黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

138 / 218

投稿します!

太った…、痩せんとorz

それではどうぞ!



第138Q~ガムシャラに~

 

 

 

第2Q、残り4分3秒

 

 

花月 28

洛山 34

 

 

「何驚いてんだよ。あんたの言ったままだ。足掻きだよ」

 

後方に倒れ込んだ態勢から強引に立て直し、赤司のジャンプショットをブロックした空。

 

「…っ」

 

不敵に笑みを浮かべる空を見て、赤司は不快感を露にしたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…青峰っち」

 

「…あぁ。明らかに赤司の様子が変わった。…出て来やがったな」

 

黄瀬の問いかけに、青峰が頷いた。

 

「ここからまた展開が変わりそうッスね」

 

「だろうな」

 

「あの赤司君が相手だと、どうなるのかな?」

 

桃井が尋ねるように言った。

 

「テクニックなら赤司、身体能力なら神城が上だろうな。…だが、司令塔としては赤司の方が上だ」

 

「なら、赤司君の方が優勢?」

 

「どうだかな。ただ、神城にはアンクルブレイクは効かねえ。あの赤司は恐らく神城とは相性が良くはねえだろうからな。付け入る隙は、あるかもな」

 

青峰は2人の対決の予想をこう評した。

 

「去年は正直あの2人の戦いは赤司っちの完勝とも言っていい結果だったスけど、今年はどうなる事やら。楽しみッスね」

 

2人の戦いに期待に胸を膨らませた黄瀬であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「速攻!」

 

赤司のジャンプショットが外され、天野がリバウンドを奪った。天野からボールを受け取った空は号令と共にフロントコートに駆け上がった。

 

「…っと、戻りが速くなったな」

 

既にディフェンスに戻っていた洛山の選手達。各自がしっかり自身のマッチアップ相手をマークしていた。

 

「…来い」

 

そして空の目の前には赤司。赤司が静かに空に告げた。

 

「…」

 

「…」

 

ボールを突きながら静かに睨み合う両者。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

意を決して空が発進。一気に加速してクロスオーバーで仕掛けた。赤司はエンペラーアイでタイミングを読み切り、ピタリと後を付いていく。

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

仕掛けた直後、空はバックチェンジを2度繰り返し、左から右へとスライドした。

 

『スゲー! 今の、ベイク&シェイクか!!!』

 

高度なテクニックに観客が沸き上がる。直後、ボールを掴んでシュート態勢に入った。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

だが、空がシュート態勢に入ろうとボールを上へリフトさせようとした瞬間、赤司が狙い済まして払うように横薙ぎした左手がボールを捉えた。

 

「大したスピードとキレだ。だが、僕のこの眼の前では意味を為さない」

 

申し分がない空のフェイントであったが、赤司のエンペラーアイの前では意味を為さず、スティールされてしまった。

 

「走れ、速攻だ!」

 

ボールを奪った赤司がそう叫び、駆け上がった。

 

「…ちっ、これでもダメか!」

 

スピードで振り切ろうとした空だったが、赤司の未来予知を超える事は出来なかった。

 

「だが、これ以上はさせねえぜ」

 

全速力でディフェンスに戻った空が赤司の前に立ち塞がった。

 

「…なるほど、スピードだけは一級品のようだな」

 

「スピードだけじゃねえぞ俺は!」

 

赤司の発した言葉に反応した空が怒鳴るように反論した。

 

空が目の前に現れると、赤司を足を止めた。その間に花月の選手達も自陣に戻り、ディフェンスを構築した。

 

「…」

 

「…」

 

攻守が入れ替わって睨み合う空と赤司。

 

「(落ち着け、入れ替わって何かが大きく変わる訳じゃねえんだ。俺をかわして中に切り込んだ所で今はゾーンディフェンスだ。密集地帯で捕まるだけだ。そこからパスを捌いてもいつでもヘルプに出れる。とにかくスリーを警戒だ!)」

 

集中力を高め、赤司の一挙手一投足を見逃さないように集中する空。

 

「…」

 

ここで赤司がボールを掴んだ。

 

「(来るか!?)」

 

空はさらに集中力を高めた。

 

「赤司!」

 

二宮が外に展開し、ボールを要求。赤司が視線をそちらに向けた。

 

 

――ピッ!!!

