黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

何とか書きあげました…(>_<)

それではどうぞ!



第116Q~盗めないもの~

 

 

 

――ダムッ!!!

 

 

大地が中へと切り込む。

 

「…ちっ!」

 

これに灰崎が反応し、対応する。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

直後、大地が急停止。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

すぐさま高速でバックステップ。灰崎との距離を空けた。

 

「(くそが! あのスピードのドライブの勢いを一瞬で殺した挙句、同じスピードで下がっただと!?)」

 

空いた距離を何とか詰めようとする灰崎。だが、間に合わず、大地はすぐさまボールを掴んでシュート態勢に入った。

 

「(…んなもん。俺にも盗めねぇ!)」

 

驚愕の表情で大地のミドルシュートを見送った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングの中央を潜り抜けた。

 

『うおぉぉぉぉっ!!! また決めたぁっ!!!』

 

 

第3Q、残り4分28秒。

 

 

花月 45

鳳舞 50

 

 

第3Q、残り5分を越え、点差は5点にまで縮まっていた。

 

「1本! 止めるで!」

 

『おう!!!』

 

すぐにディフェンスに戻ると、天野が声を上げ、他の選手達が応えた。

 

「くそっ! ボール寄越せ! 早くしろ!」

 

苛立った灰崎がボールを要求する。

 

「(他は空いてない。仕方ない!)…頼みます!」

 

他に攻め手がなかった為、三浦は灰崎にボールを渡した。

 

「調子に乗んじゃねえぞ。てめえなんざ俺の敵じゃねぇんだよ!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

そう叫んだのと同時に灰崎がクロスオーバーで大地の右手側から切り込む。大地もすぐさま反転し、灰崎を追いかける。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

エンドライン目前で灰崎はバックロールターンで反転し、ボールを掴んでリングに向かって飛んだ。

 

「おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!」

 

右手で掴んだボールをリングに叩きつける。

 

 

――バシィィィィッ!!!

 

 

「なっ!?」

 

だが、そのダンクは大地に叩き落とされた。

 

「(あの態勢からブロックに間に合わせただと!?)」

 

この事実に灰崎は言葉を失った。ロール直後は態勢が悪かった為、そこから追いつかれる…ましてやブロックなどはないと考えていたからだ。

 

大地は灰崎は反転した直後、高速のバックステップで後ろに下がり、灰崎のダンクのタイミングを予測して振り返るのと同時にブロックに飛んだ。

 

「ええで綾瀬! 速攻や!」

 

「うす! 先輩!」

 

ルーズボールを拾った天野が竜崎にパスを出し、竜崎はそのまま速攻をかけた。

 

「くそっ、行かせるか!」

 

そんな竜崎を後ろから東雲が追走する。

 

「――えっ!?」

 

追いかける東雲の横をそれ以上の速さの大地が追い抜いた。

 

「下さい!」

 

「任せます!」

 

竜崎の僅か後ろで大地がボールを要求すると、竜崎はトスするようにボールを横に放った。放ったボールを大地が掴み、そのままドリブルを始めた。

 

「(マジかよ!? ドリブルしている相手に追い付けない!?)」

 

大地を追いかける東雲だったが、全速力で走っているのにも関わらずドリブルをする大地との距離を詰める事が出来なかった。スピードを買われて鳳舞にスカウトされただけに東雲は動揺を隠せなかった。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

フリースローラインを越えた所までボールを進めると、大地はボールを右手で掴んで飛び、そのままリングに叩きつけた。

 

『うおぉぉぉぉっ!!! キタァァァァァァァッ!!!』

 

大地のダンクによって会場を沸き上がった。

 

「…くっ!」

 

ダンクを防がれ、カウンターでダンクを決められた事に悔しさを覚える灰崎だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「すげぇ、綾瀬の奴、あの灰崎を圧倒してやがる。前半戦までは押され気味だったのに…」

 

大地の活躍を見て驚きを露にする菅野。

 

「…昨日の陽泉戦から思ってたが、今の綾瀬はインターハイが始まる前までとはまるで別人だ。こんな僅かな時間でここまで成長するものなのか?」

 

