黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

ここ最近の投稿からすれば短めの文章量です…(;^ω^)

それではどうぞ!



第109Q~速さ~

 

 

 

第4Q、残り2分1秒。

 

 

花月 90

陽泉 95

 

 

紫原のオフェンスファールを誘って失点を防ぎ、直後のオフェンスを成功させて点差を3点差にまで詰めた花月。しかし、ここで大地の限界が来てしまう。

 

絶体絶命の状況でメンバーチェンジがコールされる。チェンジに指名されたのは大地。交代要員に現れたのは空だった。

 

『来たぁぁぁぁっ!!! 神城だ!!!』

 

空が交代要員として現れると、会場中が歓声に包まれた。

 

第3Q途中で負傷退場となってコートから去った空。第4Q終盤の勝負所での復活となった。

 

「空…」

 

大地はゆっくりと立ち上がり、笑みを浮かべながらゆっくりと空の立つの方へ足を進める。

 

「さすがは俺の相棒だ。信じてたぜ。お前なら何とかしてくれるって」

 

同じく笑みを浮かべながら大地へと声を掛ける空。

 

「…空、後は――」

 

任せます…。そう告げようとした瞬間、空は大地の肩に腕を回し、引き寄せた。

 

「――」

 

耳元で一言囁くように呟くと、大地の肩をポンポンと叩き、コートへと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「お疲れ様! 凄かったよ!」

 

ベンチへと腰掛けた大地は相川からタオルと飲み物を受け取った。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…!」

 

息を切らした大地はタオルを頭から被り、ベンチに腰掛けた。

 

「…綾瀬。ラスト1分になったら再投入する。行けるか?」

 

大地の横に座った上杉がそう尋ねた。

 

「えっ? まだ試合に出すつもりですか!?」

 

「いくら何でももう限界ですよ!」

 

まだ行けるか否か尋ねた上杉の言葉に菅野と帆足が驚いた口調で言った。

 

「後は神城に任せれば……っ!? まさか…!」

 

ここで菅野がある事を予感し、途中で言葉を止めた。

 

「声がデカいねん。ちょい落ち着き」

 

そんな菅野を天野が諫めた。

 

「…で、実際の所どうやねん」

 

出来るだけ平静を保ちながら空と同時にベンチに戻ってきた姫川に尋ねる天野。

 

「…」

 

姫川は返事をする事なく真剣な表情でコートを見つめていた。

 

「スー…フー…」

 

その時、大地はゆっくり呼吸を整えていた。大地は残り1分を戦う力を回復させる為、体力回復に努めた。

 

 

――待ってるぜ。

 

 

先程空が大地にかけた言葉を頭の中で反芻させる。ベンチで上杉の言葉を聞いて大地は理解する。まだ、自分の役目は終わっていないと…。

 

「…けどよ、1分で回復出来るのか? ここまで歩いてくるのがやっとだったのによ」

 

既に限界を超えていた大地の様子を思い出した菅野の口から不安の言葉が飛び出した。

 

「スタミナに長けた者には大きく2種類ある。1つはより長い時間走れる者。神城がこれにあたる」

 

『…』

 

「後は、回復力に長けた者。僅かな時間の休息で疲弊した身体を回復出来る。綾瀬がこれにあたる」

 

『…』

 

「神城と綾瀬をインターバルなしで走らせれば、綾瀬が先に限界が来るだろう。だが、定期的にインターバルを取らせて走らせれば、神城の方が先に限界が来るだろう」

 

『…』

 

「1分あれば綾瀬なら残り1分戦う為の力を蓄えられる。それが出来るだけの練習をさせてきた。後は、選手を信じるだけだ」

 

決意を固めた表情で上杉は言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「おらおら! たった5点差、時間もまだ充分ある! さっさと点差をひっくり返すぞ!」

 

声を張り上げて空が鼓舞をする。

 

『おう!!!』

 

先程まで絶望しかけていた花月の選手達の表情に希望が戻った。空の言葉に大きな声で応えた。

 

