黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

ネタがある程度煮詰まったので1ヶ月ぶりの投稿です…(;^ω^)

それではどうぞ!



第123Q~不可視~

 

 

 

第2Q、残り6分1秒。

 

 

花月 25

海常 38

 

 

黄瀬のパーフェクトコピーで海常が主導権を奪い、その後は三枝を中心に攻めていった。三枝をマークする松永が何とか対抗しようとするも、力及ばず、点差はジワジワと開いていった。

 

熱くなった松永が意地になり、やり返そうとした所、空が声を掛けた事により、冷静さを取り戻した。

 

「…」

 

生嶋がリスタートで空にボールが渡る。ボールを受けた空はゆっくりドリブルしながらゲームメイクをする。

 

「…止める」

 

空をマークする小牧は気合い入れてディフェンスに臨む。

 

「……よし」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

攻め手を定めた空は一気に中へ切り込んだ。

 

「行かせね――」

 

空を追いかけようとした小牧だったが、何かに阻まれる。

 

「ここは通行禁止やで」

 

天野がスクリーンをかけており、小牧の追走を阻んだ。

 

「来いやぁ、今度こそ止めちゃるわ」

 

中に切り込んだ空の前に立ち塞がるのは三枝。

 

「(直接来るなら空得意のティアドロップかフィンガーロールじゃ。この2つを警戒したらええだけじゃ…)」

 

ジャンプショットやダンクは選択肢から消した三枝。空の得意技に備える為、タイミングを計る。リング近くまで侵入した空がボールを掴んでレイアップ態勢に入った。

 

「させんぞ!」

 

タイミングを計った三枝がブロックに飛んだ。

 

「っ!?」

 

ここで三枝は目を見開いた。右手を伸ばした空だったが。その右手にボールがなかったからだ。

 

「残念」

 

右手で撃ちに行くと見せかけて左手でボールを持った空はそこからビハインドパスでボールを右へと流した。

 

「おっ? 見せ場やな。ほな行くで!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

ピック&ロールで走り込んでいた天野がボールを受け取り、そこからワンハンドダンクを叩き込んだ。

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

「気合い入ってますね。普段はダンクなんてやらないのに」

 

「出来へん訳やないからのう。たまにはええやろ」

 

空と天野はパチン! とハイタッチを交わした。

 

「ドンマイ! 取り返しましょう!」

 

ボールを拾った末広がスローワーとなり、小牧にボールを渡した。

 

「1本、行きますよ!」

 

小牧がフロントコートまでボールを運んでいく。

 

「何もさせねえぜ」

 

ボールを運んだ小牧の前に空が立ち塞がった。

 

「……ちっ」

 

舌打ちが飛び出る小牧。得意のドライブで中に切り込んで行きたい所なのだが、空がそれを許してくれない。迂闊に仕掛ければたちまちボールを奪われてしまう。

 

「(…行け!)」

 

その時、末広が動き、空にスクリーンをかけた。

 

「(サンキュー、一也!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

合図を受け取った小牧は一気に加速し、中へと切り込んだ。

 

「…なっ!?」

 

「生憎と、お見通しだ」

 

カットインした小牧だったが、空はスクリーンをロールでかわし、小牧に追走していた。

 

「(死角だったはずなのに、こいつ!)」

 

末広は空の死角に立ってスクリーンをかけていたので空には見えないていないはずだった。にも関わらず、空は平然と末広のスクリーンをかわした。

 

「(やべぇ、このままじゃ取られる、どうする!?)」

 

このまま撃ちに行けば間違いないなくブロックされてしまう。かと言って中の密集地帯でボールを止めればたちまち囲まれてしまう。

 

「拓馬! こっちだ!」

 

その時、右サイドから末広が声を掛けた。スクリーンをかけた後、すぐさま走り込んでいたのだ。

 

「頼む!」

 

頭上から末広にパスを出した。

 

「よし!」

 

ボールを掴んだ末広はそこからシュート態勢に入った。

 

「させっかよ!」

 

小牧のディフェンスをしていた空が末広にすぐさまチェックに向かった。

 

 

――バチィィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

ジャンプショットを放った末広だったが、ボールを放った瞬間、現れた空のブロックに阻まれた。

 

「ナイス神城! 速攻だ!」

 

