黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

だいぶ暑さにも慣れてきた…(;^ω^)

それではどうぞ!



第128Q~打ち合い~

 

 

 

第3Q終了…。

 

 

花月 72

海常 72

 

 

第3Qが終わり、両チームの選手がベンチへと戻っていく。

 

花月ベンチ…。

 

「ナイス竜崎! 室井も、よくやった!」

 

「うす!」

 

「いえ、まだまだです」

 

ベンチに戻るなり、菅野は2人の肩を叩きながら労った。

 

「さて、問題はここからだな。黄瀬の奴、五将の技まで使ってきやがった」

 

タオルとドリンクを受け取った空はベンチに座りながら目先の問題点を口にした。

 

無冠の五将の葉山のコピーをしてきた黄瀬。彼らの技もキセキの世代のコピーと同じく厄介な代物である。

 

「…綾瀬、実際のとこ、どうなんや?」

 

神妙な面持ちで天野が黄瀬をマークする大地に尋ねた。

 

「率直に個々の技なら止められない事もないのですが、複合で使われると…」

 

現状での素直な感想を述べる大地。

 

「じゃ、仕方ねえな」

 

あっけらかんとした表情で空がそう言うと、ドリンクを口にした。

 

「『仕方ねえな』や、あらへんやろ! 止めな話にならへんやん!」

 

そんな空に突っ込みを入れる天野。

 

「実際どうしようもないんですからしょうがないでしょ。…止められないなら、相手以上に点を取るだけですよ」

 

ドリンクを置いた空が目をぎらつかせながら返した。ここで上杉が口を挟んだ。

 

「うむ、神城言う通りだ。…天野。まだ走れるな?」

 

「当然やないですか。この程度でへばる程やわやないですよ」

 

「竜崎、室井も問題ないな?」

 

「うす、途中から試合に出といて泣き言は言えませんよ」

 

「神城と綾瀬は、あえて聞かんぞ」

 

「何十分でも走れますよ」

 

「任せて下さい」

 

試合に出場した選手それぞれに尋ねる上杉。

 

「ここから方針はこれまでどおりオフェンス主体だ。ガンガン走って点を取りに行け」

 

『はい!!!』

 

「相手がこっちのペースを嫌ってペースダウンしてきたらオールコートで当たれ。スピードと運動量に長けた現メンバーならやれるはずだ。室井、練習試合や紅白戦で試した戦術だ。公式戦では初めて試す事になるが、落ち着いてこれまでどおりやればいい」

 

「はい!」

 

「お前らのオフェンスは最強の矛を持つ桐皇にも引けを取らず、あの最強の盾をも貫いた。お前達は強い。俺が保証する。自信を持って行って来い!」

 

『はい!!!』

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここでインターバル終了のブザーが鳴った。

 

「全員、集まれ!」

 

空が声を掛けると、選手達全員が円陣を組んだ。

 

「泣いても笑っても後10分。当然、笑うのは俺達だ。死ぬ気でガンガン走るぞ!」

 

『おう!!!』

 

「っしゃぁっ! 花月ー!!! ファイ!!!」

 

『おう!!!!!!』

 

円陣から空の掛け声を合図に選手達がそれに応え、コートへと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

両チームの選手達がコートへと戻ってきた。両チーム共、選手交代はなし。

 

「1本、行きましょう!」

 

竜崎にボールが渡り、第4Qが開始された。

 

『最後の10分! こりゃどっちが勝つか分からねえぜ!』

 

互角の様相を見て観客のボルテージも上がっていく。

 

「…」

 

ドリブルしながら慎重にゲームメイクを始める竜崎。

 

「(第4Q最初のオフェンス。ここは確実に決めたい…)…綾瀬先輩!」

 

右45度付近、アウトサイドに展開していた大地にとりあえずボールを渡す。

 

「(よし、俺が中に切れ込んでディフェンスをかく乱して…)…えっ?」

 

中に走り込もうとした竜崎。しかし、大地が選んだ行動に困惑した。

 

「なっ?」

 

「しまっ…!?」

 

ボールを受け取った大地は即座にシュート態勢に入ったのだ。慎重に時間をかけて攻めてくると踏んでいた小牧と末広は目を見開いて驚愕し、茫然とそのスリーを見送った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放たれたスリーはリングの中心を的確に射抜いた。

