黒子のバスケ~次世代のキセキ~   作:bridge

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投稿します!

最近投稿初期のペースを取り戻せてある種絶好調です…(^-^)

それではどうぞ!



第101Q~シーソーゲーム~

 

 

 

第1Q、残り6分28秒

 

 

花月 12

陽泉 12

 

 

メンバーチェンジのより、紫原がベンチに下がり、試合は再開される。

 

「…」

 

「…」

 

ボールは陽泉。右斜め45度のスリーポイントラインの外側に立つアンリ。そのアンリをディフェンスをする大地。ボールを小刻みに動かしながら隙を窺うアンリに対し、一定の距離を保ち、ディフェンスを大地はしている。

 

「(…アイソレーション。それだけあの外人に信頼を置いとるわけやな)」

 

陽泉の選手達が左サイドによってアンリが勝負しやすいようスペースを空けた。

 

『…(ゴクリ)』

 

2人の勝負を目の前に、観客達が緊張感が走る。

 

『…』

 

それは、同じく観客席にいるキセキの世代と火神も同様であった。

 

「…」

 

「…」

 

両者、まるで居合の達人同士の立ち合いの如く睨み合う。

 

「(…………来る!!!)」

 

 

――ダムッ!!!

 

 

仕掛けるタイミングを計った大地。アンリが仕掛けるのと同時に動き、ドライブに対応、並走する。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

「っ!?」

 

最初の1歩目は対応したが、2歩目で引き離し、大地を置き去りにする。インサイドに侵入したアンリはボールを右手で掴んでリングに向かって跳躍する。

 

「…ちぃ!」

 

ヘルプに走った松永がダンクを阻止するべくブロックに飛ぶ。だが…。

 

「…くそっ!」

 

アンリはブロックに飛んだ松永のさらに上を飛んでいた。

 

 

――バキャァァァッ!!!

 

 

松永の上から右手で掴んだボールをリングに叩きつけた。

 

『おぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!!』

 

『何だあの高さは!?』

 

『いや、その前のあのドライブ、は、はえー!!!』

 

アンリが繰り出したドライブのスピードとダンクの高さに驚愕する観客達。

 

 

「…っ、あのスピードとアジリティーは青峰以上じゃねえのか?」

 

「…いや、スピードとアジリティーに関して言えば、青峰とそう変わらない。速く見えるのは1歩の広さによるものだ」

 

四条の感想を受けて、赤司が解説を始める。

 

「彼が今見せたのは、ストライド走法と呼ばれる歩幅を広く取って走る陸上選手のスプリンターが使う走り方だ。脚が長く、バネのある筋肉を持つ彼が用いれば、青峰が3歩で届く距離なら2歩で届くだろう」

 

『…』

 

「通常より少ない歩数であのスピードとアジリティーでインサイドに侵入し、かつ、あの高さ。彼を止めるのは青峰や火神であっても容易ではないだろう」

 

「…っ! まさか、そんな奴が全国に現れるなんてな…」

 

赤司の解説を聞いて四条の表情が思わず曇った。

 

 

「…ハッ! なかなかやるじゃねえか」

 

今のプレーを見ていた青峰の口からこんな言葉が飛び出した。新たなライバルの誕生に心なしか表情に笑みが浮かんでいた。

 

「大ちゃん…」

 

そんな青峰を見て桃井は何処か微笑ましい表情をするのだった。

 

 

「…タツヤもドリブル突破が出来る選手だったが、リングから離れた位置から勝負するタイプだった。あいつはリングに近い位置で真価を発揮するタイプだ。…止められるのか?」

 

リングを潜ったボールを見つめる大地に視線を向けた火神は、そんな懸念をしたのだった。

 

 

「…」

 

ディフェンスに戻るアンリを一瞥する大地。

 

「あのスピードにあの高さは厄介極まりないで」

 

「そうですね」

 

天野が大地に声を掛ける。

 

「…けどのう、あいつのマーク出来るのはお前しかおらへんで」

 

「分かっています」

 

現状、アンリをマーク出来るのが大地しかいない為、発破をかける天野。

 

「チームの勝利の為、必ず止めてみせます」

 

力の籠った目付きで大地は言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

オフェンスは花月に切り替わり、空がボールをフロントコートまで運ぶ。

 

「…」

 

陽泉のディフェンスは変わらず2-3ゾーン。紫原が抜けた事でポジションを先程よりインサイド気味に取っている。

 

