黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

花粉症で画面が霞む中、投稿です…( ;∀;)

それではどうぞ!



第114Q~強奪~

 

 

 

第1Q、残り9分44秒。

 

 

花月 3

鳳舞 0

 

 

試合が開始され、ジャンプショットを制した花月は竜崎がボールを運び、カットインと同時に外にパス。生嶋がスリーを決め、先制した。

 

「ディフェンス! 1本止めて流れに乗るで!」

 

『おう!!!』

 

素早くディフェンスに戻った花月は天野が声を出して鼓舞し、他の選手達がそれに応えた。

 

「よし、1本、返しますよ!」

 

スローワーとなった大城からボールを受け取った三浦がフロントコートまでボールを運んでいく。

 

「…」

 

「…」

 

三浦をマークするのは竜崎。花月のディフェンスも鳳舞同様マンツーマンで、それぞれ同ポジションの選手同士マークしている。

 

「(この人、確か、2年前の全中で戦った東郷中の…)」

 

「(こいつは帝光中の…)」

 

至近距離で対峙する2人。互いに記憶を認識した。

 

「三浦祐二。元東郷中の主将にして司令塔。これと言って欠点のない正統派のポイントガードか…」

 

ベンチの菅野が1冊のノートを捲りながら読み上げる。これは旅館から会場に出発する際に姫川から渡された物で、姫川が調べ上げた鳳舞高校の選手の詳細が記されている。

 

「こっち!」

 

三浦の右方向にまで下がってボールを要求した東雲にパスを出した。

 

「行かせない」

 

ボールを持った直後、生嶋がディフェンスに入った。

 

「東雲颯。スピードと豊富な運動量が武器のスラッシャータイプのシューティングガード。スピードを生かした切り込みとスティールが持ち味…」

 

続けてボールを持った東雲の情報を読み上げた。

 

「…」

 

「…ちっ」

 

事前に情報を得ていた生嶋は距離を取ってドライブを警戒しながらディフェンスに付いている。距離を取られている為、切り込みづらく、思わず舌打ちが飛び出る。

 

「中に入れろ!」

 

ハイポストに立った大城がボールを要求し、東雲は頭上からパスを出して大城にパスを出す。ボールを持ったと同時に背中に張り付くようにディフェンスに入る天野。

 

「大城義光。鳳舞主将で、リバウンドが得意の選手。パワーもあり、ガンガン押し込んでからのゴール下が得意パターンか…」

 

続けて大城の情報を口にする。

 

 

――ダムッ!!! …ダムッ!!!

 

 

ボールを受け取った大城は予想通りドリブルをしながら背中で天野を押し込みながら良いポジションまで侵入を試みた。

 

「行かせへんよ」

 

だが、天野が身体を張って侵入を阻止する。

 

「…」

 

リングまで距離があり、ポジションも悪い。強引に打ちに行っても外れるかブロックされるのが目に見えている為、打ちに行けない。

 

「いつまでもチマチマボール回してんじゃねえよ雑魚共! さっさと俺にボール寄越せ!」

 

この展開に苛立った灰崎がスリーポイントラインの外側、左45度付近でボールを要求した。

 

「…良いぜ。けど、決めろよ」

 

言われるがまま、大城は灰崎にパスを出した。

 

「おいおい、ビビッてんじゃねえよ! もっと強気で行けよ!」

 

パスを出した事に苦情を入れる鳴海。

 

「鳴海大介。元々は東京都の丞成の出身だが、1学年終了と同時に鳳舞に転校したパワーと高さを武器にゴリゴリのインサイドが売りの鳴海大介…」

 

ゴール下で松永をマークする鳴海の解説を読み上げる。

 

「ハッ! ちったぁ楽しませろよ?」

 

「…」

 

灰崎にボールが渡ると、大地がすかさず目の前に立ち塞がる。

 

「そして灰崎祥吾。帝光中出身で元キセキの世代。一昨年のウィンターカップでは海常に敗れるも途中まで黄瀬を圧倒し、海常を後一歩まで追いつめた逸材…」

 

最後の1人である灰崎の情報を読み上げた。

 

「……貰うぜ――」

 

「…っ!?」

 

突如、灰崎がシュートモーションに入った。大地がすかさずブロックに飛んだ。

 