「ホント、しぶといねー」

 

そんな空に紫原が話しかける。

 

「何で俺が嫌いな奴に限ってこうしつこいのかなー」

 

嫌悪感を浮かべながら紫原が空に言い放つ。

 

「それはご愁傷様。勝つまで俺は諦めねえ。その為なら何度でもコートに戻ってくるぜ」

 

不敵な笑みを浮かべながら空はそう返す。

 

「…ハァ。だったら捻り潰すしかないね。…そんな気が2度と起きない程にね」

 

苛立ちながら紫原は空の目の前に立った。

 

『綾瀬に続いて今度は神城をマークするのか!?』

 

ゴール下に戻る事なく空のマークに付いた紫原を見て観客が騒めく。

 

「直々に相手してくれるとは、ありがたい限りだな」

 

ここで空はボールを受け取った。

 

「…」

 

「…」

 

スリーポイントラインの外側、中央付近で対峙する両者。

 

「(ここまで競った試合になったのは綾瀬がいたからだ。だが、その綾瀬はもういない。今更お前(空)が戻ってきた所で無駄だ。これでトドメだ!)」

 

横目で対峙する空と紫原を見て勝利を確信する永野。

 

「…」

 

「……フッ。ありがとよ」

 

突如、空が礼の言葉を言うと、ドリブルを始める。

 

「わざわざ俺の得意の場所まで来てくれてよ!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

空が紫原の足元に飛び込むと、そこから左右に高速で切り返し始めた。

 

 

――ダムッ…ダムッ…ダムッ…!!!

 

 

クロスオーバー、レッグスルー、バックチェンジを高速で繰り返しながらハンドリングを続ける空。

 

「っ!? 足元でちょろちょろ! そんな小細工俺には――っ!?」

 

足元で左右に切り返し続ける空に苛立ちながら空が切り返した右へと視線を向けた。

 

「(なっ!? 消えた!? 何処に…!?)」

 

その時、紫原は空の姿を見失う。

 

「後ロダ、アツシ!」

 

「っ!?」

 

アンリの声に反応し振り返ると、そこには紫原の後ろに抜けた空がいた。

 

 

――バス!!!

 

 

そのまま空はリングに向けて突き進み、レイアップを決めた。

 

「分かってねえな。俺が何の為にコートに戻ってきたと思ってんだ? 俺は、トドメ刺しに来たんだよ」

 

『っ!?』

 

振り返った空を見た陽泉の選手達の表情が驚愕に染まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ゾーンの扉を開いていた空の姿を目の当たりにして…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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オフェンスが切り替わり、ボールを運ぶ永野。

 

「(コートに戻っていきなりゾーンに入るとか、マジ反則だろうがよ!)」

 

ゾーンに入り、圧倒的な存在感を醸し出す空を見て永野が冷や汗を流す。

 

「(くそっ、これじゃ試合はまだ予断を許さねえ。1本のミスが命取りになる…!)」

 

点差は再び3点。シュート1本差。残り時間を考えても何がきっかけで逆転される分からないこの状況。慎重にゲームメイクをする永野。

 

「よこせ!」

 

ここで、ゴール下から離れた紫原がボールを要求する。

 

「(……考えるまでもなかったな。ここに来てそこ以外の選択肢なんてあり得ねえ!)…紫原!」

 

迷いを捨てた永野は紫原にパスを出した。

 

「お前が来ても一緒だよ。俺は止められない!」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

宣言と同時に切り込む紫原。

 

「…ぐっ!」

 

同時に動いて追いかける空だったが、体格差とパワーを生かした紫原のドライブに苦悶の表情を浮かべた。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

切り込んだ紫原はボールを右手で掴んでそのままリングにボールを叩きつけた。

 

「…ちっ」

 

思わず舌打ちをしてしまう空。

 

「お前が戻ってきても状況は変わらない。何をしようと無駄な足掻きだ」

 