「(…プレッシャーが格段になくなった。これなら外が撃ちやすい…)」

 

ツーポイントエリア全てをカバー出来るディフェンスエリアを持つ紫原がいない為、外へ取っていたポジションを中へと移動した陽泉。花月には生嶋と言う超高精度のスリーを打てる選手がいる。上手く生嶋をフリーにして外から狙うのがセオリー。

 

「(……けどまあ、ここで外に逃げるっていう選択肢は、ねえよな)」

 

空がパスを出す。ボールの先は…。

 

『来た!』

 

『早くもやり返すか!?』

 

右斜め45度。スリーポイントラインの外側に立っていた大地。目の前にはアンリ。先程と同じ形で両者が対峙した。

 

「…行きます」

 

「来イ!」

 

ボールを小刻みに動かす大地。そして…。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

一気に加速。仕掛ける。

 

『うわぁっ! こっちもはえー!!!』

 

『けど、アンリも付いていってるぞ!?』

 

ハイスピードで切り込んだ大地。だが、アンリは一瞬たりとも遅れずにピタリと並んで追いかける。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

同時に大地が高速反転。バックロールターンでアンリの逆を付く。

 

「見エテルヨ!」

 

だが、アンリはこれに反応し、逆を付いた大地の方へ身体を向ける。

 

「ッ!?」

 

しかし、そこには大地の姿はなかった。大地は、そこから数メートル後方へ高速でバックステップをし、距離を取っていた。

 

「ヌゥッ! マダダヨ!」

 

アンリ。距離を空けた大地にシュートを打たせまいと距離を詰める。

 

「なっ!?」

 

ベンチで試合を見守っていた竜崎が思わず立ち上がる。シュートを打つには十分な距離を空けたはずだった。だが、アンリの持つスピードとアジリティーはその距離を一瞬で潰してしまった。

 

「打タセナ――」

 

バックステップして距離を取り、その場で止まった大地。ここで打ってくると予測したアンリは何としてもそれを阻止するつもりだった。だが、大地はボールはまだ掴んではいなかった。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ここで大地は急発進。距離を詰めてきたアンリとすれ違う形で横を駆け抜ける。

 

『抜いたぁっ!!!』

 

大地はアンリを抜きさったのと同時に急停止し、ヘルプが来る前にその場でジャンプシュートの態勢に入った。

 

「ッ! マダダ!」

 

すれ違い様に抜かれたアンリも急停止し、すぐさま反転。1歩で大地との距離を詰め、そこから跳躍。後方から手を伸ばし、大地のシュートコースを塞ぐ。

 

「(っ!? これに追い付くのですか!?)」

 

完全に振り切ったと思っていた大地は思わず目を見開いた。このタイミングであれば例え空であっても追い付くのは困難。だが、アンリはシュートコースを見事に塞いでしまった。このままシュートを打てば間違いなくブロックされる。

 

「後ろに戻せ!」

 

「っ!」

 

声が耳に入った大地はシュートを中断。ボールを後ろへと戻した。そこには、空が立っていた。中央付近のスリーポイントラインの外側でボールを受け取った空はすぐさまシュート態勢に入る。

 

「くそっ、打たせるか!」

 

スリー阻止の為、永野がブロックに飛ぶ。

 

「っ!?」

 

だが、空はボールを構えたまま、飛んではいなかった。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

ブロックに飛んだ永野の横を抜けるように中へと切り込む。そんな空へを包囲するようにアンリと木下が寄ってくる。

 

 

――ピッ!

 

 

空は、完全に包囲される前にノールックビハインドパスでボールを左へと流した。

 

「あっ!?」

 

ボールの先には、生嶋が立っていた。左アウトサイド。スリーポイントラインの外側で生嶋はボールを受け取った。空へのヘルプで中を固めようとしてしまった為、生嶋はフリー。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

ノーマークだった生嶋は確実にシュート態勢と縫い目を確かめ、スリーを決めた。

 

「ナイッシュー」

 

「ナイスパス」

 

空と生嶋がハイタッチを交わす。

 

「…ふぅ」

 

一息吐く大地。その表情は心なしか浮かない。

 

「(得点には繋がったが、さっきアンリが得点出来たのに対し、綾瀬は得点出来なかった。ここで負けを意識してしまうとここから先のパフォーマンス能力にも影響がでかねん)」

 

松永が1つの懸念をする。

 

「(…任しとき)」

 

天野と視線を交わす松永。松永の懸念を理解した天野が頷きながら目で制し、大地の下へ駆け寄った。

 