ルーズボールを拾った松永が前線へとボールを放った。そこには既に大地が走っていた。ボールを受け取った大地はそのままリングに向かってドリブルをし、そのままリングに向かって跳躍した。

 

「させないッスよ」

 

「…っ」

 

そこへ、黄瀬がブロックに現れた。ブロックに飛んだ黄瀬は大地とリングの間に現れ、シュートコースを塞ぐ。

 

 

――スッ…。

 

 

大地はダンクを中断し、ボールを後ろへと落とした。

 

「ナイスパス!」

 

そこに走り込んでいたのは空。

 

『なっ!? あいつさっき自陣のリング近くでブロックしてたのにもうそんな所に!?』

 

あまりの空のディフェンスからオフェンス参加のスピードが速過ぎる為、観客からは驚きの声が響いた。

 

「いただき!」

 

ボールを受け取った空がそのままシュート態勢に入る。

 

「…っ、させないッスよ!」

 

大地のダンクのブロックに飛んだ黄瀬だったが、着地と同時にすぐさま空のブロックに向かった。

 

「残念♪」

 

しかし、空はシュートには行かず、前にボールを落とすように放った。

 

「っ!? またッスか!?」

 

これには黄瀬も予想外だったのか、思わず声を上げていた。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

ボールを受け取った大地はそこからリバースダンクをリングに叩きこんだ。

 

『うおぉぉぉぉっ!!! 2連発!!!』

 

「ナイスパス、空」

 

「いいぜ、その調子で頼むぜ」

 

ゴツンと拳を突き合わせた。

 

「…」

 

そんな2人に視線を向ける黄瀬。さすがの黄瀬でも2人を同時に止めるのは困難であった。

 

「すいませんキャプテン!」

 

「俺のせいで…」

 

ターンオーバーからの失点の責任を感じてか、小牧と末広が黄瀬に頭を下げた。

 

「ドンマイッス。まだリードしてるんスからそんな辛気臭い顔する必要ないッスよ」

 

2人に笑顔を向けながら黄瀬は激励した。

 

「空と大地の守備範囲は広い。チンタラしとるとすぐにヘルプに来る」

 

「「…はい」」

 

「ボール持ったら遠慮なくワシに持ってこい。ワシがガンガン決めちゃるわ!」

 

「「うす!」」

 

握り拳を向けた三枝。小牧と末広は大声で返事をしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

再び海常のオフェンス。小牧がボールを運ぶ。

 

「頼みます!」

 

言われた通り、小牧はローポストに立つ三枝にパスを出した。

 

「…行くぞ」

 

静かではあるが、圧の籠った言葉で三枝が自身をマークする松永に向けて言い放った。

 

「マツ! 止めるで!」

 

「はい!」

 

ポストアップを始めた三枝に対し、天野も加わり、2人がかりで侵入の阻止にかかった。

 

「2人がかりかい! じゃけん、2人で足りるのかのう?」

 

三枝が力を込め、強引に押し込んでいく。

 

「「…っ」」

 

突如、とんでもない重量が2人に襲い掛かる。

 

「踏ん張れマツ! 2人なら行けんで!」

 

「はい!」

 

グッと腰を落とし、三枝の侵入を阻む天野と松永。それが実り、三枝の侵入は止まった。

 

「なかなかやるのう!」

 

「こちとら一昨日にとんでもない化け物とやっとるんでのう。それに比べればこの程度、訳あらへん」

 

健闘を称える三枝に苦悶の表情で侵入を阻止しながら返す天野。

 

「キセキの世代の紫原か! なるほどのう、『あれから』あ奴もとんでもない逸材に進化したようじゃのう! しかしのう…」

 

「「っ!?」」

 

突如、押し込みを止めた三枝はボールを掴んで反転しながら2人と距離を作るようにステップバックし、そこから後ろに飛びながらシュート態勢に入った。

 

「じゃからと言ってワシが止められると思わん事じゃ」

 

 

――バス!!!