「無論、そんな事はあり得ない」

 

菅野の疑問に答えるように口を挟む上杉。

 

「成長した訳ではない。これが綾瀬本来の実力だ。綾瀬は神城への過度の信頼があった為か、これまで力を出し切れていなかった。本人は全力のつもりでもせいぜい6割。追い詰められた状況下で7割程度の力しか出せていなかった」

 

「…」

 

「だが、昨日、神城が負傷退場した事で頼る者がいなくなり、追い込まれる事で本来持つ力を徐々に発揮出来るようになっていった。そこからさらに追いつめられる事で敗北を意識し、それに抗う事でゾーンに入り、あいつの持つ力を全て発揮出来るようになった」

 

「なるほど…」

 

説明を聞いて菅野は納得するように頷いた。

 

「それともう1つ。綾瀬はバスケに対するスタンスが変わった事が要因だ」

 

「バスケに対するスタンス?」

 

ピンとこなかった菅野は聞き返す。

 

「これまで綾瀬がしてきたバスケは『負けない為のバスケ』だった。だが、昨日の試合、神城がコートからいなくなってからは『勝つ為のバスケ』に変わった」

 

「? どういう意味ですか? 負けない事と勝つ事って違うんですか?」

 

意味を理解出来てなかった帆足が尋ねる。

 

「似ているようで違う。負けないバスケ。言い方を変えればリスクを恐れ、回避するバスケとも言える。例えば勝率や成功率が高い時には勝負を仕掛け、逆に低い時は勝負を避ける」

 

「…それは悪い事なんですか? 素人の考えで恐縮ですが、勝率が低い勝負を仕掛けるのは愚策かと思うのですが…」

 

思わず室井が聞き返す。

 

「確かに、もっとも意見だ。相手が格下ならばそれでもいいだろう。だが、相手が同格かそれ以上であれば話は違う。勝負は必ずしも避けられる訳ではない。そんな時、危険を承知で勝負が出来なければ勝つ事など不可能だ。何せ、賭けの出来ないプレーヤーの心理と言うのはとにかく読みやすいからな」

 

『…』

 

「これまでにも、世間に注目を浴びながら日の目を見ずに消えていった逸材達がいたが、それらの者達に共通していたのが勝つ為のバスケが出来なかった事だ。チームの事情や周囲からのプレッシャーによって後一歩踏み込んで勝利を掴み取る事が出来ず、消えていった。これは綾瀬にも共通している事だった。三杉にエースのバトンを託されて以降、エースの敗北がチームの敗北に繋がると考え、負けないバスケをするようになってしまった。高確率のスリーを打てるのにこれまで容易に打たなかったのはリスクを恐れていたからだ。陽泉戦で勝つ為に賭けを打つ内に綾瀬は自分に何が欠けていたかに気が付いた」

 

「…皮肉ですね。三杉さんが託したバトンが結果としてあいつの才能に蓋をする事になってしまったなんて」

 

嘆息気味に菅野が呟いた。

 

「…いや、あいつはこうなる事を承知の上で綾瀬にバトンを託したのだろう。恐らく、それが綾瀬の才能を完全に開花させる為に必要だったんだろう」

 

「…やっぱり三杉先輩はすごい。いなくなっても尚花月の力になってくれているみたいだ」

 

僅かな期間共に過ごした偉大な先輩である三杉を思い出した菅野はその凄さを改めて痛感した。

 

「もっとも、どこまであいつ(三杉)の狙い通りだったのかは分からんがな。…ともあれ、これでピースはハマった。前半戦は自身の力の使い方がまだ理解しきれていなかった故に確かめる意味も含めてあまり積極的に仕掛けなかったが、それも完了した。後は圧倒するのみだ」

 

上杉の目が鋭くなったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「うーん、まずい状況だねー」

 

相変わらずのニコニコ顔だが、顎に手を当てながら弱音を吐く織田。

 

「予想はしてなかったわけじゃないけど、灰崎君がここまでやられちゃうなんてねー。困った困った」

 

そう感じられない言動と表情だが、確実に縮まっていく点差を見て焦りを覚える。

 

「外園くーん。準備出来てるー?」

 

「はい! いつでも行けます!」

 

声を掛けられた選手は元気よく返事をした。

 

「うんうん、よろしい。…それじゃ、行っといで」

 

「はい! スー…フー…っしゃっ!」

 

1度大きく深呼吸をして気合いを入れ、呼ばれた選手はオフィシャルテーブルに向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

けたたましくスキール音がコート上で鳴り響く。

 

 

――バシィィィィッ!!!