 

 

その時、赤司が矢のようなパスを出した。

 

「っ!?」

 

ボールは空の顔スレスレを通過した。

 

「ナイスパス!」

 

赤司が放ったパスは、ローポストの五河の手元に一直線に向かって行った。

 

「くっ!」

 

ボールを受け取った五河はすぐさまシュート態勢に入る。すると室井は慌ててブロックに飛んだ。

 

「ムロ、フェイクや!」

 

「っ!?」

 

咄嗟に声を掛けた天野だったが一足遅く、室井はブロックに飛んでしまった。五河はボールをポンプさせただけで飛んではいなかった。

 

 

――バス!!!

 

 

室井がブロックに飛んだのと同時にボールを下げ、室井をかわすようにステップを踏んで再びゴール下からシュートを放ち、得点を決めた。

 

「…くそっ」

 

あっさり決められてしまい、悔しさを露にする室井。

 

「ディフェンスは才能だけではなく、経験も左右するから、バスケを始めて半年足らずのムロでは選択肢の多い相手とのマッチアップをするのは辛いだろうね」

 

今のやり取りを見ていた生嶋がこの2人の分の悪さを口にした。

 

転がるボールを室井が拾い、スローワーとなったその時!

 

「当たれ!」

 

赤司が号令をかける。直後、洛山の選手達がオールコートで当たり始めた。

 

『洛山もオールコートディフェンスをやり返してきた!!!』

 

つい先程の花月のお株を奪うオールコートマンツーマンディフェンスに観客がどよめく。

 

「っ! …くそっ」

 

スローワーとなった室井の前には五河がハンズアップしながら立ち塞がっていた。

 

「(まずい、室井の奴、さっきのディフェンスで浮足立っちまってる!)」

 

先程の得点を決められた事による動揺が解けていない室井は突然のオールコートマンツーマンディフェンスに対応出来ていなかった。

 

「…ちっ」

 

何とかボールを貰いに行こうとした空だったが、赤司がピタリとマークに付いており、ボールを渡す隙を作れない。

 

「あかんムロ! もうすぐ5秒や! はよ放れ!」

 

スローインに入った選手は5秒以内にスローインをしなければバイオレーションとなり、相手ボールになってしまう。その5秒が目の前に迫っていた。

 

「室井さん!」

 

その時、大地が室井に駆け寄り、ボールを貰いに来た。

 

「綾瀬先輩!」

 

大地の姿が目に入った室井は目の前に立つ五河を掻い潜ってパスを出した。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

ボールが大地の手に収まる直前、横から三村が手を伸ばし、ボールを叩いた。ボールはそのままサイドラインの方へ転がり、ラインを割ろうとしていた。

 

「おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!」

 

全速力でボールに向かっていった三村はボールに飛び付き、ボールがラインを割る前にコートへとボールを戻した。

 

「ナイスガッツだ三村!」

 

三村が必死の思いでコートに戻したボールを四条が確保した。

 

「急に泥臭くなりよってからに!」

 

ボールを掴んだ四条に天野がすぐさまチェックに向かった。だが、四条はシュートを打たず、ボールを左へと放った。そこには二宮が移動していた。

 

「ナイスパス!」

 

スリーポイントラインの外側でボールを掴んだ二宮。そこからすぐさまシュート態勢に入った。

 

「…くそっ!」

 

空が慌ててヘルプに飛び出し、ブロックに飛んだ。しかし、二宮は空がブロックに来るより早くボールをリリースした。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングを潜り抜けた。

 

「っしゃぁっ!」

 

スリーを決めた二宮は拳を握り込みながら喜びを露にした。

 

「ここからガンガン突き放す。俺達を舐めんなよ!」

 

三村がディフェンスに戻りながら花月の選手達に叫んだ。

 

「上等だ…!」

 

これを聞いた空は洛山の選手達を睨み付けながら返した。

 

オフェンスが花月に切り替わり、空がボールを運ぶ。フロントコートまでボールを進めると、赤司がディフェンスにやってきた。

 

「…ちっ」

 

赤司のエンペラーアイの間合いに入られ、舌打ちをする空。やむを得ず大地にパスを出した。

 

「…来い」

 

「止める!」

 

大地にボールが渡ると、正面に四条、右側に三村が立つ変則のダブルチームでディフェンスを始めた。

 

「…っ」

 

タイムアウト前とは気合いの入りが違う2人。大地は嫌なものを感じて無理に仕掛けず、逆サイドの松永にパスを出した。

 