 

「…よし!」

 

スリーを決めた大地は拳を握って喜びを露にした。

 

「綾瀬先輩、心臓に悪いですよ。入ったからいいですけどもう少し慎重に攻めても…」

 

「だからこそですよ。相手もそう考えていましたからこうして無警戒で打たせてもらえました。チャンスと見たら即打つ。陽泉戦の時もそうだったでしょう?」

 

にこやかに笑みを浮かべながら大地は竜崎にそう話した。

 

「(だからって普通この状況で普通打てないぜ。…この人、やっぱスゲー!)」

 

淡々と簡単に言い放つ大地に竜崎は改めてその凄さを思い知ったのだった。

 

 

海常のオフェンス…。

 

「…」

 

ボールを運ぶ小牧。

 

「へい!」

 

中に走り込んだ黄瀬がボールを要求。小牧は黄瀬にボールを渡した。

 

「…」

 

「…」

 

ハイポストで黄瀬の背中に張り付くようにディフェンスに入った大地。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

黄瀬はドリブルを始め、大地を背中で押し込み始める。

 

「…っ!」

 

体格で勝る黄瀬のポストアップ。大地は歯を食いしばってこれに耐える。

 

「(へぇー、割とパワーあるみたいッスね)…けど」

 

ここで黄瀬はボールを右手で持ち、頭上に掲げながらその場で飛んだ。

 

「それじゃあこれには対応出来ない」

 

頭上に掲げたボールを手首のスナップを利かせて放った。大地も必死にブロックに飛んだが届かず…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングを潜り抜けた。

 

「…フックシュートですか」

 

ポツリと呟く大地。

 

体格と高さで勝る黄瀬にこれをやられると大地はかなり厳しい状況に追いやられる。今のポストアップにしても耐えるだけで精一杯だったからだ。

 

「今のは仕方あらへん。次あの手で来たら俺がフォローしたるわ」

 

「お願いします」

 

大地の肩を叩いて励ます天野。大地は静かに返事をしたのだった。

 

 

変わって、花月のオフェンス…。

 

ボールを運ぶ竜崎。

 

「…」

 

ここで空が動く。

 

「(パスの中継か!?)」

 

それを見て黄瀬が空を追いかける。しかし、竜崎はパスを出さない。その直後、大地が動いた。大地が逆サイドへと走り出した。

 

「っ!? 行かせ――」

 

追いかけようとした小牧だったが、阻まれる。

 

「った! …残念だが通行止めだ」

 

先程走り込んだ空が小牧に対してスクリーンをかけたのだ。

 

「くそっ!」

 

慌てて追いかける末広だったが、小牧とは逆側にいた末広は対応に遅れてしまう。

 

「スイッチ!」

 

末広が声を出して指示をする。

 

「俺が行く!」

 

空を追いかけていた黄瀬がスイッチに応じ、大地のマークに向かった。

 

「…」

 

「…」

 

左アウトサイドで向かい合う大地と黄瀬。

 

「こっちだ!」

 

ここで、スクリーンをかけていた空がピック&ロールで中に入ってボールを要求する。大地が頭上からパスを出す。

 

「…っ!」

 

これに反応し、パスコースに手を伸ばして塞ぎにかかる黄瀬。だが…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

大地は右手で投げようとしたボールを左手で押さえ、パスを中断し、中にカットインした。

 

「やるッスね、けどまだ!」

 

これにも黄瀬は対応し、中に切り込んだ大地を追いかける。

 

 

――キュキュッ!!! …ダムッ!!!

 

 

が、大地はカットインと同時に急停止。そこからバックステップで元居た位置より後ろまで下がった。

 

「っ!?」

 

追いかけようとした黄瀬は即座に止まり、再度反転して大地を追いかける。大地はバックステップと同時にボールを掴み、そこからステップバックで斜め後ろに下がり、そこからスリーを放った。

 

「あー」

 

放たれたボールを見てベンチの生嶋が思わず唸り声を上げた。

 

「外れるのか?」

 

その生嶋の反応を見た菅野が思わず尋ねた。

 

「違いますよ。スリーには自信があるけど、ダイを見ていると嫉妬しちゃうかな」

 

スリーに絶対の自信とプライドを持つ生嶋は、理解出来てしまった結末を複雑そうな表情で見送った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