すれ違い様、空にそう告げる紫原。

 

「…ハッ! 上等だぜ!」

 

不敵な笑みを浮かべながら空は紫原の背中に向けて言い放ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――ダムッ…ダムッ…。

 

 

フロントコートまでボールを進めた空。目の前には紫原。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

先程と同様、紫原の足元に飛び込み、左右に高速で切り返しを始めた。

 

「くそっ、また足元に…!」

 

再び飛び込まれ、左右に高速で動かれて嫌がる素振りを見せる紫原。

 

 

「…なるほど、そういう事か」

 

「どうした、赤司?」

 

ポツリと呟いた赤司の言葉に反応する四条。

 

「目の前の相手を見失うあのドライブの謎が今分かった」

 

突然、目の前の相手を見失う空のドライブ。赤司はその謎の答えに辿り着いた。

 

「それは、死角から死角へ高速で移動する事がまず1つ」

 

『…』

 

「人間の視野というのは、離れた所はその目で捉えられるが、距離が近付けば近付くほど見える範囲が狭まる。神城はまず相手の足元まで切り込み、そこから左右の死角から死角へ高速で切り返し続ける」

 

『…』

 

「当然、目の前の相手は神城の姿を捉えようとして右か左に目を向けた瞬間――」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

その時、コート上では空がダックインで紫原の右手側から駆け抜けた。

 

「っ!?」

 

再び紫原は空の姿を見失い、為すがまま抜き去られてしまった。

 

 

「目が向いた方向と反対側にすかさずダックインする事で相手は神城が突然消えたように映ってしまう。これがあのドライブの謎だ」

 

「…赤司の解説を聞いても納得出来ないな。相手の目の動きに合わせて真逆にダックインとか、そんなの容易に出来る事じゃないし、仮に出来たとして、見失うものなのか? あの紫原が…」

 

解説を聞いても釈然としない四条は怪訝そうな表情をする。

 

「確かに、並の者がやっても一瞬消えたように見える程度だろう。だが、神城のスピードとアジリティーは凄まじい。あの青峰を凌ぐ程に。それと、神城はその持ち前のバランス感覚もあってダックインの際の姿勢が限りなく低い。神城のスペックにタイミングが合えばあの現象は引き起こす事は可能だ」

 

「…っ、恐ろしい限りだぜ」

 

補足を聞いた四条は背中に冷たいものが滴るものを感じた。

 

「(…このドライブの1番の肝はタイミングだ。僅かでもタイミングが狂えばこの現象は起きない。ならば彼はどうやって2度もタイミングを合わせた。それは俺の天帝の眼(エンペラーアイ)を以てしても容易ではない。…恐らく、彼は何か持っている。本人すらまだ気付いていない何かを…)」

 

 

――バス!!!

 

 

空が紫原を抜いて再びレイアップを決めた。

 

「いいぞ、神城!」

 

「ハァ…ハァ…おう!」

 

エールを贈る松永に空は笑顔で返す。

 

「(何だこの汗の量は? それにもう息を切らしているのか? あの神城がか?)」

 

常人を遙かに凌ぐスタミナを持つ空。そんな空の様子を見て松永が異変を感じ取った。

 

「…」

 

そして、その空を紫原が横目で観察していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…っ」

 

花月のベンチにて空の様子を見て胸の辺りを拳を当てながら表情を曇らせる姫川。

 

「(もうあんなに息を切らして…。やっぱり無茶だったのよ…!)」

 

空が担架で運ばれた折、一緒に付き添いとして付いていった姫川。

 

「(コートに戻って来る直前まで焦点が定まってなかった。止めないと!)監督!」

 

意を決して上杉に声を掛ける姫川。

 

「言いたい事は分かっている。これ以上無理だと判断したら即座に下げる」

 

コートから一切目を離さないまま上杉はそう返した。

 

「これ以上は無理です! すぐにでも――」

 