「来いよ」

 

松永にボールが渡ると、二宮がディフェンスに立ち塞がった。

 

「…くっ!」

 

センターとは違い、向かい合ってのマッチアップ。決して不得意のシチュエーションではないが、目の前の二宮のディフェンスを前に仕掛けられず、空へとボールを戻した。

 

「(この赤司相手に小細工は通用しねえ。だったら、未来が見えても追いきれない程のスピードでかわすしかねえ!)」

 

ボールを受け取った空は目の前の赤司相手に最小限の動作と最大限の加速で仕掛ける。

 

「無駄だ」

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

しかし、仕掛けた直後、赤司が伸ばした手が空の持つボールを捉えた。

 

「速さなど無意味だ。この僕の前では」

 

無情の表情で赤司がそう空に告げ、零れたボールを拾い、そのまま速攻に走った。

 

「くそったれ!」

 

それでも空はすぐさま反転し、赤司を追いかける。

 

「…行かせませんよ」

 

スリーポイントライン目前で大地が赤司に追い付き、立ち塞がった。

 

「お前が来ようと変わらない。…いや、お前ではこの僕の前に立つ事すら許されない」

 

 

――ダムッ…ダムッ…!!!

 

 

「道を開けろ」

 

「…ぐっ!」

 

左右に切り返す赤司。これに対応しようとした大地だったが、アンクルブレイクを起こし、座り込んでしまう。赤司は大地の横を抜け、ジャンプショット…と見せかけ、ポンプフェイクをした。

 

「がっ! ちくしょう!」

 

すると、赤司の後方でジャンプショットをブロックしようと飛んでいた空の姿があった。

 

「無駄な徒労だな」

 

見下すようにそう呟き、赤司は左へとボールをトスした。

 

「ナイスパス!」

 

するとそこへ、四条が走り込み、ボールを受け取った。

 

「らぁっ!」

 

ボールを掴むのと同時に四条はリングに向かって飛んだ。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「させへんわ!」

 

リングに振り下ろされたボールを天野がブロックした。

 

「ちっ! だらぁっ!」

 

「何やと!?」

 

ブロックされ、宙に舞ったボールを四条が再び飛んで抑えた。

 

「(あいつら(キセキの世代)のように華やかでなくてもいい、泥臭かろうが何だろうが勝つんだ!)…おぉっ!!!」

 

 

――バス!!!

 

 

直後、背中で天野を押し込み、強引に押し込んで得点を決めた。

 

「しゃあっ!!!」

 

得点を決めた四条は拳を握り込みながら喜びを露にした。

 

「ちっ!」

 

再び失点を喫し、悔しがる空。

 

「理解したか? これが今年の洛山だ。お前達が如何に優れた資質を持っていようと、僕達には及ばない」

 

「「…」」

 

赤司にそう告げられ、黙り込む空と大地。

 

「ナンバーワンポイントガードか。なりたければなるがいい。…僕のいない来年にね」

 

最後に空にそう告げ、赤司はディフェンスに戻っていった。

 

「…っ!」

 

空は何も言い返す事が出来ず、ただただ悔しさから拳をきつく握りしめたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

「あなた達、分かっているとは思うけど、今日の相手は秀徳。予選で戦った相手ではあるけど、今日の秀徳はその時の比じゃないわ。気を引き締めて行きなさい」

 

場所は変わってコートへと続く通路。先頭を歩くリコが後ろを歩く選手達に告げる。

 

「うす!」

 

「はい」

 

すぐ後ろを歩く火神が気合いの入った返事をし、隣を歩く黒子が返事をした。

 

「うーす」

 

「…」

 

その後ろで池永が気のない返事をし、その隣の新海が静かに頷いた。

 

「…っ」

 

「…っし」

 

緊張で強張った表情の田仲と、静かに気合いを入れる朝日奈。

 

『…っ』

 

残りの選手達も緊張を誤魔化しながら歩いて行く。

 

「さあ、行くわよ!」

 

誠凛の選手達がコートへと足を踏み入れた。

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

コートへとやってくると、観客の大歓声が彼らを出迎えた。だが、それは彼らに対してではなく…。

 

「やってるな。さて、どうなっているか…」

 

火神が得点が表示された電光掲示板に視線を向けた。

 

 

第2Q、残り25秒。

 

 

花月 32

洛山 47

 

 

「点差は15点。開いたな」

 

