黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

いろいろ頭を悩ませながらの投稿です…(;^ω^)

それではどうぞ!



第102Q~厚み~

 

 

 

第1Q終了。

 

 

花月 23

陽泉 22

 

 

花月が1点リードで第1Qを終えた。

 

「お疲れ様です! ゆっくり身体を休めてください!」

 

元気な声と笑顔で選手達を迎えた相川。相川と姫川から選手達にタオルとドリンクが渡される。

 

「まずは1合目、本当の正念場はここからだ」

 

ベンチに座る選手達の前に上杉が立つ。

 

「試合開始早々に紫原を引っ張り出してこっちのペースに引き込んだんは予定どおりや。…やけど」

 

「紫原がベンチに引っ込むのは予定外でしたね」

 

天野が汗をタオルで拭きながら状況を口にすると、松永が後に続いた。

 

「贅沢を言えば、紫原さんをもっと消耗させたかったな」

 

「だな、紫原は第1Qの大半を温存させちまった。これで以前の秀徳の時みたいにスタミナ切れさせるのは無理そうだな」

 

大地の願望を空が肯定した。

 

「バスケに限らず、試合は予測どおりに行くものではない。一の矢が当たらなければ、二の矢を射ればいい」

 

気落ちする選手達を励ますように言う上杉。

 

「紫原を欠いてもなおリードは1点だ。第2Qからコートに戻ってくる事を考えると…」

 

菅野がこれから先の懸念を示す。

 

紫原がいなくとも陽泉ディフェンスは固かった。紫原が入ればその厚みは先程までとは比べ物にならなくなる。

 

「第2Q、生嶋は隙あらばガンガン外を打っていけ。ブロックされても気にするな。お前が外を決めれば中が攻めやすくなる。とにかく積極的に行け」

 

「はい」

 

「天野はリバウンド、そして、スクリーンを上手く使って紫原を足止めしろ。最初のスクリーン、得点には繋がらなかったが、上出来だった。周りをフォローしろ」

 

「任せとき!」

 

「松永は中だ。紫原相手はキツイだろうが、お前が何も出来なければ花月に勝機はない。出来る事を全力で行え」

 

「はい!」

 

「綾瀬は積極的に切り込んでいけ。外の警戒が緩ければ外も狙っていけ」

 

「分かりました」

 

「神城も同様だ。中と外、自在に組み立てていけ」

 

「はい!」

 

上杉から次々と指示が飛ぶ。

 

「とにかく走り、とにかく手数を打って流れをモノにしろ。縦で劣っているなら、横の動きでカバーしろ」

 

『はい!!!』

 

 

『ビビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで、第2Q開始のブザーが鳴る。

 

「行って来い!」

 

「っしゃぁっ! ガンガン走るぞ!」

 

『応!!!』

 

空の掛け声に選手達が応え、花月の選手達はコートへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・

 

 

コートへと戻って来る両校の選手達。

 

「ま、そうだよな」

 

空は、紫原がコートへと入ったのを確認すると、納得するように頷いた。

 

「もうさっきみたいに点なんか取らせないから」

 

「へっ! もっと点差を広げてやるよ」

 

紫原の挑発に、不敵な笑みで返した空。

 

陽泉ボールから試合は再開された。

 

「よし、1本! 確実に決めるぞ!」

 

木下からボールを受け取った永野が指を立てながらボールを運び、ゲームメイクを始めた。

 

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

ゆっくりとドリブルをする永野。

 

「…」

 

「…」

 

目の前には空が立ち、ディフェンスをしている。

 

「(何処から来る…。第2Q最初のオフェンスだ。確実に決めたいはずだ。なら紫原か? いや、アンリも十分あり得る。それか木下の外か…)」

 

相手が何処から攻めるか予測を立てる空。永野の選択は…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

自ら切り込み、空の横を抜いた。

 

『抜いたぁっ!!!』

 

「(よし! このまま――)」

 

 

――バチィィィィッ!!!

 

 

「っ!?」

 

だが、ボールは弾かれてしまう。

 

「残念、ここは簡単には通さねえよ」

 

空は背中から倒れこみそうな態勢から永野のキープするボールを叩いた。

 

「くそっ!(やけにあっさり抜けたと思ったが、こんな態勢から狙ってくんのかよ!?)」

 

常識外れの態勢からのスティールに永野は思わず悪態を吐いた。

 

「…っと」

 

転倒目前で空は両足を踏ん張って上体を起こし、態勢を整えると、速攻に走った。

 

「頼むぞ!」

 

転がるボールを拾った松永は前を走る空に向けてボールを放った。

 

「このまま一気に……っと」

 

「行カセナイヨ」

 

だが、スリーポイントライン目前でアンリが空を回り込み、前を塞ぐと、空は1度停止した。

 

 

――ダムッ…ダムッ…!!!

