!」

 

その言葉を待っていた4人は歓喜した。

 

「だが、お前達が言い出した事だ。出来なかったでは済まさんぞ」

 

「分かってる! ダメだったらクビにするなり目玉抉り取るなり好きにしろ!」

 

赤司の言葉に覚悟を示す四条。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここでタイムアウト終了のブザーが鳴った。

 

「時間か。では手短に話す。聞け」

 

赤司は4人に指示を出し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「点差はたった3点差だ! 行けるぞ!」

 

「頑張って!」

 

タイムアウト終了のブザーが鳴ってコートへと向かう花月の5人に菅野と相川が声援を贈った。

 

「(点差は3点。流れも勢いも俺達にある。…けどなんだこの胸騒ぎは?)」

 

確実に良い流れが来ているはずの状況にも関わらず、空は胸騒ぎが起きていた。

 

「(相手は王者洛山だ。このままあっさり行ける訳はねえ。油断せずに全力で戦う!)」

 

顔をパンパンと叩いて気合いを入れ直した空がコートへと駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

洛山ボールから試合は再開。赤司がボールをキープする。

 

「っしゃ来い!」

 

「止める!」

 

赤司の前に再び空と大地が立ち塞がった。

 

「…」

 

2人が現れると足を止める赤司。

 

 

――スッ…。

 

 

赤司は切り込まず、パスを出した。

 

「パスだと?」

 

その選択に少し虚を突かれる空。赤司から二宮にボールが渡ると、すかさずハイポストに立つ四条にパスを出した。

 

「(この土壇場でセットプレーか! だが、こっちとしては好都合だぜ!)」

 

先程赤司を止める事が出来たが、次、また上手く行く保証はない。空にとってはセットプレーの方が都合が良かった。

 

絶え間なく動く回るボール。

 

「(…見えた、このボールと人の動き、フィニッシャーは三村だ!)」

 

フィニッシャーを特定した空は大地にハンドシグナルで指を3本立てた。これは、空が大地にチェックに向かわせる為のサインだ。

 

「(三村さんですね。分かりました)」

 

この合図を受けて大地が現在ボールを持つ四条と三村のパスコースに向かった。そして、空は三村にパスが出せなかった時の保険兼囮要因として特定した二宮。三村へのパスを誘発させる為に四条と二宮のパスコースを潰した。

 

「(ボールを奪って点差を詰める!)」

 

「…」

 

四条がパスを出す。

 

「なっ!?」

 

「えっ!?」

 

その時、空と大地が声を上げた。ボールは三村でなければ二宮でもない、ゴール下に走り込んだ五河に渡ったのだ。

 

「っ!?」

 

直前にスピンして松永をかわしてゴール下に五河。虚を突かれた松永は目を見開いた。

 

 

――バス!!!

 

 

ボールを掴んだ五河はそのままゴール下から得点を決めた。

 

 

花月 92

洛山 97

 

 

「空が、読み違えた?」

 

フィニッシャーを見誤ったのかと大地が空に視線を向ける。

 

「(バカな! あの一連の動きは間違いなく三村へのパスの動きだった。何で五河なんだよ!?)」

 

空自身、確信していただけにショックが隠せなかった。

 

「(それに、今のパスは何かおかしかった。咄嗟のリカバリーで出したパスじゃなかった…)」

 

今のパスに違和感を覚えた空。四条はフリーだった五河にパスを出したのではなく、まるで五河がゴール下でフリーになる事が分かっていたかのようにパスを出した。現に、直前まで五河は松永がしっかりマークしていた。

 

 

「なんスか今の?」

 

黄瀬も何か違和感を感じ、思わず声を出る。

 

「今のは…」

 

同じく何かを感じた青峰がその何かを考えている。

 

 

「(くそっ! 点差がまた開いて…!)…取り返すぞ、走れ!」

 

ボールを受け取った空はそのままボールを運ぶ。

 

『おう!!!』

 

それに続くように花月の選手達も走り出した。

 

