投稿します!
試合は佳境。盛り上がるかどうかは……自分次第か…(>_<)
それではどうぞ!
第4Q、残り4分58秒。
花月 91
海常 86
試合時間残り5分を切り、遂に黄瀬が最大の切り札であるパーフェクトコピーを再び使用してきた。上杉が講じた黄瀬のパーフェクトコピー対策。それは空と大地2人によるダブルチームであった。
「覚悟しろ黄瀬。日本最強コンビの登場だ」
「ここであなたの全力を止めてみせます」
その黄瀬の前に空と大地の2人が立ち塞がった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「よし、行くぞ!」
その直前、次に行われる試合の為、誠凛の選手達がコートのあるフロアへとやってきた。
「ちょうどクライマックスか。点差は……っ!? 花月がリードしてるのか…」
電光掲示板の得点表を見て火神は軽く驚いた。
「マジかよ……おい、夜木!」
同じく点差に驚いた池永が先に偵察に行っていた夜木を呼ぶ。
「えっと、第4Qが始まった時点では同点だったけど、そこから花月が少しずつ点差を広げていって…」
呼ばれた夜木はこれまでの状況を簡潔に説明していく。
「それから――」
「いやいい。後は説明がなくても充分だ」
ある程度説明を聞いた新海はそこで夜木を制した。
「残り5分で点差は5点。あの海常相手にここまでリードで迎えられたのは大したもんだが…」
「…恐らくここから黄瀬君は試合終了までパーフェクトコピーで攻めてくる。逃げ切りを狙うにはあまりにも心もとない点差ね」
コートを見つめる火神とリコ。状況を察した2人は花月の分の悪さを予想する。
「あの赤司君でさえもパーフェクトコピーを使った黄瀬に対してはボールを持たせないという方法を取ったわ。一昨年私達が戦った時は結局黄瀬君を止められなかった。ここからどう凌ぐのかしら…」
「……ん? 黄瀬さんをマークしているのは、神城と綾瀬?」
コート上でボールを持っているのは黄瀬。その黄瀬の前に空と大地が立ち塞がっているのを見つける田仲。
「あの2人ならもしかしたら…!」
かつてのチームメイト2人を見て田仲が期待を膨らませたのだった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「…」
「「…」」
右45度付近のアウトサイドで睨み合う黄瀬、そして空と大地。
「……無駄ッスよ。例え君達でも俺は止められない」
そう宣言すると黄瀬はドリブルを始めた。
――ダムッ…ダムッ…。
黄瀬が左右に切り返し、揺さぶりをかける。
――ダムッ!!!
「…うぉっ!?」
何度か切り返した直後、黄瀬が強めに切り返すと、空がバランスを崩し、後ろに倒れ込む。同時に青峰のコピーで一気に加速し、中に切り込んだ。
「…っ」
一気に加速して切り込んだ黄瀬だったが、大地が進路を塞いだ。振り返らずに高速のバックステップで追いかけた為、抜かれる事無く回り込めたのだ。
「(…いや待て、何かおかしい)…っ!?」
咄嗟に黄瀬がボールを切り返した。
「っだ! おしい!」
後ろから伸びてきた腕と共に聞こえてきた声。振り返るとそこには後方に倒れ込んだ態勢で腕を伸ばした空の姿があった。
「…忘れてたッス。確かに君には――」
ここで黄瀬がある事を思い出した。
「俺にはアンクルブレイクは通用しねえぜ」
したり顔で言い放つ空。空はかつて本家の赤司のアンクルブレイクにも悠々と態勢を保ちながらプレーをしていた。限りなく本家に近いとは言ってもコピーでしかない黄瀬のものでは通用しないのは必然である。
「だからどうしたッスか? たった1つ通用しなくても俺を止めた事にはならない!」
――ダムッ…ダムッ!!!