 

 

「…あっ!?」

 

東雲から三浦に出されたパスを竜崎が弾いた。

 

『アウトオブバウンズ、白(鳳舞)!』

 

しかし、ボールはサイドラインを割ってしまった。

 

「くそっ、惜しい!」

 

ボールを保持出来ず、悔しがる竜崎。

 

 

『ビビーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

「メンバーチェンジ! 白(鳳舞)!!!」

 

その時、鳳舞のメンバーチェンジがコールされた。対象は9番の東雲。コートに入ってきたのは11番の外園。

 

「頼む!」

 

「おう!!! 任せろ!!!」

 

気合い充分でコート入りしてきた。

 

「やかましいのが入ってきたのう」

 

「あの11番は姫川から詳しいデータがありませんね」

 

詳細なデータがない選手の登場で軽く困惑する花月の選手達。

 

「背丈は空坊くらいやのう。ま、ええわ。どないな選手かどうかはじっくり見て確かめよか」

 

 

試合再開。外園から三浦にボールが渡り、ボールをキープする。

 

「…」

 

外園をマークするのは東雲に引き続き生嶋。どのような選手か分からない為、その動向に注視する。

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

ゆっくりドリブルをしながら攻め手を定める三浦。

 

「…よし!」

 

次の瞬間、スリーポイントラインの外側左45度付近の位置から外園が気合いと共に中へと走り込んだ。

 

「っ!? ス、スイッチ!」

 

追いかけようとした生嶋だったが、大城のスクリーンに阻まれてしまう。

 

ハイポストに外園が立った所で三浦がパスを出した。

 

『おっ! 早速来たぞ!』

 

交代直後にボールが渡り、観客の注目が集まる。スイッチでマークが変わり、目の前に天野が立ちはだかる。

 

「…行くぞ」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

宣言と同時に外園が背中をぶつけながらドリブルを始めた。

 

「(…なんやこいつ。このタッパでパワー勝負する気かい!?)」

 

まさかの行動に天野も困惑した。だが、すぐに頭を切り替え、対応する。やはり体格差が大きい為、天野はピクリとも動かない。

 

「…」

 

何度かボールを突きながら押し込もうとするも動かず、外園は三浦にボールを戻した。

 

「(…中で勝負をするタイプなのか? それにしては高さはないしパワーもそこまで…)」

 

冷静に目の前の選手、外園を分析しようとする生嶋。しかし、答えが出ないでいた。

 

三浦がハイポストに立った大城にパスを出す。

 

「…っ!?」

 

次の瞬間、ゆっくりとツーポイントエリアの外に移動しようとしていた外園が走り出す。左アウトサイド。エンドライン近くのスリーポイントラインの外側まで移動した。同時に大城がハイポストから外園にパスを出した。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

そこからスリーを放った外園。ボールはリングの中心を射抜いた。

 

「よーし!!!」

 

スリーが決まり、両拳を突き上げながら外園は喜びを露にした。

 

「なっ!? 決めよった!?」

 

まさかの結果に天野は声を上げて驚いた。

 

「…やられたね。始めのポストアップは外の警戒を緩める為か。今のフォーム、かなり打ち込んでる。この人、シューターだ」

 

ここで生嶋は外園の選手像の全容が見えてきた。

 

鳳舞はスラッシャータイプの東雲を下げ、シューターを投入してきた。これにより、外の脅威がある為、ディフェンスを広げざるを得ない。そうなれば中の鳴海がさらに生きる展開になる。

 

再び鳳舞に流れが傾くか…、と思った次の瞬間…!