 

 

左右に高速で切り返しながら揺さぶりをかける。アンリもそれに対応し、抜かせまいとディフェンスをする。

 

「…」

 

 

――ピッ!!!

 

 

空は左右の揺さぶりをやめ、停止すると、ノールックビハインドパスでボールを右へと放る。するとそこには大地が走りこんでいた。

 

「ムッ!」

 

これにすぐに反応したアンリは大地のチェックに向かう。が、大地はボールを受け取るとすぐさまボールを前へと放った。

 

「ッ!?」

 

そこには空が走りこんでいた。空はパスと同時に前と走り、大地のリターンパスに備えていた。大地はすぐさま空の意図を理解し、パスを出した。

 

「っしゃっ!」

 

リターンパスを受け取った空はそのままボールを右手に持ち替え、リング目掛けて跳躍した。

 

『行けぇっ!!!』

 

ベンチから声が上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前さあ、ちょっと調子に乗り過ぎだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

――バチィィィィッ!!!

 

 

ボールがリングに叩きつけられる直前、1本の腕が現れ、ダンクを阻んだ。

 

「紫原!?」

 

ブロックに現れたのは紫原。空の持つボールを右手で掴みこんだ。

 

 

――バチィッ!!!

 

 

「がっ!」

 

紫原のブロックによって後方に弾かれた空。何とか着地をし、持ち前のバランス感覚で態勢を立て直す。

 

「…はっ?」

 

態勢を整えて顔を上げた空の目に信じられない光景が飛び込んだ。紫原の右手にボールが収まっていたのだ。コートにほぼ同時に着地した2人。空は着地と同時に顔を上げたので時間的に紫原がルーズボールを拾う時間はない。にもかかわらず紫原の右手にボールが掴まれていると言う事は…。

 

「マジかよ…、空中でダンクに行った俺のボールを落とさずにそのまま奪いとっちまったのか…」

 

目の前で起こった事実を認識した空の表情が思わず引き攣る。

 

 

「おいおい、空中にあるボールを掴み取るのとは訳が違うんだぞ…!」

 

今のプレーを見た見た火神もこれには驚いていた。

 

かつてのチームメイトである木吉鉄平が得意技であるバイスクロー。リバウンドボールを片手で掴み取る荒業である。紫原もそれを見よう見まねで行っていたが、空中に舞ったボールを片手で掴むのとダンクに向かっているボールを掴みの取るのではレベルが違う。

 

 

「おそらく、日本であれが出来るのは大学、社会人、プロを含めても紫原だけだろう」

 

淡々と言葉にする赤司だったが、表情には出さないが心中では驚いていた。

 

 

「速攻だ、紫原!」

 

フロントコートに向けて走る永野。

 

「りょーかい」

 

紫原はボールを前方へと投げた。

 

「あかん! カウンターや、戻れ!」

 

「空! ディフェンス!」

 

「…あっ!」

 

大地の声で正気に戻った空は全速力でディフェンスへと戻っていった。

 

「…ちっ、やっぱり戻るのがはえーな」

 

そのままワンマン速攻が決められず、不満げな永野。

 

「ボールちょーだい」

 

ハイポストまで走りこんだ紫原がボールを要求。永野は迷わずパスを出した。

 

「…ちぃ!」

 

松永が紫原の背中に張り付く。

 

「…ん?」

 

ここで、紫原が違和感に気付く。

 

「手伝うで」

 

天野も並んで紫原の背中に張り付いた。

 

「お前ら2人程度で止められると思ってんの?」

 

ドリブルをしながらゴール下まで押し込んでいく。

 

「くっそ…」

 

「あかん、止まらへんわ!」

 

だが、圧倒的なパワーを持つ紫原の侵入を松永と天野の2人がかりでも阻止する事が出来ない。

 

「もーらい」

 

ゴール下まで侵入した紫原はボールを右手で掴んで反転。ボールを高く掲げてシュート態勢に入る。

 

「まだや!」

 

「何としても止める!」

 

2人は諦める事無くブロックに飛んだ。

 

「…と思ったけどやーめた」

 

「「っ!?」」

 

ここで2人は紫原がボールを右手で掴んでボールを掲げただけで飛んでいない事に気付いた。紫原は掲げたボールを右へと放り投げた。

 