「さっきのぉっ!」

 

「えっ!?」

 

「なに!?」

 

その瞬間、生嶋と松永が目を見開いた。灰崎は大地のブロックを斜め右に飛んでかわしながらスリーを放ったからだ。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールをリングを潜り抜けた。

 

「何やと!? 今のイクのスリーやんけ!」

 

チームメイトの生嶋のスリーを放った事に天野は声に出して驚いた。

 

「…へっ」

 

不敵な笑みを浮かべながら灰崎は右手の親指をペロッと舐めた。

 

「切り替えろ! 次も決めるぞ!」

 

ボールを拾った松永がスローワーとなって竜崎にボールを渡した。

 

「はい! 1本、行きましょう!」

 

竜崎がフロントコートまでボールを運んでいった。

 

「…」

 

「…」

 

目の前には変わらず三浦。

 

「綾瀬先輩!」

 

無理に切り込まず、竜崎は大地にパスを出した。

 

「ハッ! 来いよ」

 

ボールを掴んだ大地の前には灰崎が立ち塞がる。

 

 

「エース対決。ここでの勝敗…内容次第では今後の展開に影響するぜ」

 

「…」

 

先程得点を取られた直後の両チームの対決。火神、黒子も注目した。

 

 

「…」

 

ボールを小刻みに揺らしながらチャンスを窺う大地。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

機を見て大地が切り込んだ。

 

「何だ? その程度かよ」

 

灰崎はそのドライブに難なく付いていく。

 

 

――キュキュッ!!! …ダムッ!!!

 

 

直後、停止して左右に切り返しながら灰崎を揺さぶる。

 

「おいおい、ダル過ぎて欠伸が出んぞ!」

 

その揺さぶりにも惑わされる事無く灰崎は大地をピッタリディフェンスする。

 

『ダメだ、抜けない!』

 

「…」

 

ボールを止めた大地はビハインドパスでボールを横に流した。

 

「ナイスパス綾瀬先輩!」

 

L字カットで三浦のマークをかわした竜崎がボールを貰う。そのままリングに向かってドリブルをした。

 

「来いや1年坊が!」

 

そこへ、鳴海が立ち塞がる。

 

「そっちこそ!」

 

ボールを持った竜崎はそのまま跳躍した。

 

「舐めんな――っ!?」

 

 

――スッ…。

 

 

竜崎はリングから僅かに距離がある所からレイアップの態勢に入り、ボールをふわりと浮かせ、鳴海のブロックの上を越していった。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングを潜り抜けた。

 

「くそっ、スクープショット…! あんなの今まで使ってなかったじゃねえか…!」

 

「俺のとっておきだ。昨日は使う機会はなかったけど、全国に向けて覚えたキャプテン直伝の必殺技だ」

 

県予選終了後、インターハイに向けて自身の武器として猛練習して身に着けたのがこのスクープショットである。同じく得意の技である空に教えを請うていた。

 

『ビッと飛んでシュって投げる。これだけだ!』

 

「(と言っても、ほとんど理解出来なかったからお手本見せてもらって後は自己流で身に着けたんだけど…)」

 

空の抽象的な言葉による教えを思い出して苦笑いをした竜崎だった。

 

「速攻! 下さい!」

 

直後、前に走り出した東雲がボールを要求した。

 

「あかん! 速攻や、戻れ!」

 

慌てて花月の選手達。ボールを拾った大城が前に走る東雲に大きな縦パスを出した。

 

「ナイスパスキャプテ――っ!?」

 

そのまま速攻を駆けようと前を向いた瞬間、東雲は足を止めた。目の前には速攻を止めるべく回り込んでいた大地がいたからだ。

 

「(俺がボールに集中した一瞬で回り込んだのか。噂には聞いていたけど、何てスピードだ…)」

 

スピードを買われて鳳舞にスカウトされ、スタメンに抜擢されていた東雲。スピードには自信があったのだが、目の前の大地は自身を上回るスピードを持っていた。

 

「戻せ颯! 無理をするな!」

 

「……くそっ」

 

スピードで分が悪いのなら自分に勝機はない為、東雲は仕方なく三浦にボールを戻した。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「…えっ?」

 

「っ!?」

 

ボールが三浦の手に収まる直前、そのボールを灰崎がカットした。

 