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

大地がドライブからのバックステップでスリーポイントラインより1メートル後ろまで下がり、そこからスリーを放ち、決めた。

 

『うおぉぉぉぉっ!!! そこから決めるかぁっ!?』

 

難しい距離からのスリーを決め、観客がどよめく。

 

「(…くそが! この俺がこうも…!)」

 

あっさりスリーを決め返され、灰崎は内心で悔しさを吐露する。

 

ここでも大地がエースの役割を果たす。流れを簡単には渡さない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…何度見てもあのフルドライブからのバックステップには驚かされるぜ。普通あのスピードで切り込んだら下がる事はおろか止まる事だって出来ねえぞ」

 

とんでもない事を平然とやってのける大地を見て驚きを隠せない火神。

 

「あの灰崎君が第3Qに入ってから全く止めれていません。…今の綾瀬君はかつての彼ら(キセキの世代)を見ている気分になります」

 

中学時代にその才能を覚醒させ、最強の名をその手にしたキセキの世代と大地をだぶらせる黒子。

 

「それだけなら灰崎にだって止められない事はねえ」

 

その時、2人の背後から声が聞こえてきた。

 

「青峰!?」

 

声の正体は青峰だった。青峰は松葉杖を突きながらゆっくり2人の横まで歩み寄ってきた。

 

「…その松葉杖、そんなに足の容体が悪かったんですか?」

 

その姿を見て黒子が心配そうな表情で尋ねた。

 

「ハッ! ただの捻挫だよ。これがなくたって歩く事くれー何ともねぇんだけどよ、さつきの奴が早く治したいなら使えってうるせーからよ」

 

げんなりした表情で答える青峰。

 

「さすが桃井さんです。懸命な判断です」

 

「…つうかお前、この後試合だろ? 良いのか、こんなところにいてよ」

 

試合を目の前に控える青峰に火神が尋ねる。

 

「良いんだよ。どうせ試合にゃ出ねーからな」

 

「…っ、そうか」

 

僅かではあるが寂しげな表情で答えた青峰を見て気まずそうな表情をする火神。

 

「…さっきの話ですが、それだけなら止められない事はないと言うのは?」

 

暗くなった雰囲気を変えるべく、黒子が話題を変えるように尋ねた。

 

「言葉どおりだよ。あのバックステップだけなら慣れりゃお前(火神)にだって止められる。…肝心なのはその後だ」

 

「「…」」

 

「あいつのスリーはとにかく打つまでがはえー。あのバックステップで距離空けられた後に打たれたら灰崎じゃ止められねえ」

 

「確かに、あのスリーはお前のところのシューター並の速さだ」

 

火神が思い浮かべたのは青峰のチームメイトである桐皇の特攻隊長にしてシューターである桜井良である。

 

「いや、あいつのやってる事は良とは比べ物になるレベルじゃねー」

 

例えで火神が出した桜井に対し青峰は首を横に振った。

 

「良のスリーはリリースこそはえーがその分打つ前のタメが大きい。だがあいつはリリースだけじゃねえ、タメの動作もごく僅かだ。ドライブで切り込まれた直後にタメもモーションの少ないスリーを打たれりゃ止められねえ。スリーばかり気を取られりゃ最初のドライブか下がった後の再発進で抜かれちまう。後手に回った相手を見て対応出来っから常にペースを握れる」

 

「…なるほど」

 

青峰の解説を聞いて納得する火神。

 

「…仮に青峰君が相手をしたらどうですか? 止められますか?」

 

「止められるに決まってんだろ」

 

黒子の質問に青峰は即答で返した。

 

「…簡単には行かねえだろうがな」

 

と、補足して。

 

「(…去年の合宿の時にも片鱗はあった。俺をヒヤリとさせたあのスリーを組み込んだプレースタイル。ウィンターカップの時は縮こまって打ってこなかったが、昨日の紫原とのやり合いで化けやがったか)」

 

かつての合宿で大地との1ON1に付き合った青峰。その時に大地の才能に気付いていた。

 

「…灰崎、どう相手するつもりだ?」

 

視線をコート上の灰崎に向けた青峰だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「おらぁっ!」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

パワーで松永を押し込んだ鳴海がそのままボースハンドダンクを叩き込んだ。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

小細工なしで真っすぐ切り込んだ大地。バックステップを警戒し過ぎた灰崎はそのまま抜き去られてしまう。

 

「んのやろ!」

 

「ちっ!」

 

それを見てゴール下から鳴海が、ハイポストで天野をマークしていた大城がヘルプに飛び出した。大地がボールを持って飛ぶと、鳴海は大地の前から、大城は後ろからブロックに向かった。

 

 

――スッ…。

 

 

前後を塞がれると、大地はボールを1度下げ、ブロックをかわすようにボールを放った。

 

 

――バス!!!