「…」

 

フロントコートに進むと、赤司が空を待ち受ける。

 

「(何だ…、さっきまでとは何か違う…!)」

 

何か嫌なものを感じた空は、赤司の射程に入る前に右を走る大地にパスを出した。

 

「空!」

 

ボールを受け取った大地はすかさず空にリターンパスを出した。

 

「っしゃ!」

 

パスを出した直後に中へと走り込んだ空はフリースローライン付近でボールを受け取った。

 

「らぁっ!」

 

そこから踏み切り、リングに向かって飛んだ。

 

「させるか!」

 

そこへ、五河がシュートコースを塞ぐようにブロックに現れた。

 

「見えてんぜ」

 

ブロックに現れる事が分かっていた空は動じる事無くボールを右へと放った。

 

「ナイスパス!」

 

そこには先程リターンパスを出した大地が走り込んでいた。ボールを受け取った大地が今度はリングに向かって飛んだ。

 

「おぉっ!」

 

そこへ、四条がブロックに現れた。

 

『うぉー! 洛山のディフェンス堅い!?』

 

「…っ」

 

 

――スッ…。

 

 

だが、大地はボールを下げ、ブロックに現れた四条をかわす。

 

「ゾーンに入った綾瀬を止められるかよ!」

 

ベンチから菅野が声を上げる。

 

大地はリングを越えた所で再びボールを上げ、リングに背中を向けながらボールを放った。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「決めさせるかよ!!!」

 

放られたボールをちょうどそこへ飛んで来た三村がブロックされた。

 

「っ!?」

 

「何だと!?」

 

決まると思っていた空と大地は驚きを隠せなかった。

 

「(神城と綾瀬の高速連携を何故防げる!?)」

 

これにはベンチの上杉も思わず立ち上がる。

 

「どないなっとんねん! 何であない示し合せたかのように動けんねん!」

 

事前に空と大地の動きを予測するなどまず不可能。だが、洛山の選手達は咄嗟に合わせたかのように動いていた。

 

「速攻だ!」

 

ルーズボールを抑えた赤司が声を出し、ドリブルを始める。

 

「…っ、戻れ! 絶対に死守だ!」

 

決死の表情で空が声を出し、ディフェンスに戻る。

 

「行かせねえ!」

 

「ここは何としても!」

 

スピードに定評がある空と大地がいち早くディフェンスに戻り、速攻を防ぐ。その間に他の花月の選手達もディフェンスに戻った。

 

「行くぞ」

 

赤司がパスを出した。そこから洛山の高速のボール交換が始まる。

 

「(っ!? このパスは…! さっきまでとは違う!?)」

 

「(決められたルートを通っていた今までのパスワークではない!?)」

 

パスが変わった事に気付いた空と大地。

 

 

「まさかこれって!?」

 

先程感じた違和感の正体に気付いた黄瀬が思わず立ち上がった。

 

「っ!?」

 

同時に先程分からなかった何かを理解した青峰も同様に立ち上がった。

 

「何だよこのパス…。真ちゃん!」

 

「まさか…、あり得ないのだよ…!」

 

高尾に呼ばれた緑間が目を見開きながら身体を震わせている。

 

「火神君! あれは…!」

 

「あぁ、間違いねえ!」

 

黒子も火神も思わず声を上げてしまった。

 

「…ハハッ、よりにもよってよ…。1番ねえと思ってたあの赤司が開けちまうかよ」

 

自嘲気味に青峰が笑いながら呟いた。

 

 

「認めよう。お前達は強い。僕1人では敵わない程に…」

 

赤司が突如、話始める。

 

「下らない意地とプライドは捨てる。ここからは――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――僕達全員で戦おう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『世話の焼ける…』

 

胸の内にいる赤司が苦笑する。

 

『この試合、俺は手出しも口出しもするつもりもなかったが……全く、出来の悪い弟を持つと、こんな気持ちなのかな…』

 

立ち上がった内にいる赤司が歩き出した。

 