 

 

フェイダウェイで放ったシュートはバックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

「こちとらパワーだけやないからのう。このとおり、引き出しは盛沢山じゃ。止められるものなら止めてみぃ」

 

力を誇示するように言い放ち三枝はディフェンスに戻っていった。

 

「…っ」

 

それに思わず圧倒される2人。

 

「ドンマイ」

 

そんな2人に空が駆け寄り、声を掛けた。

 

「そんな辛気臭い顔すんなって。ポストアップすら止められなかった紫原の時と違って今回は2人がかりなら止められたんだ。それならやりようはいくらでもあんだろ?」

 

「…せやな」

 

「あぁ。そうだな」

 

空が陽泉戦の折の紫原と比較して希望を持たせる。それを聞いて希望を見出した天野と松永。

 

「そんじゃ、1本、決め返すぞ」

 

「あぁ、頼む」

 

声を掛けた空に松永がボールを渡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

その後、花月は空を起点に得点を重ね、海常は三枝を中心に得点を重ねていった。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

天野と松永のダブルチームを突破した三枝がダンクを叩き込んだ。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

空からのパスを受けた大地がジャンプショットを決める。

 

ターンオーバーで連続得点を挙げてから9点差と11点差を繰り返し、試合は再び膠着状態になった。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

『チャージドタイムアウト、海常!』

 

ここで海常の監督、武内がタイムアウトを申請、コールされた。

 

 

第2Q、残り2分37秒

 

 

花月 35

海常 44

 

 

選手達がベンチへと下がっていった。

 

花月ベンチ…。

 

「ゆっくり呼吸を整えろ。水分補給を忘れるな」

 

戻ってきた選手達に上杉が指示を出す。

 

「点差が一向に縮まらんで」

 

天野が思わず愚痴を零す。パーフェクトコピーという最大の切り札を海常を残している為、試合終盤に使ってくると予想するにしても最悪それまでに点差を詰めておかないと厳しい展開になる。

 

「点は取れています。後はどうやって止めるか、ですね」

 

互いに失点を防げないこの状況でどうやって点差を詰めるか…。

 

「海兄だな。海兄をどうにか出来なきゃ点差が詰められねえ」

 

海常は三枝がゴール下を支配しているおかげで良いリズムを生み出している。その為、他の選手も伸び伸びさせてしまっている。

 

「リングから離れてくれたら俺1人でも相手出来るんやけど…」

 

ポツリと天野が呟く。平面でのディフェンスに定評がある天野。しかし、ローポストからの攻められるとパワーで劣る天野ではどうしても後手後手になってしまい、引き出しの多い三枝にやられてしまう。

 

「…」

 

顎に手を当てながら上杉は策を巡らせている。

 

「…海常は自ら切り込める得点力の高い司令塔、独特のリズムで打つアウトサイドシューター、中から点も取れて起点になれるパワーフォワード、インサイドの絶対的な要のセンター、そして、最強のオールラウンダー。インターハイ出場校の中でもとりわけ高水準でバランスの取れたチームです」

 

姫川の指摘通り、強力なインサイドプレーヤーが揃っている陽泉とは違い、海常は全体的にバランスの取れたチームであり、欠点と言える欠点がないチームである。それだけに付け入る隙が少ないのである。

 

「静まれ」

 

上杉がそう声を掛けると、話し合いをしていた選手達が静まり、上杉に注目した。

 

「悲観するな。陽泉戦と違ってこっちは点を取れているんだ。焦れているのは向こうも同じだ」

 

『…』

 

「ディフェンスは引き続き、相手の12番(三枝)には引き続き、天野と松永の2人で当たれ」

 

「了解や!」

 

「はい!」

 

「神城は空いた10番(末広)にいつでもヘルプに出れるようにしておけ」

 

「うっす!」

 

「綾瀬は黄瀬だ。現状五分五分。だが、抑えて見せろ」

 

「はい!」

 

「生嶋は相手のシューターに外を打たせるな。外さえ打たせなければ多少中に切り込まれても構わん。とにかく外を打たせるな」

 

「はい!」

 

それぞれに指示を飛ばしていく。

 

「オフェンスはあえて複雑な指示は出さん。相手の倍点を取れ」

 

『はい!!!』

 

花月の選手達の声が響き渡ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

海常ベンチ…。

 

「状況は悪くない。点差こそ開いていないが、大きく詰め寄られたりもしていない。…だが、少し相手のペースに乗せられてしまっている。受け身になるのはまずいが、相手のペースに引き摺られるな」

 

ベンチに戻ってきた選手達に武内が声を掛ける。

 

『…ふぅ』

 

座りながら水分補給をしながら呼吸を整える海常の選手達。普段の試合と違い、心なしか息が弾んでいる。それだけ消耗している事が窺える。選手達の消耗具合を見越してのタイムアウトでもあった。

 