第1Q終了時に聞いていた点差より点差が広がっていた。

 

「…っ、あの花月を相手にたった32点に抑えたのか。凄いディフェンス力だな」

 

オフェンス特化の花月。その花月を少ない失点で抑え込んだ洛山の力の驚く朝日奈。

 

「神城…綾瀬…」

 

心配そうにかつてのチームメイトの名を呼ぶ田仲であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「ちくしょう!」

 

必死にディフェンスをする空。

 

タイムアウト終了後、空は赤司に抑えられていた。セットプレーに何とか対策を見出した花月だったが、赤司が巧みにパスを捌き、そのパスを受けた他の4人が確実に決め、得点を重ねていった。

 

対して花月は、空が赤司に抑えれてしまい、大地も何とかダブルチームの隙を突いて得点を決めるも単発。他の3人も良い様にやられていた。

 

 

――ピッ!!!

 

 

高速でパスが飛び交い、花月のディフェンスを翻弄する。

 

『…っ』

 

恐らくこのQ最後の洛山のオフェンス。何としてでも止めたい花月の選手達は必死でディフェンスに臨んでいる。

 

 

――スッ…。

 

 

残り時間が13秒になった所で三村がボールをリング付近に放った。

 

『っ!?』

 

するとそこへ、赤司が既に舞っていた。

 

『まさか…』

 

『アリウープ!?』

 

第2Q最後のオフェンスで大技で得点を決められればその精神的ダメージは大きく、第3Q以降にも確実に影響を及ぼしてしまう。

 

「これでトドメだ」

 

赤司の伸ばした右手にボールが収まり、そして、リングに振り下ろした。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

その時、ボールとリングの間に1本の腕が現れ、リングに振り下ろされようとしていたボールを阻んだ。

 

「やらせねえ!!!」

 

『神城!』

 

直前にブロックに飛んだ空がアリウープを阻んだ。

 

「おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!」

 

 

――バチィッ!!!

 

 

ブロックに飛んだ空が赤司の手に収まるボールを弾き飛ばした。

 

「よくやった神城!」

 

ベンチから立ち上がりながら上杉が叫んだ。

 

「ルーズボール、絶対に抑えろ!」

 

「もちろんやぁっ!!!」

 

続いて叫びながら指示を出す上杉。それに応えるように天野が咆哮を上げながらルーズボールを抑えた。

 

「天さん!」

 

「最後、景気よく決めてや!」

 

速攻に走る空。その空に天野が縦パスを放った。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

ボールを掴んでそのままワンマン速攻に走ろうとドリブルを始めた瞬間、横から伸びてきた手にボールを弾かれた。

 

「赤司!」

 

手を伸ばしてきたのは赤司。速攻に走る空を察知して追いかけていたのだ。

 

「…ちっ」

 

舌打ちをしながら慌ててボールを抑えた空。

 

「しぶといな。…だが、ここを止めれば同じ事だ」

 

淡々と赤司が空の前に立ち塞がりながら空に告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「正念場だな」

 

観客席の青峰がおもむろに口を開いた。

 

「残り10秒、最後の1本ここを決めれば後半戦に向けて士気は上がる。…だが、ここを取れなきゃ所詮、首の皮1枚繋いだだけで終わる。第3Qに今度こそトドメ刺されて終わりだ」

 

「つまり、この最後のオフェンスが勝敗を分けるかもしれないって事ッスね」

 

青峰の解説に、黄瀬が頷きながらコートに注目したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「(ラスト1本、何としても決めねえと…!)」

 

空も直感で理解していた。この1本の重要性を。この1本が試合の勝敗を左右しかねない1本である事を…。

 

「(イチかバチか打つか? …ダメだ、確実にシュート態勢に入る前にカットされちまう…)」

 

必死に思考を巡らせて策を考える空。だが、残り時間は刻一刻と減っていく。

 

「(もう迷ってる余裕はねえ。行くしかねえ!)」

 

残り時間に焦りを覚えた空は覚悟を決め、仕掛ける事を決意した。

 

「(来るか…)」

 

仕掛ける気配を察知した赤司がエンペラーアイで空の動きの先読みを始めた。

 

「(右から左へのクロスオーバー…仕留める!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

空がクロスオーバーで切り込む、同時に左手に収まろうとするボール目掛けて赤司が手を伸ばした。

 

「(やべぇ! 完全に読まれた、このままじゃ取られる!?)」

 

開き直って仕掛けた空だったが、すぐさまボールをカットされる未来を悟ってしまう。

 

「(再度切り返し……間に合わねえ!)」

 

尚も迫る赤司の手。まもなくボールに到達しようとしている。

 

「(くそったれがぁっ!!!)」

 

 

――ゴッ!!!