「小物がチマチマボール回してんじゃねえよ」

 

「おいコラァッ! 味方のパスをカットしてんじゃねえよ!」

 

身勝手な行動に後方で走っている鳴海が怒鳴った。

 

「チンタラ速攻に走ってる奴がうるせーんだよ」

 

そんな言葉にも聞く耳持たない灰崎。そのままドリブルを開始した。

 

「…」

 

大地は東雲から灰崎のマークに向かい、スリーポイントライン目前で灰崎の前に立ち塞がった。

 

「…ちょこまかボールをこねくり回して結局パスかよ。お前、ホントにアツシに勝ったのか?」

 

「…」

 

「まだ本調子じゃねえのか? それとも、てめえ如きに負ける程アツシは弱くなったのか? どちらにしろ、その程度で俺と戦うなんざ話にならねえんだよ」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ひとしきり話しかけた後、灰崎が仕掛ける。

 

「…っ」

 

同時に大地も動き、これに対応。

 

「…ハッ!」

 

鼻で笑った灰崎は停止し、左右に切り返し、揺さぶりをかける。

 

「…」

 

大地はその揺さぶりに惑わされる事なくピッタリとディフェンスをする。

 

「へっ」

 

バックチェンジで下がりながら距離を作りながらボールを掴むと、灰崎はシュート態勢に入った。

 

「…っ!」

 

打たせまいと大地がブロックに飛んだ。

 

 

――スッ…。

 

 

「っ!?」

 

灰崎はレイアップの態勢でボールをひょいと放り投げ、大地のブロックの上を越えていった。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ボールはリングを潜り抜けた。

 

『今度はスクープショット! まるでキセキの世代の黄瀬だ!』

 

「…ちっ、あんなのと一緒にすんじゃねえよ」

 

観客の声が聞こえた灰崎は舌打ちをした。

 

「今のは俺の…」

 

「その前のドリブルは直前の綾瀬のやな。以前の海常との試合でも見せとったが、奴には黄瀬並のセンスがあるっちゅう事やな」

 

自身が苦心の末に身に着けたスクープショットをいとも簡単に真似され、落ち込む竜崎。天野も灰崎の実力を再確認した。

 

「昨日のミーティングで話した通り、あいつは乗せると面倒や。まだ中がちょい固めやからもうちょっと散らそか」

 

そう言ってチラッと生嶋に視線を向ける天野。

 

「任せて」

 

視線の意味を理解した生嶋はそう返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

ボールをキープする竜崎。目の前の三浦にボールを奪われないよう気を遣いながらゲームメイクをしている。

 

「(…相変わらず中を固めているな。生嶋先輩のスリーが怖くないのか?)」

 

確率だけならあの緑間にも匹敵する生嶋のスリー。警戒が薄い事に疑問を感じる竜崎。

 

「(まあいい。外を空けてくれるならこっちとしては願ったり叶ったりだ!)…生嶋先輩!」

 

外に展開していた生嶋にパスを出した。

 

「よし!」

 

ボールを受け取る生嶋。すかさず東雲がディフェンスにやってきた。

 

 

――ピクッ…。

 

 

生嶋はスリーを打つ前にポンプフェイクを1つ入れる。これに釣られて東雲が両手を上げてしまう。この隙を付いて生嶋が東雲を避けるように横に飛んでスリーを放った。

 

「あーダメダメ。『それ』はもう俺のもんだ」

 

ニヤリと笑う灰崎。

 

「…ッ!!!」

 

スリーを放った瞬間、生嶋は表情を歪ませた。

 

 

――ガン!!!

 

 

ボールはリングに弾かれた。

 

「馬鹿な! 生嶋がスリーを外しただと!?」

 

スリーが外れた事に驚きを隠せない松永。

 

生嶋のスリーは多少態勢やリズムが乱れてもボールに触れられなければ外れない程の精度を誇る。実際、ブロック以外で生嶋のスリーが入らなかった事は高校に入って1度もない。

 

「いただき!」

 

リバウンドボールを大城が抑えた。

 

「…っ!? しもた!」

 

生嶋のスリーが外れた事に動揺し、その隙を付かれてポジションを取られてしまう天野。

 

「寄越せ!」

 

フロントコートへ既に走っていた灰崎がボールを要求する。

 

「灰崎!」

 

それを見て大城が大きな縦パスを出した。

 

「ハハッ! らぁっ!」

 

フリースローラインを越えた所までドリブルで進んだ灰崎はボールを右手で掴み、リングに向かって飛んだ。

 

 

――バチィィィッ!!!