 

 

ボールはバックボードに当たりながらリングを潜り抜けた。

 

『スゲー! 2枚のブロックをものともしねえ!』

 

2人のブロックをダブルクラッチでかわして決め、観客が沸きあがる。

 

「何やってんだ灰崎! てめえさっきから簡単に抜かれまくりやがってよ!」

 

「うるせーんだよ雑魚が! てめえは黙ってろ!」

 

「んだと!」

 

怒りに任せて鳴海が灰崎に掴みかかろうとする。

 

「いい加減にしろ鳴海。いちいち突っかかるな」

 

伸ばした手を掴んで諫める大城。

 

「…ちっ」

 

舌打ちをして灰崎はその場を離れていった。

 

「状況考えろ鳴海。…次はねえぞ」

 

「…っ、分かったよ」

 

睨みを利かせながら言った大城を見て鳴海は軽く肩を竦ませながら返事をしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

第3Q、残り9秒。

 

 

花月 58

鳳舞 61

 

 

試合は第3Q残り僅かまで進んだ。花月は大地が中心となって得点を重ね、鳳舞は三浦が上手くボールを回し、灰崎だけではなく、チーム全員が得点を重ね、何とかリードを守っていた。

 

ボールは花月が保持しており、これがこのQ最後のプレーとなる為、竜崎は時間を目一杯使って慎重にボールをキープしている。

 

「こっちです!」

 

残り時間6秒となったところで大地がボールを要求。竜崎はすかさずボールを渡した。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ボールを掴んだのと同時に即ドライブ。

 

「くそが!」

 

このドライブに灰崎は何とか対応する。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

ここで大地は急停止。

 

「(…っ、下がるか、それともこのまま切り込みやがるのか…!)」

 

灰崎は必死に大地の動きを読もうと考えを巡らせる。

 

「(…チラッ)」

 

大地は視線をリングに向けた。

 

「(打つのか!?)」

 

リングに視線を向けられた事で灰崎の頭の中にシュートの選択肢が生まれる。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「…っ!? ちくしょうが!」

 

新たな選択肢が生まれてしまった事で読み切れず、結局ドライブを選択した大地に対応出来ず、抜かれてしまう。

 

「囲め! 絶対に打たせるな!」

 

大城が大きな声で指示を飛ばし、鳴海、大城、外園が動き、大地の包囲にかかった。

 

「…」

 

 

――スッ…。

 

 

『っ!?』

 

大地はここでパスをする。ボールは左アウトサイドに出された。

 

「視界はバッチリだよ」

 

そこでパスを受けたのは生嶋。ノーマークでボールを受けた生嶋は悠々とシュート態勢に入った。

 

「無駄だ! てめえのスリーはもう――」

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

「なに!?」

 

外れると思われたボールがリングを潜り抜け、灰崎は驚愕する。

 

「ようやくリズムを組みなおせた。もう僕のスリーは外れない」

 

にこやかな笑顔で生嶋は言ってのけた。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで第3Q終了のブザーが鳴った。

 

最後の1本をきっちり決めた花月が遂に鳳舞の背中を捉えた。

 

試合は第4Q、最後の10分間に命運を託されたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





新型コロナが大変な事になってますね…。

自分の業種は規制の対象外となっていますが、それでもノーダメージとは行かず、影響を受けてます。1人でも感染者が出れば営業が止まるので手洗いうがい等、出来る事は何でもやって感染しないようにヒヤヒヤしております。

こんな時、自分の二次を見て元気が出してもらえればと言えるくらい文才があったら良かったんですが…(;^ω^)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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