 

 

「っ!?」

 

「いぎっ!」

 

赤司の伸ばした手がボールを捉えようとしたその時、空の額に赤司の額が激突した。その結果、赤司の伸ばした手が僅かにボールに届かなかった。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

直後、ロールしながら赤司をかわし、そのままリングへと突き進んだ。

 

「っしゃ!」

 

フリースローラインを越えた所でボールを掴み、シュート態勢に入った。

 

「くそっ!」

 

「止める!」

 

赤司が抜かれるまさかの事態に動揺しつつも四条と五河がヘルプに入り、ブロックに飛んだ。

 

「「っ!?」」

 

しかし、ここで2人は目を見開く。空はボールを掲げたものの、飛んではいなかったのだ。

 

 

――スッ…。

 

 

2人が飛んだのを確認すると、2人を間を抜けるようにステップを踏んだ。

 

「(フェイク!?)」

 

「(アップ&アンダー!?)」

 

気付いた時にはもう遅かった。

 

 

――バス!!!

 

 

ステップを踏んだ足でリングに向かって飛び、レイアップを決めた。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

同時に、第2Q終了のブザーが鳴った。審判が指を2本立てて降ろし、花月の得点に2点加算された。

 

「ちょっと待ってくれ! 今のファールじゃないのか!?」

 

得点に納得が出来ない二宮が額を指差しながら審判に抗議した。抗議の内容は直前の空と赤司の額が激突した事だ。二宮は空が故意にぶつけたと物言いをする。

 

「いや、今のはファールではないよ」

 

しかし、審判は首を横に振った。ボールをカットしようと突っ込んだのは赤司の方である為、審判は事故による激突と判断し、笛を吹かなかった。

 

「…っ! くそ…!」

 

額を手で抑えながら赤司が空を睨み付ける。

 

赤司は気付いていた。ボールを奪われる事を理解した空が咄嗟に右足を外に伸ばして足を広げる事で赤司以上に低く構え、かつ額を突き出す事で額をぶつけ、カットを防いだ事に。

 

「ちっ、…皆、戻るぞ。いつまでもここにいても時間の無駄だ」

 

踵を返した赤司は審判に抗議する選手達にそう言い、ベンチへと戻っていった。

 

『…っ!』

 

赤司に窘められ、空を睨み付けながら4人は赤司に続いてベンチの向かって行った。

 

「そんなに睨まないでくれよ。こっちだっていてぇーんだよ」

 

涙目になりながら額を擦る空。

 

「笛は吹かれてねえーんだから言いっこなしだぜ。…こっちだって必死なんだ。勝つ為に頭使っただけだぜ」

 

洛山の選手達の背中に空は真剣な表情で言ったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「お久しぶりです。…と、言った方がいいですか?」

 

控室へと戻る道中、誠凛の選手達と相対した洛山の選手達。黒子が赤司に声を掛けた。

 

「そうだね。その挨拶が一番しっくりくる。久しぶりだね。…テツヤ」

 

「っ!? …やはりそうですか」

 

返事を聞いて改めて確信した黒子。

 

「お互い1勝1敗同士。慎太郎とやるのも面白いが、是非ともお前達と白黒付けたいものだな」

 

過去、誠凛と洛山は2回試合をしており、一昨年のウィンターカップでは誠凛が勝利し、去年のインターハイでは洛山が勝利している。

 

「まだやり合うとは限んねえだろ。正直、余裕かましてられる点差だとは俺には思えねえけどな」

 

そこへ、火神が前に出て口を挟んだ。

 

「なるさ。勝つのは僕達洛山だ。第3Q始まればすぐに分かる事だ」

 

 

――スッ…。

 

 

そう宣言し、赤司は火神の肩に手を置いた。

 

「っ!? てめ、何しやがる!?」

 

反射的に火神は赤司の手を振り払った。2年前のウィンターカップの準決勝の洛山と秀徳の試合のハーフタイムの折、赤司に地面の強制的に座らされた事を思い出したのだ。

 