『なっ!?』

 

スリーポイントラインから1メートル以上離れていたが、大地は的確にリングを射抜いた。

 

「バックステップからのステップバックスリー。あんな離れた所から決めちまうのかよ…」

 

茫然とする小牧。

 

「さすが大地だぜ。昔から勝負所になるときっちり決めてくる。…ちくしょう、やっぱりスコアラーとしてはお前には敵わねえかもな」

 

そんな大地を見て思わず本音が飛び出る空。

 

「…ふぅ。やっぱり、楽はさせてくれないか」

 

大地に駆け寄って声を掛ける空。そんな2人を黄瀬は溜息を吐いた。

 

『無冠の五将の技とて、負担は決して軽くない。乱発し過ぎればパーフェクトコピーの使用時間にも影響する。使い所を間違えるな』

 

インターバル時に武内から黄瀬に告げられた指示。

 

「あんまり好きな言葉じゃないけど、場合によっては根性でどうにかしなきゃいけなくなりそうッスね」

 

ある種の覚悟を黄瀬はしたのだった。

 

 

海常のオフェンスとなり、小牧は黄瀬にボールを渡した。

 

「…」

 

「…」

 

この試合、何度目となるか2人の対決。

 

 

――スッ…。

 

 

突如、大地と黄瀬との間に距離が出来る。

 

「(っ!? バリアジャンパー!)」

 

先程見せられた相手との間合いを広げる誠凛の元主将日向の技。距離を広げると、黄瀬は即座にシュート態勢に入った。

 

「させません!」

 

1度見せられた技。大地はすぐさま距離を詰めてブロックに飛んだ。

 

「っ!?」

 

ここで大地は目を見開いた。黄瀬はボールを頭上に構えたまま飛んでいなかったのだ。

 

「いただき」

 

 

――ドン!!!

 

 

ブロックに飛んだ大地にぶつかりながら黄瀬はスリーを放った。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

審判が指を3本立てながら笛を吹いた。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングを潜り抜けた。

 

『ディフェンス、緑6番! バスケットカウント、ワンスロー!』

 

『来たぁっ!!! バスカンだぁっ!!!』

 

「4点プレー…、今のは五将の実渕の…」

 

見覚えのあるかつて自身も味わった技を見て思わず茫然とする空。

 

ファールを貰いながらスリーを決めるプレー。これは無冠の五将の実渕の得意技の1つ、『地』のシュートである。

 

「…っ」

 

みすみすボーナススローを献上させてしまい、大地は悔しがる。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

フリースローをきっちり決め、黄瀬は4点プレーを成功させた。

 

「これで同点。また振り出しッスよ」

 

空と大地を指差しながら告げる黄瀬。

 

「上等だぜ」

 

「この借りは必ず返します」

 

2人の闘志にさらに火が付いたのだった。

 

 

「おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!」

 

「ぬぅっ! このトーシロが…!」

 

花月のオフェンス、ローポストにて、室井が三枝を力付くでクリアアウト。突破口を作り出す。

 

「サンキュー室井!」

 

室井が抑え込んだのを見て空は中に一気に切り込み、リングに向かって飛んだ。

 

「えぇーい、邪魔じゃあ!!!」

 

強引にロールして室井の前に出てリングに向かって飛んだ空のブロックに飛んだ。

 

 

――スッ…。

 

 

シュートコースを塞ぐ三枝だったが、やはり後手後手。空はボールを下げて三枝のブロックを掻い潜り、直後にリングに背を向けた状態でボールを放った。

 

 

――バス!!!

 

 

ボールはバックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

「っしゃぁっ!」

 

「ナイッシュー、キャプテン」

 

手を差し出した室井。空はその手をパチン! と叩いた。

 

「クソがっ!!! あのガキィ…!」

 

苛立ちを隠せない三枝。

 

「…」

 

そんな三枝を見て黄瀬が少し表情を険しくした。

 

 

「寄越せ拓馬!」

 

ローポストに立った三枝がボールを要求する。

 

「頼みます!」

 

そこへ迷わず小牧がパスを出した。

 

「ガキが、しごうしちゃるわ!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

背中に室井を背負う形で三枝がドリブルを始め、ポストアップを始める。

 

「…おぉっ!!!」

 

気合いを込めた室井はそのポストアップに耐え、中に押し込ませない。

 

「小癪な…!」

 

「…今のあなたなら、俺でもどうにかなる!」

 

「っ!? このガキが!」

 

 

――ドン!!!