「…しかし、昨日の試合は神城が不在だったが、加わるとオフェンスもディフェンスもここまで厚みが出るのか…」

 

溜息を吐きながら氏原が言う。

 

空が加わった今日の試合、オフェンスでは自らの得点力に加え、広い視野と独特のパスセンスを生かしたゲームメイクによって得点を重ね、ディフェンスでは自身のマークしてる小牧に極力仕事をさせず、驚異的なスピードと運動量を駆使してスティールを連発し、選手がフリーになってもすぐさまヘルプに向かっていた。

 

リードしているのは海常であるが、きっかけ1つで追いつかれてしまう点差でもあるので楽観視は出来ない。

 

「すいません、俺がしっかりマーク出来ないから…」

 

タオルをきつく握りしめながら小牧が悔しさを露にする。

 

「こんな言葉をかけても慰めにならんと思うが、お前は良くやっている。…ただ、相手が悪すぎた。恐らく、仮に笠松であっても結果は変わらなかっただろう」

 

一昨年の海常の主将を務めた笠松幸男。海常で監督をしている武内がここ数年で司令塔の中で特に優れていると思う選手を引き合いに出して小牧を慰める。

 

それだけ空の相手をするのは至難の業だという事である。

 

「今日の空は万全じゃ。昨日の試合の欠場の影響は全くないと見てええじゃろう。これ以上あいつを自由にさせてしまうのはまずいのう」

 

空を称えると同時に危険性も唱える三枝。

 

「うむ。オフェンスはとりあえずこのままで行く。ディフェンスを少し変更する。良く聞け――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

タイムアウト終了のブザーが鳴り、選手達がコートに戻ってくる。両チームとも選手交代はなし。

 

海常ボールから試合再開。末広から小牧へとボールが渡り、ゆっくりとボールを進める。

 

「…」

 

小牧から左45度付近のスリーポイントラインの外側に立つ氏原にボールが渡り、生嶋がチェックに入るとハイポスト立った末広にボールが渡る。末広に対して空が急速に距離を詰める。それを見て小牧にボールを戻し、小牧から黄瀬にボールを渡った。

 

「…」

 

黄瀬にボールが渡るとすぐさま大地がディフェンスに入った。

 

「…っ!」

 

ボールを掴んだ瞬間、黄瀬がすぐさまシュート態勢に入った。これを見て大地がすぐさま距離を詰める。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

しかし、これはフェイク。黄瀬はシュートを中断し、ドリブルで中に切り込んだ。

 

「させません!」

 

だが、大地もフェイクを読み切り、距離を詰めてもハンズアップのみでブロックには飛ばなかった。すぐさまバックステップで黄瀬を追いかける。

 

「っ!?」

 

バックステップしようとしたその時、何かに阻まれる。振り返ると、そこにはスクリーンをかけた末広が立っていた。

 

「あかん! 声掛け怠ったわ!」

 

三枝に気を取られた天野が慌ててヘルプに走る。が…。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

それよりも早く黄瀬がジャンプショットを放ち、得点を決めた。

 

「助かったッスよ」

 

「役に立てたなら何よりです」

 

スクリーンをかけた末広を黄瀬が労った。

 

「(オフェンスは特に大きな動きはない。強いて言うならボールを回して慎重に攻めたくらいか…)」

 

ベンチの上杉は何か手を打ってくる可能性も視野に入れていたが、海常のオフェンスにさほど動きはなかった。

 

オフェンスでは動きはなかった。動きを見せたのは、ディフェンスだった。

 

「なっ!?」

 

「何やと!?」

 

素早くリスタートし、空がボールをフロントコートまで運ぶと、海常が動きを見せた。それを見て松永と天野が驚愕した。

 

「おっ♪」

 

「これは…」

 

空は目をキラキラさせ、笑みを浮かべ、大地は戸惑いの声を上げた。

 

「……そう来たか」

 

静かに唸るように呟いた上杉が相手ベンチの武内の方へチラッと視線を向けた。

 

海常のディフェンスが変化する。生嶋には氏原、松永には三枝。ここは変わらないのだが、大地に小牧と末広がダブルチームでマーク。そして…。

 

「ハハッ! まさか、あんたが相手してくれるとはね」

 

笑い声を上げながら喜びを露にする空。

 

「相手のエースを止めるのも大事ッスけど、君達の場合、エースを止めるより司令塔を止めた方が有効だって監督に言われたんでね」

 