「――あいつが勝つ為に出る事を望んだ。ならば、あいつの目が生きている内は下げん」

 

「…っ」

 

あくまでも強行させる上杉の言葉を聞いて姫川の表情が悲痛に染まる。

 

「…責任は俺が全て取る」

 

覚悟を決めた表情で上杉は囁くように呟いたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――ダムッ…ダムッ…。

 

 

フロントコートまでボールを運んだ永野から紫原にボールが渡される。

 

「ハァ…ハァ…」

 

目の前に立ち塞がるのは空。

 

「薄々そんな気はしてたけど、やっぱり無理してたんだね」

 

空の様子を見て紫原が断言するように言った。

 

「ま、だからと言って手なんて抜かないけど。俺の邪魔する限り何度でも捻り潰すから。さらに大怪我したくなかったらさっさとベンチに下がる事だね」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

紫原が一気に加速し、切り込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

「(あーちくしょう、頭痛ぇー…)」

 

コートに入った直後は問題なかったのだが、ワンプレーしてからすぐに頭痛がするようになってきた。

 

「(吐き気もするし、視界もたまにぼやけやがる…)」

 

空のコンディションはまさに最悪だった。

 

「(…けど、それでも俺は勝つ為にやってやる! この後どうなろうと知ったこっちゃねぇ!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

紫原が切り込む。

 

「(例えぶっ倒れようと…、這いつくばってでも勝つんだ!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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――バシィィィィッ!!!

 

 

紫原が切り込んだ直後、空が伸ばした腕がボールを捉えた。

 

「な…に…!?」

 

自身の手からボールが消え去り、目を見開いて驚く紫原。

 

『なっ!?』

 

陽泉の選手達も同様であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

「何が起こった!? あいつは何をしたんだ!?」

 

観客席の福山が立ち上がりながら声を荒げる。

 

「デケー声出すな。…見たまんまだ。あいつが紫原の持つボールをカットした。それだけだ」

 

コートに視線を向けながら青峰が答えた。

 

「それだけって、今のは…」

 

説明を受けても納得出来ない福山。

 

「ゾーンに入った時のあいつのスピードは尋常じゃねえ。最高速、加速力。…反射速度もな」

 

 

「一般的な反応速度は0.2秒から0.3秒程と言われている」

 

今のプレーを見て赤司が話し出す。

 

「キセキの世代の中でも反射速度に優れる紫原で0.15秒程だろう。…だが、今の神城の反射速度はそれを超えていた。測った訳ではないから正確には分からないが、恐らく、人間の限界の反応速度と言われる0.11秒に限りなく近い」

 

「なっ!?」

 

説明を聞いて四条は表情を強張らせる。

 

「驚異的な反射速度と瞬発力。これを持っていたが故に紫原の持つボールを捉える事が出来たのだろう」

 

「…っ! まさに、神速のインパルス…! いよいよお前達(キセキの世代)と遜色ない化け物になってきたな…」

 

表情そのままで四条はコート上の空を見つめたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・

 

 

ボールが前に零れると、すかさず空がボールを拾いに向かう。

 

「(マズイ!)」

 

それを見たアンリは危機を察知し、動き出す。このまま速攻に走られれば点差は1点となってしまう。

 

 

――ドッ!!!

 

 

「…ぐっ!」

 

ボールを掴んでドリブルを始めた瞬間、腕を伸ばして抱え込むような形で空に接触した。

 

 

『ピピーーーーーーーーー!!!』

 

 

空が倒れこむのと同時に審判が笛を吹いた。

 

『アンスポーツマンライクファール、白11番!』

 

「っ!?」

 

審判のコールを聞いてアンリが目を見開く。

 

『っ!?』

 

陽泉の選手達も同様の表情となった。

 

『アンスポだぁっ!!!』

 

『どういう事?』

 

『故意にやったファールとして、2本のフリースローが与えられ、しかもその後花月ボールからスタートになるんだよ』

 

この判定を受けて観客も沸き上がる。

 