黄瀬は再び赤司のコピーで切り返し、そこから青峰のコピーでドライブを仕掛けた。
「だから俺には通用しねえって言ってんだろ!」
バランスを崩す事なく空は黄瀬は追いかけた。ハイポスト付近に侵入すると、黄瀬はそこでボールを掴んでシュート態勢に入った。
「まだマークは外せてねえぞ!」
これに反応した空はブロックに飛んだ。
――スッ…。
シュート態勢に入った黄瀬は上半身を後方に寝かせ、上体を反り始めた。
『青峰のフォームレスシュートだ!?』
空のブロックをかわしながら黄瀬はボールを放った。
――バシィィィッ!!!
「っ!?」
しかし、放ったボールは後方から現れた1本の手に弾かれた。
「私を忘れてもらっては困ります」
ブロックしたのは大地。赤司のコピーでバランスを崩した振りをして黄瀬の背後から狙い打ったのだ。
「おっしゃナイス大地! おらっ、速攻!」
すかさずボールを拾った空は前に大きな縦パスを出した。すると、先程ブロックをした大地がすでに速攻に走っており、ボールを掴むとそのまま速攻に走った。
「…っ! まだだ、決めさせるかよ!」
すぐさま反転した黄瀬が大地を追いかける。
「っ!?」
縦パスのボールを確保した折にスピードが緩んだ間に黄瀬がスリーポイントライン目前で大地を捉えた。
――キュキュッ!!!
黄瀬に追い付かれるのと同時に大地が速攻の勢いを一瞬で殺し、急停止した。同時にスリーの態勢に入る。
「…っ」
同じく急停止した黄瀬が反転して大地のブロックに向かった。
――スッ…。
だが、大地はスリーを打たず、ビハインドパスでボールを右に放った。
「っしゃぁっ!」
そこに後ろから走り込んだ空がボールを掴み、そのまま中に切り込んで行った。
「らぁっ!!!」
フリースローラインを越えた所で空が気合い一閃、ボールを掴んでリングに向かって飛んだ。
「まだだ!」
すると、空の後ろから1本の腕が伸びてきた。
「っ!? これにも追い付くのかよ!?」
意表を突いたと思っていた空は後ろから現れた黄瀬のブロックに驚愕した。
「だったらもう一の矢!」
――バゴッ!!!
空はダンクを中断。強引に腕を動かしてボールをバックボードに当てた。
「っ!?」
ボールが跳ね返ると、空の後ろから大地が飛んでいた。大地が空中でボールを掴むと、そのままリングにボールを振り下ろす。
「くっそ…!」
着地した黄瀬が再びブロックに向かうが…。
――バキャァァァッ!!!
間に合わず、大地はボールをリングに叩きこんだ。
『うおぉぉぉぉーーーっ!!! 決めたぁっ!!!』
「っしゃぁっ!」
「はい!」
パチン! っと2人はハイタッチを交わした。
「いや、点を決めた事よりも、あいつら、パーフェクトコピーを使った黄瀬を止めやがった…!」
完全無欠であるパーフェクトコピー。未だかつてまともに破られた事はない最強の必殺技。それを空と大地を止めたのだ。
「あの2人、黄瀬君のパーフェクトコピーを止めるには絶好のコンビかもしれないわね」
一連のプレーを見ていたリコが口を挟む。
「…っ」
1本決めて止めるはずが逆に止められ、決められてしまい、歯を食いしばって悔しがる黄瀬。
「まだ1本止められただけじゃ」
気落ちする黄瀬に声をかけたのは三枝。
「無敵の技なんぞない。どんな技もいつかは破られる。それがたまたま今だったというだけじゃ」
「えぇ、分かってるッスよ。ていうか、まだ俺のパーフェクトコピーは破られてないッス。まだまだこれからッスよ」
目をギラつかせながら黄瀬は三枝に返したのだった。
海常のオフェンス。ボールは黄瀬に託された。
「「…」」
「…」
先程と同じ構図である、空・大地対黄瀬の対決。
「「っ!?」」
すると、黄瀬はバリアジャンパーで距離を空け、すぐさまシュート態勢に入った。
「っ! 緑間のコピーか!? させるか!」
シュートフォームに入られる前に空が距離を詰め、ブロックに飛んだ。
――ダムッ!!!