「ナイスパス紫原!」

 

「あっ!?」

 

ボールは右アウトサイド、スリーポイントラインギリギリに立っていた木下に渡った。紫原の侵入に生嶋が気を取られた一瞬の隙を付いてマークを外したのだった。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

慌ててブロックに向かった生嶋だったが、高さのミスマッチによってブロックは届かず、ボールはリングの中央を潜り抜けた。

 

「ナイスパス紫原。まさかお前がパスするとはな」

 

「別に、攻めるのがめんどくなっただけだし」

 

駆け寄った木下が労うと、紫原はそっぽを向きながら返した。

 

「…ちっ」

 

第2Qが始まって最初の得点チャンスを防がれ、逆に得点を決められ、舌打ちが飛び出る空。

 

「ごめん、迂闊だったよ」

 

マークを外してしまい、謝罪をする生嶋。

 

「過ぎた事をとやかく言っても仕方ねえ、取り返すぞ」

 

ボールを受け取った空はフロントコートまでボールを進める。

 

「…」

 

陽泉の代名詞である2-3ゾーンディフェンスで花月のオフェンスを待ち構える。

 

「…」

 

ゆっくりドリブルをしながら攻め手を窺う空。

 

 

――ダムッ…ダムッ…ダムッ!!!

 

 

1度…2度…3度目でスピードアップ。一気に加速し、ゾーンへとドライブ。すると、陽泉ディフェンスが動く、渡辺と木下が前方から、背後から永野が空を包囲にかかる。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

だが、空は完全に包囲される前に高速のスピンムーブで密集地帯をすり抜けるように抜け出した。

 

「行くぞ、紫原!」

 

ゾーンディフェンスを突破した空はそのまま紫原の立つゴール下まで突き進んでいく。

 

「お前じゃ何度来たって同じなんだよ!」

 

事実上の挑戦状を叩きつける空。紫原は両腕を広げ、嫌悪感を抱いた表情をしながら空を待ち受ける。

 

 

――ダムッ…ダムッ!!!

 

 

バックチェンジからのクロスオーバーで抜きにかかる空。

 

「その程度で抜けると思ってんの?」

 

左右に高速で揺さぶりをかける空。紫原は一切動じる事なく空の揺さぶりに付いていく。

 

「こっちが本命だよ!」

 

紫原が対応したのと同時にバックロールターンで反転。

 

「今度こそ決める!」

 

そのままリングに向かって跳躍した。

 

「甘いし。そんなんで俺から得点出来ると思わな――っ!?」

 

ブロックに飛んだ紫原。だが、ここである事実に気付いた。リングに向かって飛んだ空だったが、その伸ばした右手にはボールの姿形が何処にもなかったのだ。

 

「ナイスパスくー!」

 

ボールはマークを外していた生嶋の手元にあった。生嶋はすぐさまスリーの態勢に入る。

 

「あっ!?」

 

マークを外してしまった木下が慌ててブロックに向かう。ギリギリ追いつける距離だったが…。

 

「…くっ!」

 

生嶋は斜めに飛んでブロックをかわしながらスリーを放った。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

「いい音だ」

 

スリーを決めた生嶋は拳を握って喜びを露にする。

 

「ボールをちゃんと追わないとね♪ さっきのお返しだ」

 

してやったりの表情で紫原に告げる空。先程、空はバックロールターンで反転しながらその遠心力で外の生嶋にパスを出していた。

 

「…あいつちょームカつく…!」

 

空の一言で目に見えてイライラとした表情になる紫原。

 

「アハハ! アイツワホントニ面白イ奴ダナ!」

 

笑い声を上げながら紫原に歩み寄るアンリ。

 

「ホラホラ、ムットシテナイデモット楽シク試合ヲシヨウ!」

 

笑顔で紫原に抱き着くアンリ。

 

「あーもう、分かったから! 暑苦しいから離れてよアンちん!」

 

鬱陶し気にアンリを遠ざける紫原。だが、多少頭が冷えたのか、表情は落ち着きを取り戻していった。

 

オフェンスは切り替わり、陽泉ボール。永野がボールを運ぶ。

 

「(…ちっ、さっきの見せつけられちまうと迂闊に切り込めねえな)」

 

先程の倒れこむ程の態勢からのカットが頭にチラつき、切り込む事に躊躇する永野。

 

「…来いよ」

 

腰を落としてドライブに備える空。

 

「(…っ、このプレッシャー、もはやキセキの世代と遜色がねえ。たった1年でとんでもない選手に成長したもんだぜ…)」

 

空から発せられるプレッシャーを受けて空の実力を肌で感じ取っていた。

 

「キャプテン!」

 

ローポストに立った渡辺がボールを要求すると、永野は空にカットされないよう頭上から高くボールを放った。

 

「よし!」

 

ジャンプしてボールを掴む渡辺。すかさず天野がその背中に張り付くようにディフェンスをする。

 

「…行くぞ」

 

 

――ダムッ…ダムッ…!!!