「ええ判断や。これで点差は逆転や。中に意識向けさせてくれたら外も打ちやすうなる。ガンガン切り込んでいき」

 

大地の肩を叩きながら激励する天野。

 

「あいつ(アンリ)は得点出来て、お前は得点出来なかった。最初の勝負は負けだな」

 

だが、天野と松永の懸念を他所に、空が大地にズバリ言う。

 

「(この阿呆! 敗北を意識させてどないすんねん!)」

 

心中で空に突っ込みを入れる天野。

 

「中に意識を向けさせる事しか出来ない程度じゃ今は良くても――」

 

「そうですね。紫原さんがコートに戻ってしまえば手詰まりになりますね」

 

紫原がコートに戻ってゴール下に陣取ってしまえば他の4人はより外を警戒するようになる。そうなれば、大地の脅威は薄くなる。

 

「そういうこった。お前が点取ってくれなきゃウチは波に乗れないんだ。…遠慮はいらねえ、ガンガンぶち抜いて点取ってけ。ヤバくなったら俺がフォローしてやっからよ」

 

ニコッと笑って空が大地の背中を叩いた。

 

「もちろんです。どんどんボールを回してください」

 

同じくニコッと笑って大地は答えた。

 

「(この2人、付き合い長いん忘れとったわ。いらん気ぃ回してしもたな)」

 

ディフェンスに戻る2人の背中を見ながら天野は胸を撫で下ろしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

試合はティップオフ当初の激しいトランジションゲームからハーフコートバスケへと移行した。

 

花月は空と大地が中へと積極的に切り込み、そこから得点…あるいは外の生嶋にボールを捌いて得点を重ねていき、陽泉は中の渡辺、外から木下、アンリが中に切り込んで得点を重ねていった。

 

 

――ダムッ!!!

 

 

永野を抜いて空が中へカットインする。ヘルプに来るアンリに捕まる前にローポストの松永にパスを出した。

 

「…よし」

 

 

――ズン!!!

 

 

ボールを受け取った松永は背中を渡辺にぶつけ、押し込みながらドリブルを始める。

 

「行かせないぞ!」

 

背中をぶつけられて一瞬後ろへ押されるもすぐに堪え、松永の侵入を阻止する。

 

「(…こいつ、前に戦った時よりパワーが格段に上がっているな)」

 

過去に対戦した押し込んで得点出来たが、今はそれが困難であるほど渡辺のパワーは上がっていた。

 

「(ここでターン……いや、アンリのポジションが近い。ここはバックステップで距離を取ってから打つ!)」

 

松永は1度体重をかけるように背中をぶつけてからバックステップで距離を取り、そこからフェイダウェイの態勢でシュート態勢に入った。

 

「くっ! させるか!」

 

 

――チッ…。

 

 

距離が空くも諦めずに追いかけ、ブロックに飛んだ渡辺。伸ばした手の指先が僅かにボールに触れた。

 

「「リバウンド!」」

 

外れる事を確信した2人は咄嗟に叫ぶ。

 

『…っ!』

 

ゴール下に大地、天野、アンリ、立花が入り、リバウンドに備える。大地は背中で立花を外へと押しやり、リバウンドを取るのではなく、立花にリバウンドを取らせないように努めた。リバウンド勝負は天野とアンリの2人だけとなった。

 

「(…っ、スピードは確かにシャレにならんが、パワーはそれほどでもあらへん。ここ(リバウンド)なら俺の土俵や!)」

 

スクリーンアウトで最適のポジションを取り、両腕を巧みに使ってアンリを抑え込む。

 

「…グッ!」

 

アンリもどうにか強引にポジションを奪おうとするが、天野がそれを阻止する。

 

 

――バシィィィッ!!!

 

 

「もろたで!」

 

ポジション争いを制した天野がオフェンスリバウンドを制した。

 

「天さん!」

 

リバウンドボールを確保した天野は空にパスをした。空はボールを受け取るのと同時に外の生嶋にパスをした。

 

「打たせるか!」

 

生嶋のスリーをブロックするべく木下が距離を詰める。

 

 

――ボムッ!!!

 

 

木下が距離を詰める前に生嶋はワンバウンドさせながらボールを中に入れる。ボールは再び松永に渡る。松永はすぐさまシュート態勢に入る。

 

「次も止める!」

 

再び渡辺がブロックに飛ぶ。

 

「…甘い」

 

松永はボールを右手に持ち替える。

 

 

――バス!!!