しかし、黄瀬はスリーを中断。青峰のコピーで中に切り込んだ。
「ちっ」
「行かせませんよ」
舌打ちをする空。しかし、大地がバック走行で黄瀬を追いかけ、ディフェンスをする。
「邪魔だ!」
――ダムッ…ダムッ…!!!
「っ!?」
片足に重心が乗った所で急速に切り返し、大地はアンクルブレイクを起こして後ろに倒れ込んでしまう。
『抜いたぁっ!!!』
大地を抜き去った黄瀬はそのまま突き進む。
「まだだ!」
ローポスト付近まで侵入した直後、空が目の前に現れた。アンクルブレイクを起こさせる為に立ち止まり、切り返した間に回り込んだのだ。
「さすがにしつこいッスね。けど、ここまで来てしまえばもう俺は止められない!」
その時、黄瀬がボールを掴んで回転を始める。
「あれって、むっくんの!?」
「…」
持ち前のパワーに遠心力を上乗せさせてリングにボールを叩き込む紫原の必殺技、トールハンマー。
「まずい、あれを打たれたらいくら神城でも!?」
花月ベンチから悲鳴のような声を菅野が上げる。
体格とパワーの差がある空ではあの技は止められない。
――バチィィィッ!!!
「…なっ!?」
その時、黄瀬の手からボールが弾かれてしまう。
「その技は本家のものを何度も見させてもらいました」
ボールを弾いたのは大地。アンクルブレイクで態勢を崩したものの、何とか床に手を付いて転倒を防いだのだ。
「紫原さんよりも15㎝以上も身長が低い上に足りない力を補う為により回転に入る際のモーションが大きいので、タイミングはより計りやすい」
黄瀬の後方から紫原のコピーであるトールハンマーに入るのを予見した大地がタイミングを計って黄瀬の持つボールを狙い打った。
「さっすが相棒、頼りになるぜ!」
零れたボールをすぐさま抑えた空はそのまま速攻に走った。
「くそっ! ここは通さねえ!」
速攻に走った直後、海常の選手の中で1番後ろにいた小牧が立ち塞がる。
「いーや、ここは通らせてもらうぜ」
そう宣言した直後、空は両足を滑らせたかのように反転して背中から倒れ込んだ。
――ダムッ!!!
倒れ込む直前にスピンムーブで高速反転し、小牧を抜き去った。
「っ!? これは神城が得意としてた…!?」
持ち前のバランス能力を生かしたスリッピンスライドフロムチェンジの応用技。咄嗟の変則フェイントに小牧はまったく反応出来なかった。
後方にいた小牧を抜き去った空はそのままワンマン速攻で突き進んだ。
「まだッス! こんな所では終われないんスよ!」
「…っ、速いな!」
思わず愚痴が飛び出る空。フロントコートまで進み、スリーポイントライン越えた所で黄瀬が空に並ぶ。小牧を抜き去る際にスピードを落とした事で追いついたのだ。
「空!」
その時、空から見て左。サイドライン沿いを走っていた大地がボールを要求した。
――スッ…。
空はボールを掴んでビハインドバックパスを出した。
「(ここでスリーはまずい!)…させないッスよ!」
このパスに反応した黄瀬が右腕を後ろに伸ばしてパスコースを塞ぐ。
「ダメだな」
「えっ?」
これを見た青峰がボソリと呟き、桃井が聞き返すように声を上げた。
「完全に後手だ。神城の勝ちだ」
「っ!?」
後ろに手を伸ばしてパスカットを狙った黄瀬だったが、空がビハインドバックパスを中断。ボールを後ろに回した腕を強引に戻し、そこからリングに向かって飛んだ。
――バス!!!