 

 

室井の言葉に頭に血を昇らせた三枝が力を込め、強引に室井にぶつかる。

 

「…ぐっ!」

 

あまりの当たりに強さに室井は後方に倒されてしまう。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

『オフェンスチャージング! 青12番!』

 

しかし、強引過ぎた当たりだった為、審判はファールをコールした。

 

「っ!? これでファールじゃと!?」

 

判定に不服を感じた三枝が審判を睨み付ける。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

『チャージドタイムアウト、海常!』

 

ここで海常が申請したタイムアウトがコールされた。

 

「海さん! タイムアウトです。下がりましょう!」

 

駆け寄った末広がいきり立って審判に食って掛かりそうな三枝をベンチへと誘う。

 

「…ちぃっ」

 

未だ納得出来ていない三枝だったが、渋々ベンチへと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

海常ベンチ…。

 

「おのれぃ!」

 

ベンチにドカッと座り、怒りを露にする三枝。

 

「海さん、お、落ち着いて――」

 

怒りを露にする三枝に末広が恐る恐る声を掛けるが…。

 

「じゃかぁしぃ! …あのガキィ、今度こそめがして――」

 

 

――バシャァッ!!!

 

 

その時、三枝の頭に水がかけられた。

 

「少しは頭冷えたッスか?」

 

三枝の背後に立った黄瀬が手に持っていた飲み物が入った容器を逆さにして頭からかけていた。

 

「何すんじゃワレ――」

 

これに怒りを爆発させた三枝が立ち上がって黄瀬に掴みかかろうとしたが、逆に黄瀬に胸倉を掴まれる。

 

「俺達が何の為に戦ってるか、知ってるッスよね? 俺達は志半ばで負けた先輩達の悲願を果たす為に戦ってんだよ」

 

「…っ!?」

 

黄瀬の鋭い眼光に三枝の表情が変わる。

 

「何の為にあんたをユニフォームも渡して、何の為にあんたを試合に出してると思ってるんだ? 海常を優勝させる為だろうが! 優勝する為にはあんたの力が必要だと思ったからこそ海常の皆は新参のあんたにそのユニフォームを託したんだよ。皆の期待を無駄にしてんじゃねえよ!」

 

「…っ」

 

「皆の気持ちも理解出来ないならもうあんたには試合は任せられない。そのユニフォーム脱いでさっさとここから消えてくれ」

 

ベンチに突き飛ばすように黄瀬は掴んでいた胸倉から手を放した。

 

『…』

 

初めて見る黄瀬が怒った姿に海常の選手達は誰も言葉を発せずにいた。

 

「……リョウタ」

 

その沈黙を最初に破ったのは三枝だった。三枝はベンチから立ち上がり、床に膝を付いて座ると、上半身を後ろに下げ…。

 

 

――ゴッ!!!!!!

 

 

床に思いっきり頭を打ち付けた。

 

『っ!?』

 

そのあまりの音の大きさに海常の選手達や花月の選手達だけではなく、観客席にまで響き渡り、会場中が注目した。

 

「すまんかった。ワシは大事な事を見失っていた。こんな事を言う資格はないのは分かっとる。ワシにもう1度チャンスをくれ。チャンスをくれるならこの試合の後にワシのクビを切ってくれても構わん。頼む」

 

頭を上げ、額から血を滴らせながら三枝は懇願した。

 

「…」

 

黄瀬は返事をしない。

 

「俺からもお願いします」

 

そこへ、末広が頭を下げた。

 

「ここから先、海さん抜きで花月のオフェンスは抑えられるとは思えません。お願いします」

 

「失礼な話ですけど、この状況で海さんの代わりを務められる人はいないと思います。この試合に勝つ為にもお願いします」

 

続いて小牧も頭を下げた。

 

「失敗や間違えは誰にでもある。俺や皆はもちろん、お前にだって。後輩がここまで言ってるんだ。俺からも頼むよ」

 

黄瀬の肩に手を置きながら氏原もお願いした。他の海常の選手達も同じ考えであり、一様に黄瀬に視線を向けていた。

 

「……ふぅ」

 