 

 

そのまま松永はボールを放り、バックボードにボールを当てながらフックシュートを決めた。

 

「…くっ!」

 

ブロック出来ず、悔しがる渡辺。

 

「ええ感じやで!」

 

「どうもです」

 

肩を叩いて労う天野。松永は淡々と礼を言い、ディフェンスに戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「…」

 

ベンチの紫原。目に見えて不機嫌な表情になっている。自分がコートにいれば今の攻撃をブロック出来たという自信と確信があるからだ。

 

「頭を冷やせと言ってるだろう紫原」

 

そんな紫原に荒木が窘めるように言った。

 

「お前をベンチに下げたのはその熱くなった頭をクールダウンさせるのと、お前に勝つ為にどうすればいいかを考えさせる為だ」

 

「…考えるも何も、俺が相手を捻り潰して、それで止めればいいだけじゃん」

 

紫原は拗ねた表情でそう返した。

 

「花月を甘く見るな。三杉と堀田がいなくとも、全国の頂点を狙えるポテンシャルを持つチームだ。考えなしに戦えば負けるぞ。仮に勝てたとしても、そんな戦い方ではこれから先勝てない」

 

「…」

 

「ただ思うが儘プレー出来た去年と一昨年とは違う。もう陽泉には岡村も氷室もいない。全国の頂点に立つ為にはお前が陽泉の柱となって支えなければならないんだ。だから考えろ。試合に勝つ為にはどうすればいいかを。負けたくないのであればな」

 

「…っ! …分かったよ」

 

『負け』と言う言葉を聞いて一昨年、昨年の敗北を思い出した紫原は素直に荒木の言葉を聞き入れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

ハイスコアゲームからロースコアゲームに移行し、花月は空が巧みににパスを捌き、あるいは自ら切り込んで得点を重ね、陽泉ディフェンスに的を絞らせない。

 

対して陽泉はアンリを中心に得点を重ね、アンリにマークが集中すればそこからパス、外の木下や中から渡辺が得点を決める。

 

一方が決めればもう一方が決め返し、一方が止めればもう一方が止める。試合はシーソーゲームの様相となった。

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

外から放った木下のスリーが決まる。

 

「よーし!」

 

スリーを決めた木下が拳を握る。

 

 

第1Q、残り16秒。

 

 

花月 21

陽泉 22

 

 

今のスリーにより、陽泉が逆転、リードする。

 

「ラスト1本、止めて終わるぞ!」

 

『おう!!!』

 

残り時間からして花月の最後のオフェンス。リードのまま第1Qを終えたい陽泉は永野掛け声に気合い十分で応え、ディフェンスに臨む。

 

「…(チラッ)」

 

「…(コクッ)」

 

空が大地にアイコンタクトを送ると、大地が頷く。同時にハイポストに立つ天野にパスを出し、同時に動く。空はスリーポイントラインを沿うように走る。ボールを受けたすぐさまボールを空に戻す。動いた空を追いかける永野だったが…。

 

「っ!?」

 

スクリーンによって阻まれる。スクリーンをかけたのは大地。リターンパスを受けた空。目の前には…。

 

『おぉっ!!!』

 

ボールを受け取った空の目の前にはヘルプに向かったアンリの姿があった。

 

『今度は神城とアンリか!?』

 

『これも見物だ!』

 

「君トモヤレルトハネ」

 

「大地だけ美味しいとこ取りはズルいからな。今度は俺だ」

 

不敵に笑う両者。

 

「来イ!」

 

「ハッ! あんたぶち抜いてきっちり第1Q終わらせるぜ」

 

両者共臨戦態勢に入った。

 

 

――ダムッ…ダムッ…。

 

 

ゆっくりドリブルを始める空。

 

「…よし、エンジン全開、止められるもんなら止めてみな!」

 

空は両足で小刻みに飛びながらドリブルを始める。

 

「…?」

 

突然の行動に目の前のアンリは少々戸惑う。

 

 

――ダムッ…ダムッ…ダムッ!!!

 

 

小刻みの飛びながらボールを数度突き、最後に少し高めに飛び、両膝を曲げながら着地すると、低空姿勢のまま一気に加速。前のめりに倒れこみそうな程の態勢でドライブを慣行した。

 

「っ!?」

 

まさかの態勢から高速のドライブが飛び出し、一瞬面を食らうもすぐさま切り返し、空を追いかけるアンリ。

 

 

――キュキュッ!!!