そのままレイアップで空は得点を決めた。
『うわー! 何だ今の!?』
ビハインドバックパスをフェイクに入れたプレーに観客は大興奮。
「っしゃぁっ!!!」
得点を決めた空は拳を振り回しながら狂喜乱舞した。
「…っ!」
再びの失点に表情が曇る黄瀬。
『…っ』
海常の選手達の表情にも焦りが生まれていた。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「マジかよ…。黄瀬のパーフェクトコピーを止めてやがる…」
試合を見ていた火神の表情は驚愕に染まっていた。
かつて大苦戦を強いられ、結局は止める事が出来なかったパーフェクトコピー。それを2度も止めた空と大地に驚きを隠せなかった。
「…あの2人を相手にパーフェクトコピーはもしかしたら相性が悪いのかもしれないわね」
顎に手を当てながらリコが解説する。そのリコに誠凛の選手達が注目する。
「黄瀬君のパーフェクトコピーを止めるには、黄瀬君が誰のコピーをしてくるのか予測する必要があるわ。けど、神城君にはアンクルブレイクが通じない。崩しが効かないからタメの大きい緑間君のコピーも使えない。となると、必然的にアウトサイドにいる時は青峰のコピーを使わざるを得ないわ」
『…』
「ゴール下でも紫原君のコピーは綾瀬君にタイミングを完全に見抜かれているわ。となると、もう残されてるのは青峰君のコピーのみ。けど、それも綾瀬君が少し引き気味にディフェンスをしてバックで下がりながら対応する事で防いでいる。例え止めきれなくても神城君が戻るまで粘る事は出来るわ」
『…』
「パーフェクトコピーは足りない要素を他のもので補って限りなく本人のものに近いものになってるけど、それでも本人には僅かに及ばない。1つに限定されてしまえば今のあの2人には止められてしまうわ」
キセキの世代の技全員のコピーを可能とするパーフェクトコピー。それを同時に使用してくる事で的が絞れない事が最大の脅威。だが、選択肢を絞られ、尚且つ相手が同じキセキの世代を相手に対等に戦える者2人が相手では分が悪い。
「ディフェンスでも、いくら青峰君と紫原君の複合でも、相手が超高速でしかもコンビネーション抜群の2人では止めきれるものではないわ。現に、私達の時も止められずとも点が取れなかった訳ではなかったから」
「…無敵の技なんてねえ。パーフェクトコピーにしても、いつかは破られる日が来るとは思っていたが、まさか今とはな…」
かつて手も足も出なかっただけに火神は複雑そうな表情をした。
「まあ、それでもあくまでもあの2人が同時に相手だからこそ今の結果であって、どちらかが1人で相手をしたら止められない事には変わりないから、驚異的な技には変わりないのだけれどね」
フォローをするようにリコが言葉を続ける。
「点差が開いてきたわ。切り札であるパーフェクトコピーを以てしても点差が広がるようではこの試合、決まってしまうでしょうね」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「ダブルチームってのはディフェンスが足し算で強まる訳じゃねえ。責任の所在が曖昧になっから連携の取れてねえダブルチームなんざマンツーマンより突破しやすくなる」
「あの2人のダブルチームはどうなの?」
青峰の解説に桃井が疑問を尋ねる。
「息はこれ以上になく合ってる。互いの特性を理解し合って、互いに穴をしっかり埋めてる。少なくとも、あれ以上のダブルチームは俺は見た事がねえ」
百戦錬磨の青峰からも空と大地のダブルチームに称賛を贈る。
「他の奴のコピーは? 黄瀬ちん他にもコピー出来るんだから何も俺達の技にこだわる必要もないんじゃない?」
「相手が神城か綾瀬のどっちか1人ならそれでいけんだろうが、2人同時にするには裏を掻かねえ限り徒労に終わる。それに、残り時間少ねえ今の状況じゃ試す時間もねえ」
紫原の案を青峰を否定した。