『去年の夏の決勝、最後に力を貸してくれた分はこれでチャラだ。さあ行け、これが選別だ』

 

後ろにあった扉に手をかけると、そっとその扉を開けたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

ゾーンの扉が開かれる、その状態から集中力が増していくと更に水底へ向かって沈んでいく。

 

底に到達すると、自身の実力の100%の力を引き出せるようになり、目の前に更なる扉が現れる。

 

その扉の前には姿の見えない門番のような人影が立っており、容易にはその扉を開く事は出来ない。

 

その堅牢の扉が開かれた時、ゾーンの真なる力が姿を現す。

 

ゾーンを超えたゾーン…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――直結連動型ゾーン(ダイレクトドライブゾーン)が…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

『…っ』

 

この試合、一番のスピードで洛山の選手間でボールが行き交っている。それでも洛山の選手達はパスミスはおろか、ファンブルすら起こす様子がない。

 

50を超える洛山のナンバープレー。これはそのどれにも属さないパスであり、パスルートも、フィニッシャーも分からない。だが、洛山の選手達は迷う事なくパスを繰り出し続けている。

 

『ボールを回して攻める。だが、僕は敢えてナンバーコールはしない』

 

『どういう事だ?』

 

意味が理解出来なかった二宮が聞き返した。

 

『パスルートの指定はしないと言う事だ』

 

『つまり、普通にボールを回すって事か?』

 

『違う。それでは花月のディフェンスは崩せない』

 

五河の言葉を赤司が否定する。

 

『これまで同様、高速でボールを回す。だが、ルートを決めず、各自が咄嗟の判断で動き、ボールを回すんだ』

 

『なっ!? そんな事出来るのかよ!?』

 

赤司からの無理難題に四条が声を上げる。これまで高速でボールを回せたのは事前に打ち合わせて決めて置いたパスのルート通りに動いていたからだ。それをアドリブで行うなど無謀にも等しい。

 

『先程あれほどタンカを切ったんだ。やってもらうぞ』

 

『…』

 

確かに赤司の力になる為に覚悟を示した。だが、それでもこの無謀の挑戦に自信が持てない4人。

 

『心配するな。絶対成功する』

 

そんな4人の不安を振り払うように赤司がそう告げる。

 

『僕達がどれだけの長い年月を同じチームで過ごした思っている。絶対に出来る。…難しく考える必要はない。ボールが欲しい所へ動き、いてほしい所へパスを出すだけだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

タイムアウト終了直前に赤司が出した指示はこれだけだった。

 

「(こっちにくれ!)」

 

「(ここにいてくれよ!)」

 

アドリブで高速でパスを回すと言う荒業。にも関わらず、洛山の5人はミスもファンブルもせず、スティールもされる事なくボールを回し続けている。

 

5年を超える年月を同じチームで過ごした5人。その5人が力を合わせた事で強い信頼感が結ばれ、不可能とも言えるアドリブでの高速のパスワークを成功させた。

 

 

「勝負あったな」

 

立ち上がった青峰が座りながらそう言った。

 

「残り時間を考えて、ここで洛山を止められなければ花月の負けは決まる。だが、今の洛山を花月は止める事は出来ねえ」

 

「「…」」

 

「…いや、今の洛山はどこも止める事は出来ねえ」

 

 

ショットクロックが残り4秒になった所で中央、スリーポイントラインとフリースローラインの中間で赤司にボールが渡った。

 

『っ!?』

 

しかし、高速のボール回しによってディフェンスが乱れに乱され、誰も赤司にマークが付いていない状態だった。

 

「ちくしょう! ちくしょう!!!」

 

それでも空は諦めず、チェックに向かった。

 

「感謝する。新たなる好敵手よ。おかげで僕達はまた1つ強くなれた」

 

そう言いながらシュート態勢に入る赤司。

 

「ここで眠れ。そしてまた同じコートで相見えよう」

 

赤司の手からボールが放たれる。

 

「…っ!」

 