 

 

アンリが目の前を塞ぐと、空は両足を曲げ、しゃがみ込むような態勢でその場で停止。

 

 

――ダムッダムッダムッ…!!!

 

 

その場で急停止した空はクロスオーバー、レッグスルー、バックチェンジを高速で繰り返しながらハンドリングを始める。

 

「…ッ! …ッ!」

 

左右に動きながら高速かつ時折膝を曲げて態勢を低くしながらハンドリングを繰り返す空。迂闊にボールに手を出せばその瞬間抜かれかねないと見たアンリは何としても抜かせまいとボールを見失わないよう必死に目で追いかける。

 

どんどんギアを上げ、ハンドダンクのスピードを上げていく空。懸命に空の動きに対応する。次の瞬間…。

 

「ッ!?」

 

アンリの視界から空の姿が消える。

 

「(ドコニ…!?)」

 

空の姿を見失うアンリ。

 

『抜いたぁぁぁぁっ!!!』

 

「ッ!?」

 

観客の声に反応して振り返るアンリ。そこには自身を抜き去ってリングに向かう空の姿があった。

 

 

「あれは!? 去年の冬に青峰さんを抜いた…!」

 

「…」

 

思わず前のめりになる桜井。青峰は無言でコートを見つめていた。

 

 

「…くっ!?」

 

アンリが抜かれたのを見て渡辺がヘルプに飛び出す。空がボールを持ってレイアップの態勢に入ったのを見て渡辺もブロックに飛んだ。

 

 

――スッ…。

 

 

空はレイアップのフォームのままボールを放り投げる。ボールは渡辺のブロックの上を弧を描くように越えていく。

 

「(っ!? スクープショットか!?)」

 

 

――ザシュッ!!!

 

 

放ったボールはリングを潜り抜けた。

 

『うおぉぉぉぉぉぉっ! 技ありのスクープショットだ!』

 

『いや、その前のドリブルの方がやべーだろ!?』

 

一連の空のプレーを目の当たりにした観客が大歓声を上げる。そして…。

 

 

『ビーーーーーーーーーーーーーー!!!』

 

 

ここで、第1Q終了のブザーが鳴った。

 

「っし!」

 

きっちりアンリを抜き去り、得点を決めた空は静かに拳を握った。

 

「さすが空です」

 

「応よ!」

 

歩み寄った大地とハイタッチを交わす空。

 

「アノスピードトデタラメナ動キ、ナンテ奴ダ」

 

ベンチに戻っていく空を見つめるアンリ。

 

「ダガ、次ワ止メテ見セルヨ!」

 

決意を固めたアンリだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・

 

 

「終わって見れば花月が1点リードか…」

 

試合を観戦していた火神が背もたれに体重を預けながら言った。

 

「けど、紫原さん抜きで1点差だぜ? もう決まりだろ」

 

軽く鼻で笑う池永。

 

「紫原君がいないと言っても、それでも陽泉から得点を奪うのは簡単じゃないわよ」

 

嘲る発言をした池永を窘めるリコ。

 

「花月はオフェンスのバリエーションが増えたな」

 

「ああ、世代交代によるスタメンの入れ替えがなかった花月の強みだな」

 

朝日奈と新海が花月のオフェンスを目の当たりにした感想を言い合う。

 

「第2Q、紫原君は…」

 

「当然、戻ってくるでしょうね。冷静さを取り戻してるでしょうし、何より、第1Qの半分以上を温存したから、この試合、まず間違いなくスタミナ切れを起こす事はないでしょうから、花月にとってここからが正念場よ」

 

黒子の疑問を肯定したリコは、これからの花月の試練を呟くのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

            ※ ※ ※

 

 

1点リードで試合の4分の1を終えた花月。

 

第1Qの大半を体力温存とクールダウンに努めた紫原。

 

選手達はベンチに戻り、第2Qの激闘に備えるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 





とりあえず、試合の4分の1が終了です。

ここから先、大雑把な試合展開は決めているのですが、細かい試合展開がまだ決まっていないので、次話からペースダウンするかもしれませんorz

大活躍のアンリ。一応、アンリは原作で言う氷室的立ち位置で、キセキの世代に近い、状況やシチュエーション次第ではキセキの世代と同格に戦える逸材です。ここから先、そこら辺りを上手く描写出来たらと思います…(;^ω^)

感想、アドバイスお待ちしております。

それではまた!

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