「けど、きーちゃん何でパス出さないのかな? 2人のマークが自分に集中してるんだからパスを出せば点取れそうだけど…」
「立て続けに止められて1度も点が取れてない状況でパスしても逃げたようにしか映らねえ。それで仮に点が取れてもチームの士気は落ちる」
「なるほど…」
桃井の疑問に青峰が答えた。
「ま、体力も集中力も落ちてる終盤で、残り時間と点差を考えればオフェンスが失敗出来ない上、スピードとディフェンスエリアが広い神城と綾瀬がヘルプに飛んでくるこの状況で、パーフェクトコピーが止められ続けた事実を目の当たりして積極的に点なんざ狙える訳がねえ。黄瀬もそれが分かってるからパスが出せねえ」
「三枝さんは? インサイドで彼にボールが渡ればあの2人が来ても関係ないんじゃ…」
「ありゃもう駄目だ。さっきまでの反動か知らねえが、完全にガス欠起こしてやがる」
再び桃井が疑問を投げかけるも青峰が否定した。
「さっきまでは手も足が出てなかった8番を相手するので精一杯だ。期待は薄いだろうな」
「きーちゃん…」
青峰の解説を聞いて、桃井は心配そうにコート上の黄瀬に視線を向けた。
「(どうすんだ黄瀬。このままだともう後がねえぞ)」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「(俺が…、俺が何とかしないと!)」
黄瀬が中にカットインした。
「これならどうスか」
フリースローライン目前でボールを掴むと、黄瀬はボールを胸元に構えた。
「あれは!? 黒子のファントムシュート!」
「っ!?」
黄瀬が打とうとしているシュートの正体に気付いた火神が思わず声を上げ、黒子は目を見開いた。
「黒子と違って黄瀬には身長も高さがある上、初速を上げて再現してるから笠松がやったファントムシュート破りは通用しない!」
かつて1度止められているファントムシュートだが、使用者が黄瀬の場合、使えない。
「これで、どうだ!」
黄瀬がボールを胸元から押し出すようにボールを放った。
「それ知ってるぜ。黒子さん奴だろ?」
――バチィィィッ!!!
「…なっ!?」
ボールが放たれるまさに瞬間、空がボールを上から抑えた。
「合宿の時に黒子さんに1度見せてもらった。理屈分からねえがブロックしようとするとボールが消えちまう。だったら、シュートを打つのと同時に上から抑えちまえば消えようが関係ねえ」
放たれたボールは姿を見失ってブロック出来ない。ならば放つ直前に照準を合わせてブロックすれば止められる。これが空が考えた攻略法であった。
「…」
あまりの衝撃に言葉を失う黄瀬。
「速攻!」
ボールを拾った大地がそのまま速攻に走った。
「くそっ! 戻れ、戻れ!」
悲痛の表情で声を上げ、ディフェンスに戻る小牧。
「っ! まだだ! まだ俺は!」
歯をきつく食い縛りながら黄瀬が全速力でディフェンスに戻る。そして、フロントコートに侵入した所で大地を捉える。
――キュキュッ!!!
スリーポイントライン目前で大地が急停止、ボールを構えた。
「打たせるか!」
黄瀬も何とか停止し、スリー阻止に向かう。
「いえ、ここは決めさせていただきます」
大地は黄瀬がチェックに来ると、ボールをリングにではなく、サイドラインとエンドラインが交わるコートの左隅付近にボールを放った。
「ったく大地の奴、とんでもねえパス出しやがって!」
すると、放ったボール目掛けて空が全速力で向かって行った。
「厳しくて申し訳ありませんが、ここしかありませんでしたので…」
「限度があんだろが!」
愚痴を零しながら空がボールに向かって走っていく。そして…。
「あっぶねえ!」
ラインを割る目前でボールを掴み、何とか自身もラインを越える事なく踏みとどまった。そして、その位置からスリーを放った。
『っ!?』
ボールの行方に花月、海常の選手のみならず、この会場にいる全ての者が注目した。
――ザシュッ!!!