一息吐いた黄瀬は三枝の目前まで歩み寄った。

 

「皆にここまで言わせたんだから、期待しても構わないッスよね?」

 

「もちろんじゃ! 死んでも応えちゃるわい!」

 

「なら、引き続き頼むッスよ」

 

三枝の肩に手を置いて黄瀬は告げた。

 

「って言うか、皆マジな空気になり過ぎッスよ。海っちも、頭から血ぃ流して笑えないッスよ」

 

突如黄瀬が肩を竦め砕けた言い方で口にした。

 

「頭に血を昇らせた海っちを落ち着かせる為に笠松先輩の真似してみたッスけど、やっぱしんどいッスよ。ほら海っち、昇らせた血を流してどうするんスか? 頭冷える前に貧血起こすッスよ」

 

『ハハハッ!』

 

緊張の緩和で海常の選手達が笑い声を上げた。

 

「(…まさかあの黄瀬がな。入学した頃の黄瀬からは信じられん事だ。主将となって精神的にもしっかり成長したようだな…)」

 

傍から一連の光景を見ていた武内は黄瀬の成長を軽く笑みを浮かべながら見ていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

花月ベンチ…。

 

「すっげぇ音してたな」

 

「こっちまではっきり聞こえたわ。力加減どないなっとんねん」

 

三枝の床への頭突きが聞こえ、花月ベンチも軽く騒然していた。

 

「全員、話を聞け」

 

上杉が言葉を発し、注目を集める。

 

「まず、室井、メンバーチェンジだ」

 

「えっ? 室井を下げるんですか?」

 

この言葉に菅野が難色を示した。現時点で三枝を上手く抑え込んでいる為、ここで交代する必要性に疑問を感じたのだ。

 

「あぁ。ここまではよく抑えてくれた。だが、ここからはそうは行かないだろう」

 

「ですね。海兄は恐らくさっきので冷静さを取り戻した。さっきまではキレて狭まった視野で力任せに攻めてきたから抑えられたが、ここからはテクニックも絡めてくる。もう、室井では今までようには行かないでしょうね」

 

補足するように空が言葉を続ける。

 

「…けど、そうなると代わりに誰を投入するんですか? 他には――」

 

「俺ですね」

 

ベンチの横から割り込むように声が聞こえてきた。

 

「まっつん!」

 

そこに現れたのは松永だった。額に包帯を巻いて松永が戻ってきた。

 

「室井、俺が偉そうに言える事ではないが、ここまで良くやってくれた。ありがとう」

 

「いえ、自分は出来る事をしただけです。後は任せます」

 

「おう!」

 

パチン! と2人はハイタッチを交わした。

 

「頭はもう大丈夫なんだな?」

 

「バッチリよ! しっかり止血して治療したから!」

 

空の質問に相川が変わりに笑顔で答えたのだった。

 

「よし、なら問題ねえな。…それと、監督」

 

松永の調子を確認した後、今度は上杉に話しかけた。

 

「一緒に生嶋をコートに戻してもらってもいいですか? もっと点を取りに行きたいんで」

 

「生嶋を投入するとなると、代わるのは竜崎か。そうなると、ボール運びはお前がするのか?」

 

空の提案に菅野が反応する。

 

「はい。得点もゲームメイクも同時にこなします。ま、所謂コンボガードって奴ですね」

 

「良いだろう。俺も同じ事を考えていた。…生嶋、準備は出来ているか?」

 

「もちろんです。試合に出たくてうずうずしていましたよ」

 

上杉に尋ねられた生嶋は笑顔で答え、着ていたシャツを脱いだ。

 

「後は頼みます。生嶋先輩」

 

「任せて」

 

パチン! とハイタッチを交わした。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここでタイムアウト終了のブザーが鳴った。

 

「俺から出す指示は特にない。先程のインターバルと同じ、ガンガン走って相手以上に点を取れ!」

 

『はい!!!』

 

「っしゃぁっ! 行くぞ!!!」

 

『おう!!!』

 

空を先頭に花月の選手達がコートに向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

第4Q、残り7分52秒。

 

 

花月 80

海常 78

 

 

OUT 竜崎 室井

 

IN  生嶋 松永

 

 

『花月はスタメンに戻して来たぞ!』

 

コート上に選手が戻って来ると、観客が沸き上がった。

 