「よーし!」

 

「やった!」

 

コールと同時に松永と生嶋が喜びを露にする。

 

「先輩!」

 

倒れたまま起き上がらない空を見て室井が駆け寄る。

 

「ダ、大丈夫カ!」

 

それを見てアンリも駆け寄る。

 

「…心配いらねぇって」

 

声が掛けられると、むくっと立ち上がった空。

 

「アンスポ獲得した余韻に浸ってただけだ。騒ぐな騒ぐな」

 

おどけた表情で答える空。

 

「君、大丈夫か? プレーを続けられるか?」

 

様子を見ていた審判が空に駆け寄り、尋ねる。

 

「当然、余裕余裕」

 

「……分かった。危ないと判断したら即座に止めるからね」

 

少し考えるような表情をした後、審判は空から離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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・・・・・・・

・・・・

 

 

「神城君…!」

 

居ても立っても居られない様子でコートを見守る姫川。

 

「…もう1分経ちましたよね?」

 

大地が頭にかぶっていたタオルを取りながら尋ねた。

 

「行けるか?」

 

「充分休ませていただきました。問題ありません」

 

上杉の問いに決意を固めた目で大地が答えた。

 

「行って来い」

 

「はい!」

 

大きな声で返事をし、大地はオフィシャルテーブルに向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

フリースローラインに立つ空。2度程ボールを突いてボールを掴み、縫い目を確かめながら構える。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

1投目、成功。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

2投目も同じルーティンを繰り返しながら成功させた。

 

『来たぁぁぁぁっ!!!』

 

フリースローを2本成功させ、1点差まで詰め寄った。

 

「っしゃぁっ!!!」

 

空は叫ぶように喜びを露にした。

 

 

『ビビーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

「メンバーチェンジ! 緑(花月)!!!」

 

ここで花月のメンバーチェンジがコールされる。

 

『おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!』

 

同時に大歓声が上がる。歓声に包まれながらやってきたのは大地。

 

「俺もおるで」

 

それともう1人、天野。

 

交代を命じられたのは竜崎と室井の1年生コンビ。

 

「後は頼みます!」

 

「ここまでありがとうございます。後は任せて下さい」

 

ハイタッチを交わしながら言葉を交わす大地と竜崎。

 

「ようやった! 文句の付けようのない全国デビューやったで!」

 

「…勿体ない言葉です。後は頼みます」

 

賛辞の言葉でハイタッチを交わす天野。室井は複雑そうな表情で返事をしたのだった。

 

「よう、ちゃんと遅れずに戻ってきたな」

 

空の前に立った大地に不敵な笑みで告げる。

 

「言っておきますが、私はあなたに待たされた事はあっても待たせた事はありませんからね」

 

ジト目でそう返す大地。

 

「そういやそうだったな。…お前はいつも必ず時間通りに来てくれてた。絶対に遅れずに…」

 

「そういうあなたも、例え遅刻はしても、必ず来てくれてましたね。必ず…」

 

フッと笑みを浮かべながら2人は言葉を交わしていく。

 

「残りは1分。1点差。舞台は充分に整った」

 

「えぇ。後は勝つだけです。行きましょう!」

 

空と大地はコツンと拳をぶつけたのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

スタミナ切れを起こした大地。入れ替わるように戻ってきた空。

 

空の奮闘で点差を1点にまで詰めた花月。残り1分。体力回復に努めた大地がコートに戻ってきた。

 

スターティングメンバーに戻した花月。この試合の結末を決める最後の1分が始まるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





まさかこの試合がここまでの長丁場になるとは思わなかった…(;^ω^)

試合終了まで一気に行こうかなとも思ったんですが、とんでもない文章量となるので区切りのいいここで一旦筆を止めました。

さて、次の投稿はどうなるかな…。私の大嫌いな花粉のシーズンがやってきたので、花粉シーズン中は投稿ペースが落ちるかもしれませんのであしからず…m(_ _)m

感想アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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