放たれたボールはリングを潜り抜けた。
『キタァァァァッ!!! ここで値千金のスリーだぁっ!!!』
この成功したスリーに観客のボルテージが最高潮となった。
「12点差…」
信じられないと言った表情で電光掲示板に視線を向ける氏原。
第4Q、残り3分42秒。
花月 98
海常 86
このスリーが決まった事で点差は遂に二桁の12点にまで広がってしまったのだ。
「ハァ…ハァ…!」
両膝に手を付きながら肩で大きく息をする黄瀬。切り札であるパーフェクトコピーを3度防がれ、状況は絶望的である。
「……くそっ」
黄瀬の口から思わずそんな言葉が飛び出した。
海常のオフェンス。小牧がボールを運んでいる。
「(どうする…)」
ゲームメイクをする小牧。しかし、その頭の中は焦りが占めていた。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「(何をやってるんだよ俺は…!)」
下向き、拳をきつく握りしめながら黄瀬は胸中で不甲斐ない自身に苛立っていた。
「(俺は何の為に海常に来たんだ! 海常を優勝させる為だ…!)」
特別な思入れがあって海常に進学した訳ではないが、それでも自分の手で海常を優勝させるという思いはあった。
一昨年も昨年も届かなかった。自分が不甲斐なかったばっかりに。
『後は頼んだぞ黄瀬。必ずお前達の手で海常を優勝に導いてくれ』
『お(れ)達や先輩達が届かなかった海常の全国制覇。黄瀬、お前達に託したぞ!』
笠松と早川。そして、共に戦った先輩達がその無念を黄瀬とその後輩達に託して卒業していった。
「(俺はまだ何も成し遂げてはいない。もうこれ以上負けたくない!)」
「キャプテン!」
小牧が黄瀬にパスを出した。
「次も止めてやる」
「ここを止めてさらに突き放します」
黄瀬がボールを掴むと空と大地がディフェンスに入った。
「俺は負けない。海常を優勝させるまで、俺はもう誰にも負けない」
――ダムッ!!!
「「っ!?」」
その時、2人の間を高速で黄瀬が突き抜けた。2人を抜きさった黄瀬はそのまま突き進み、リングに向かって飛んだ。
「させへん!」
「止める!」
天野と松永が同時にブロックに現れた。
「おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!」
――バキャァァァッ!!!
「ぐっ!」
「がっ!」
2人のブロックを物ともせず、黄瀬は咆哮を上げながらボールをリングに叩きつけた。
「今のは…!」
「まさか!?」
空と大地を抜きさったテクニックは間違いないなく青峰のコピー。しかし、これまでのものとはスピードとキレが違っていた。
「俺は…俺達はこんな所では終われない」
リングを掴んだ手を放して黄瀬が床に降りると、静かだがそれでいて通る声で言葉を発する黄瀬。
「海常を優勝させるまで絶対負けない。それを阻む奴はどんな相手でも俺が倒す!!!」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「…峰ちん」
「あぁ」
何かを確認するように紫原が話しかけると、内容を察した青峰はただ返事をした。
「黄瀬の奴、入りやがった」
続く
とまあ、一旦ここで切ります。もう少し進みたかったのですが、長くなりそうだったので…(;^ω^)
原作最強とも呼び声高い、パーフェクトコピー+ゾーンの黄瀬。実際かなりヤバいですね。もしかしたら本家のゾーン状態に近いのかもしれませんね。たどしたら反則レベルですが…(;゚Д゚)
そろそろ終わりが見えてみたこの試合。結末は既に決めていますが、さて、どうなるか…。
感想アドバイスお待ちしております。
それではまた!