 

 

「あん?」

 

ボールがリングに叩きつけられる直前、右手に収まったボールが弾き飛ばされた。

 

『綾瀬だぁっ!!!』

 

「させませんよ」

 

花月で唯一灰崎の速攻に対応出来た大地がブロックに成功した。

 

『アウトオブバウンズ、赤(花月)!』

 

ボールはサイドラインを割った。

 

「(この俺に追い付いた? あの距離からか?)」

 

いち早く速攻に走っていた灰崎。ボールを受け取る直前に見た限りではそれなりに距離があり、如何にドリブルをしていたとは言え、容易に追いつかれるような距離ではなかったので、灰崎は少々驚いていた。

 

「(仮にもアツシに勝ったわけじゃねえって事か…)…ちっ。パス出すのが遅ぇんだよこの下手くそ」

 

ブロックされたイライラを先程縦パスを出した大城の尻を蹴ってぶつける灰崎。

 

「人に当たってんじゃねえよ! てめえがチンタラドリブルしてっからだろうが!」

 

その行動に怒りを爆発させた鳴海が灰崎のユニフォームの胸倉を掴み上げる。

 

「止めろ鳴海。試合中だぞ!」

 

そんな鳴海を大城が止める。

 

「放せよ」

 

鬱陶し気に掴んだ手を振り払い、その場を去る灰崎。

 

「良いのかよ! あんな調子に乗らせて!」

 

「性格はどうあれ、あいつが優れているのは事実だ。多少の嫌味は大目に見てやれ」

 

「…っ、けどよ」

 

それでも納得出来ない鳴海。

 

「試合に勝てんならあのくらい我慢するさ。…その変わり、負けでもしたら今まで貯めてたツケを一気に返すけどな」

 

こめかみ部分にに血管を走らせながら大城が笑みを浮かべながら言った。

 

「(…っ! やっぱりムカついてんじゃねえかよ)」

 

軽く頬を引き攣らせた鳴海であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「どないしたんやイク? 汗で手元でも狂ったんか?」

 

自身の手元を見つめて茫然としている生嶋に駆け寄る天野。

 

「……分かりません。ただ、スリーを打った時、ノイズが走りました」

 

「ノイズ?」

 

独特な言葉選びをする生嶋の言葉に戸惑う天野。

 

「…」

 

そんな生嶋を見て大地が何やら考え込む素振りを見せたのだった。

 

 

鳳舞のリスタート。東雲から三浦にボールが渡る。そこから即座に灰崎にボールが渡った。

 

「ハッ! よく分かってんじゃねえか」

 

迷わず自分にパスを出した三浦に気を良くする灰崎。

 

「…」

 

そんな灰崎の正面に立つのは変わらず大地。

 

「てめえ如きがやる気出しても結果は変わらねんだよ」

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

クロスオーバー、レッグスルー、バックチェンジを繰り返しながら左右に切り返しを始める。

 

「…っ」

 

この左右の揺さぶりにも惑わされずに対応する大地。

 

「…へっ」

 

鼻で笑った直後、自身の背後から股下にボールから大地の股下にボールを通した。

 

「…っ!?」

 

直後に大地の横を駆け抜け、ボールを拾った。

 

 

「っ! あれは、確か元海常のキャプテンの笠松が使っていた…!」

 

過去に見覚えのある技を見て火神が思わず目を見開いた。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

そのままリングに向かって飛び、ボールをリングに叩きつけた。

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

「これじゃ準備運動にもなんねえ」

 

「…」

 

大地の横を通り抜ける際、不敵に笑いながらボソリと灰崎は告げたのだった。

 

 

「(まずい、何とかしないと主導権を持ってかれる!)」

 

今の展開に焦りを覚える竜崎。何とか流れを変えたいと考える竜崎。だが…。

 

「…」

 

目の前で自身をマークしている三浦がそれをさせてくれない。昨日の相手であった永野程ではないにしても厄介な相手であった。

 

「(キャプテンなら自分でどうにかするんだろうけど…、いや、弱気になったらダメだ。俺の出来る範囲で何とかしないと…!)天野先輩!」

 

ハイポストに立った天野に頭上からボールを投げてパスを出し、同時に天野に向かって走り出した。

 

 

――スッ…。

 

 

すれ違い様にボールを手渡しで受け取り、そのまま飛び、レイアップの態勢でボールを放った。

 

「やろ…! またそれかよ!」

 

ブロックを予測して放ったスクープショット。ヘルプに来た鳴海の手の上を越えていった。

 

 

――ガン!!!