空の目の前には黄瀬が立っていた。

 

「とりあえず、ここからは俺が相手するッス。よろしく」

 

「この試合は同ポジションの大地に花を持たせるつもりだったけど、…良いね。テンション爆上がりしてきましたよ!」

 

最強のオールラウンダーである黄瀬が自身のマークをしにやってきた事で、空のテンションが一気に最高潮にまで跳ね上がった。

 

「今まで随分目立ってたッスけど、俺がマークに付いた以上、ここからは君に何もさせないッスよ」

 

「…言ってくれますね。やれるもんならやってみろよ」

 

「俺はこれでも君みたいなタイプの選手は結構得意なんスよ。少なくとも、そっちのエースを抑える事に比べれば断然楽ッス」

 

不敵な笑みを浮かべながら黄瀬が空に告げる。

 

空を過小評価するかのような言葉を吐く黄瀬。

 

「(君の性格は今まで見てきた試合と去年、合宿で相手した事で良く理解してるッス。こう言えば君は…)」

 

「…ハッ! 上等だよ。その挑発に乗ってやろうじゃねえかよ!」

 

不敵な笑みを浮かべながら空は目付きを鋭くしながら黄瀬に告げたのだった。

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

ゆっくりドリブルをしながら目の前の黄瀬と対峙する空。

 

「……っし!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

意を決した空はここで動き、黄瀬との距離を詰めた。

 

「(来た!)」

 

空が動きを見せたの同時に黄瀬が集中力を高める。距離を詰めたの同時に空は左右に大きく切り返しながらハンドリングを始めた。

 

 

――ダムッ…ダムッ…!!!

 

 

「…っ」

 

黄瀬の目の前で高速で左右にクロスオーバー、レッグスルー、バックチェンジを混ぜ込み、時折膝を曲げて態勢を下げながら左右に切り返しまくる空。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

時は今日の昼前…。

 

診療所で空が試合出場のお墨付きを貰った直後、診療所を出ると空の容体が気になった大地が待っていた。診療結果を聞き、胸を撫で下ろすと、空は大地を近くの公園に誘った。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

身体の調子の確認がてら、空は大地に1ON1勝負を誘った。その時、空は大地を相手にある技を披露した。

 

「っ!? これは!?」

 

あまりの衝撃に目を見開いて驚く大地。大地は空の姿を突如見失い、気が付いたら背後の抜かれていた。

 

「っしゃ成功だ!」

 

大地の背後に抜けた空は喜びを露にした。

 

「今まで何となくやってからここぞって時しか出来なかったけど、遂に完成したぜ」

 

「…直接受けてみて、驚きを禁じえません。本当に目の前から姿を見失ってしまいましたよ」

 

技を受けた張本人大地は未だに衝撃を受けていた。

 

「これでようやく実戦で積極的に使えるな。…そうだな、どうせならこのドリブルに名前を付けるか。名付けて、消えるドライブ!」

 

「……そのままですね」

 

あまりの安直なネーミングに思わず突っ込む大地。

 

「…だよな。だったら、うーん…、消えるから、バニシングドライブとか!」

 

妙案とばかりに言い放つ空。

 

「その名は確か、誠凛の黒子さんのドリブルと同じだったかと思うんですが…」

 

「…うぉっ! そうだった!? だったら! だったら……うーん…」

 

何か良いネーミングは出来ないかと必死に知恵を巡らせる空。

 

「でしたら、こういうのはどうです? これは先程のバニシングドライブと似た意味を持つのですが…」

 

そう言って大地は思いついたネーミングを空に伝える。

 

「おぉっ! それ良いな! 響きがカッコいいし、それに決定! このドリブルの名前は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

――インビジブルドライブ(不可視のドライブ)!!!

 

 

「っ!?」

 

空の姿を見失った黄瀬は棒立ちで抜き去られる。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

黄瀬が振り返ると、既にシュート態勢に入っており、空は悠々とジャンプショットを決めた。

 

「どうだ。俺も結構やるだろ?」

 

振り返った空は黄瀬に指を差し、不敵な笑みを浮かべながら言ったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





気が付けばこの二次を投稿し始めて5年が経っていました…(^-^)

我ながら、よくエタらずに続いたなと思います…(;^ω^)

この調子で投稿が続けられたら……言いんだけどなぁ…(>_<)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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