「…フッ、何を狼狽えている。ただの冗談だ。この程度の事で慌てふためくようでは、慎太郎が擁する秀徳に勝つなど、夢のまた夢だぞ」

 

軽く微笑を浮かべると、赤司は控室に続く通路へと歩いて行ったのだった。

 

「っ! あの野郎…!」

 

恥を掻かされた火神は赤司が歩いて行った方向を睨み付ける。

 

「まあまあ、落ち着いて下さい火神君」

 

いきり立つ火神を黒子が宥めた。

 

「…っ」

 

「…赤司、先輩」

 

赤司をすぐ傍で目の当たりにして新海と池永が息を飲んでいた。

 

「なにお前ら、もしかしてビビッた?」

 

その様子に気付いた朝日奈が尋ねる。

 

「てめえには分かんねえだろうけどな。帝光中出身の奴にとってキセキの世代…その中でも赤司先輩は特別なんだよ…」

 

「去年も顔を合わせたが、その時とは様子が違っていた。…いや、正確には俺らの知ってる赤司先輩に戻ったって所か。未だに慣れないな。あの人を刺すような視線の赤司先輩には…」

 

池永と新海は顔を強張らせながら言ったのだった。

 

「「「…っ」」」

 

一昨年のウィンターカップで僅かな時間ではあるが赤司とマッチアップした降旗、河原、福田はその言葉の意味が理解出来た為、表情を強張らせていた。

 

「あなた達! いつまでそこでくっちゃべってるの!? 時間は限られているのよ、早く来なさい!」

 

先を歩いていたリコがいきり立ちながら誠凛の選手達を呼んだ。それを聞いて選手達は慌てながらコートへと駆けていったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「よっ、久しぶりだな」

 

「どうもっす」

 

一方で、花月の選手達は控室に戻る道中、秀徳の選手達と相対していた。

 

「どうしたよ? 随分と辛そうじゃん」

 

「今だけです。必ず後半でひっくり返してみせますよ」

 

茶化しながら尋ねる高尾に対し、横にいた大地が返事をした。

 

「そうなればよいのだがな。その様では期待は薄そうだな」

 

そんな空を見て緑間が冷めた目で言い放つ。

 

「期待して待ってりゃいいですよ。…って言うか、そっちはどうなんですか? 今日の相手は誠凛ですよ。確か、予選では負けたって聞きましたけど?」

 

「…確かに、予選では俺達は負けた。それは覆しようのない事実なのだよ」

 

空の言葉に緑間は僅かに溜めながら言葉を発した。

 

「負けたのはあくまでも予選の俺達だ。今、この場に立っている俺達は予選で負けた時より遙かに成長している。故に、俺達は負けん」

 

眼鏡のブリッジを押しながら緑間は真剣な表情で言い放った。

 

「…なるほど、そいつは楽しみだ。そんじゃ、お互い決勝で会いましょう」

 

後ろ手で手を振りながら空は控室へ続く通路へと消えていった。空に続くように花月の選手達も消えていった。

 

「ハハッ、相変わらず、あの自信は何処から出てくるのかね」

 

空の様子を見て高尾は笑いながら言う。

 

「無駄口はここまでだ。まずは目の前の試合に集中するのだよ。全員、気持ちを切り替えろ」

 

「分かってるぜ真ちゃん。おっしゃ! それじゃ皆、行こうぜ!」

 

『おう!!!』

 

緑間の檄に続いて高尾が号令を出し、秀徳の選手達がそれに応え、コートへと向かって行ったのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

波乱の準決勝は洛山リードで前半戦を終えた。

 

第2Q終了間際、空が咄嗟の奇策によって士気を保ち、後半戦へと続けた。

 

続くもう1つの準決勝のカードである誠凛と秀徳が試合前の練習を始める中、両チームは控室で後半戦に向けての準備を始めるのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





なんでだろうな、仕事中に限ってこの二次のネタが浮かぶ。むしろ、家にいる時の方が浮かばない気がしてきた…(;^ω^)

気が付けば今年ももう2ヶ月を切り、もうすぐ年の瀬、今年はこれまでの人生の中でもあらゆる意味で激動だったなぁ…。

ネタを探しつつの投稿の上、これから年末という事でリアルが忙しくなってくるので、これまでの投稿ペースで投稿出来るか分かりませんが、最後まで駆け抜けたらなと、後書きで1つ意気込みを…(^_^)v

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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