 

 

しかし、ボールはリングに嫌われ、弾かれてしまった。

 

「っ!?」

 

「残念だが、それも俺のもんだ」

 

不敵に笑う灰崎。

 

 

――バシィィィィッ!!!

 

 

「今度は取らせへんぞ!」

 

「っ!?」

 

リバウンドボールを大城をスクリーンアウトで抑え込んだ天野がリバウンドを制した。

 

「もろた!」

 

着地と同時にシュート態勢に入る天野。

 

「くそっ!」

 

すかさずブロックに向かう大城。

 

「あっ!」

 

天野はシュートではなく、ポンプフェイクであり、そこから足元からゴール下に立った松永にパスを出した。

 

「よし!」

 

ボールを掴んだ松永はすぐさまシュート態勢に入った。

 

「くそが!」

 

慌ててブロックに向かう鳴海だったが…。

 

 

――バス!!!

 

 

間に合わず、松永がゴール下を沈めた。

 

「っしゃっ! ええで!」

 

天野と松永がハイタッチを交わした。

 

「すいません。助かりました」

 

「気にするな。今日の俺は絶好調だ。どんどん俺にボールを回せ」

 

「頼りにしています」

 

落ち込む竜崎の背中を松永がそっと叩いて励ましたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「始まったな、灰崎の強奪が」

 

「はい」

 

観客席の火神と黒子が神妙な顔で話している。

 

「外を封じられたのが痛いな。生嶋は花月のオフェンスの生命線の1つ。外の要だ。ここが機能しないと花月のオフェンス力は半減だ。…何で花月は対策しねえんだ…!」

 

今の展開に憤りを感じる火神。

 

「灰崎君は中学1年時の全中以降、公式戦には出場したのは一昨年のウィンターカップのみです。あの技も、使用した試合は海常戦だけでしたから無理はありません」

 

「とにかくあの灰崎をどうにかしねえとどうにもならねえ。それが出来るのは…」

 

ここで火神の視線がコート上の大地に移る。

 

「あいつ(大地)しかいねえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

試合は灰崎によって主導権を握られたかに見えたが、花月は食らいついていた。その要因となったのは…。

 

「くそっ…!」

 

「行かせん!」

 

松永の活躍が大きかった。松永が鳴海を抑え、ゴール下を制した為、生嶋のスリーを封じられてもズルズル放されずにいた。

 

「(こいつ、技巧派センターじゃなかったのか!? 結構パワーあんじゃねえか!)」

 

オフェンス、ディフェンス共に強引に向かっていったが、松永がことごとくはね返していた。

 

「(確かにパワーはある。…だが、紫原はもちろん、桐皇の若松に比べれば大した事はない!)」

 

昨年のウィンターカップでパワー不足を痛感した松永はウィンターカップ終了後からフィジカルアップに努めていた。成長期も相まって松永は去年に比べて飛躍的にパワーアップしていた。

 

「おぉっ!!!」

 

 

――バス!!!

 

 

背中をぶつけ、態勢を崩して隙を作り、そのまま右手でボールを持ってフックシュートで得点を決めた。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで第1Q終了のブザーが鳴った。

 

 

第1Q、終了。

 

 

花月 17

鳳舞 20

 

 

両チームの選手達がベンチへと下がっていく。

 

試合は均衡を保ったまま最初のQが終わりを告げたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





全話で灰崎と鳴海の移籍の経緯をこの話にて説明すると後書きで書いたのですが、すいません…m(_ _)m

次話にて必ず説明致します…(;^ω^)

花粉症とその薬の副作用のせいで執筆が辛い状況ですが、何とか投稿を続けていけたらいいな…(>_<)

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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