「行くぞ!」

 

空がボールを受け取り、試合は再開された。

 

ここから試合は点の取り合いに移行した。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

タイムアウト後の最初のオフェンス。空から大地にボールが渡り、ダブルチームをかわして確実に得点を決めた。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

続く海常のオフェンスは、黄瀬がスクリーンを上手く使って大地のマークを引き剥がし、得点を決めた。

 

「おぉっ!!!」

 

「ぐっ、あぁっ!!!」

 

ゴール下の攻防、松永の末広のぶつかり合い。

 

「ちぃっ!」

 

押し込めないと見ると三枝はボールを戻した。

 

「(さっきやり合った時より迫力も圧力もない。これなら…!)」

 

コートに入った松永。ゴール下で三枝とやり合い、手応えを感じていた。

 

「ぜぇ…ぜぇ…」

 

肩で大きく息をしている三枝。かなり疲弊していた。その為、ゴール下の攻守に専念せざるを得なく、そこに残った体力を注いでいた。

 

空を起点に大地を中心に得点を重ねる花月に対し、海常は黄瀬を中心に、他の者達が黄瀬を補助しながら得点を重ねていった。

 

 

第4Q、残り5分12秒。

 

 

花月 91

海常 86

 

 

互いに決めたシュートの本数は同じなのだが、点差はじわりじわりと開いていった。ここに来て大地の調子がピークにまで上がったのか、スリーを確実に決め続けた。対して黄瀬も負けじと得点を重ねるが、大地が特にスリーを警戒してマークした為、外から狙えず、結果2点を積み重ねた為だ。

 

「9、8、7…」

 

「(? いったい何を数えて…)」

 

現在、花月のオフェンス。空がボールをキープしているのだが、大地の目の前に立つ黄瀬が小声で何かを呟いている、良く聞いてみると、何かを数えているのだ。

 

「大地!」

 

ここで空が大地にボールを渡す。

 

「…よし!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

バックステップのフェイクを入れ、スリーを警戒させ、大地は中へと切り込んだ。抜いた直後に急停止し、そこからシュート態勢に入った。

 

「(決める!)」

 

覚悟を持ってストップ&ジャンプショットを放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…0。…ようやくッスか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

突如、大地の目の前に黄瀬が現れ、ジャンプショットをブロックした。

 

「(抜かれた直後、シュート態勢に入るまでに回り込んだアジリティとブロックの迫力。…まさか!?)」

 

松永が咄嗟に電光掲示板に視線を向けると、残り時間4分58秒を表示していた。

 

「パーフェクトコピー…」

 

生嶋がボソリと呟いた。

 

「よくここまで踏ん張った。黄瀬も、よくここまで耐えた。行け。残り時間の5分。花月を蹂躙しろ」

 

ベンチで武内が静かに檄を飛ばした。

 

 

「残り時間5分を切った!」

 

同じく黄瀬の変化に気付いた桃井が声を上げる。

 

「5点差か」

 

「あってないような点差だねー」

 

青峰と紫原も黄瀬に注目していた。

 

 

ルーズボールを末広が拾い、すかさず小牧にボールを渡した。小牧がフロントコートまでボールを運ぶ。

 

「(選択肢なんてここ1択だ。この試合、もらった!)…キャプテン!」

 

小牧は迷わず黄瀬にボールを渡した。

 

「っ!?」

 

ボールが黄瀬に渡った瞬間、黄瀬は目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、…準備は出来てるな?」

 

「えぇ、いつでも…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄瀬の目の前に立つのは2人の選手。

 

「…そう来たッスか」

 

これを見て黄瀬の口元が綻ぶ。

 

「覚悟しろ黄瀬。日本最強コンビの登場だ」

 

「ここであなたの全力を止めてみせます」

 

真剣な表情で言い放つ2人。

 

 

――空と大地…。

 

 

2人のコンビが、黄瀬のパーフェクトコピーに立ち向かうのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





試合は遂にクライマックスへ。とりあえず一旦ここまでです。

最近、youtubeでNBAの試合を詳しく解説しながら紹介してくれる動画を見つけ、勉強中です…(^-^)

身体がようやく夏モードになり、仕事も捗るようになりました…(>_<)

仕事終わりにキンキンに冷えた部屋で飲むコーラうめぇ…(*^_^*)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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