 

 

ドリブルをしながら背中で天野を押し込んでいく。

 

「(っ! このサイズだけあってパワーも相当やな。けど、こちとらディフェンスを売りにしとる選手や。止めたるわ!)」

 

腰を落として踏ん張り、渡辺の侵入を阻止する。

 

「(…くっ! この人、俺より小さいのにパワーがスゴイ! それにこの人、平面だけじゃなくてインサイドのディフェンスも上手い…!)」

 

インサイドでのパワー勝負なら自分に分があると思っていた渡辺はまったく押し込ませない天野のパワーとディフェンスの上手さに驚く。

 

「戻せ!」

 

先程パスを出した永野がボールを要求。天野を押し込めないと判断した渡辺はボールを戻す。

 

「っし!」

 

フリースローラインを少し越えた所でボールを受け取った永野はすぐさまシュート態勢に入る。

 

「させっか!」

 

後ろから空がブロックに飛ぶ。永野は素早くワンハンドジャンパーでボールを放った。

 

「(くそっ、神城に動揺して身体が流れた!)リバウンド!」

 

すぐさま天野と松永、紫原と渡辺がリバウンドに備える。

 

 

――ガン!!!

 

 

ボールがリングに弾かれる。

 

『っ!』

 

同時にリバウンドを制する為にゴール下の選手達がボールに向かって飛ぶ。

 

「(…よし。絶好のポジションや! これなら取れ――)」

 

 

――ガシィィィッ!!!

 

 

天野がボールに手を伸ばそうとしたその時、背後から1本の手が飛び出し、ボールを掴み取る。

 

「(っ!? 紫原!?)」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

ボールを掴んだ紫原はそのままリングにボールを叩きつけた。

 

『おぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

「「っ!」」

 

ダンクの圧力に押されて天野と松永はバランスを崩し、コートに倒れる。

 

「ごめーん、ちょっと力入れ過ぎちゃった」

 

振り返った2人を見下ろしながら紫原が言い放つ。

 

「「…っ」」

 

圧倒的な高さと腕の長さでリバウンドボールを奪われ、圧倒的なパワーと圧力で吹き飛ばされた2人は思わず悔しさで歯を食い縛った。

 

「切り替えろ! 取り返すぞ!」

 

「…っ! 応!」

 

空の言葉に正気に戻った松永はボールを拾い、リスタート。空にボールを渡した。

 

「1本! 行くぞ!」

 

人差し指を立てた空がボールを運び、ゲームメイクを始める。

 

「…」

 

陽泉の選手達は既にディフェンスに戻っており、2-3ゾーンを敷いている。

 

「くそっ、戻りが早くなった。速攻が封じられたら点を奪うのは厳しいぞ…!」

 

ベンチの菅野が苦い表情で言う。

 

「…ちっ」

 

攻め手が見つからない空はボールを回す。スリーポイントラインに沿うように立つ花月の選手達。慎重にかつ素早くボールを回してチャンスを窺う。

 

「…っ!」

 

ボールが生嶋に渡ると木下がガンガンプレッシャーをかける。抜かれるのを覚悟でとにかく生嶋にスリーを潰しにかかる。

 

「…くっ」

 

こうもフェイスガードで付かれるとスリーは打てない。かと言って無理に中へ切り込んでもそこには紫原がいる為、生嶋では勝負出来ない。

 

たまらず生嶋はボールを空に戻す。

 

 

――バチィィィィッ!!!

 

 

だが、そのボールはアンリによってスティールされてしまう。

 

「速攻ダ!」

 

ボールを奪ったアンリはそのままワンマン速攻を仕掛ける。

 

「まずい、戻れ!」

 

速攻に走ったアンリを目の当たりにして焦ってディフェンスに戻る松永。

 

「行かせるか!」

 

「止めます!」

 

スリーポイントライン直前でアンリを捉えた空と大地が道を阻む。

 

「ムッ! サスガニ速イナ!」

 

今まで先頭で速攻に走って追いつかれた経験がなかったアンリは驚きながら足を止めた。

 

「こっちだ!」

 