必死にボールに手を伸ばす空だったが、僅かにボールに手が届く事はなかった…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングを潜り抜けた。

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

事実上の決勝点が決まり、大歓声が上がった。

 

「勝った…」

 

四条がそう呟いたその時…。

 

「まだだ!」

 

空がフロントコートに向かって走り出した。

 

「空!」

 

すぐさまボールを拾った大地が走る空に向かって縦パスを出す。走りながらボールを掴んだ空はそのままドリブルで進み始めた。

 

「…っ」

 

後ろから空を追いかける赤司。だが、先頭を走る空に追い付く事は出来ない。

 

 

――バス!!!

 

 

そのまま空はレイアップを決め、ワンマン速攻を成功させた。

 

「当たれ!」

 

同時に空がオールコートマンツーマンディフェンスに指示を出す。その声に呼応して駆け上がった花月の選手達が一斉に当たり始めた。

 

「…ちっ」

 

スローワーとなった五河。目の前で両腕を広げてパス出しを妨害する松永に舌打ちをする。

 

「もうすぐ5秒だ。急げ!」

 

時間が迫り、洛山ベンチの選手達が声を上げた。

 

「こっちだ!」

 

ここで四条がボールを貰いに動いた。

 

「行かせへ――」

 

追いかけようとした天野だったが…。

 

「…っ」

 

赤司のかけたスクリーンによって阻まれてしまった。

 

バイオレーションギリギリで五河は四条にパスを出し、そこからパスを回しながら攻め上がった。

 

『オールコートディフェンスが突破された!!!』

 

ボールは先頭を走る三村に渡った。

 

「これで終わりだ!」

 

フリースローラインを越えた所でボールを右手で掴んで踏み切り、リングに向かって飛んだ。そして右手で掴んだボールをリングに振り下ろした。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

「決めさせません!!!」

 

リング目前で大地が三村のダンクをブロックした。

 

「速攻だ!!!」

 

ルーズボールを拾った空が声を出してそのまま攻め上がる。

 

「止めろ! 絶対に決めさせるな!」

 

ディフェンスに戻りながら赤司が声を出した。

 

空と大地が並びながら攻め上がると、三村を除いた4人が既に戻っており、ディフェンスを整える。

 

「行くぞ!!!」

 

赤司の目の前で空が大地にパスを出した。

 

「空!!!」

 

すぐさま大地がリターンパスを返した。

 

『っ!?』

 

そこから空と大地が高速でボールを交換しながら洛山のディフェンスを突破していく。そのパスは先程の洛山のパスを彷彿させるものであった。

 

最後、大地がボールを叩くようにボールをリング付近に上げると、そのタイミングでボールに向かって飛んだ空の右手にボールが収まった。

 

「決めさせるか!!!」

 

そこへ、赤司が空とリングの間にブロックに現れた。

 

「おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!」

 

ボールを掴んだ空は咆哮を上げながらボールをリングに向かって振り下ろした。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「っ!?」

 

赤司の上から空がボールをリングに叩きこんだ。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

同時に試合終了のブザーが鳴り響いた。

 

審判が指を2本立て、降ろすと、花月の得点に2点が加算された。

 

 

――ダン…。

 

 

「…っ」

 

リングから手を放し、床に降りた空が歯をきつく食い縛り、目を深く瞑りながら顔を上へ上げた。

 

 

試合終了

 

 

花月 96

洛山 99

 

 

決勝進出を賭けた熱い激闘の幕が、降ろされたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





年末年始はゆっくり休むつもりだったんですが、前話投稿時点で6割方書き終えていたのでそのまま仕上げました!

これにて花月対洛山の試合は終了です。出来れば2020年の内に終えたかったのですが、まあ、当初、ネタ不足であっさり試合を終わらせると思っていた所、自身が納得出来る終わり方が出来たのでよしとします…(;^ω^)

とりあえず、ここから正月休みに入ります。1月中には再び投稿致しますのでそれまで…(^^)/~~~

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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