後ろから走りこんできた永野がボールを要求。アンリはトスするように放って永野にボールを渡す。永野はそのままスピードを殺さずドリブルを開始する。

 

「ちっ、打たせねえ!」

 

空がドリブルをする永野を並走しながら追いかける。

 

「何度も止められると思うなよ!」

 

身体をぶつけながら強引に突破を図ろうとする永野。ゴール下まで侵入した永野はすぐさまボールを掴んでレイアップの態勢に入る。

 

「あめぇ!」

 

その後に空がブロックに飛び永野のシュートコースを塞ぐ。

 

「相変わらず楽させてくれねーな!」

 

悪態を吐く永野だったが、あらかじめ空がブロックに来る事を予測していた永野は動じる事なく右手に持ったボールを左手で押さえ、レイアップを中断。ボールを下に落とした。

 

「ナイスパース」

 

そこへ走りこんでいた紫原にボールが渡る。同時に紫原は両手でボールを掴んでリングに向かって飛んだ。

 

「…くっ!」

 

大地がブロックに飛ぶが。

 

「だから?」

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

「ぐっ!」

 

そんなブロックお構いなしにボースハンドダンクを叩き込み、大地を弾き飛ばした。

 

「どうせ無駄なんだから第1Qの時みたいに抵抗は止めた方がいいよ? 怪我するだけだから」

 

ボールを右手で拾った紫原は倒れこんだ大地を見下ろしながらボールを放りながら言った。

 

「大丈夫か?」

 

「ええ、何とか……っ」

 

手を差し伸べる空。大地はその手を掴んで立ち上がった。

 

「ったく、シャレになんねえなあれ」

 

「まったくです」

 

弱音を吐く空に共感する大地。

 

「しょうがねえ、止められねえなら点取るしかねえ。やんぞ!」

 

「ええ!」

 

大地からボールを受け取った空はドリブルを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

試合はそこから陽泉ペースで試合は進む。

 

陽泉は紫原がインサイドを制圧し、中から紫原、外からアンリが切り込み、木下が外からスリーを放ち、渡辺が同じく中から攻め、時にポストプレーでパスを中継したり、スクリーンをかけて見方を援護、永野は4人にパスを捌き、隙を付いて自ら切り込んでいった。

 

花月は中から攻めきれず、外から攻めるが単発に過ぎず、流れに乗れない。

 

 

第2Q、残り6分49秒

 

 

花月 29

陽泉 34

 

 

流れに乗った陽泉が点差を5点にまで広げていた。

 

 

「点差が広がってきたな」

 

「ああ、やはり紫原がいるのといないとではインサイドの厚みが違う」

 

試合を見ていた洛山の四条と五河がじわじわと開いていく点差を見て口を開く。

 

「これまで花月は紫原をあえて無視する事で試合を進めてきた。だが、そんな奇策がいつまでも通用するはずがない」

 

「そうだな」

 

赤司の言葉に納得の表情で頷く四条。

 

「中で勝負出来なければ点差はこのまま広がり続けるだろう。花月が陽泉と対等に戦う為には紫原から得点を奪わなければならない」

 

『…』

 

「紫原から逃げていては、花月に勝機はない」

 

そう断言する赤司だった。

 

 

「…」

 

ベンチから無言で試合を観察する上杉。

 

赤司が懸念を示した事は上杉自身も良く理解していた。そして、ここまで試合を見守っていた上杉が動く。

 

「準備は出来ているな?」

 

「はい。いつでも行けます」

 

上杉に声を掛けられ、返事をする。

 

「次、時計が止まったら投入する。行って来い」

 

そう促され、立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・

 

 

『アウトオブバウンズ、白(陽泉)ボール!』

 

永野からアンリへとパスを大地がカットし、ボールがサイドラインを割った。

 

 

『ビビーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

「メンバーチェンジ! 緑(花月)!!!」

 

ここでメンバーチェンジがコールされる。交代に指名されたのは松永。代わってコートに投入されたのは…。

 

「スー…フー……行くぞ」

 

背番号12番、室井総司であった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





ここまで何とか仕上がりました!

さて、ここからどうしましょうorz

最近考えるのは、話を書き続けられる人ってすごいなって思います。原作という確かな設定と世界観がある二次創作ですら話を考えるのに苦労するのに、オリジナルで長期に渡って書き続けられる事は素直に尊敬出来ます。このサイトの方でも市場に単行本で売り出している方でも長期に渡って連載を続けられてる方はプロアマ問わず尊敬の対象です。

いつかこの二次くらい長期連載出来るオリジナルを書きてぇ…。

感想、アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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